相澤雅治 

俊也

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強襲と再会

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日が落ちてからだが、東京、渋谷に着く相澤雅治。
当たり前のように血痕も破れもないが、スーツを買い替えることにした。
まだ空いている紳士服店に入る。
グレーのスーツから黒スーツの、適度に動きやすそうな既製品に着替える。

それから…あの半グレの言っていた「店」だ。
路地裏の、どちらかと言えば秋葉原にありそうなカードやプラモ、フィギュア等のひしめくサブカル全般の雑多な店舗。
「あと5分で閉店だから。」
そう言った初老の男が、客のシルエットを見て軽く目を見開く。
「オドろいたな…。」
「あんたなら俺を知っているかと。」
「??…記憶が無いのか?」
「まだ大部分は。
ただ、俺を定義するものはなにか、ということは認識してるつもりだ。
そしてとりあえずの目先の敵も、な。」
「その言い方だと、ここが何の店だかもわかっているようだな。
よくわかった。」
奥の間に手招きをする。
思い出した。シゲ爺と呼んでいた男だ。
ずらりと、その筋のマニアックな人間が涎を垂らしそうな棚。
各国の軍用ライフルや対戦車ミサイル。
しかしそれらのラックではなく隅の小箱から引き出しを引くシゲ爺。
「お前さんはとにかく慎重だからな。
いくつかの得物を使い、それぞれに予備を用意させていた。
ベースはベレッタM92だが、初速も反動のブレも大幅に改善した特注品…だったな。
んで、こっちが予備弾倉…」
かつての愛銃?の一つを手に取る相澤。
すう…と心地よい何かが流れ込んでくる。
重さのバランス…そして精妙な作り込み…
「俺がどうかしていていた間も、時々整備はしてくれていたんだな。
ありがとう。」
「ま、そのくらいの代金は前もって受け取っているからの。」
「わかった。
多分、また世話になる。」
相澤が出ると入れ違いに、店舗のシャッターは閉まる。
待たせていたタクシーに乗り込む。
あまり雑踏を歩き回っていると、今度は職質を受ける可能性がある。
当然、カメラにも…。
ホテルでエネルギーを貯めた、その翌日。

同じようにタクシーで、と言ってもその手前までだが…。

指定暴力団奈廊組 亜原田会長邸 である。
「あ?」
門扉の前に突っ立っている男がカメラに。
そう聞いて数名の武装した筋者が門の内側に近づく。
無論、開けたりはしない。
映像ではどう見ても堅気の、それも貧相な中年男との事だが…。
「おう、テメー何しに来た!?
初めてシャブでも決めたんか?
出方次第では素人でも埋めるぞ!?」

1人の声に、向こう側の来訪者が応える。
「いえ、おたくの末端の金融屋に借りたお金の件で…お返ししようかなと…」
「ああ!?」
返答は頑丈な鉄門扉が叩き壊される男であった。
!!??
扉が開かれ、そこに仁王立ちするスーツ姿の男。
逆光に映るその姿は…まるで…
「テメェ上等だゴルァ!!」
2人の男が主観的には最速で拳銃の引き金を引く、その前に。
向こう側からの男からの銃弾が両者の脳髄を貫く。
「サ、サブが…!」
「テメーワ!」
「さっさと弾け!」
屋敷から飛び出してきた数十名が、一斉に自動小銃や拳銃を相澤に向け乱射する。
が、ただ頑丈な塀に弾丸が当たるだけである。
「ぬぐおっ!」
相澤雅治は宙を舞っていた。駒のように旋回し、両手のベレッタを同時に発射しその全ての弾で的確にヘッドショット。
全弾命中で15名が斃れ伏すと同時に着地、袖口に仕込んだ弾倉をリロードする。
「ごがあっ!?」
「こ、こいつッ!?」
「囲み殺せビビんな!」
言っている間に至近距離から次々とベレッタの弾は筋者の脳漿を貫き、流水の様な動きは的を絞らせない。
「ちえりゃあ!!!」
振り下ろされた日本刀は相澤に躱し、いなされ、別の筋者の脳天を直撃してしまう。
「ぷべら!」
「アホボケコラ!」
「殺s…」
密集したりばらけたり、統制が混乱している敵を、的確かつ最速の位置取りで、撃ち、刺し、撲殺する。
とうとう屋敷内へ突入する相澤雅治。
いつの間ににやら右手だけ日本刀に持ち変え、両半身が全く別の目的で、しかも正確に敵を屠っていく。

…相澤に人の命を奪っている自覚はあったが、精神の軸がその事で揺らぐ事は無かった。
目標に対し邪魔な者、自分を脅かすものは迅速に排除する。
それが俺いう存在なのだ。
今はそれ以上の記憶は要らない。

足音、声、敵の動き。
段々と神経と脳髄が研ぎ澄まされ、彼の超感覚は察知した。
会長の居場所を。
最後の護衛5人を斃すと、「その扉」を蹴る。
「うぐっ、ぐひいいっ!テメェ!」
70歳近い、やや肥満体の男。
自動小銃を発砲しようとするが、ピンポイントで右手を撃ち抜かれのたうち回る。
「亜原田幸三だな?」
「こ、こういうことをしてタダで済むと…」
あまりにも没個性的なセリフを無視して、左肘、両膝を打ち砕く。
「そこの金庫の番号、あとはネット口座と幹部用PCのパスワードを言え。」
「おごごあ…あぐっ。」
うめき何か呪詛の言葉を吐きつつも、結局、教えてしまう会長。
まずは金庫をあける。
流石にあまり現金は…とは言え目視で3000万はある。
懐に用意していた巾着袋に何分の一かを捩じ込む。
部屋に乱入してきた3名ほどを撃ち斃し、卓上のPCにUSBを差し込み、何かのデータを凄まじい速度で操作し吸い上げる。
ようやくサイレン音が響く中、悠然と元来た正面玄関のから立ち去っていく相澤雅治。
これで、取り急ぎ、「先日までの俺」を悩ませていた原因は根絶した…。




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