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しおりを挟むマッシュ領に来て4日目になった。
今日は近くの湖までピクニックに行くことになっている。
ミンディーナだけでなく、ライガーも一緒。
普段、外出の少ないライガーは、家族の誰かがやって来るとピクニックや乗馬に付き合わされるという。
セラヴィの家族も仲が良いが、ミンディーナの家族も仲が良いと思う。
屋敷から少し歩いたところにある湖は透明度が高く、森と花畑が近くにあってとても素敵な場所だった。
「ここ、屋敷に飾られていた絵の場所ね。」
「そうなの!屋敷にある風景画のほとんどは、この領地のどこかね。
何代か前の当主の兄弟が描いたそうよ。
絵と変わってしまった場所もあるけれど、それを比べられるのも歴史よね。」
ここの自然は、当時とほとんど変わっていないように思える。
でも、百年後にはどうなっているかはわからないものね。
こんな時もあったんだと言葉にして伝えていくよりも、絵はわかりやすいわ。
昼食を食べながら昨日の朝思った今後について、ライガーに聞いてみた。
「ライガー様は何かご趣味がありますか?」
「何?そのお見合いみたいな質問。」
ミンディーナが驚いて聞いてきた。
「父がね、もう結婚を考えなくていいし慰謝料もあるし自由に暮らせばいいって言ったの。
それで、卒業後は何をしようかなって考えていて。
ライガー様は領地のお仕事以外に何か興味があることをされているのかしらって思って。」
「あぁ、そういうことね。驚いたわ。お兄様は読書よ。ね?」
「読書というか、まぁ、本を読むことは好きだね。
だが、僕が好きなのは昔の歴史を知ることかな。
例えば、今はこの大陸に8カ国あるけれど、昔は1つだったとか。
十数国の時代もあったし。統廃合の歴史とかをね。
実際に何かが起こった場所を訪れたことはないけれどね。」
「歴史書ですか。確かに国の簡単な歴史しか知りませんね。
あとは自領のことを学ぶくらいで。」
「どうしても戦争の歴史にも関わってくるところがあるから、女性は好まないだろうね。
だけど隣国の作家が、この大陸の長い歴史に恋愛を絡めた本を何作も書いていてね。
読み応えはあるんだけど、事実と違うところもいっぱいあって。
作家は、時代に沿った作り話と言ってはいるが、読んでいる人は信じる人も多くて。
その本が正しい歴史と認識されることを恐れる者たちと作家で揉めているらしいよ。」
「その本はもう完結しているのでしょうか?」
「いや、まだだ。大分、今の時代にまで近づいてきているけれどね。
近づいてくるほど、各国や家に伝わっている史実と違うところが出てきては反発があるだろう。
いくら作り話だと言っても、そろそろ出版は無理だと思うよ。」
「屋敷の図書室にあるわよ。私は好みじゃなかったから1巻で挫折したけれど。
興味があるのなら、読んでみたら?」
ミンディーナが挫折した本……読めるかしら。
「折角ですので、まず1巻をお借りしますね。」
「うん。分厚いから無理しないでね。」
ライガーはそう言って苦笑した。
事実、その本は分厚かった。
女性向けの恋愛小説と違い、言葉遣いも固く読みにくい。
セラヴィもミンディーナと同じく、1巻で挫折するだろうと読みながら思った。
領地の風景画を描く。
そちらなら、卒業後の趣味の一つとして考えてもいいかなと頭の中で歴史から逃げた。
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