アズ同盟

未瑠

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もう一人のライバル

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 それから、学校でも放課後でも大体アズと朔といるようになった。
 アズが部活でいないときも、アズを待つとなると、どうしても朔と一緒になってしまう。
 ま、朔も部活には入っていないと言いながらも、日々いろんな運動部にヘルプを頼まれ、練習参加を望まれているため、いないことも多い。

「アズが終わる時には俺も終わりたいから」

 とか言って固定の部活には入っていない。ヘルプなら途中で抜けても問題ないだろって言ってるけど、それヘルプの意味あんの? ウザイからどっかの部活に入ればいいのに。


 アズにはアズと呼んでも良いと許可を貰った。
 嬉しい。
 どうして藤原とは友達なのに名前で呼ばないの? と無邪気に聞かれ、藤原と二人で仕方なしにお互い名前呼びにすることにした。



 今日も今日とてアズを家へ送り届けて、そのまま家に上がっている。

「ってか朔はさー、いつになったらアズのこと諦めるわけ?」
「いや、お前が後から割り込んできたんだろ。アズは俺が大事に守ってたの。お前なんかと付き合わせるわけねーだろ。大体付き合うとしたら俺だから」
「は? 何いってんの。恋愛に先も後もねーだろ。惚れさせた方が勝ち」
「あぁ?」
「っんだよっ?」

 二人になると途端に険悪になるムードに、高い声が響く。

「ちょっと、二人とも! 喧嘩してる場合じゃないよ。アズは本当に鈍いからね。それに、本当の強敵がもうすぐ帰ってくるんだから」
「え?」
「どういうこと、ユズちゃん。」

 二人がユズの方を向く。

 アズはコンビニへ買い出し中。

 本来であれば必要なものは全て揃っているし、買い物もお手伝いさんが行うのだが、アズはコンビニで自分で選んで買うことを時々する。それを楽しみにしていることも知っているため、漣も朔も付いていくと言っていたが、ユズが引き止め、ユズには逆らえない二人が渋々アズをお手伝いさんと一緒にコンビニへ行かせたのだった。
 もちろんその間に二人が仲良く待っている訳もなく、アズを巡っていつもの言い争いをしていたのだった。

「そうやって二人で牽制しあってたら、横から掻っ攫われちゃうって話よ」
「? え?」
「だれに?」
「たぶん一番の強敵よ。――ショウが留学からもうすぐ帰ってくるの」

 ショウ。

 俺たちはその名前を知っている。
 アズの部屋に入ったとき、写真立てに入っていた写真に唯一写っていた男。




**



「こ、これは?」

 学ラン着てるのにアズがカワイすぎる。
 コスプレか?

 などそれぞれ浸っていたが、目線ずらすと、アズと一緒にピースしているユズの他にもう一人。穏やかな笑みを浮かべたかなりのイケメン。

「あ、これ? 中学の卒業式の記念に撮ったやつなんだ。中学の制服最後だったからみんなで撮ろうって」

 アズが楽しそうに言う。

「こ、こいつは誰?」

 朔は自分の声が若干震えているのに気がついていた。

「ん、ショウくんだよ。俺らの隣の家でさ、ずっと一緒だったの」

 ずっと、
 いっしょ、だった、の……?

 アズの可愛い声が二人の頭の中でリフレインする。

「二人共赤くなったり、青くなったりどうしたの? 具合悪い? 帰る?」
「「いや、帰るわけない!!」」

 瞬時に声を揃えて否定した二人に、アズは

「そう? ならゲームしよっ。」

 と笑顔で言われて、それ以上追求が出来なかったのだ。




**



水野奨みずのしょう。私達のお隣さんで幼馴染。2つ上で今は留学中だけど、あと1ヶ月ほどで帰国するの。君たちと学校も同じだよ。っていうか、アズと学校は中学から一緒。今まで割りと私がコントロールしてきたけど、奨だけは……。だから、アズ同盟に加入しているものの、治外法権なのよ!」
「それってもう同盟加入の意味なくない?」

 すかさずツッコミを入れる朔。

「そう、でも最初にアズ同盟を言い出したのって奨なのよねー」
「ふん。変なやつ……」

 漣は努めて冷静な対応をしようとする。

 変なやつ……というか、相当これから頑張らないと君たちあの微笑みの裏の腹黒王子には勝てないよ、とユズは思った。

「ってか何でこんな時期に? 今からってことは2学期からってこと?」
「そうね。そう聞いてるわ」
「……もう高3だろ? こっちの大学受けるため? にしても、中途半端じゃね?」

 ま、十中八九、君たちのせいだと思うけどね。
 今回ばかりはもう物理的に遠くにいたら取り返しがつかないと思ったんだろし。
 さて、奨が帰ってきたら、どうなるかなぁ。

 まだ見ぬライバルのことをあれこれと言い合っている二人を見てユズはニヤリと笑った。




**




「今日から奨様戻ってくるんだって!」
「良かったー。もうそのまま海外の大学に進んでしまうのかと思ってた」
「またあの麗しいお姿が毎日見られるなんて、本当に幸せ」
「え? 奨様って誰?」
「あー、あんた高校からだっけ、奨様知らないのはもう罪よ。大丈夫今日から目に焼き付けて!」
「えー、私は漣一筋!」
「私は朔くん派!」

 朝から学校が騒がしい。
 キャーキャー言われるのは慣れているが、今やアズ以外には興味もないからただうるさいだけだ。しかも自分の話ではないキャーキャーはもはや騒音の部類だ。

 今日からアイツが登校してくるらしい。
 昨日ウキウキなアズが言っていた。

「あのね、奨くんが明日から登校するんだって! 朔と漣にも紹介するからね。すごく優しいお兄ちゃんなんだよ」

 俺と漣は死んだ目で、それでもなんとかアルカイックスマイルを貼り付けてアズの話しを聞いていた。

「おはよー」

 クラスのざわつきが一層大きくなる。
 漣より早く来てアズの席に陣取っていた俺と、アズの机に軽く腰掛けていた漣が同時にクラスの入り口を見る。
そこには、アズとニコニコとアズの横に立つ背の高い一際目立つ男がいた。水野奨に違いなかった。

 なんでクラスにまで来てんだよ、お前は3年の階だろーが。

 思わず睨んでしまう。
 それは漣も同じだったようで、「チッ」と舌打ちが聞こえた。

 アズは俺たちの様子にはあまり気がついていないようで、

「朔―、漣―、ちょっと来てー」

 と、俺たちを呼ぶ。

 紹介するからとは言われていたけど、今かよ……。
 でもアズに呼ばれて行かないわけにはいかない。むしろ早くアイツから引き剥がしたい。

 廊下に出ると、アズがやや興奮気味に、

「奨くん、こっちが朔、こっちが漣。今すごく仲良くしてくれてるの。朔、漣、奨くん。俺のお兄ちゃん! よろしくね」

 と俺達を紹介し、奨を紹介してくる。

 写真で見たときより少し長めのブラウンの髪をゆるく結わっている。
 背は高い。俺より漣より。
 ひどく整った甘やかな顔立ちに、優しそうと評判の瞳をアズに向けている。品が良いのがにじみ出ている。キラキラと眩しいくらいだ。

 くそっ、ムカつく。

 奨はニコニコとしたまま。

 仕方がないので俺も笑ってやった。
 お前にも負けねー。

「っス」

 漣はニコリともせず、音のない挨拶をしていた。

「あぁ、君たちか、ようやく会えたね。今までアズのことありがとう。これからも友達として仲良くしてやって」

 はっ、いきなりの上から目線かよっ。
 しかも友達部分強調すんなよ。

「言われなくても!」
「っ別に、先輩に言われなくても仲いいし」

 バチバチと音が出そうなほどの三つ巴の状況に、他のアズ同盟の加入者とアズ同盟にすら入れてもらえなかった(ユズ審査不合格)一般ピーポー達が恐れおののく。さらにその輪の外には久々の学校の元祖王子(奨)と、クール王子(漣)とスパダリ筆頭(朔)と天使ちゃん(アズ)の揃い踏みを一目拝もうとミーハー女子と野次馬男子が群がり、4人の周り以外は満員電車なみの混雑となっている。

「じゃあ奨くん来てもらってありがとね。朔、漣、教室入ろう」

 アズは俺たちの空気をまったく意に介さず言う。

「そうっスよ、予鈴なっちゃいますよ、センパイ。3年のお部屋へどーぞ」
「アズ行こう」
「……アズまた後で」
「うん」

 俺たちはそれぞれアズの腕と背中に手を添え、教室に入った。
 顔だけ動かして奨を伺うと、ニコニコは変わらなかったが目だけで射殺しそうな視線が飛んできていた。

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