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世界統一編
第八話 同盟調印式
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私たちは順調に同盟の手続きが済み、ウィリアムフォード宮殿での調印式が始まり、私とネーザン王ウェリントンとリッチフォード王とその他、上流貴族たちが集まった。
「こたび、隣国の安寧の、ひいては魔族の侵略に備えるネーザン王の志に同意いたす」
と、まずはリッチフォード王から話しかけた。儀礼で王位に上下の差がない場合、王位についているのが長いほうから話しかけるというのが礼儀らしい。
「リッチフォード王の大海のごとき器の大きさと、その治世のおける、領国の平和は隣国の私から見て、まことにご参考にさせていただいており、ネーザン国の手本としております」
こんどはウェリントンが答える。長年玉座に座っていたリッチフォード王を慇懃に讃え、また、それでいて自国をおとしめないよう気品のある答えかたをした。やはり王となるべき人は器が違うなあ。リッチフォード王はそれに対し大笑いをした。
「何を言うか、わしなど長年王座に居座っただけだ。そなたが即位してからの風聞を聞いて驚いたわ。さきの故き国王の良い部分は受け継ぎつつも、変えるべきところは変え、それでいて柔軟に、不満分子をなだめすかしておる。ネーザン国は良い王に恵まれた」
「良い臣下に恵まれておりますので」
そう言ってウェリントンはいきなり私の肩を抱いた。ちょっ、やめて、照れるじゃない……! もうウェリントンったら、やたら私にボディタッチするんだよなあ。こっちの文化は親しい相手には行動で表現するらしいけど、日本人の私にはドッキドッキだよー。
「そうじゃな、ネーザン宰相は良い仕事をした、流石は救世主じゃ。その言葉にふさわしい活躍よ。
しかし、それにしても聞いたぞ、ネーザン王。わしの跡継ぎをわしのスタンリーの息子、孫のハリーとして後援すると布告してもらったそうな、ありがたい話じゃ、もう思い残すことはない」
「何をおっしゃいます、ハリー殿下のためにもリッチフォード王にはもっと長生きしていただかないと」
「そうじゃな、はっはっは……」
二人のやり取りにそろそろ頃合いと見て外務大臣のボルトンが調印書類一式を用意し、両国は同盟調印を済ました。湧き上がってくる拍手。そして二人が調印を終えると、皆が喜びの声を上げた。
「リッチフォード王万歳、ネーザン王万歳、両国に平和を!」
何と華やかな場、一般の日本人では絶対にこの目で観ることができない光景だよー。うわー私、歴史に立ち会っちゃったよ、極楽に行った後自慢しよう。
そして晩餐会、待ってました! ずらりと並べられた豪華な食事の数々、現実の中世西洋だと土地が貧しく、手づかみで食べてるのをアメリカドラマで見たことあるけど、この世界じゃあ土地が豊かなんだなあ。
しかも料理が美味い。テレビバラエティーで見たけど中世ヨーロッパはすごいメシマズだったらしい。この世界に来てよかったー。
これは、雌鶏のロースト、こんがり姿焼きにされた料理にナイフを入れるとじわーと肉汁がわき出てきて食欲がそそる。
ナイフで切り分けて、口に運ぶとニワトリの肉の風味と香辛料が広がって、パリパリの皮の食感に、鶏肉の旨味たっぷりの、肉の甘さが噛めば噛み占めるほど味が出てくる出てくる、これがワインと合うんだよなあ。
一応言っとくけど、私は今幼女だけどこういう場なので、飲酒は見逃すように、異世界だし。
子羊のカツレツを切り分けると、羊肉独特の風味のあるにおいが立ち込め、桃紫色の肉の色、食欲がそそりまくり!
口に運ぶと、牛肉とは違うヘルシーな口触りに爽やかなオリーブオイルの立ち込める味、噛めば噛むほど独特の、羊肉の美味しさがうまい! こってりせず、爽やかな肉の甘味にチーズのほろ苦さが口の中でまじわって、ああ草原の味がするって感じがする。
これもワインに合う―、うまーい。うまいよー、し・あ・わ・せ。
私が食事を楽しんでいると、大事な友達のメアリー姫が側に寄ってきて話しかけてきた。
「ヤッホー楽しんでるー?」
「ほへ!? メアリー姫? どうしたの」
「だって同盟締結、目出たいじゃない、リッチフォードとは歴史上何度も争っていたというのに、貴女の活躍で新しい歴史が開かれたのよ。そりゃあ、友達の私も鼻が高いじゃない? 飲まずにいられますか」
そう言って、濁りグラスに入れたワインを飲んで、足りなくなるとそこら辺から酒瓶を取って飲みまくっていた。うわっめっちゃ酔ってる。酒癖悪いなあメアリーは。
「もう、みんな貴族たち貴女の話題で持ちっきりよ、それはもう私に貴女の事、いっぱい話聞いてきて、もう楽しくて、楽しくてたまらない。ああ愉快だわあ。あの鼻持ちならない貴族たちが幼女の尻に敷かれているなんて、なんて気分がいいのかしら、ほほほ」
「ははは……」
なんかメアリーちょっと屈折してるけど、まあでもねえ、姫さまってストレスたまるんだろうなあ。昔、憧れていたけど現実の実情は厳しいみたい。
「あ、そうそう、ミサ、貴女に話があったんだった、明日時間作ってくれない?」
「え、なになにどうしたの?」
「小説書くって約束したじゃない? 試しに短編書いてみたから感想聞かせてよ」
「はやいね、やる気すごいね、感心するなあ」
「うんうん、おねがいねー」
会場を千鳥足で、メアリーがふらふらとそこらへんをうろついているけど大丈夫か、姫様。ということで、私は貴族たちと社交界をそれなりに済まして、晩餐会を後にした。ウェリントンはリッチフォード貴族たちと忙しそうだしね、王様は大変だ。
次の日、私は執務室で仕事をした後、昼休みにメアリーがやって来て、お茶会だ。そこでメアリーが書いた小説を見せてもらった。もちろんこの世界の文字が私は読めるし、現地語を話しているらしい。
何故だかはわからない、阿弥陀様のご縁にあずかったので、サービスしてくれたのかな。現地で言葉通じないとか、ルナティック超える難易度になるし。
そして、小説を私は読み終わった後、紅茶を飲み、一休みして黙っていたから、メアリーは恐る恐る私に聞いてきた。
「……どう?」
「……あの、その、オチがない」
「ん? オチって何かしら?」
「物語を通じて、主人公が一体どうなったかを読者は楽しみにしてるの。主人公が幸せになったり、不幸になったり、またまた、成長して願いをかなえたりするの。
でもこの話、ずっと恋愛の心情を文字でつらつら書いてて、まあ、そういうの好きな人がいるけど、でもね一般的な人はみんな何が起こって、どうなったかを楽しみにして読むんだよ」
「それがオチ?」
「そう、結末」
「なるほど勉強になるわ、貴女に見せて正解だわ。だって、たぶん召使いに見せても文字読める人限られているし、見ても私に気を使ってお世辞しか言わないもの、率直な感想ありがたいわ」
「うんうんそうやって素直に受け取ってもらえると助かる。あと……」
「……あと?」
「これ劇にならない」
「えっ?」
メアリーは衝撃を受けたようで、ひどく固まってしまっている。
「ね、ね、なんで。ど、どうして、どうしてなの?」
「うん、さっき言ったと思うけど、文章のほとんどが主人公の心情の語りだよね。想像してみて、舞台の上で自分の心情をつらつら説明している姿を」
「はっ……! ああ、なるほど……!」
「メディア化……っていってもわからないか、とりあえずね、舞台にするには、主人公の心の動きとか出来事を登場人物のセリフや行動で表すんだ。読者に心情を伝えたいのはわかるけど、舞台にするには、役者が演技してみんなに伝えないといけないから、この書き方はタブーなんだ。
だから、行動とセリフで登場人物を表現できるようになるといい舞台の原作になるよ」
「……すごいわ、貴女、その道のプロだったのね! 舞台作家やってたの?」
「ううん、漫画家志望だった」
「漫画家?」
「えっーと私たちの世界の国では、紙に絵をセリフ付きでキャラクターを書いてストーリーを描く文化があるんだ。
私一時期目指してて、プロの編集っと、いってもわからないか、えっとプロの監督に言われてね、修行してたんだ。それでよく言われたのが、どうやって絵で見せて読者に伝えるかで、それでみんな感動してくれるんだって。そのことを学んだ経験があるの」
「すごい! 貴女絵が描けるのね尊敬するわ、ねえ、みせてよ」
「もう昔の話だしやめてよ、いろいろ嫌な思いがあって辞めちゃったから」
「……あら、そう、残念。貴女何歳なのかしら、まあ救世主だからその辺は謎よね。でもその貴女の思い私が受け継ぐわ! 素晴らしい小説を書いて、みんなの大喝采を浴びるような劇を生み出して見せるから楽しみにしてて! ほぉーほほほほほ!」
「……ははは」
意外とメアリーって燃えるタイプなんだね、若いっていいなあ、夢があって。まあメアリーの気持ちを大事にしててあげよう。だって私の大切な親友だから。そう思ってた瞬間だった──。
「えっ……!?」
私は思わず言葉をもらす。だっていきなりメアリーは私の唇にキスをしてきたんだよ! な、なに、ど、どういうこと!? 私たち女の子同士なんだよ!
女の子と女の子のキッス、なんかレモンみたいな甘酸っぱい味と、柔らかくふわっとしたメアリーの唇……。こ、これは……!? しかも、これ、私の初めてのキスなんだけど……。
なんか体が熱くなってきちゃった。私はというと何が何だかわからず戸惑っていた。
「ど、ど、どういうこと、メアリー!?」
「どういうことって、キスだよ、キス。ここじゃあ、家族には普通にキスするよ、私と貴女の関係だもの。親友のあ・か・し、ね?」
あ、ああ! そうか、そういうことか、そういえば欧米では、割とあいさつでキスするんだった。私日本人だから勘違いしちゃった、てっきり、メアリーがそういうケの女の子かと……。じゃあ、これ、初めてキスじゃないね、だから、ノーカン! ノーカン! ……ノーカンだよね……?
「ほんと貴女は素直で素敵な私の親友。大好きよ、ミサ……!」
そう言って彼女は私の体をきつく抱きしめてくる。うわあ、胸がふんわりと柔らかい。メアリーみたいな金髪の美人のお姫様に、抱きしめられてしまうと、私、なんか変な感情が芽生えそうだ……。
柔らかくて、力強く抱きしめられて、甘い香水のかおりが、ふわりとただよってくる。ううう、ドッキドッキだ。もう、私こっちの方向でいいかも……?
そうやってメアリーとイチャイチャ? タイムをすごしながら楽しくお茶会をした。異世界はトキメキが多い。ほんと困っちゃうよー、私。
「こたび、隣国の安寧の、ひいては魔族の侵略に備えるネーザン王の志に同意いたす」
と、まずはリッチフォード王から話しかけた。儀礼で王位に上下の差がない場合、王位についているのが長いほうから話しかけるというのが礼儀らしい。
「リッチフォード王の大海のごとき器の大きさと、その治世のおける、領国の平和は隣国の私から見て、まことにご参考にさせていただいており、ネーザン国の手本としております」
こんどはウェリントンが答える。長年玉座に座っていたリッチフォード王を慇懃に讃え、また、それでいて自国をおとしめないよう気品のある答えかたをした。やはり王となるべき人は器が違うなあ。リッチフォード王はそれに対し大笑いをした。
「何を言うか、わしなど長年王座に居座っただけだ。そなたが即位してからの風聞を聞いて驚いたわ。さきの故き国王の良い部分は受け継ぎつつも、変えるべきところは変え、それでいて柔軟に、不満分子をなだめすかしておる。ネーザン国は良い王に恵まれた」
「良い臣下に恵まれておりますので」
そう言ってウェリントンはいきなり私の肩を抱いた。ちょっ、やめて、照れるじゃない……! もうウェリントンったら、やたら私にボディタッチするんだよなあ。こっちの文化は親しい相手には行動で表現するらしいけど、日本人の私にはドッキドッキだよー。
「そうじゃな、ネーザン宰相は良い仕事をした、流石は救世主じゃ。その言葉にふさわしい活躍よ。
しかし、それにしても聞いたぞ、ネーザン王。わしの跡継ぎをわしのスタンリーの息子、孫のハリーとして後援すると布告してもらったそうな、ありがたい話じゃ、もう思い残すことはない」
「何をおっしゃいます、ハリー殿下のためにもリッチフォード王にはもっと長生きしていただかないと」
「そうじゃな、はっはっは……」
二人のやり取りにそろそろ頃合いと見て外務大臣のボルトンが調印書類一式を用意し、両国は同盟調印を済ました。湧き上がってくる拍手。そして二人が調印を終えると、皆が喜びの声を上げた。
「リッチフォード王万歳、ネーザン王万歳、両国に平和を!」
何と華やかな場、一般の日本人では絶対にこの目で観ることができない光景だよー。うわー私、歴史に立ち会っちゃったよ、極楽に行った後自慢しよう。
そして晩餐会、待ってました! ずらりと並べられた豪華な食事の数々、現実の中世西洋だと土地が貧しく、手づかみで食べてるのをアメリカドラマで見たことあるけど、この世界じゃあ土地が豊かなんだなあ。
しかも料理が美味い。テレビバラエティーで見たけど中世ヨーロッパはすごいメシマズだったらしい。この世界に来てよかったー。
これは、雌鶏のロースト、こんがり姿焼きにされた料理にナイフを入れるとじわーと肉汁がわき出てきて食欲がそそる。
ナイフで切り分けて、口に運ぶとニワトリの肉の風味と香辛料が広がって、パリパリの皮の食感に、鶏肉の旨味たっぷりの、肉の甘さが噛めば噛み占めるほど味が出てくる出てくる、これがワインと合うんだよなあ。
一応言っとくけど、私は今幼女だけどこういう場なので、飲酒は見逃すように、異世界だし。
子羊のカツレツを切り分けると、羊肉独特の風味のあるにおいが立ち込め、桃紫色の肉の色、食欲がそそりまくり!
口に運ぶと、牛肉とは違うヘルシーな口触りに爽やかなオリーブオイルの立ち込める味、噛めば噛むほど独特の、羊肉の美味しさがうまい! こってりせず、爽やかな肉の甘味にチーズのほろ苦さが口の中でまじわって、ああ草原の味がするって感じがする。
これもワインに合う―、うまーい。うまいよー、し・あ・わ・せ。
私が食事を楽しんでいると、大事な友達のメアリー姫が側に寄ってきて話しかけてきた。
「ヤッホー楽しんでるー?」
「ほへ!? メアリー姫? どうしたの」
「だって同盟締結、目出たいじゃない、リッチフォードとは歴史上何度も争っていたというのに、貴女の活躍で新しい歴史が開かれたのよ。そりゃあ、友達の私も鼻が高いじゃない? 飲まずにいられますか」
そう言って、濁りグラスに入れたワインを飲んで、足りなくなるとそこら辺から酒瓶を取って飲みまくっていた。うわっめっちゃ酔ってる。酒癖悪いなあメアリーは。
「もう、みんな貴族たち貴女の話題で持ちっきりよ、それはもう私に貴女の事、いっぱい話聞いてきて、もう楽しくて、楽しくてたまらない。ああ愉快だわあ。あの鼻持ちならない貴族たちが幼女の尻に敷かれているなんて、なんて気分がいいのかしら、ほほほ」
「ははは……」
なんかメアリーちょっと屈折してるけど、まあでもねえ、姫さまってストレスたまるんだろうなあ。昔、憧れていたけど現実の実情は厳しいみたい。
「あ、そうそう、ミサ、貴女に話があったんだった、明日時間作ってくれない?」
「え、なになにどうしたの?」
「小説書くって約束したじゃない? 試しに短編書いてみたから感想聞かせてよ」
「はやいね、やる気すごいね、感心するなあ」
「うんうん、おねがいねー」
会場を千鳥足で、メアリーがふらふらとそこらへんをうろついているけど大丈夫か、姫様。ということで、私は貴族たちと社交界をそれなりに済まして、晩餐会を後にした。ウェリントンはリッチフォード貴族たちと忙しそうだしね、王様は大変だ。
次の日、私は執務室で仕事をした後、昼休みにメアリーがやって来て、お茶会だ。そこでメアリーが書いた小説を見せてもらった。もちろんこの世界の文字が私は読めるし、現地語を話しているらしい。
何故だかはわからない、阿弥陀様のご縁にあずかったので、サービスしてくれたのかな。現地で言葉通じないとか、ルナティック超える難易度になるし。
そして、小説を私は読み終わった後、紅茶を飲み、一休みして黙っていたから、メアリーは恐る恐る私に聞いてきた。
「……どう?」
「……あの、その、オチがない」
「ん? オチって何かしら?」
「物語を通じて、主人公が一体どうなったかを読者は楽しみにしてるの。主人公が幸せになったり、不幸になったり、またまた、成長して願いをかなえたりするの。
でもこの話、ずっと恋愛の心情を文字でつらつら書いてて、まあ、そういうの好きな人がいるけど、でもね一般的な人はみんな何が起こって、どうなったかを楽しみにして読むんだよ」
「それがオチ?」
「そう、結末」
「なるほど勉強になるわ、貴女に見せて正解だわ。だって、たぶん召使いに見せても文字読める人限られているし、見ても私に気を使ってお世辞しか言わないもの、率直な感想ありがたいわ」
「うんうんそうやって素直に受け取ってもらえると助かる。あと……」
「……あと?」
「これ劇にならない」
「えっ?」
メアリーは衝撃を受けたようで、ひどく固まってしまっている。
「ね、ね、なんで。ど、どうして、どうしてなの?」
「うん、さっき言ったと思うけど、文章のほとんどが主人公の心情の語りだよね。想像してみて、舞台の上で自分の心情をつらつら説明している姿を」
「はっ……! ああ、なるほど……!」
「メディア化……っていってもわからないか、とりあえずね、舞台にするには、主人公の心の動きとか出来事を登場人物のセリフや行動で表すんだ。読者に心情を伝えたいのはわかるけど、舞台にするには、役者が演技してみんなに伝えないといけないから、この書き方はタブーなんだ。
だから、行動とセリフで登場人物を表現できるようになるといい舞台の原作になるよ」
「……すごいわ、貴女、その道のプロだったのね! 舞台作家やってたの?」
「ううん、漫画家志望だった」
「漫画家?」
「えっーと私たちの世界の国では、紙に絵をセリフ付きでキャラクターを書いてストーリーを描く文化があるんだ。
私一時期目指してて、プロの編集っと、いってもわからないか、えっとプロの監督に言われてね、修行してたんだ。それでよく言われたのが、どうやって絵で見せて読者に伝えるかで、それでみんな感動してくれるんだって。そのことを学んだ経験があるの」
「すごい! 貴女絵が描けるのね尊敬するわ、ねえ、みせてよ」
「もう昔の話だしやめてよ、いろいろ嫌な思いがあって辞めちゃったから」
「……あら、そう、残念。貴女何歳なのかしら、まあ救世主だからその辺は謎よね。でもその貴女の思い私が受け継ぐわ! 素晴らしい小説を書いて、みんなの大喝采を浴びるような劇を生み出して見せるから楽しみにしてて! ほぉーほほほほほ!」
「……ははは」
意外とメアリーって燃えるタイプなんだね、若いっていいなあ、夢があって。まあメアリーの気持ちを大事にしててあげよう。だって私の大切な親友だから。そう思ってた瞬間だった──。
「えっ……!?」
私は思わず言葉をもらす。だっていきなりメアリーは私の唇にキスをしてきたんだよ! な、なに、ど、どういうこと!? 私たち女の子同士なんだよ!
女の子と女の子のキッス、なんかレモンみたいな甘酸っぱい味と、柔らかくふわっとしたメアリーの唇……。こ、これは……!? しかも、これ、私の初めてのキスなんだけど……。
なんか体が熱くなってきちゃった。私はというと何が何だかわからず戸惑っていた。
「ど、ど、どういうこと、メアリー!?」
「どういうことって、キスだよ、キス。ここじゃあ、家族には普通にキスするよ、私と貴女の関係だもの。親友のあ・か・し、ね?」
あ、ああ! そうか、そういうことか、そういえば欧米では、割とあいさつでキスするんだった。私日本人だから勘違いしちゃった、てっきり、メアリーがそういうケの女の子かと……。じゃあ、これ、初めてキスじゃないね、だから、ノーカン! ノーカン! ……ノーカンだよね……?
「ほんと貴女は素直で素敵な私の親友。大好きよ、ミサ……!」
そう言って彼女は私の体をきつく抱きしめてくる。うわあ、胸がふんわりと柔らかい。メアリーみたいな金髪の美人のお姫様に、抱きしめられてしまうと、私、なんか変な感情が芽生えそうだ……。
柔らかくて、力強く抱きしめられて、甘い香水のかおりが、ふわりとただよってくる。ううう、ドッキドッキだ。もう、私こっちの方向でいいかも……?
そうやってメアリーとイチャイチャ? タイムをすごしながら楽しくお茶会をした。異世界はトキメキが多い。ほんと困っちゃうよー、私。
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