悪意には悪意で

12時のトキノカネ

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後編4

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「アイネ、ユーリア、ミント。ふふふ、何よ貴方たちってみんな私の取り巻きになった元婚約者たちじゃない。自分の男が私に取られたからって集まって私に復讐でもしようってつもり?ああ、怖い。そんなのだから愛想つかされるのよ。いい?貴方たちにはっきり言って教えてあげる。貴方たちは私をいじめた悪役だから悪なの!そして私はヒロインだから正義なの。この世界は私を中心に回っているのだから私がいつでも正しいのよ。だから出しゃばって出てきても無駄よ」


せっかくのピンクブロンドの可愛い顔も、殿下たちを落としたきれいで可憐な顔も今の貴方の心を映したような醜悪な顔を見たら一気に興ざめね。

ミリは自分の絶対的正義と勝利を信じて疑わない興奮して笑うマリアを
対照的に凪いだ瞳で見据えていた。

どうして人を正義の名の許でも人を断罪しようとして興奮して笑えるのかしら。
ミリの心は表には出さないけれどどんどんと冷めていく。

マリアの持つ正義は自分だけのためのものなんだわ。

彼らが掲げた正義、それは自分たちのために他者を蹴落とすために用意された
自分たちだけが幸福になるための、そのためには誰が不幸になってもいい
悪意に汚れた正義だったんだわ。

私たちがこれからすることも彼らと同じ行為なのかもしれない。

それがなんて虚しいのかしら。

どうせならば誰かを思いやるための正義で人に向かいたいものだわ。
こんなのはちっとも心を温かくしてはくれない。

もしかしたらはじめは貴方たちもそうでらしたの?

ちらりとこの時初めてミリが感情を浮かべた瞳で元婚約者となった
王子を見た。

貴方にとって彼女を守るのは正義だったのかもしれないわね。
でもいつかは貴方と夫婦になって支えるのだと憧れた私は少しでも
顧みる価値はなかったのね。

黙り込んでしまったミリに敏い令嬢の一人が気遣わし気な視線を向けてくる
それに大丈夫ですわと虚勢を張ったような笑みをミリはむける。

泣くのは後でいいわ。
誰もいなくなった一人の時に失ったものに嘆けばいい。
それまでは貴族の模範として
大輪のバラと称えられるような強い令嬢として立っていましょう。
ねえ、皆さん。

扇を持った震える手を叱咤して、笑みを作り
ミリは最後に向けて余裕の笑みをマリアに向ける。

貴族の華にふさわしい気高さで


「やっぱり貴方たちは悪役ね。ねえ殿下、見て彼女たちはいつもああして
複数に固まってか弱い私を囲んでいじめてきたのよ。
守って、殿下。でないと私のようなか弱い女の子は
あの毒花たちにすぐにやり込められて泣かされてしまうのよ」

甘い媚びを含んだ声で王子にマリアがすり寄る
それも今は何の痛みもなく受け止められる。

ええ、マリアさん。貴方がおっしゃる通り私は毒花なんでしょう。


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