相澤雅治 

俊也

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暴力と超暴力

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名古屋都心、某所の路地裏。
「おし押さえとけ、動画回しとけよ。」
「バッチェ撮ってますよー」
「ぎゃはは、売り飛ばす前に試食は基本っしょ」
あまりにも分かりやすい…
半グレ6人組に羽交締めにされていた若いOL。
とうに身体は震え、恐怖のあまり声も出せない。
「おーやべ、タイプだわ。んじゃイキますねー笑」
??
ふっと振り返る。
「やめておけ。」
逆光になっていたが、なんの変哲もない痩せたビジネススーツ姿の中年男性がそこに立っていたのは認識できる。
全員が怒りの沈黙と共に男性…相澤雅治を振り返る。
「んだコラてめえ!?」
「俺ら脅しでなく余裕で抉るっから。泣いても許さねーぞ?」
前に出た二人組のうち、1人がナイフを突き出す。
次の瞬間。
あるぇっ!?
そのナイフ男の体が反転し、そのまま片割れの男の喉に深々と凶刃が刺さる。
なぜ?いつのまに身体が勝手に逆流するかのように動いて…

「あーーーー!?」
「ァーアーーー!!?」
仲間の返り血を浴びつつ、あっさりと相澤に頸骨を折られ斃れ伏すナイフ男。
「てめえああああああ!」
戦闘体制に入った時には、すでに半グレ4人の目前に相澤は肉薄していた。女性を抱え、重力がないかのようにジャンプして距離を取り、手短に耳打ちして逃す。。
「ナニしてくれとんだオッサンがよぉ!」
「ブチ殺せ!!」
なんともたまげたことに全員が拳銃。
しかし、相澤の前では無意味だった。
6メートルの距離を再度刹那に詰められ、思考が追いつく、引き金を引く間も与えず、洗練され切ったナイフ術で哀れな半グレ男達は戮殺されていく。
最後の1人…。
手首を深々と斬られ仰向けに倒れている。
「ごくぁ…たす…けて。」
「5分で救急車が来れば間に合うかもな。
だが、答えろ、貴様達の拳銃…ベレッタ92
その辺のヤクザでもおいそれとは調達できない純正品。
ルートは?」
はぐ、ああ…
「この中にあるのか?」
取り上げたスマホを、瀕死の本人に突きつける。
が、何か最後に言おうとして事切れてしまう。
仕方がない…
視線を凝らし、スマホ上での指紋の集中している位置、指がたどられている微かな形跡からセキュリティコードを類推する。
数字は特定できた。
37パターンの配列のうち…。
どうにか8回目で番号を特定できた。
画面が開いたところでサイレン音。
後回しだな。

大股だが、うまく通りの人混みに紛れる。
地下鉄で一旦ターミナル駅まで移動しようと120m先の階段口を確認した所。
前後から5人ずつ、か。
明らかにそちらの世界の住人。そのうち2人が密着してくる。
「乗ってもらおうか?」
通り沿いには黒塗りのセンチュリー。
2人の手にはトカレフ。
タオルに隠し腰の横から覗く銃口。
やれやれ、もう少し、「準備」をしてから伺うつもりだったんだが。。
だが、ある意味手間は…

車内で手錠を嵌められ、両脇を筋者に塞がれる。
その間相澤は無言無表情であった。
「立波会系亜峰組」
事務所に連れ込まれるお決まりのパターン。
「どんなゴリラかと思えばただの痩せ犬じゃねえか。
ドラム缶でセメント漬けにする前に一応聞くぞ?」
壮年の組長格がタバコを吹かしながら歩み寄り、跪かされた相澤の額にそれを押し付ける
「テメェはウチの傘下の金融の連中弾いた。
返済バックれる目的だけじゃ手際が良過ぎる。
どこに頼まれた?
答え次第では保険金掛けて腕ぶった斬る方にしてやってもいいぜ?」
他の連中の下卑た追従笑い。
「…れ。」
「ああ!?」
「祈れ、と言った。」
瞬間、相澤の両手の手錠が藁のように千切れ、左右のドスを突きつけていた男達が瞬く間に顔面を潰される。
「てめえ!」瞬時に飛び退く組長を庇うように、4人の男がドスを抜く。
が、1人は頸椎を折られ、残り3人は余りにも滑らかな動きで喉笛を斬られ、鳩尾を刺される。
「さっきの礼だ。」
拳銃を構えた組長の額に深々と使用済みのドスが弓矢のように突き立てられる。
同じく撃とうとした1人は一瞬でトカレフを奪われ、当人も含め6人が立て続けに撃ち斃された。

この間、12秒。
残った1人はへたり込み、失禁していた。
日本刀を持っているようだが、突きつける戦意さえ奪われているようだった。
「ここの親の組の場所を教えろ。」
「ひいいいっ、あの、東京の…。」
その後いくつかの情報を聞き出し、金庫の鍵を開けさせ100万円の束を3つ懐に。
組長らから拳銃、弾倉4つを奪う。
かすかにサイレン音が聞こえて来た。
足早に、しかしさりげなくビルの正面玄関から外に。
平然と出て来たサラリーマン風の男を訝しむ地元の通行人も何人か居たが、別に堅気の人間の出入りが全くないわけではない…。

バスと地下鉄を乗り継いで名古屋駅に向かう。
もう少しやりたいこともあったが、この地域に居るのは限界だ。
東京に向かうか。
コンコースを突っ切り、新幹線乗り場に向かう。

「所轄の出る幕じゃねえ、周りだけ固めてろ。」
本庁組体四課の、屈強な1人に手で払われる。
聞こえない程度に踵を返して、馬場警部補らは外にでた。
道理で署長らも、「消えた一介のサラリーマン」の件に首をつっこませたがらない訳だ。
あるいは本庁の連中が何か知っているかもしれないが、聞いている範囲では海外マフィアとの抗争の線で何かを拾いたがっているようだ…。
だが、しかし別のとてつもない闇の方を、馬場は危惧していた。






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