大魔法使いは二度目の人生を〝普通〟に楽しみたい

おみなしづき

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入学後

甘い記憶と儚い夢 ①

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 街は日も落ちる頃だというのに賑わっていて、すれ違う人達がみんな楽しそうに見えた。
 キョロキョロと落ち着きなく周りを見てしまう。
 すると、リンゼイにガシッと手を掴まれた。

「ディノ。そっちじゃない。迷子になる」
「あ……すみません」

 手を繋がれたまま、ズンズンと歩かれた。

「あの……先生……」
「なに?」
「手……」
「離したらどこかに行ってしまいそうだから──」

 確かに迷子になりそうだったけど……でも、リンゼイに触れられるのは嫌だ。
 リンゼイが先に歩いていて良かった。顔が赤いのがバレない……。
 手から俺の体温が伝わってしまわないようにと願う。

 嫌なんだ……嫌なのに……手を離したくない……。

 そんな事を思っていれば、急にパッと手を離された。
 触れ合っていた手のひらに空気が触れるとやけにひんやりとした。

「さぁ、ここだよ」

 リンゼイが洋菓子店のドアを開けてくれて店の中へ入る。
 店員さんに案内された席に対面して座った。
 リンゼイを直視できない。

「ディノは、ケーキとシュークリームでいい? 他には?」
「い、いいです。それで」
「金平糖もあるけど──」
「金平糖!?」

 大好きだ!

 思わず顔を上げた俺にリンゼイはクスクスと笑った。照れ臭かった。

 金平糖は、リンゼイが買ってきてくれるお土産の一つにいつもあった。
 爪ぐらいの大きさで、日持ちもするし、甘くて美味しい。無数にある棘のような物が星みたいで可愛い。
 夜空に輝く星を食べている気分になって楽しくなる。
 料理人は凄い!
 星を食べるなんて魔法使いにだってできはしない。

 エルドだった時、魔道具を作っていて両手が塞がっていると、リンゼイがそのまま口に入れてくれた。
 リンゼイの指が偶然俺の唇に触れると、リンゼイが顔を赤くした。

『て、手が空いたら自分で食べてね』
『リンゼイ、もっと欲しい』

 あーんして大人しく待つ。

『仕方ないなぁ……』

 わざとリンゼイの指にキスしながら、パクリと甘い金平糖を食べる。
 真っ赤になるリンゼイが可愛くて、時々やらせたのを思い出す──。

「ここの金平糖はね、三色に変化する。味は口に入れた時のものになるよ」
「イチゴかレモンかメロンですよね!」

 どれも美味しいんだ!

「ふふっ。知ってるんだね。それも頼んであげよう」
「はい!」

 メニューを頼んで少しすると頼んだ物が運ばれてきた。美味しいケーキに舌鼓を打ちながら、リンゼイと話す。

「そのケーキで良かった?」
「はい。これ、大好きです」

 生クリームに小さな角切りにされた果物がたっぷり乗ったフルーツケーキだ。
 果物は、風魔法で均一に刻むので形は綺麗だ。
 久しぶりに食べたけれど、相変わらず美味しい。

「エルドもそのケーキ、大好きだったよ」

 サラリと言われた言葉にドキリとする。

「そうなんですね……」
「ああ。その一口シュークリームも金平糖も……エルドの好きな物ばかりだ……」
「ぐ、偶然ですね! 大魔法使いと味覚が似るなんて嬉しいなぁ!」

 リンゼイは、穏やかに笑った。
 上手く誤魔化せたんだよな?

 その後は、リンゼイとケーキを食べて笑い合う。
 昔に戻ったみたいな気持ちに嬉しさが湧く。こんなに穏やかな時間が過ごせるとは思っていなかった。

 俺は今、エルドじゃない。
 ディノ・バスカルディとして、リンゼイに接するのは悪いことなのか?
 俺は大魔法使いでもない。一生徒としてそばに居てもいいんじゃないのか?

 そんな事ばかり考えてしまっていた。
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