32 / 69
うらにわのこどもたち2 それから季節がひとつ、すぎる間のこと
世界の断片・1
しおりを挟む
青。
青。青。青。
無機質で、透明な、青い光。
沢山のモニターから発せられるそれの中で、沢山の世界が蠢く。
暗闇を青く照らすモニターを、二つの影が見守っていた。
「この……が……?」
片方が片方に問いかける。影達の会話は、くぐもったようでよく聞こえない。
「……、……は…………」
「どうかな。でも…………」
初めに問いかけた方の影が頷く。
その時、低い電子音が鳴った。二つの影が一つのモニターを注視する。
「……、行ってきます」
片方が部屋を出ていく。それを見送って、もう片方は再び、モニターへと注意を戻す。
先程のモニターが映し出した部屋で、ひとりの実験体が泣いている。
「……なさい、ごめんなさい……ゆるしてください……ゆるしてください……」
影は足元に土下座する実験体を見つめる。片手には大振りのマチェットナイフを持って。
「■■になれそうですか?」
影は聞く。その瞳に、憐れみも同情も無い。
「ごめんなさい……! ご、ごめんなさい……!」
「■■になれそうですか?」
もう一度聞いてみたが、実験体は泣きながら謝ることを止めない。床に頭をこすりつけてぶるぶると震えている。仕方なく実験体に触れようとすると、実験体は酷く怯えた。
「い……やだ……いやだ……! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、おねがいします、ゆるしてください、やめてください……! しにたくない、しにたくない、しにたくない……っ……!」
ああ、駄目だ。これは■■になれない。影は実験体に見切りをつけた。また失敗だ。足元で実験体はまだ何かを言っているが、もう何を言っているのか分からない。
「……天にいます我等の父よ、願わくば罪深き我等を赦したまえ」
影は祈りの言葉を唱えながら、赦してはくれないだろうなと思った。いつか裁きを受ける日が来る。
自分はそれでもいい。けれどどうか。
祈り終えた影は、実験体にナイフを振り下ろした。
最初から最後まで、影が実験体を憐れむことはなかった。
青。青。青。
無機質で、透明な、青い光。
沢山のモニターから発せられるそれの中で、沢山の世界が蠢く。
暗闇を青く照らすモニターを、二つの影が見守っていた。
「この……が……?」
片方が片方に問いかける。影達の会話は、くぐもったようでよく聞こえない。
「……、……は…………」
「どうかな。でも…………」
初めに問いかけた方の影が頷く。
その時、低い電子音が鳴った。二つの影が一つのモニターを注視する。
「……、行ってきます」
片方が部屋を出ていく。それを見送って、もう片方は再び、モニターへと注意を戻す。
先程のモニターが映し出した部屋で、ひとりの実験体が泣いている。
「……なさい、ごめんなさい……ゆるしてください……ゆるしてください……」
影は足元に土下座する実験体を見つめる。片手には大振りのマチェットナイフを持って。
「■■になれそうですか?」
影は聞く。その瞳に、憐れみも同情も無い。
「ごめんなさい……! ご、ごめんなさい……!」
「■■になれそうですか?」
もう一度聞いてみたが、実験体は泣きながら謝ることを止めない。床に頭をこすりつけてぶるぶると震えている。仕方なく実験体に触れようとすると、実験体は酷く怯えた。
「い……やだ……いやだ……! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、おねがいします、ゆるしてください、やめてください……! しにたくない、しにたくない、しにたくない……っ……!」
ああ、駄目だ。これは■■になれない。影は実験体に見切りをつけた。また失敗だ。足元で実験体はまだ何かを言っているが、もう何を言っているのか分からない。
「……天にいます我等の父よ、願わくば罪深き我等を赦したまえ」
影は祈りの言葉を唱えながら、赦してはくれないだろうなと思った。いつか裁きを受ける日が来る。
自分はそれでもいい。けれどどうか。
祈り終えた影は、実験体にナイフを振り下ろした。
最初から最後まで、影が実験体を憐れむことはなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる