うらにわのこどもたち

深川夜

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うらにわのこどもたち2 それから季節がひとつ、すぎる間のこと

世界の断片・1

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 青。
 青。青。青。
 無機質で、透明な、青い光。

 沢山のモニターから発せられるそれの中で、沢山の世界がうごめく。
 暗闇を青く照らすモニターを、二つの影が見守っていた。

「この……が……?」

 片方が片方に問いかける。影達の会話は、くぐもったようでよく聞こえない。

「……、……は…………」
「どうかな。でも…………」

 初めに問いかけた方の影が頷く。
 その時、低い電子音が鳴った。二つの影が一つのモニターを注視する。

「……、行ってきます」

 片方が部屋を出ていく。それを見送って、もう片方は再び、モニターへと注意を戻す。


 先程のモニターが映し出した部屋で、ひとりの実験体が泣いている。

「……なさい、ごめんなさい……ゆるしてください……ゆるしてください……」

 影は足元に土下座する実験体を見つめる。片手には大振りのマチェットナイフを持って。

「■■になれそうですか?」

 影は聞く。その瞳に、憐れみも同情も無い。

「ごめんなさい……! ご、ごめんなさい……!」
「■■になれそうですか?」

 もう一度聞いてみたが、実験体は泣きながら謝ることを止めない。床に頭をこすりつけてぶるぶると震えている。仕方なく実験体に触れようとすると、実験体は酷く怯えた。

「い……やだ……いやだ……! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、おねがいします、ゆるしてください、やめてください……! しにたくない、しにたくない、しにたくない……っ……!」

 ああ、駄目だ。これは■■になれない。影は実験体に見切りをつけた。また失敗だ。足元で実験体はまだ何かを言っているが、もう何を言っているのか分からない。

「……天にいます我等の父よ、願わくば罪深き我等を赦したまえ」

 影は祈りの言葉を唱えながら、赦してはくれないだろうなと思った。いつか裁きを受ける日が来る。

 自分はそれでもいい。けれどどうか。

 祈り終えた影は、実験体にナイフを振り下ろした。
 最初から最後まで、影が実験体を憐れむことはなかった。
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