幼女救世主伝説-王様、私が宰相として国を守ります。そして伝説へ~

琉奈川さとし

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魔族大戦

第百四十四話 ストラトフォード要塞戦③

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 私はナターシャと共に、ストラトフォード要塞で砲兵の視察をしていた。ナターシャがあれこれ指導したおかげで、砲撃の効率化が進む。事態が好転している中で、現在の要塞防衛戦の戦況が気になった。だって、外の陣地にいても全体の状況が把握できないし。

 ということで、私はナターシャにこれからのことを相談する。

「ねえ、ナターシャ。このまま、砲兵の指導をする? それとも、一回、要塞を指揮しているジェラードのもとに戻る?」
「わたくしは、ここにいますわ。だって、砲撃の弾道計算は、専門の知識が必要ですもの。この、素人砲兵たちでは心配ですわ。私が開発したせっかくのカノン砲が台無しですもの!」

「はいはい、一応護衛の兵を少し置いていくけど、怪我しないでね。戦場だからなにかあるかもしれないし」
「大丈夫ですわ! わたくしは天下無敵の無想転生のロリータ伯爵ですのよ! そこら辺のロリータと一緒にしないでほしいですわ!」

 そこら辺のロリータと、ロリータ伯爵は違うみたい、良くわからないけど。現在ロリータ、実年齢60以上より。まあそういうことで、いったんジェラードが指揮している広間に私は戻った。

「ねえ、ジェラード。戦況はどうなっているの?」
「五分五分だな、先ほどから砲撃の効果が急に上がって、相手が集まっているところに命中しだしているようだ。魔族たちは混乱を始めている。ただ……決め手がない」

「決め手がない?」
「ああ、本来なら要塞戦において好ましい状況なのだが、我々には物資がない。このままずるずると決着がつかないまま戦況が膠着状態になると、我々は飢え死にだ。なんとか短期に相手を追い払えればいいのだが……」

「ねえいっしょに、戦っている現場を見に行かない? 何か打開できるヒントになるかも」
「……それも手だな。このまま流されるまま、我々が負けるのは不本意だ。おい、ここの指揮を任せる。作戦士官たちは私についてこい!」

「はっ!」

 と、ジェラードは副官に指揮権を預けて、私と一緒に各現場の視察へと向かった。これは要塞戦で、膠着状態だからできることだ。ふつうは指揮官が前線に向かうのは危ないからね。

 私たちが正門に向かう廊下で、窓から火縄銃アーキバス兵がせっせと銃撃を行っていた。見ると、敵の魔族に命中すれば、うめいているようで、行動が制限され動揺を与えている。

 ジェラードはここの現場を任されている、銃歩兵隊長に状況を尋ねた。

「ここらへんの調子はどうだ?」
「はっ、ジェラード司令官! 我々は現在、魔族たちに銃弾を浴びせており、倒すまではいきませんが、行動を制限し、傷が深い敵は戦線を離脱していきます」

「そうか、銃撃では倒すまではいかないが、かなり効果があるようだ。音の効果で相手の士気をさげ、戦闘不能にできれば、十分だ。このまま、敵を寄せ付けないよう、正門方面を援護してくれ」

「はっ!」

 ふむ、銃撃は有効か。でも、もっと戦果が欲しいな。こればっかりは技術開発に任せるしかない。ナターシャがいることだし、戦争中に銃を改良したい。

 正門にたどり着くと、パイク兵の一番前が槍を前にそろえて出し、次の小隊からは槍の切っ先を斜め方向に敵側に向けて、隙間なく槍の壁を作っている。相手の頭を叩いていき、陣形が崩れた場合、倒れたやつには槍で突き刺している。

 ジェラードは満足げに笑みを浮かべながら、この正門を任されている旅団長に尋ねた。

「正門はどうだ、問題ないか?」
「はっ、司令官殿! 現在われわれは魔族と交戦しながらも、一歩も引かず、また銃や砲撃の援護のおかげで、突破をされることは今のところはないでしょう。時と共に奴らの死体が増えて行くのが、我々の部隊兵たちの心を鼓舞しております!」

「よくやっている! このまま励め」
「ははっ!」

 正門はばっちしか。ふむふむ。今度はのこり一つしかない東門を任されている旅団長のもとに向かう。どうやら、ここでは押されているらしく、長く曲がりくねった東門に入る城壁が備わった通路を突破されてしまい、要塞の東門ギリギリまで押し込められている。

 戦況を苦々しく思ったジェラードは彼らを鼓舞した。

「このままだと、突破されかねんぞ! この戦いは諸君らの奮闘にかかっている。今が粘り時だ!」
「おお!」

 兵たちは声をあげて応える。少し安心したジェラードは改めて旅団長に尋ねた。

「戦況はどうだ。何か問題が起こっているのか?」
「はっ! 実は東門の通路を守る門が勢いのまま突破されてしまい、徐々に要塞東門まで押し込まれてしまいました。東門までの通路は城壁に囲まれていても天井がないため、空から女魔族が飛んできて襲われ、被害が増えてしまいました。

 しかし、ここ東門近くでは要塞内部のため飛兵は手出しできず、パイク兵を中心に、細長くなって連なっている敵を十分に食い止めています。時間とともに、敵の勢いも収まるでしょう」

「そうか、決して一兵たりとも敵を中に入れるな、よいな!」
「ははっ!」

 ふーむ東門は敵の対処に苦労しているようだ、こまったなあ。他の場所も見て回って私たちは広間に戻り、戦況を整理した。

「どうやら、東門以外は上手くいっているようね、ジェラード。屋上も飛兵たちを銃撃援護のもとうまく食い止めているし」
「だがミサ、先ほど言った通り、決め手がない。このまま長期戦は困る。どうしたものか……」

 私たち広場の作戦本部は頭を悩ます。この様子を見ていたパステルは私に尋ねた。

「あれ、ミサ様、軍事のことは全くわからないんじゃないんですか?」
「ふっふっふ、実は……。最近は軍事のことをわざと知らないふりをしていたのよ!」

「はい?」

「私だって、前にカールトン会戦を経験しているし、要塞戦だって経験してる。馬鹿じゃないもの。ひそかに、軍事のことを調べていたのさ!」

 じゃじゃーん! と私は両手を腰に当て、胸を張る。あきれた様子でミリシアは私に言った。

「何で知らないふりをしたの?」
「敵をだますにはまず味方からってね! 敵を油断させるためよ!」

「……宰相がそんなことする必要ないでしょ」
「うっ……」

 鋭いツッコみに私は思わず沈黙してしまった。いや、その……。パステルは私の様子を見て、右ポケットに入れていた私の本を取りあげた。

「ミサ様、この本なんです? ……モテない女が男にモテるコツ大全! これで貴女も大好きな男性をゲット!」
「……」

 ミリシアやジェラードが沈黙し、私はあわてて、パステルが奪った本を取り返そうと「返して! 見ないでー!」と言うが、ミリシアとパステルはモテ女大全を朗読し始めた。

「第一、男の前では知らないふりをすること。男の人は女性に頼られるのが好き! わざと私は馬鹿なんですーってふるまうことが、男性にモテるコツ!」
「第二、男性の顔を立てること! 好きな男性には積極的に質問して、気持ち良くしてあげよう! そうすればモテない貴女でも、意中の男性が振り向いてくれるはず……」

「……」

 私が硬直状態になっている間どんどん秘密が暴かれていく。ミリシアとパステルは涙ながらに私を慰めた。

「ミサ、最近ウェリントン陛下と会ってないもんね。ジェラードさんとも会う機会少なかったし」
「男に餓えてたんですね……」

「うるさい!」

 と、その本を奪い返し、大事にポケットにしまう。いいじゃんか! モテてもさあ! こっちは60年も男がいなかったんだよ! この世界に来てモテ期が来たんだから頑張ってんだよ、こっちは! ぷんぷん!

 私が咳払いをして、気を取り直してジェラードに言った。

「ねえ、私にアイディアがあるんだけど」
「……なんだ?」

「東門へ通じる通路を砲撃で破壊したらどうかしら? あそこは城壁の中で魔族たちが長い列を連ねているし、東門への攻撃を封じる意味で、通路一帯をこっちから砲撃しましょう。それで正門のはね橋を上げて、いったん要塞を封鎖するの。

 そうすれば敵の歩兵は険しい山を登ってこないといけなくなるから、攻めにくくなる。そいつらを砲撃と銃撃していけば、敵だってすぐにあきらめるわ!」
「ふむ……、しかし、あの狭い通路を砲撃できるほどの技術が我が砲兵にあるだろうか?」

「それはナターシャに任せておけば大丈夫。私が見た限り彼女は頼りになるわ。学者だし。砲兵たちを指導していけばこっちへの流れ弾もほとんどなしで可能だと思う」

 私の提案にジェラードは悩みだす。周りは私のアイディアに明るい兆しを感じたのかうなずき始めた。しかし、パステルは違った。

「ミサさま、それ良い案だと思いますけど、自ら退路を断つんですよね。補給面でどうするんです? ただでさえ物資が少ないのに……」
「え……?」

 あっ、そこまで考えてなかった。私の表情を見てパステルは笑顔で慰め始めた。

「ミサさま、素人の生兵法ですよ。私たち役立たずは余計なことを考えず皆を応援していましょう」
「ううう……」

 いいアイディアだと思ったんだけどなあ。みんなが落胆する中、ジェラードだけは違ったようだ。

「いや、それで行こう!」
「えっ、だって、補給が……」

「違う、それは我々にとってのことだ、敵にとってではない」
「どういうこと?」

「敵がこっちの物資状況なんて把握するのは今の時点では不可能だ。奴らにとっていきなり我々自ら退路を断ったとなれば、相手はこっちが長期戦を見据えて、要塞にこもると見るだろう。

 長期戦の準備をしていないだろう、魔族たちはすぐさま撤退を考える可能性がある」
「なるほど……」

 広間に活気が戻ってきた、ジェラードがすぐさま指示をして、作戦準備を整える。ミリシアが私に向かってほめ始めた。

「さすがだわ、貴女もジェラードも。これで上手くいけば、世紀の奇策になるわ」
「そんな、まだわからないよ……」

「大丈夫、きっと上手くいく」

 そうだといいんだけど……。作戦を実行すると、うまく砲撃が東門へと導く通路を壊し、相手に甚大な被害をあたえた。こうして我が軍は要塞を逆封鎖することに成功した。

 敵たちが攻め手にあえぎ、もっぱら屋上で我々が飛兵たちを追い払い、また敵陣地へ砲撃を加えていく。昼頃も過ぎ夕暮れごろ。状況が急変した。

 伝令がジェラードのもとに報告に来たのだ。

「司令官閣下! 敵が攻撃をやめました!」
「ついに来たか!」

 私たちは敵があきらめたと思って、安心の声を漏らす。そんななか、他の伝令が現れた。

「司令官閣下! 敵が閣下を呼んでいます!」
「なんだと!?」

 私たちは状況を把握するため、正門へと急ぐ。敵の方を見ると、レクスたちの上司、ブルッツェン隊長だった。彼は大きな犬に騎乗して大声で私たちに語り掛けた。

「そなたが司令官か! おお、ミサ殿も一緒のようだな、私はブルッツェン! 司令官、名を名乗れ!」
「私はジェラード・オブ・ブレマー! 何用だ!」

「諸君らの奮闘見事である! 東門を封鎖するとは恐れ入った。諸君らに敬意を表して我が軍は今は撤退する。今回の決着は次に預けようぞ!」
「ほう、魔族軍にも骨のある将がいると見える! 諸君らの作戦も見事であった! だが我が軍の方が一枚上であった!」

「ふん、ぬかしおる。若造が。いいだろう、貴様の名を覚えたぞ、ジェラード! 次も戦場で相まみえようぞ。さらば!」

 ブルッツェン隊長がそう言って、魔族軍の撤退を命じ、私たち要塞側の兵たちが勝ち鬨をあげた。

「ジェラード! ジェラード! ジェラード・オブ・ブレマー!」
「おおっ! 我がテットベリー軍に敵はなし!」

 あたりが歓声に包み込まれる。そんななか、ジェラードは優しい顔で私に告げた。

「お前のおかげで、無事危機を切り抜けることが出来た。ありがとう、ミサ」
「そんな……私は、思いついたアイディアを言っただけで……」

「それでいいんだ。軍人にわからないことが第三者から見ると気付いてしまうことがある。これからも遠慮なく私を支えてくれ」

「……うん!」

 その言葉と共にに私はジェラードに抱き上げられ、肩に乗せられて、全員で勝利を喜んだ。やっほーい! こうして、私たちは要塞防衛に成功したのだった。ふう、何とか切り抜けたよ。
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