15 / 78
14
しおりを挟む
「あの時、何度も途切れる意識の中で聞こえたマールバラ王の声は…すべてを背負うと決めた声でした。」
「ブランドン公爵様…。」
コンウォールはあの日の出来事を知ることが、この先どう動くべきがの指針になるとわかってはいたが、アークフリードの口から知ることになるだろうマールバラ王の最後を聞くのが怖かった。
*****
爆音と共に突風が起こり、吹き飛ばされたマールバラ王がようやく目を開けた時、椅子もテーブルも…なにもかもが、先ほどの風景とは一新していた。
―これが火薬と言われるものか…。そう思いながら、肘から下から亡くなった右腕を見つめた。
「あれほど、コンウォールに、陛下は人を信じすぎます!いいですか、ローラン伯爵には気を付けてください。…と言われていたのに…私はいつまでたっても甘いなあ。」
―あぁ…そうだった。それだけではなかった。コンウォールは妹のことも言っておったな。
(陛下、妹君のわがままをいつまでも可哀そうだからと、目を瞑っていてはなりません。ローラン伯爵ら貴族達の間に不穏な動きがある今、妹君のわがままは命取りになりかねます。妹君を哀れと思うそのお気持ちをどうか切ってください…妹君は陛下が思っていらっしゃるような方ではないと思います。)
妹は私が思っているような人間ではない…か。
貴族の間に、妹に対する不満が募っていたのは、コンウォールに言われるまでもなく…わかっていた。だが15年、地下牢に囚われていた妹を哀れだと思う気持ちが…これからは必ず私がおまえを守ると…誓わせた。
…いかん、どうやら出血が多いため…頭がぼんやりしてきた。
だがまだ、倒れるわけにはいかない。
怪我をした王妃とエリザベスはコンウォールに頼んだ、あとは…アークフリードと妹を探して安全なところに…連れて行かねば…。
「…お兄様?」
マールバラ王は右腕を押えながら、自分を兄と呼ぶ声に振り返った…だが、上半身を真っ赤に染めたその姿に茫然とした。
「ぁ…ぁ…その血はどうしたのだ?…ケガをしたのか?!」
マールバラ王の声に、女性が笑い声が重なる。
「私は大丈夫、この血はお父様のよ。それよりお兄様の腕が…」
「待て!…父上の血とはどういう意味だ?!」
「そのままの意味よ。お父様を殺したの。ローラン伯爵の力を借りて。」
「えっ?ころした?」
「えぇ、15の時お兄様に助けられてから、17年もかかってしまったけどようやく…叶った。お父様は私とお兄様が一緒にいることに反対していたそうじゃない。でも目障りなお父様は始末したし、これでお兄様とふたりでマールバラ王国を治めていけるわね。」
「…おまえは何を言っている。」
「15年前に私を地下牢から出してくださるときに仰ったじゃない。これからは二人でマールバラ王国を守ろうと。正直、私を認めないこんな国なんて滅んでしまえと思っていたのよ。でもお兄様が一緒にマールバラ王国を守ろうと仰るから考えを改めたの。」
「おまえ…」
「お兄様の為に、他にも頑張ってるの!本当は…私だけのお兄様でいて欲しいと思っているから、お兄様の傍にいるリリスも、エリザベスも大嫌い。でもお兄様がふたりを大事にされているから…好きになるように努力してるわ。でもお父様のことはお嫌いでしょう?私を15年も地下牢に入れていた男だもの。おまけに《王華》をお兄様と分け合うことに反対していたんでしょう…ローラン伯爵が言っていたわ。」
―自分と同じ歳のはずの妹が…エリザベスより幼く感じる。この危うさはなんだ。
「あぁようやく、夢が叶うのね。二人でマールバラ王国を治める夢が…。
お兄様…。今だから言えるけど、私なんかがお兄様と一緒にマールバラ王国を守れるか…本当は少し不安だったの、だって私は《王華》を身に宿していないんだもの、でもローラン伯爵にお兄様は仰ったのでしょう。自分たちはふたりで一つの存在だから、《王華》を半分にして身に宿すことは神だって望んでいると。」
「ローランがそんな事を…。」
「うふふ…。あぁ早くローラン伯爵に話を進めて欲しいわ。《王華》を手に入れたら、魔法が使えるのでしょう。楽しみだわ。」
そう言って、より笑みを深めると、マールバラ王の傷ついた右腕を取った。
「お兄様のこの腕…早く治癒魔法で治されたほうがいいわ。…お兄様?」
「話を進めるとは何だ…」
「あぁ…《王華》の話よ。戴冠の儀みたいなたいそうなことはしなくても、《王華》の半分をお兄様から頂くのだから、それなりの儀式は必要じゃないかとローラン伯爵が言っているの。私はどうでもよいのだけど…。とりあえずローラン伯爵の話は、今はいいじゃない。それより早く治癒魔法を…」
「今は!私のケガなどどうでもいい!!」
「なにを怒っているの?」
「怒っているのではない…悲しいのだ。おまえの…おまえの心がそんなに壊れていたことが…。どうして気付いてやれなかったんだろう。コンウォールの言う通りだった。
ほんの数分…後で生まれてというだけで忌み嫌われ、地下牢に入れられていたおまえを…幸せにしてやりたかった。これから先の人生が喜びにあふれるように…辛いことから守ってやりたかった。だから…おまえのわがままに目を瞑った、貴族らの不満には頭を下げた。だが私の為にと言いながら、内乱を起こし、父上を殺すなど…。許すことはできぬ。」
「15年前必ず私がおまえを守ると仰ったその口で、許すことはできないと仰るのね。あぁ~お兄様はお父様とは違うと思っていたのに残念。良い子にしていれば、お兄様の罪悪感を引き出し、お優しいお兄様は《王華》を私に…半分はくださると思っていたんだけど…まさか土壇場で切られるとは…。」と言ってクスクスと笑いだしたが、その目に涙があったのを気付いたマールバラ王は、頭を横に振ると
「いや…それがおまえの本音ではあるまい。その涙も…。15年前、(お兄様、お兄様、)と顔をくしゃくしゃにして泣いていたあの涙も、偽りは見えなかった。罪を償おう、一緒に私も償ってい行くから…。」
「償う?どうして?15年地下牢に入れられていた私が、この国に復讐しようとしただけよ。私は悪くはないわ。お兄様はどこまでおひとよしなの…涙一つで…まったく笑ってしまうわ。」
「パム!!」
「ぁ…こんな時に…子供頃の愛称で呼ばれるとは…。どうして今なの。あの頃のように…私を呼ぶのよ!15年あの地下牢いた私には世話をする兵士と待女のふたり、そのふたりが名前のない私を呼ぶときは(女)悲しかった…。だからお兄様が名前をつけてくださった時…嬉しかったの。ようやく人に慣れた気がして…。あの時から私にとってお兄様は唯一だった、だからきっと私もお兄様の唯一になれると思ったわ。でも…リリスが、エリザベスがいた。だから代わりに《王華》が欲しいと思ったの。それは…いけないこと?私には何にもないの、だから頂戴!お兄様の《王華》を!」
そう言って、一瞬辛そうにゆがんだ顔だったが、唇にゆっくりと弧を描くとマールバラ王の右腕に流れる血をペロリと舐め、笑みを深くし言った。
「ねぇ…お兄様。どれぐらいお兄様の血を啜れば《王華》を頂けるのかしら?」
「ブランドン公爵様…。」
コンウォールはあの日の出来事を知ることが、この先どう動くべきがの指針になるとわかってはいたが、アークフリードの口から知ることになるだろうマールバラ王の最後を聞くのが怖かった。
*****
爆音と共に突風が起こり、吹き飛ばされたマールバラ王がようやく目を開けた時、椅子もテーブルも…なにもかもが、先ほどの風景とは一新していた。
―これが火薬と言われるものか…。そう思いながら、肘から下から亡くなった右腕を見つめた。
「あれほど、コンウォールに、陛下は人を信じすぎます!いいですか、ローラン伯爵には気を付けてください。…と言われていたのに…私はいつまでたっても甘いなあ。」
―あぁ…そうだった。それだけではなかった。コンウォールは妹のことも言っておったな。
(陛下、妹君のわがままをいつまでも可哀そうだからと、目を瞑っていてはなりません。ローラン伯爵ら貴族達の間に不穏な動きがある今、妹君のわがままは命取りになりかねます。妹君を哀れと思うそのお気持ちをどうか切ってください…妹君は陛下が思っていらっしゃるような方ではないと思います。)
妹は私が思っているような人間ではない…か。
貴族の間に、妹に対する不満が募っていたのは、コンウォールに言われるまでもなく…わかっていた。だが15年、地下牢に囚われていた妹を哀れだと思う気持ちが…これからは必ず私がおまえを守ると…誓わせた。
…いかん、どうやら出血が多いため…頭がぼんやりしてきた。
だがまだ、倒れるわけにはいかない。
怪我をした王妃とエリザベスはコンウォールに頼んだ、あとは…アークフリードと妹を探して安全なところに…連れて行かねば…。
「…お兄様?」
マールバラ王は右腕を押えながら、自分を兄と呼ぶ声に振り返った…だが、上半身を真っ赤に染めたその姿に茫然とした。
「ぁ…ぁ…その血はどうしたのだ?…ケガをしたのか?!」
マールバラ王の声に、女性が笑い声が重なる。
「私は大丈夫、この血はお父様のよ。それよりお兄様の腕が…」
「待て!…父上の血とはどういう意味だ?!」
「そのままの意味よ。お父様を殺したの。ローラン伯爵の力を借りて。」
「えっ?ころした?」
「えぇ、15の時お兄様に助けられてから、17年もかかってしまったけどようやく…叶った。お父様は私とお兄様が一緒にいることに反対していたそうじゃない。でも目障りなお父様は始末したし、これでお兄様とふたりでマールバラ王国を治めていけるわね。」
「…おまえは何を言っている。」
「15年前に私を地下牢から出してくださるときに仰ったじゃない。これからは二人でマールバラ王国を守ろうと。正直、私を認めないこんな国なんて滅んでしまえと思っていたのよ。でもお兄様が一緒にマールバラ王国を守ろうと仰るから考えを改めたの。」
「おまえ…」
「お兄様の為に、他にも頑張ってるの!本当は…私だけのお兄様でいて欲しいと思っているから、お兄様の傍にいるリリスも、エリザベスも大嫌い。でもお兄様がふたりを大事にされているから…好きになるように努力してるわ。でもお父様のことはお嫌いでしょう?私を15年も地下牢に入れていた男だもの。おまけに《王華》をお兄様と分け合うことに反対していたんでしょう…ローラン伯爵が言っていたわ。」
―自分と同じ歳のはずの妹が…エリザベスより幼く感じる。この危うさはなんだ。
「あぁようやく、夢が叶うのね。二人でマールバラ王国を治める夢が…。
お兄様…。今だから言えるけど、私なんかがお兄様と一緒にマールバラ王国を守れるか…本当は少し不安だったの、だって私は《王華》を身に宿していないんだもの、でもローラン伯爵にお兄様は仰ったのでしょう。自分たちはふたりで一つの存在だから、《王華》を半分にして身に宿すことは神だって望んでいると。」
「ローランがそんな事を…。」
「うふふ…。あぁ早くローラン伯爵に話を進めて欲しいわ。《王華》を手に入れたら、魔法が使えるのでしょう。楽しみだわ。」
そう言って、より笑みを深めると、マールバラ王の傷ついた右腕を取った。
「お兄様のこの腕…早く治癒魔法で治されたほうがいいわ。…お兄様?」
「話を進めるとは何だ…」
「あぁ…《王華》の話よ。戴冠の儀みたいなたいそうなことはしなくても、《王華》の半分をお兄様から頂くのだから、それなりの儀式は必要じゃないかとローラン伯爵が言っているの。私はどうでもよいのだけど…。とりあえずローラン伯爵の話は、今はいいじゃない。それより早く治癒魔法を…」
「今は!私のケガなどどうでもいい!!」
「なにを怒っているの?」
「怒っているのではない…悲しいのだ。おまえの…おまえの心がそんなに壊れていたことが…。どうして気付いてやれなかったんだろう。コンウォールの言う通りだった。
ほんの数分…後で生まれてというだけで忌み嫌われ、地下牢に入れられていたおまえを…幸せにしてやりたかった。これから先の人生が喜びにあふれるように…辛いことから守ってやりたかった。だから…おまえのわがままに目を瞑った、貴族らの不満には頭を下げた。だが私の為にと言いながら、内乱を起こし、父上を殺すなど…。許すことはできぬ。」
「15年前必ず私がおまえを守ると仰ったその口で、許すことはできないと仰るのね。あぁ~お兄様はお父様とは違うと思っていたのに残念。良い子にしていれば、お兄様の罪悪感を引き出し、お優しいお兄様は《王華》を私に…半分はくださると思っていたんだけど…まさか土壇場で切られるとは…。」と言ってクスクスと笑いだしたが、その目に涙があったのを気付いたマールバラ王は、頭を横に振ると
「いや…それがおまえの本音ではあるまい。その涙も…。15年前、(お兄様、お兄様、)と顔をくしゃくしゃにして泣いていたあの涙も、偽りは見えなかった。罪を償おう、一緒に私も償ってい行くから…。」
「償う?どうして?15年地下牢に入れられていた私が、この国に復讐しようとしただけよ。私は悪くはないわ。お兄様はどこまでおひとよしなの…涙一つで…まったく笑ってしまうわ。」
「パム!!」
「ぁ…こんな時に…子供頃の愛称で呼ばれるとは…。どうして今なの。あの頃のように…私を呼ぶのよ!15年あの地下牢いた私には世話をする兵士と待女のふたり、そのふたりが名前のない私を呼ぶときは(女)悲しかった…。だからお兄様が名前をつけてくださった時…嬉しかったの。ようやく人に慣れた気がして…。あの時から私にとってお兄様は唯一だった、だからきっと私もお兄様の唯一になれると思ったわ。でも…リリスが、エリザベスがいた。だから代わりに《王華》が欲しいと思ったの。それは…いけないこと?私には何にもないの、だから頂戴!お兄様の《王華》を!」
そう言って、一瞬辛そうにゆがんだ顔だったが、唇にゆっくりと弧を描くとマールバラ王の右腕に流れる血をペロリと舐め、笑みを深くし言った。
「ねぇ…お兄様。どれぐらいお兄様の血を啜れば《王華》を頂けるのかしら?」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる