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しおりを挟むオズワルドはマローネが独身のまま亡くなったと知った時、どうして迎えに行かなかったのかと後悔した。てっきり、見合い相手と結婚して子供も産んで幸せに暮らすだろう。そう思っていたからだ。
だが、マローネのことを何年も意識の外に置いていたことを思い出すと共にようやく理解したのだ。
自分が純潔を奪ったせいで結婚できなかったのだ、と。
貴族の結婚は、令嬢は純潔であることが必須と言われた時代だ。
もちろん、再婚の場合はその限りではないが、女性の再婚は少なかった。
あの時は逃げられたことが辛くて、マローネは実家に帰って結婚するのだと思い込んでいたが、その資格を失っていたため結婚できずに独身のままであったことは当然だったのだ。
自分が奪ったせいで悪いことをしてしまった。彼女の人生を変えてしまったとも思った。
その結果、オズワルドは更に仕事にのめり込んだのだ。
そんな苦く傷ましい思い出のあるマローネに似たセレーネ。
オズワルドはセレーネが、マローネの血縁ではないかと調べた。
結果、セレーネの祖父がマローネの兄だったのだ。
オズワルドは歓喜した。
自分が唯一愛した女性の身内だったのだ。
あの時、マローネを愛人にできなかった。
しかし、セレーネは妻にすることができる。
マローネにできなかったことをセレーネにしてやりたい。
そしてオズワルドの子供を産んでもらいたい。
そう思い、セレーネのパルフェ伯爵家に結婚を申し込んだ。
どうやらセレーネは伯爵家で厄介者扱いされていたようで、学園卒業後は平民になる予定だった。
なので婚約者がいなかったらしい。
伯爵は焦っていたが、金で結婚を承諾させた。
セレーネには事後報告になるが仕方がない。政略結婚なのだから親の指示する相手がオズワルドだったということだ。
オズワルドは結婚後にセレーネを通して伯爵家から金をもっと催促されることのないように、入籍時にセレーネの籍を移そうと考えた。
この国では結婚している間に実家と縁を切りたい者は嫁ぎ先の籍に入ることができるのだ。
たとえ離婚することになっても、嫁ぎ先の性をそのまま名乗ることができるし財産分与もある。
そのため本来は嫁ぎ先の家族の了承が必要になるが、オズワルドしかいないため問題ない。
万が一、セレーネとの間に子供ができなくてもセレーネが公爵家を継いでくれればいいと考えたのだ。
親戚として会ったこともない遠縁に公爵家を渡すくらいならセレーネに渡す。
自分が死んだ後なら、再婚して子供を作っても構わないと思ったのだ。
セレーネと婚約を結んだのは、彼女が学園を卒業する4か月前のことだった。
卒業後すぐ、結婚する。さすがに式は行わないが。
セレーネは父親から婚約を聞かされてどんな気持ちになるだろうか。
平民になるつもりが公爵夫人になるのだ。
喜ぶか?怒るか?悲しいか?……逃げるか?
マローネのように逃がすことはしない。
そう思っていたが、特に問題が起こることもなく、卒業後、セレーネは公爵家の遣わせた馬車に乗って大人しくやってきたのだ。
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