王子様と過ごした90日間。

秋野 林檎 

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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

3日目⑩

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乗り込んできた者は、ローラン国の兵士だった。
数は…おおよそ200。200の騎馬軍団。
やはり…バウマン公爵にくみするもの達か?!

この町には150人ほどの男がいるが、ほとんどの者がならず者だ。
そんな輩がどこまで兵士達と戦えるかと考えると、いや、いつまでもつかと言うと…おそらく…一時間か…。
ナダル、アストン、私とルシアン殿下の4人の腕でも、200人の騎馬軍団とでは…難しい。勝てる戦ではない。

なら、一時間以内にここを引き上げないと…

ルシアン殿下も同じことを考えていらっしゃるだろう。
アストンもおそらくわかっているはずだ。
問題は…ナダル。あの男は…この状況がわかっていても、この町での殺戮を目にして逃げるとは思えない。


向かってくる敵を払いながら探したが、ルシアン殿下だけではない、アストンもナダルも見つけることができなかった。

どこに?どこにルシアン殿下はいらっしゃるのだろうか?

よく考えろ。
敵の陣形をよく考えろ。
ここの地形を思い出せ。

このまま、むやみやたらに走っても、この戦いの中では見つけることは厳しい。

だから、考えろ。落ち着いて考えろ。
ルシアン殿下は、必ず自軍が少しでも優勢に戦える場所にいらっしゃるはず。


そう考えながら走っていた私に向かって、馬に乗って兵が突っ込んできた。

マズイ…!

刀を斜めに構え、馬の脚だけを狙って剣を振ると、馬が甲高く嘶き、地面に胸を打ち付ける様に倒れこんでいった。


一頭だったから、どうにかなったが…ここまでだ。
ここは騎馬軍団が好みそうな場所だ。早く移動したほうがいい。すぐに騎馬軍団に支配されるだろう。

ぁ…ぁ…騎馬軍団…馬だ…。そうだ。馬だ。
馬が入れないところなら、少しは戦える。

川だ。あの滝がある大きな川だ。山を背にすれば、後ろからの敵は抑えられるし、それに石がゴロゴロとしている河原だ。ましてや先週の雨で、川の水が増しているはず…

そこだ。

誘いこんで、馬から兵を降ろして戦うおつもりだ。



私は走った。


この家の裏手は…川へと続く道。

「ここにもいるぞ!」
馬を捨てて剣を手にした兵が、そう叫びながら、私へと向かってきた。

ここだ。やっぱりこの場所だ。間違いない。

「おまえのようなブラチフォード国の人間がいるという事は、やっぱりバウマン公爵様が仰っていたとおりだ!
ルシアンはローラン国を、ブラチフォード国の属国にするつもりなんだな!」

あどけない顔の少年はそう言って、私へと剣を振りかざした。
私はその剣をよけ、少年足を切って、動きを止め…言った。

「おまえの主君である、バウマン公爵はローラン国を治めるほどの人物ではない。国が大事なら、家族が大事なら、主君を見極めろ!」

「…なにいってんだよ。ルシアンがここに…ブラチフォード国の兵を集めているから、俺達は…」

「そっちこそ、何を言っている。気付かなかったか?ここの男たちのほとんどが、軍事訓練をやったこともない輩だと。気付かなかったのか?!」

少年は…小さく「ぁ…」と言って、口を閉ざした。

「殺すつもりはない。バウマン公爵に対して疑問を持ったのなら、ここを去れ。こんな三文オペラの出演者なんかになるな!」

私はそう云い捨てると、川で戦う者達を見回した。

いるはず…。

足元が悪い河原にアストンが…いた。川の水に膝までつけて戦う…ナダルが…いた。

そして…仮面をつけ、舞うように剣を振る人がいた。

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