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42.アーノルド家帰還

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 王都に入るとまず、アーノルド家だなと思い、貴族街に向かう。

「貴様ら何者だ!」

『アーノルド家に用があってきました』

「伯爵様に何の用だ!?」

『ミリアが帰ってきたと伝えて貰えますか?』

「ふんっ! おい! 伝えてこい! どうせ拒否されるだけだ! こんな怪しいヤツ!」

 俺は入口の前でミリアと待つことにした。

「わー! リンスちゃんに会えるの楽しみぃ。でも、そんなに久しぶりな感じしないんだよねぇ?」

『まぁ、ミリアからしたらそうかもな』

「実際どれくらいだったの?」

『あー。武器の受け取りまで待って出発して魔境を突っ切ったから、ひと月ちょっとぐらいか?』

 それを聞いたミリアは何やら腹をかかえて笑いだした。ひとしきり笑った後になんで笑ったか聞くと。

「だって、そんなに寂しかったら日数とか数えてるのかと思ったらすごく曖昧なんだもん! あはははは! そんなでも無かったんじゃない?」

『それは……たしかにな。でもすっっごくさび────』

「ミリア!」

 貴族街から現れたのはリンスさんであった。
 慌ててきたのだろう。左右の靴が違っている。普段はそんな事絶対ないのに。余程慌てていたことが分かる。

「本当にミリアですわ!」

「リンスちゃーん!」

 俺の前でガッチリと抱き合う。

「もう! 死ぬのはやめて欲しいですわ!」

「そりゃあー私も死にたくなかったよ? あんまり実感無いんだぁ。うっすらその時のことは覚えてるんだけどねぇ」

 リンスさんはバッとミリアを離すと口に物凄い力を入れているためひょっとこみたいな顔になっている。

「その殺したやつは何処ですの!?」

『俺が片付けたよ』

 こちらを見るとリンスさんの目から滴が溢れた。急なことで俺もオロオロとしてしまう。

 スっとハンカチを渡したのはダンテさん。ダンテさん、居たのね。

「ナイルさんが一番辛かったですわよね……よくぞ、よくぞ、ミリアを生き返らせてくれたわね!」

『はい。レベルがまた1からスタートなんですけどね、まぁ、魔境でモンスターを狩ったから少し上がったと思うけど……』

 自分のウインドウを見る。
 レベルは32まで上がっている。
 気づけば顔を隣に寄せてミリアがウインドウを見ていた。

「えっ? なんで、ナイルが自分のステータス開けてるの?」

『あー。たしかにな。前は自分で開けるの知らなかったからな。ただそれだけなんじゃないか?』

「ぐぬぬぬ。私のいる価値が……」

『ミリアは居るだけでいいんだって、自分の価値なんて求めるなよ。生きていてくれるだけでいいんだよ』

 そう言った俺を温かい目で見るダンテさん。

「左様でございますね。しかし、一度居なくなるとその人の大切さにまた気付いたりするもんですからな。私もお嬢様が生きているだけで結構でございます」

『そうですよね』

ぐぅぅぅぅぅぅうぅぅうぅ

 突如として動物の鳴き声のような音が鳴った。
 音の先にはミリアがいる。

「テヘッ! お腹すいちゃった!」

「ちょうどいいですわ! お父様もお母様も居ますし、皆で食事でもしましょう! 色々と話したいのですわ!」

 リンスさんがミリアの手を引いていく。

『あっ、入って大丈夫ですよね?』

 門番にあえて聞く俺。

「はっ! 問題ありません! 失礼しました!」

 手を挙げて通り過ぎる。
 性格悪いな俺。
 っていうか俺脳とかないけど、なんでこんなに考えられるんだろうな?
 不思議だわ。モンスター。
 不思議だわ。スケルトン。

「ミリアは何が食べたいのかしら?」

「私はー。お肉うー!」

「肉もいいですけど、そればかり食べていると匂いが獣臭くなりますわよ?」

「えぇー!? 匂いなんてどうでもいいよぉ」

「ナイルさんに愛想つかされますわよ!?」

「えぇー? ナイル鼻ないから匂いわかんないでしょ?」

『前に言っただろ? 匂いはするんだよ。でもまぁ、ミリアがどんな匂いでも愛想は尽かさないかな』

「ムフー。だよねぇ? じゃあ、肉ね! リンスちゃん?」

「全く、ナイルさん甘やかしすぎですわよ?」

 その言葉には本当にその通りなので頭を下げる。

『ごめんなさい。でも、今回のことで余計に甘くなるかもしれません。俺はもっとミリアに色々と経験させればよかったと後悔しました。好きなことを沢山して人生を全うして欲しい。そう思います』

 リンスさんはその俺の言葉に黙ってしまう。

「それは、私も分かりますわ。もっとミリアと話していればよかったとどんなに後悔したことか分かりませんわ」

 すると、ミリアがリンスさんの腕に抱きつく。

「ありがと! これからいっぱいお話しよ?」

 こう見ると美人姉妹みたいだな。
 どっちも可憐だ。片方は向日葵のようなパッと目を引く花の様。もう片方は薔薇のように目立つほどの綺麗さが際立つ。

 俺は後ろからニコニコしながら着いていく。
 頬がないから笑えないや。
 気持ちね、気持ち。

「ナイルさん、よくぞレベル100を達成しましたな。やはりその時の儀式で生き返ったんですか?」

『そうです。正確には、ミリアの細胞が必要だったんだと思います』

「サイボウ?」

『あっ、ミリアの髪とか皮膚とかの事です。ゴッツさんが髪をお守りにと持たせてくれたことで生き返らせることが出来ました。本当に良かった……』

 ダンテさんが肩を組んでくれた。

「よくぞ……よくぞ、やりとげましたな……」

『……はぃ』

 二人の暖かい歓迎でミリアが戻ってきたことを実感するのであった。
 そして、ちょっとダンテさんに泣かされそうになったのであった。

 涙でないけど。
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