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入学後
スライム清掃
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シャワーを一番に浴びさせてもらって着替えて訓練場にやってきた。
ケフィン達は手伝ってくれると言ったけれど、俺の責任だから手伝いはいらないと断った。
スライム発生の為に今日は訓練場は使えないと全員に連絡が行った。
誰もいない訓練場に一人きり。
「さぁて、本気でやるか」
体をグッとほぐすようにストレッチをする。
まだ日が落ち始める頃だ。
これを一瞬で終わらせて、街にでも遊びに行っちゃおっと。
堂々と夜間外出が許可されて浮かれていた。
俺はここにいる事にして夜まで遊べる。
エルドだった時、街に行くのは憂鬱だった。
街に出れば好奇の視線が突き刺さり息苦しくなった。絡んでくるやつもいて、まともに買い物も出来なかった。
店員は、英雄だとヘコヘコ頭下げるやつもいれば、人殺しに物を売れないと言うやつもいた……。
そのうちに街に出るのが面倒になった。
必要な物はリンゼイに頼んで買ってきてもらうようになった。
『エルド。このケーキ好きだろう? 一緒に食べよう』
リンゼイに笑顔でそう言われた事を思い出す。
街に行かなくたって俺が平気だったのは、リンゼイがいたからだよな……。
思わず微笑んでしまう。
記憶を振り払うように頭を軽く振って、スライムの方に手をかざす。
これくらいの範囲なら、上級の火魔法で問題ないな。魔力を手のひらに集中させて、焼き払うようにイメージすれば、目の前一帯が円形に炎に包まれた。
ごうごうと音を立ててスライムを焼き尽くす。スライムは焼き払えば跡形もなく消えて綺麗になる。
「こんなもんかな」
パッと魔法を止めれば、炎も無くなった。
地面が少し焦げたけれど、まぁ、大丈夫だろう。
「さぁて、街に行ってあのケーキを買って──……」
そう独り言を言いながら踵を返して足が止まった。
そのまま心臓も止まりそうだった。
「リンゼイ……先生……」
ど、どうしてリンゼイがここに……?
どこまで見られていた?
リンゼイは驚いて目を見開き立ち竦んでいる。
今使った魔法は上級魔法だ。問題ないはず。
あとは、魔法陣か……。
「……あー……はははっ。リンゼイ先生はいつからそこにいたのですか?」
「──さっき来たばかりだよ……」
それなら俺が魔法を使う所を見てなかったよな?
リンゼイは俺に微笑んだ。
「上級魔法が使えたんだね。驚いた」
上級魔法を使っていた事に驚いていたようで、魔法陣が無い事に気付いていないみたいだ。地面に書いていたとでも思ってくれたか?
「はい。火魔法は得意なので僕は上級が使えるんです。じゃあ……僕はもう行きますので──」
気にした様子も、追及される事も無さそうだ。ホッと胸を撫で下ろす。
下手に話して墓穴を掘る前にさっさと退散するに限る。
けれど、リンゼイは俺を退散させてくれなかった。
「待って。ディノ・バスカルディ」
心臓がウサギみたいに飛び跳ねた。
リンゼイの目の前で声を掛けられて思わず足を止めた。
俺を真っ直ぐに見るリンゼイに囚われて動けない。
「ところで、君はこれから街に行ってケーキを食べるつもりなのかい?」
そこか……独り言聞かれてた……。
「そ、そんな事言ってましたか?」
「言っていたよ。はっきり聞こえてた」
俺のバカ。独り言大きすぎだろ。
この調子じゃ街へ行けなそうだ……。
「夜間外出の他に、外に出るにも許可証がないと学園の外に出られないのは知ってるよね?」
え? そうだったか?
説明あったかな……。
エルドは出入り自由だったから気にしていなかった……。
「そのまま出ていこうとすれば、学園の出入り口にある結界で弾かれるよ。すぐに先生方に知らせが行って減点される」
それは困る! 減点されたら卒業どころか進級も危うい。
「でも──私も連れて行ってくれるなら、私の付き添いとして外に連れて行ってあげてもいいよ」
笑顔でそんな事を言われた。
リンゼイもケーキを食べたかったのか?
あまり関わるのは良くない。
断るべきなんだけれど──。
「ケーキだけじゃなく、シュークリームも食べたいと思わないかい?」
シュークリーム!
カスタードと生クリームがたっぷり入ったシュークリームは大好きだった。
あれも美味しかったんだよな。
「た、食べたいです……」
俺は食欲に負けた。
脳内は甘いものに支配された。
リンゼイといるのは今だけだ……今だけならなんの問題もないよな……。
「それなら一緒に行こう。美味しい洋菓子店を知ってるんだよ」
優しく笑うリンゼイに胸の奥が疼いた気がした。
ケフィン達は手伝ってくれると言ったけれど、俺の責任だから手伝いはいらないと断った。
スライム発生の為に今日は訓練場は使えないと全員に連絡が行った。
誰もいない訓練場に一人きり。
「さぁて、本気でやるか」
体をグッとほぐすようにストレッチをする。
まだ日が落ち始める頃だ。
これを一瞬で終わらせて、街にでも遊びに行っちゃおっと。
堂々と夜間外出が許可されて浮かれていた。
俺はここにいる事にして夜まで遊べる。
エルドだった時、街に行くのは憂鬱だった。
街に出れば好奇の視線が突き刺さり息苦しくなった。絡んでくるやつもいて、まともに買い物も出来なかった。
店員は、英雄だとヘコヘコ頭下げるやつもいれば、人殺しに物を売れないと言うやつもいた……。
そのうちに街に出るのが面倒になった。
必要な物はリンゼイに頼んで買ってきてもらうようになった。
『エルド。このケーキ好きだろう? 一緒に食べよう』
リンゼイに笑顔でそう言われた事を思い出す。
街に行かなくたって俺が平気だったのは、リンゼイがいたからだよな……。
思わず微笑んでしまう。
記憶を振り払うように頭を軽く振って、スライムの方に手をかざす。
これくらいの範囲なら、上級の火魔法で問題ないな。魔力を手のひらに集中させて、焼き払うようにイメージすれば、目の前一帯が円形に炎に包まれた。
ごうごうと音を立ててスライムを焼き尽くす。スライムは焼き払えば跡形もなく消えて綺麗になる。
「こんなもんかな」
パッと魔法を止めれば、炎も無くなった。
地面が少し焦げたけれど、まぁ、大丈夫だろう。
「さぁて、街に行ってあのケーキを買って──……」
そう独り言を言いながら踵を返して足が止まった。
そのまま心臓も止まりそうだった。
「リンゼイ……先生……」
ど、どうしてリンゼイがここに……?
どこまで見られていた?
リンゼイは驚いて目を見開き立ち竦んでいる。
今使った魔法は上級魔法だ。問題ないはず。
あとは、魔法陣か……。
「……あー……はははっ。リンゼイ先生はいつからそこにいたのですか?」
「──さっき来たばかりだよ……」
それなら俺が魔法を使う所を見てなかったよな?
リンゼイは俺に微笑んだ。
「上級魔法が使えたんだね。驚いた」
上級魔法を使っていた事に驚いていたようで、魔法陣が無い事に気付いていないみたいだ。地面に書いていたとでも思ってくれたか?
「はい。火魔法は得意なので僕は上級が使えるんです。じゃあ……僕はもう行きますので──」
気にした様子も、追及される事も無さそうだ。ホッと胸を撫で下ろす。
下手に話して墓穴を掘る前にさっさと退散するに限る。
けれど、リンゼイは俺を退散させてくれなかった。
「待って。ディノ・バスカルディ」
心臓がウサギみたいに飛び跳ねた。
リンゼイの目の前で声を掛けられて思わず足を止めた。
俺を真っ直ぐに見るリンゼイに囚われて動けない。
「ところで、君はこれから街に行ってケーキを食べるつもりなのかい?」
そこか……独り言聞かれてた……。
「そ、そんな事言ってましたか?」
「言っていたよ。はっきり聞こえてた」
俺のバカ。独り言大きすぎだろ。
この調子じゃ街へ行けなそうだ……。
「夜間外出の他に、外に出るにも許可証がないと学園の外に出られないのは知ってるよね?」
え? そうだったか?
説明あったかな……。
エルドは出入り自由だったから気にしていなかった……。
「そのまま出ていこうとすれば、学園の出入り口にある結界で弾かれるよ。すぐに先生方に知らせが行って減点される」
それは困る! 減点されたら卒業どころか進級も危うい。
「でも──私も連れて行ってくれるなら、私の付き添いとして外に連れて行ってあげてもいいよ」
笑顔でそんな事を言われた。
リンゼイもケーキを食べたかったのか?
あまり関わるのは良くない。
断るべきなんだけれど──。
「ケーキだけじゃなく、シュークリームも食べたいと思わないかい?」
シュークリーム!
カスタードと生クリームがたっぷり入ったシュークリームは大好きだった。
あれも美味しかったんだよな。
「た、食べたいです……」
俺は食欲に負けた。
脳内は甘いものに支配された。
リンゼイといるのは今だけだ……今だけならなんの問題もないよな……。
「それなら一緒に行こう。美味しい洋菓子店を知ってるんだよ」
優しく笑うリンゼイに胸の奥が疼いた気がした。
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