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本編
助けてくれたのは
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※少しの暴力シーンがあります。苦手な方はご注意を。
──────────
ふと馬乗りになっていたやつが視界から消えて床に倒れた。
誰かがそいつを引き離してくれたようだった。
「兎和ぁ? 俺の名前呼んでくれて超嬉しいよぉ。もう大丈夫だからねぇ」
「紫狼……!」
見上げれば、ニッコリ笑った紫狼だった。
紫狼の顔を見たら泣きそうだった。
来てくれた……!
紫狼は、周りの奴らを見回して目を細めた。
「オレぇ……今ぁ、めちゃくちゃ怒ってるからねぇ」
俺の事を押さえ込んでいたやつらを次々に蹴り飛ばしてくれた。
蹴られてうずくまるやつらの腹にさらに蹴りを入れる。
ゴホゴホと咳き込んで痛そうだ……。
「な、なんで紫狼さんが……」
「奴隷を助けることなんてなかったでしょう……」
「オレはぁ、誰が何しようが関係ないけどぉ、兎和は別ぅ」
周りの奴らがザワリと騒つく。
紫狼の圧倒的な存在感でみんな動けなかった。
そんな中で、ぴょこっとこちらに飛び出してきたのは羊助だった。
後から鷲也もやってきた。
「あははっ。紫狼ここまで来るのすごく早かったね」
「羊助……」
「出遅れです。私達の出番、なさそうです」
「鷲也も……」
こんな時に来てくれるだなんて感動だ。
三人に感謝しかない。
紫狼は、媚薬を俺に飲ませた可愛らしい子にニッコリ笑顔を向けて指差した。
「そこのぉ、天野千鹿君。脱いでぇ、ここにいるやつら全員にやられるってどうかなぁ?」
「え……」
紫狼は、笑顔から一転して千鹿と呼ばれた子を鋭く睨みつけた。
こんな顔の紫狼を見るのは初めてだ。
「聞こえたろ? 早く脱げよ。兎和と同じ目に遭わせてやる」
いつもの、のほほんとした紫狼では考えられない口調だった。
今にも飛びかかって来そうな野生の獣を思わせて恐ろしい。
直接睨まれている千鹿は、もっと怖いのだろう。
ビクッと怯えてポロポロと泣き出す。
「はぁ? 始まってもいないのに泣くなよ。泣きたくなるのはこれからだ。お前ら、早くやれよ。オレが許す」
周りで見物していたやつらが千鹿を取り囲む。
「う、嘘でしょ……?」
「話違うじゃん。紫狼さんに睨まれるなんて聞いてないけど」
「あっちの綺麗な人のがいいけど、紫狼さんのお気に入りはまずいって」
「紫狼さんが許すって言ってるし、お前でもいいよ」
紫狼は、悪そうな人達から一目置かれているみたいだ。
千鹿は、俺と同じように引き倒されて脱がされて行く。
「あははっ、紫狼マジギレだね」
羊助が面白そうに笑っているけれど、笑い事じゃないと思う。
「寝起き以上に厄介です」
鷲也も止める気配がない。
俺の気持ちを味わえとは思うけれど、押さえつけられて泣きじゃくる姿に同情してしまった。
あんな事されるのは辛かったから……。
「し……紫狼! もういい!」
思わず叫べば、紫狼は俺を見てニッコリ笑った後に、千鹿に近づいてしゃがみ込んだ。
周りにいたやつらもピタリと止まる。
半裸でプルプルと震える千鹿の姿が痛々しい。
紫狼は、千鹿の髪をガシッと掴んで目線を合わせる。
「お前さ、今誰に助けられたのかしっかり覚えておけよ。兎和が止めなきゃ死にたくなるまでやらせてたからな」
「は……はい……」
「兎和に謝れよ」
「ご、ごめんなさい……」
千鹿は、恐怖で震えていた。
可哀想な気さえする。
本気で怒った紫狼ってこんなにも怖いんだ……。
「もういいから……」
紫狼は俺の言葉を聞いて、千鹿を離して立ち上がると、その場にいた全員を見据える。
「よぉく聞いて欲しいんだけどぉ。次、兎和に手を出したやつはぁ──家ごと潰すぞ」
最後の紫狼の低い声に、みんなが青ざめる。
「って事でぇ、オレ達を敵にしてもいいってやつだけ残ってぇ。はい、かいさぁん」
紫狼の掛け声で、その場にいた奴らは倒れている奴を担ぎながら、みんな多目的ホールから出て行った。
さっきまでの出来事が嘘みたいに静かになる。
そこでやっと自分は助かったんだと実感できて、ホッと息を吐き出した。
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ふと馬乗りになっていたやつが視界から消えて床に倒れた。
誰かがそいつを引き離してくれたようだった。
「兎和ぁ? 俺の名前呼んでくれて超嬉しいよぉ。もう大丈夫だからねぇ」
「紫狼……!」
見上げれば、ニッコリ笑った紫狼だった。
紫狼の顔を見たら泣きそうだった。
来てくれた……!
紫狼は、周りの奴らを見回して目を細めた。
「オレぇ……今ぁ、めちゃくちゃ怒ってるからねぇ」
俺の事を押さえ込んでいたやつらを次々に蹴り飛ばしてくれた。
蹴られてうずくまるやつらの腹にさらに蹴りを入れる。
ゴホゴホと咳き込んで痛そうだ……。
「な、なんで紫狼さんが……」
「奴隷を助けることなんてなかったでしょう……」
「オレはぁ、誰が何しようが関係ないけどぉ、兎和は別ぅ」
周りの奴らがザワリと騒つく。
紫狼の圧倒的な存在感でみんな動けなかった。
そんな中で、ぴょこっとこちらに飛び出してきたのは羊助だった。
後から鷲也もやってきた。
「あははっ。紫狼ここまで来るのすごく早かったね」
「羊助……」
「出遅れです。私達の出番、なさそうです」
「鷲也も……」
こんな時に来てくれるだなんて感動だ。
三人に感謝しかない。
紫狼は、媚薬を俺に飲ませた可愛らしい子にニッコリ笑顔を向けて指差した。
「そこのぉ、天野千鹿君。脱いでぇ、ここにいるやつら全員にやられるってどうかなぁ?」
「え……」
紫狼は、笑顔から一転して千鹿と呼ばれた子を鋭く睨みつけた。
こんな顔の紫狼を見るのは初めてだ。
「聞こえたろ? 早く脱げよ。兎和と同じ目に遭わせてやる」
いつもの、のほほんとした紫狼では考えられない口調だった。
今にも飛びかかって来そうな野生の獣を思わせて恐ろしい。
直接睨まれている千鹿は、もっと怖いのだろう。
ビクッと怯えてポロポロと泣き出す。
「はぁ? 始まってもいないのに泣くなよ。泣きたくなるのはこれからだ。お前ら、早くやれよ。オレが許す」
周りで見物していたやつらが千鹿を取り囲む。
「う、嘘でしょ……?」
「話違うじゃん。紫狼さんに睨まれるなんて聞いてないけど」
「あっちの綺麗な人のがいいけど、紫狼さんのお気に入りはまずいって」
「紫狼さんが許すって言ってるし、お前でもいいよ」
紫狼は、悪そうな人達から一目置かれているみたいだ。
千鹿は、俺と同じように引き倒されて脱がされて行く。
「あははっ、紫狼マジギレだね」
羊助が面白そうに笑っているけれど、笑い事じゃないと思う。
「寝起き以上に厄介です」
鷲也も止める気配がない。
俺の気持ちを味わえとは思うけれど、押さえつけられて泣きじゃくる姿に同情してしまった。
あんな事されるのは辛かったから……。
「し……紫狼! もういい!」
思わず叫べば、紫狼は俺を見てニッコリ笑った後に、千鹿に近づいてしゃがみ込んだ。
周りにいたやつらもピタリと止まる。
半裸でプルプルと震える千鹿の姿が痛々しい。
紫狼は、千鹿の髪をガシッと掴んで目線を合わせる。
「お前さ、今誰に助けられたのかしっかり覚えておけよ。兎和が止めなきゃ死にたくなるまでやらせてたからな」
「は……はい……」
「兎和に謝れよ」
「ご、ごめんなさい……」
千鹿は、恐怖で震えていた。
可哀想な気さえする。
本気で怒った紫狼ってこんなにも怖いんだ……。
「もういいから……」
紫狼は俺の言葉を聞いて、千鹿を離して立ち上がると、その場にいた全員を見据える。
「よぉく聞いて欲しいんだけどぉ。次、兎和に手を出したやつはぁ──家ごと潰すぞ」
最後の紫狼の低い声に、みんなが青ざめる。
「って事でぇ、オレ達を敵にしてもいいってやつだけ残ってぇ。はい、かいさぁん」
紫狼の掛け声で、その場にいた奴らは倒れている奴を担ぎながら、みんな多目的ホールから出て行った。
さっきまでの出来事が嘘みたいに静かになる。
そこでやっと自分は助かったんだと実感できて、ホッと息を吐き出した。
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