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しおりを挟むエイダン様の屋敷の使用人として約半年が過ぎた頃、エイダン様が帰ってくるなりリリィを呼び出して言った。
「リリィ、当分の間、絶対に屋敷から出るな。庭やバルコニーやテラスもダメだ。カーテンも開けるな。」
「……私の捜索が?」
あれからもう1年が経とうとしているのに、ジョーダンはまだ捜索を続けているの?
「おそらく。公爵は大っぴらに捜索できないため少人数を動かしている。南の捜索が終わった後、東に向かっていたのだが、西の方で目撃情報があり西に向かったが人違いだった。まぁ、そうだよな。
ここの一つ手前の町に来ているらしい。明日にはこの街に来る。ここは領都の街だから聞き込みに時間がかかるだろう。しばらく滞在する可能性がある。4人組だ。」
4人。リリィが彼らを知らなくても、向こうは公爵夫人だったリリィの顔を覚えているはず。
ジョーダンがあの誘拐を指示していたのであれば、リアンヌが保護されたことや辺境伯の屋敷に滞在していたことを把握しているかもしれないと思ったこともあったが、どうやらこの辺境まで着いてきていたジョーダンの見張りはいなかったようだ。
「私を襲うように指示したのが公爵で、エイダン様に助けられたことも辺境にいることも見張っていた可能性も考えていましたが、それはないようですね。」
「そんなこと心配していたのか?だから頑なに屋敷から出なかったのか。
つけられていたら俺が気づかないはずがない。君が捜索されていることを話さなかった俺が悪いな。」
あちこちで捜索されているのなら、リリィが辺境にいることはバレていないということなのだ。
エイダン様はリリィがここに来て少し落ち着いた頃に、気晴らしにカツラで髪色を変えて一緒に街を歩くか?と言ってくれたけどまだ出る気にはなれなかった。髪色を変えてもエイダン様と一緒に歩けば、顔見知りの騎士たちに見つかる可能性もあったから。そうなれば、恋人はどこだと聞かれて困る。いないのだから。
エイダン様は目立つ。つまり、一緒に歩けば髪色を変えてもリリィも目立つ。彼はそのことを考慮していなかったから。
「ポマド子爵家にはずっと見張りがついている。公爵は君の生死がわかるまで諦めきれないようだな。」
「ロレッタ様と婚約されたと新聞に……」
「ああ。母親と元婚約者に共謀されては結婚を避けられなくなったんだろう。社交のためにも妻は必要だ。
それよりも、どうして公爵が妻だった君を襲わせたと思ったのだ?」
「前に、エイダン様が私に対して、『どこまで受け入れてくれるのか試してみたくなる』という言葉で思ったのです。彼の執着を。彼はいろんなことを我慢する私を試しているようでした。
私が何に我慢できなくなり、何に懇願するかを。
私を襲わせて醜聞で社交界に出られなくなれば、どこかに囲って精神の限界まで甚振るつもりだったのではないかと思ってしまって。」
「……なるほど。不用意な発言をして申し訳なかった。
そういう考え方もできるが、俺は公爵の君への思いはそこまでひどくないと思う。
公爵は婚約解消してまで君を求めた。公爵は表で婚約者と結婚し、裏で君を囲うこともできただろう。
あるいは、君も結婚した後に愛人になれと言うこともできた。
だがそうせず、妻にした。自己満足の歪んだ愛かもしれないが、襲わせることはないはずだ。」
エイダン様にそう言われるとそんな気がしてきた。
確かに、妻を他の男に触れさせて喜ぶ男だったなら、リリィが襲われて泣き叫ぶのを見ていたはずだ。
だけど、リアンヌの意識はなかった。
つまり、ジョーダンは私を襲うように指示した犯人ではない。
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