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「…マールバラ王はそう呼んだのか?パメラって…まさか…いやあり得ないな。」
否定しながらもライドの言葉は語尾が掠れていた。
もし、義母の名がパメラという名でなければ、アークフリードは(あの時聞いた名はパメラで間違いない。)と言えただろう。だが少しづつ思い出していくうちに、頭に浮かんだその名にアークフリードは、13年前の記憶すべてに自信を失っていた。
「13年前の出来事で、それも途切れ途切れの意識の中で聞いた話だから…すまない、混乱させてしまうことを言って…」
そう言って両手で顔を覆ったアークフリードに、コンウォールが「ブランドン公爵様」と言いながら立ち上がるとライドとアークフリードに言った。
「あの方の妹君の名はパメラ、そして今…ブランドン公爵様の義母となっています。」
「「えっ?」」声が揃ったライドとアークフリードに、コンウォールは笑みを浮かべると
「…あの方へ情報を提供していた私です。直接会った事はないですが、あの方の妹君の顔ももちろん名も知っておりました。」
「ちょ…ちょっと待ってくれ!エリザベス様は…確かマールバラ王は30過ぎに生まれた王女だ。だから13年前、アークフリードの6つ下だから、当時エリザベス様7歳だった…ということは…マールバラ王は37歳ぐらいだ…だったら双子なら…今50歳…。いやいや…あり得ない。あの姿は50歳じゃないぞ。俺はあの女は嫌いだが…だが50歳には見えない、俺やアークフリードとそう変わらないぐらいにしかみえない。」
「だからです。」
大きな声でコンウォールが言った。
驚く二人にコンウォールは両手を握りしめると
「だから…私は彼女が《王華》を、あの方から奪ったと思っています。」
「…《王華》を…」アークフリードの震える声に、コンウォールは頷き
「問題は…《王華》をすべて奪われたのか、どうかです、エリザベス王女殿下のように生まれながらとは違い《王華》は血によって代々受け継がれてもの、そしてその量はショットグラスの三分の一約10ml。あの方は右腕を…ならばかなり出血だったでしょう。……ブランドン公爵様……あの方の最後の姿を教えてくださいませんか?」
かなりの出血なら、約10mlほどの血液をパメラが手に入れることは可能だったのでは…とこの部屋の誰もが思った。コンウォールもそうだったのだろう…。マールバラ王の最後を知りたいと言ったその声は、この戦いをどこか諦めたような響きに聞こえ、アークフリードは目を伏せると静かに頷いた。
「パメラがマールバラ王に近づいた後、気を失ってあの後何があったのかはわからない、(すまない。)という声にまた意識が戻ったが…でもはじめのうちはマールバラ王だとは気が付かなかったぐらい、意識はまだもうろうとしていたし、腹を刺されていせいで、息が漏れるような声しか出てこなくて…。」
「ではなぜ…マールバラ王だと…」
「(治癒魔法をかけた。)と言われたのです。魔法が使えるのはエリザベス王女とマールバラ王だけ、そしてその声は男性の声だったので、マールバラ王だと思ったのです。」
「治癒魔法を…?!」そう言って、その先をアークフリードに急がせるかのように、コンウォールは思わずアークフリードの左手を握った。
一瞬、目を見開いたアークフリードだったが、小刻みに震えるコンウォールの手にゆっくりと自分の右手も重ね
「その直後でした敵兵の声が聞こえたんです。マールバラ王は…俺を守るために覚悟を決められたのだと思いました。(どうやら…もう行かねばならないようだ。)と言われて立ち上がられたからです。
お止めしたかった。でも必死になっても息が漏れる音にしかならない言葉に、情けなくて涙が零れ落ちる俺の目元を、マールバラ王は拭って下さりながら
(アーク…泣くな。お前に…重い十字架を背負わす男の為に…泣いてくれるな。)…と
「…重い十字架」そう言って、コンウォールの体がビックと動き、
「…ブランドン公爵様、その後…マールバラ王は…。いやその時のマールバラ王の御姿は…どうでした?」
アークフリードはコンウォールの言っている意味が分からず
「マールバラ王の…姿?」とコンウォールの言葉を繰り返すと
「《王華》を子に譲った王の姿は纏っていた紫から、本来の色に戻ると言われています。つまり紫の瞳と紫の髪は…生まれた時に持っていた色へと変わるということ。」
その瞬間だった。アークフリードの脳裏に…浮かんだ。
それは…。
大きな背中とブロンドの髪のマールバラ王が燃え盛る炎の中に向かって歩いてゆく姿。
「…ぁ、大きな背中…と茶色い髪の後ろ姿が…」と震えるアークフリードの声に、力強い声が包んだ。
「だがブランドン公爵様はマールバラ王の治癒魔法で一命を取り留めた!」
「…それは…俺に治癒魔法をかけられた後で《王華》を失われたということなのか?でもあの時パメラは…あの女はいなかった。ならば…どういうことなんだ。」
疑問ばかりの声にコンウォールが答えた。
「マールバラ王はブランドン公爵様に(重い十字架を背負わせた。)と仰ったのですよね。」
頷くアークフリードに、コンウォールも頷くと
「これでなぜ彼女がブランドン公爵様の前に現れた理由が…わかりました。…そして《王華》は妹君パメラにすべて奪われていないことが…。」
「いや、なぜそう言い切れる?」
ライドの声に、コンウォールは笑みを浮かべ
「もし《王華》が全て奪われたのなら、彼女はブランドン公爵様の前に現れる必要はないからです。」
否定しながらもライドの言葉は語尾が掠れていた。
もし、義母の名がパメラという名でなければ、アークフリードは(あの時聞いた名はパメラで間違いない。)と言えただろう。だが少しづつ思い出していくうちに、頭に浮かんだその名にアークフリードは、13年前の記憶すべてに自信を失っていた。
「13年前の出来事で、それも途切れ途切れの意識の中で聞いた話だから…すまない、混乱させてしまうことを言って…」
そう言って両手で顔を覆ったアークフリードに、コンウォールが「ブランドン公爵様」と言いながら立ち上がるとライドとアークフリードに言った。
「あの方の妹君の名はパメラ、そして今…ブランドン公爵様の義母となっています。」
「「えっ?」」声が揃ったライドとアークフリードに、コンウォールは笑みを浮かべると
「…あの方へ情報を提供していた私です。直接会った事はないですが、あの方の妹君の顔ももちろん名も知っておりました。」
「ちょ…ちょっと待ってくれ!エリザベス様は…確かマールバラ王は30過ぎに生まれた王女だ。だから13年前、アークフリードの6つ下だから、当時エリザベス様7歳だった…ということは…マールバラ王は37歳ぐらいだ…だったら双子なら…今50歳…。いやいや…あり得ない。あの姿は50歳じゃないぞ。俺はあの女は嫌いだが…だが50歳には見えない、俺やアークフリードとそう変わらないぐらいにしかみえない。」
「だからです。」
大きな声でコンウォールが言った。
驚く二人にコンウォールは両手を握りしめると
「だから…私は彼女が《王華》を、あの方から奪ったと思っています。」
「…《王華》を…」アークフリードの震える声に、コンウォールは頷き
「問題は…《王華》をすべて奪われたのか、どうかです、エリザベス王女殿下のように生まれながらとは違い《王華》は血によって代々受け継がれてもの、そしてその量はショットグラスの三分の一約10ml。あの方は右腕を…ならばかなり出血だったでしょう。……ブランドン公爵様……あの方の最後の姿を教えてくださいませんか?」
かなりの出血なら、約10mlほどの血液をパメラが手に入れることは可能だったのでは…とこの部屋の誰もが思った。コンウォールもそうだったのだろう…。マールバラ王の最後を知りたいと言ったその声は、この戦いをどこか諦めたような響きに聞こえ、アークフリードは目を伏せると静かに頷いた。
「パメラがマールバラ王に近づいた後、気を失ってあの後何があったのかはわからない、(すまない。)という声にまた意識が戻ったが…でもはじめのうちはマールバラ王だとは気が付かなかったぐらい、意識はまだもうろうとしていたし、腹を刺されていせいで、息が漏れるような声しか出てこなくて…。」
「ではなぜ…マールバラ王だと…」
「(治癒魔法をかけた。)と言われたのです。魔法が使えるのはエリザベス王女とマールバラ王だけ、そしてその声は男性の声だったので、マールバラ王だと思ったのです。」
「治癒魔法を…?!」そう言って、その先をアークフリードに急がせるかのように、コンウォールは思わずアークフリードの左手を握った。
一瞬、目を見開いたアークフリードだったが、小刻みに震えるコンウォールの手にゆっくりと自分の右手も重ね
「その直後でした敵兵の声が聞こえたんです。マールバラ王は…俺を守るために覚悟を決められたのだと思いました。(どうやら…もう行かねばならないようだ。)と言われて立ち上がられたからです。
お止めしたかった。でも必死になっても息が漏れる音にしかならない言葉に、情けなくて涙が零れ落ちる俺の目元を、マールバラ王は拭って下さりながら
(アーク…泣くな。お前に…重い十字架を背負わす男の為に…泣いてくれるな。)…と
「…重い十字架」そう言って、コンウォールの体がビックと動き、
「…ブランドン公爵様、その後…マールバラ王は…。いやその時のマールバラ王の御姿は…どうでした?」
アークフリードはコンウォールの言っている意味が分からず
「マールバラ王の…姿?」とコンウォールの言葉を繰り返すと
「《王華》を子に譲った王の姿は纏っていた紫から、本来の色に戻ると言われています。つまり紫の瞳と紫の髪は…生まれた時に持っていた色へと変わるということ。」
その瞬間だった。アークフリードの脳裏に…浮かんだ。
それは…。
大きな背中とブロンドの髪のマールバラ王が燃え盛る炎の中に向かって歩いてゆく姿。
「…ぁ、大きな背中…と茶色い髪の後ろ姿が…」と震えるアークフリードの声に、力強い声が包んだ。
「だがブランドン公爵様はマールバラ王の治癒魔法で一命を取り留めた!」
「…それは…俺に治癒魔法をかけられた後で《王華》を失われたということなのか?でもあの時パメラは…あの女はいなかった。ならば…どういうことなんだ。」
疑問ばかりの声にコンウォールが答えた。
「マールバラ王はブランドン公爵様に(重い十字架を背負わせた。)と仰ったのですよね。」
頷くアークフリードに、コンウォールも頷くと
「これでなぜ彼女がブランドン公爵様の前に現れた理由が…わかりました。…そして《王華》は妹君パメラにすべて奪われていないことが…。」
「いや、なぜそう言い切れる?」
ライドの声に、コンウォールは笑みを浮かべ
「もし《王華》が全て奪われたのなら、彼女はブランドン公爵様の前に現れる必要はないからです。」
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