16 / 78
15
しおりを挟む
「…マールバラ王はそう呼んだのか?パメラって…まさか…いやあり得ないな。」
否定しながらもライドの言葉は語尾が掠れていた。
もし、義母の名がパメラという名でなければ、アークフリードは(あの時聞いた名はパメラで間違いない。)と言えただろう。だが少しづつ思い出していくうちに、頭に浮かんだその名にアークフリードは、13年前の記憶すべてに自信を失っていた。
「13年前の出来事で、それも途切れ途切れの意識の中で聞いた話だから…すまない、混乱させてしまうことを言って…」
そう言って両手で顔を覆ったアークフリードに、コンウォールが「ブランドン公爵様」と言いながら立ち上がるとライドとアークフリードに言った。
「あの方の妹君の名はパメラ、そして今…ブランドン公爵様の義母となっています。」
「「えっ?」」声が揃ったライドとアークフリードに、コンウォールは笑みを浮かべると
「…あの方へ情報を提供していた私です。直接会った事はないですが、あの方の妹君の顔ももちろん名も知っておりました。」
「ちょ…ちょっと待ってくれ!エリザベス様は…確かマールバラ王は30過ぎに生まれた王女だ。だから13年前、アークフリードの6つ下だから、当時エリザベス様7歳だった…ということは…マールバラ王は37歳ぐらいだ…だったら双子なら…今50歳…。いやいや…あり得ない。あの姿は50歳じゃないぞ。俺はあの女は嫌いだが…だが50歳には見えない、俺やアークフリードとそう変わらないぐらいにしかみえない。」
「だからです。」
大きな声でコンウォールが言った。
驚く二人にコンウォールは両手を握りしめると
「だから…私は彼女が《王華》を、あの方から奪ったと思っています。」
「…《王華》を…」アークフリードの震える声に、コンウォールは頷き
「問題は…《王華》をすべて奪われたのか、どうかです、エリザベス王女殿下のように生まれながらとは違い《王華》は血によって代々受け継がれてもの、そしてその量はショットグラスの三分の一約10ml。あの方は右腕を…ならばかなり出血だったでしょう。……ブランドン公爵様……あの方の最後の姿を教えてくださいませんか?」
かなりの出血なら、約10mlほどの血液をパメラが手に入れることは可能だったのでは…とこの部屋の誰もが思った。コンウォールもそうだったのだろう…。マールバラ王の最後を知りたいと言ったその声は、この戦いをどこか諦めたような響きに聞こえ、アークフリードは目を伏せると静かに頷いた。
「パメラがマールバラ王に近づいた後、気を失ってあの後何があったのかはわからない、(すまない。)という声にまた意識が戻ったが…でもはじめのうちはマールバラ王だとは気が付かなかったぐらい、意識はまだもうろうとしていたし、腹を刺されていせいで、息が漏れるような声しか出てこなくて…。」
「ではなぜ…マールバラ王だと…」
「(治癒魔法をかけた。)と言われたのです。魔法が使えるのはエリザベス王女とマールバラ王だけ、そしてその声は男性の声だったので、マールバラ王だと思ったのです。」
「治癒魔法を…?!」そう言って、その先をアークフリードに急がせるかのように、コンウォールは思わずアークフリードの左手を握った。
一瞬、目を見開いたアークフリードだったが、小刻みに震えるコンウォールの手にゆっくりと自分の右手も重ね
「その直後でした敵兵の声が聞こえたんです。マールバラ王は…俺を守るために覚悟を決められたのだと思いました。(どうやら…もう行かねばならないようだ。)と言われて立ち上がられたからです。
お止めしたかった。でも必死になっても息が漏れる音にしかならない言葉に、情けなくて涙が零れ落ちる俺の目元を、マールバラ王は拭って下さりながら
(アーク…泣くな。お前に…重い十字架を背負わす男の為に…泣いてくれるな。)…と
「…重い十字架」そう言って、コンウォールの体がビックと動き、
「…ブランドン公爵様、その後…マールバラ王は…。いやその時のマールバラ王の御姿は…どうでした?」
アークフリードはコンウォールの言っている意味が分からず
「マールバラ王の…姿?」とコンウォールの言葉を繰り返すと
「《王華》を子に譲った王の姿は纏っていた紫から、本来の色に戻ると言われています。つまり紫の瞳と紫の髪は…生まれた時に持っていた色へと変わるということ。」
その瞬間だった。アークフリードの脳裏に…浮かんだ。
それは…。
大きな背中とブロンドの髪のマールバラ王が燃え盛る炎の中に向かって歩いてゆく姿。
「…ぁ、大きな背中…と茶色い髪の後ろ姿が…」と震えるアークフリードの声に、力強い声が包んだ。
「だがブランドン公爵様はマールバラ王の治癒魔法で一命を取り留めた!」
「…それは…俺に治癒魔法をかけられた後で《王華》を失われたということなのか?でもあの時パメラは…あの女はいなかった。ならば…どういうことなんだ。」
疑問ばかりの声にコンウォールが答えた。
「マールバラ王はブランドン公爵様に(重い十字架を背負わせた。)と仰ったのですよね。」
頷くアークフリードに、コンウォールも頷くと
「これでなぜ彼女がブランドン公爵様の前に現れた理由が…わかりました。…そして《王華》は妹君パメラにすべて奪われていないことが…。」
「いや、なぜそう言い切れる?」
ライドの声に、コンウォールは笑みを浮かべ
「もし《王華》が全て奪われたのなら、彼女はブランドン公爵様の前に現れる必要はないからです。」
否定しながらもライドの言葉は語尾が掠れていた。
もし、義母の名がパメラという名でなければ、アークフリードは(あの時聞いた名はパメラで間違いない。)と言えただろう。だが少しづつ思い出していくうちに、頭に浮かんだその名にアークフリードは、13年前の記憶すべてに自信を失っていた。
「13年前の出来事で、それも途切れ途切れの意識の中で聞いた話だから…すまない、混乱させてしまうことを言って…」
そう言って両手で顔を覆ったアークフリードに、コンウォールが「ブランドン公爵様」と言いながら立ち上がるとライドとアークフリードに言った。
「あの方の妹君の名はパメラ、そして今…ブランドン公爵様の義母となっています。」
「「えっ?」」声が揃ったライドとアークフリードに、コンウォールは笑みを浮かべると
「…あの方へ情報を提供していた私です。直接会った事はないですが、あの方の妹君の顔ももちろん名も知っておりました。」
「ちょ…ちょっと待ってくれ!エリザベス様は…確かマールバラ王は30過ぎに生まれた王女だ。だから13年前、アークフリードの6つ下だから、当時エリザベス様7歳だった…ということは…マールバラ王は37歳ぐらいだ…だったら双子なら…今50歳…。いやいや…あり得ない。あの姿は50歳じゃないぞ。俺はあの女は嫌いだが…だが50歳には見えない、俺やアークフリードとそう変わらないぐらいにしかみえない。」
「だからです。」
大きな声でコンウォールが言った。
驚く二人にコンウォールは両手を握りしめると
「だから…私は彼女が《王華》を、あの方から奪ったと思っています。」
「…《王華》を…」アークフリードの震える声に、コンウォールは頷き
「問題は…《王華》をすべて奪われたのか、どうかです、エリザベス王女殿下のように生まれながらとは違い《王華》は血によって代々受け継がれてもの、そしてその量はショットグラスの三分の一約10ml。あの方は右腕を…ならばかなり出血だったでしょう。……ブランドン公爵様……あの方の最後の姿を教えてくださいませんか?」
かなりの出血なら、約10mlほどの血液をパメラが手に入れることは可能だったのでは…とこの部屋の誰もが思った。コンウォールもそうだったのだろう…。マールバラ王の最後を知りたいと言ったその声は、この戦いをどこか諦めたような響きに聞こえ、アークフリードは目を伏せると静かに頷いた。
「パメラがマールバラ王に近づいた後、気を失ってあの後何があったのかはわからない、(すまない。)という声にまた意識が戻ったが…でもはじめのうちはマールバラ王だとは気が付かなかったぐらい、意識はまだもうろうとしていたし、腹を刺されていせいで、息が漏れるような声しか出てこなくて…。」
「ではなぜ…マールバラ王だと…」
「(治癒魔法をかけた。)と言われたのです。魔法が使えるのはエリザベス王女とマールバラ王だけ、そしてその声は男性の声だったので、マールバラ王だと思ったのです。」
「治癒魔法を…?!」そう言って、その先をアークフリードに急がせるかのように、コンウォールは思わずアークフリードの左手を握った。
一瞬、目を見開いたアークフリードだったが、小刻みに震えるコンウォールの手にゆっくりと自分の右手も重ね
「その直後でした敵兵の声が聞こえたんです。マールバラ王は…俺を守るために覚悟を決められたのだと思いました。(どうやら…もう行かねばならないようだ。)と言われて立ち上がられたからです。
お止めしたかった。でも必死になっても息が漏れる音にしかならない言葉に、情けなくて涙が零れ落ちる俺の目元を、マールバラ王は拭って下さりながら
(アーク…泣くな。お前に…重い十字架を背負わす男の為に…泣いてくれるな。)…と
「…重い十字架」そう言って、コンウォールの体がビックと動き、
「…ブランドン公爵様、その後…マールバラ王は…。いやその時のマールバラ王の御姿は…どうでした?」
アークフリードはコンウォールの言っている意味が分からず
「マールバラ王の…姿?」とコンウォールの言葉を繰り返すと
「《王華》を子に譲った王の姿は纏っていた紫から、本来の色に戻ると言われています。つまり紫の瞳と紫の髪は…生まれた時に持っていた色へと変わるということ。」
その瞬間だった。アークフリードの脳裏に…浮かんだ。
それは…。
大きな背中とブロンドの髪のマールバラ王が燃え盛る炎の中に向かって歩いてゆく姿。
「…ぁ、大きな背中…と茶色い髪の後ろ姿が…」と震えるアークフリードの声に、力強い声が包んだ。
「だがブランドン公爵様はマールバラ王の治癒魔法で一命を取り留めた!」
「…それは…俺に治癒魔法をかけられた後で《王華》を失われたということなのか?でもあの時パメラは…あの女はいなかった。ならば…どういうことなんだ。」
疑問ばかりの声にコンウォールが答えた。
「マールバラ王はブランドン公爵様に(重い十字架を背負わせた。)と仰ったのですよね。」
頷くアークフリードに、コンウォールも頷くと
「これでなぜ彼女がブランドン公爵様の前に現れた理由が…わかりました。…そして《王華》は妹君パメラにすべて奪われていないことが…。」
「いや、なぜそう言い切れる?」
ライドの声に、コンウォールは笑みを浮かべ
「もし《王華》が全て奪われたのなら、彼女はブランドン公爵様の前に現れる必要はないからです。」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる