14 / 78
13
しおりを挟む
「妹君がお生まれになったのは…。あの方がお生まれになった数分後だったそうです。
子は生涯ひとりしか授からないといわれていたマールバラ王家に、双子の誕生は…当時の王や側近達には不吉な兆しに思えたのかも知れません。とくに父親の王は余程恐かったのでしょう。自分の視界に入ることさえ、拒まれたといいます。だから、その存在を自分の目の前から消したのです。
目の届かない城の地下へと…。私には理解できません。ただ…そのことがマールバラ王国の滅亡と繋がっていったのです。」
コンウォールはそう言って目を閉じ、
「それから15年後、王は【王華】をあの方へとお渡しになられました。そしてあの方は知ったのです。妹君の事を。」と言った。
しばらく部屋に沈黙が流れたが、フゥ~と息を吐くと、コンウォールはアークフリードへと問いかけた。
「妹君の話の前に、アークフリード様にお尋ねしたいのですが。魂に刻み込まれた呪文を読み解き魔法が使える力を、なぜ《王華》と呼ぶのかご存じですか?」
「…《王華》を得た王はその容姿を華やかな紫に変え、体のどこかに美しく咲き乱れる花模様が現れるとエリザベス王女から聞きました。」
「そうですか…エリザベス王女殿下からですか…。」
「では、《王華》はどのようにして、子に渡すのかは知っておいでですか?」
「いいえ、そこまでは…。エリザベス王女は『おぞましい話だから』と言って話してくれませんでした。」
―エリザベスの思い出はいつも笑顔だ。泣いた後も、怒った後も最後にはいつも笑顔になっていた。だがこの話の時は眉間にシワを寄せて、笑顔は最後まであの綺麗な顔には浮かばなかった。
いや、それだけではない。コンウォール男爵には言わなかったが、本当は…まだ続きがあった。(おぞましい話)と言ったその後、エリザベスはこう続けた。『《王華》は呪い。その呪いを生まれながら持った私は化け物だわね。』
何事にも動じないエリザベスが、体を震わせそう言った姿に俺は思ったんだ。マールバラ王国の王女として生まれたエリザベスは幸せなのだろうかと…。
「ブランドン公爵様?」
「ぁ…すまない。ぼんやりしていた。」
エリザベスとの思い出からアークフリードが、戻ってきたことがコンウォールはわかったのだろう。
コンウォールは頷きながら
「確かにおぞましいでしょうな。なぜなら王の血を飲むのですから。シングルのショットグラスの三分の一、約10mlぐらいでしょうか…飲むのです。」
「…血…を…。」
そう言って、コンウォールを見たアークフリードは、額を押えていた。それはコンウォールの言葉に何か思い出しそうな気がしたからだった。、
コンウォールはアークフリードの姿を見つめながら
「あの日の出来事を…13年前のマールバラ王国の出来事を…いや王の部屋で起こったことを覚えておいでなんですね…。あれほどの傷を負いながらも意識はあったとは…。」
そう言いながら、胸を押えたコンウォールは逸る様に言った。
「13年前、私がブランドン公爵様を見つけるまでの時間に…妹君は…あの方の血を…飲まれたのですか?!!」
「……コンウォール男爵…あなたは……」
言葉が見つからず、戸惑うアークフリードの声に被さる様にライドが叫んだ。
「アークフリード!もう何も話すな!!」
ライドは右手を柄にかけ、コンウォールを見た。
「コンウォール男爵、いくらあなたが情報を手に入れることができるルートを持っていても、マールバラ王国の極秘事項の《王華》の情報を手に入れることはできるはずはない、いやそれだけではない。13年前のマールバラ王国での内乱の時…マールバラ王国にいたというあなたは…何者だ!」
コンウォールはライドの剣幕に微笑むと
「私は…あの方が愛していたものすべてを守りたいのです。」
「すべてを…?」
アークフリードの言葉にコンウォールは頷き
「その思いを13年前のあの日、あの方…マールバラ王に誓ったのです。必ず守ると…。」
子は生涯ひとりしか授からないといわれていたマールバラ王家に、双子の誕生は…当時の王や側近達には不吉な兆しに思えたのかも知れません。とくに父親の王は余程恐かったのでしょう。自分の視界に入ることさえ、拒まれたといいます。だから、その存在を自分の目の前から消したのです。
目の届かない城の地下へと…。私には理解できません。ただ…そのことがマールバラ王国の滅亡と繋がっていったのです。」
コンウォールはそう言って目を閉じ、
「それから15年後、王は【王華】をあの方へとお渡しになられました。そしてあの方は知ったのです。妹君の事を。」と言った。
しばらく部屋に沈黙が流れたが、フゥ~と息を吐くと、コンウォールはアークフリードへと問いかけた。
「妹君の話の前に、アークフリード様にお尋ねしたいのですが。魂に刻み込まれた呪文を読み解き魔法が使える力を、なぜ《王華》と呼ぶのかご存じですか?」
「…《王華》を得た王はその容姿を華やかな紫に変え、体のどこかに美しく咲き乱れる花模様が現れるとエリザベス王女から聞きました。」
「そうですか…エリザベス王女殿下からですか…。」
「では、《王華》はどのようにして、子に渡すのかは知っておいでですか?」
「いいえ、そこまでは…。エリザベス王女は『おぞましい話だから』と言って話してくれませんでした。」
―エリザベスの思い出はいつも笑顔だ。泣いた後も、怒った後も最後にはいつも笑顔になっていた。だがこの話の時は眉間にシワを寄せて、笑顔は最後まであの綺麗な顔には浮かばなかった。
いや、それだけではない。コンウォール男爵には言わなかったが、本当は…まだ続きがあった。(おぞましい話)と言ったその後、エリザベスはこう続けた。『《王華》は呪い。その呪いを生まれながら持った私は化け物だわね。』
何事にも動じないエリザベスが、体を震わせそう言った姿に俺は思ったんだ。マールバラ王国の王女として生まれたエリザベスは幸せなのだろうかと…。
「ブランドン公爵様?」
「ぁ…すまない。ぼんやりしていた。」
エリザベスとの思い出からアークフリードが、戻ってきたことがコンウォールはわかったのだろう。
コンウォールは頷きながら
「確かにおぞましいでしょうな。なぜなら王の血を飲むのですから。シングルのショットグラスの三分の一、約10mlぐらいでしょうか…飲むのです。」
「…血…を…。」
そう言って、コンウォールを見たアークフリードは、額を押えていた。それはコンウォールの言葉に何か思い出しそうな気がしたからだった。、
コンウォールはアークフリードの姿を見つめながら
「あの日の出来事を…13年前のマールバラ王国の出来事を…いや王の部屋で起こったことを覚えておいでなんですね…。あれほどの傷を負いながらも意識はあったとは…。」
そう言いながら、胸を押えたコンウォールは逸る様に言った。
「13年前、私がブランドン公爵様を見つけるまでの時間に…妹君は…あの方の血を…飲まれたのですか?!!」
「……コンウォール男爵…あなたは……」
言葉が見つからず、戸惑うアークフリードの声に被さる様にライドが叫んだ。
「アークフリード!もう何も話すな!!」
ライドは右手を柄にかけ、コンウォールを見た。
「コンウォール男爵、いくらあなたが情報を手に入れることができるルートを持っていても、マールバラ王国の極秘事項の《王華》の情報を手に入れることはできるはずはない、いやそれだけではない。13年前のマールバラ王国での内乱の時…マールバラ王国にいたというあなたは…何者だ!」
コンウォールはライドの剣幕に微笑むと
「私は…あの方が愛していたものすべてを守りたいのです。」
「すべてを…?」
アークフリードの言葉にコンウォールは頷き
「その思いを13年前のあの日、あの方…マールバラ王に誓ったのです。必ず守ると…。」
1
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる