悪意には悪意で

12時のトキノカネ

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後編5

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「ああ、そうなだなマリア。こいつらはいつもお前をこうやって集団でいじめる
醜悪な女たちなのだな。今の状況を見れば誰の目にも明らかだろう」


女に頼られれば男は男気を見せようとなさるものですものね。
それも好いた女性ならかばうでしょうよ。


「殿下!それはっ」

「アイネ様」


殿下の発言に食って掛かろうとした侯爵令嬢のアイネにミリの制止の言葉がかかる。振り返るアイネに視線を合わせたミリは冷静さを欠いたアイネにその視線のみで語る。

『おやめなさい。淑女たるものが紳士に食って掛かるなどみっともない』

ミリの語る瞳の冷たさにアイネは固まり青ざめる。
そしてその意を正確に汲んで口を閉ざした。

怒りを覚えるのも分かります。ですが相手に飲まれず
常に令嬢らしく振舞うのが体面を重んじる貴族らしく必要なのです。

そして令嬢とは常に守られるもの。
自分から手を下し、貴方が泥をかぶる必要などないのです。

ミリは心中でのみそう言葉を贈る。

そして用意された配役のものを一瞥する。

これはくだらない茶番劇なのですわ。


「あー、ああああ、やっぱり。他人の空似かと思ってたけど
あなたやっぱり、あのマリアでしょ?下町の酒場の女主人の娘の
男好きで有名なあのマリアでしょー?親子で何人も男ころがすってよくやるよねー。今も変わってないみたいだね。」


ミリたちの騒ぎを見ていた一人の生徒が突然大声を上げ
そしてマリアたちへと近づいてくる。

この舞台に上る新たなる登場人物。

ミリは笑みを作った口元を扇で隠す。


「貴方覚えてるかしら?私、貴方に幼馴染の彼氏寝取られたんだけど」


そう言ってマリアを睨む彼女はこの学園には珍しい庶民風の
しかもどこか男慣れしたような活発さのある少女だった。

その彼女の登場に驚き顔を青ざめさせるマリアに
用意された道化は微笑む。


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