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退屈なので強豪()相手に遊んでみた笑

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3番打者宇野もあっさりと三球三振!
「おいっ!高めボール球だぞ!選んでいけ!」
湾岸高校監督の怒声。
(ちゃうねん、確かにど真ん中やや低めだったんや…)
大阪のシニアから野球留学でこのチームに居る宇野は内心呟く。
(全部ボールがホップ、浮き上がってきとんねん。スピードガン以上の威力やでこいつは…てか何もんなんや?!ホンマに素人か?)

とにかくチェンジ、攻守交代である。
こちらはネット裏マスコミ専用ブース。
「おい!一面開けさしとけ!いや、俺からデスクに話す。」
「だから!その女の子が出したんです!159キロ…動画見てください!」
「ヤプーニュースより早く自社サイトに上げろ!」

メディアはどこも総見寺彩奈の存在で騒ぎたてつつも、ファラリス学園が1回戦であっさり湾岸に打ち倒されると思っており、ベタ記事、スポーツニュースのワンカット程度で収めるつもりでいたのだが…。
全くこれでは話が違ってくる。

ストライクバッターアウッ!
「クソ!速え!」
153キロ、湾岸高校エース堂林のピッチングである。
「おい、あまり気負い過ぎるな!まだ一回戦、調整半分の感覚でいけ!」
監督の声も耳には入らない。
まさかいきなり伝令を送るわけにもいかず…。
堂林の奴、ピッチャーの本能か知らんが露骨に対抗意識を…。
たかが素人女、回が進むにつれ絶対にボロを出す。それまで適当に打たせて取ればいいのに…。
ゴキッ!
かろうじてバットに当てる2番立浪。
露骨に痺れた様子。ボテボテのショートゴロに終わる。
そして今回は3番を打つ成川である。
(よく前に飛ばしてくれたぜ立浪。
素晴らしい連続三振阻止だ。)
彩奈への相手ピッチャー堂林の対抗意識。
実際彼もプロ入りの可能性は高い。
それ故に人一倍プライドも高い。
視線で挑発する成川。
(投げ急ぐな堂林、外れていいから低めにカーブ。)
(そんな必要はねえ!)
強引にキャッチャーのサインを拒否して振りかぶる。
154キロ!
豪速球がインコースに!
しかし。
キイイイン!
まさに快音であった。
狙い澄ました一撃が、ライトスタンドにライナーで突き刺さる。
聖ファラリス学園、先制のソロホームランであった。

歯軋りをして、グラブを叩きつけたい衝動を抑える堂林を尻目に、お祭り騒ぎのファラリスベンチと応援団席。
「やばい!えぐい!」
「成川くうん!今度はウチにもアーチをかけてー!!」
「すごぉい!」
「よく打ったぜ!あの堂林から!」

ベンチでチームメイトとハイタッチを交わす成川。
「やったぜ!」
「勝ったな!」

「ナイスなるちょー!」
彩奈の手を、少し加減して叩く成川。
少しだけ笑みを浮かべていた。
(結局俺と洸太郎にしかバットに当たらなかったが、お前の球を見慣れていたおかげだ。)
まだなぜか素直にありがとうとは言えなかったが。

「よ、よし、堅実に追加点だ!」
発破をかけたつもりの監督の声はうわずっている。
確かにこんなに上手くいっていいのか?
という思いはあろう。
そして再び快音!
「明智さん」
「洸太郎さんもイッたか!?」
左打席からレフトへの大飛球。
が、100メートルのフェンス手前で失速する。
「流石だな。切り替えが早い。
ツーシーム外角高め、低い弾道でヒット狙いに行ったのに打球をちまった。」
マウンドをのしのしと大股で去る堂上を振り返りつつ、グラブを内田から受け取り、ライトの守備位置に走る明智。

そして、ゆっくりとマウンドに立つ注目の総見寺彩奈。
投球練習に入ろうとしたとき、主審が右手を上げる。
「君、総見寺さん、攻守交代はスピーディーに、走ってマウンドまで来なさい。
高校生らしく!プロじゃないんだから」
「!?」
一瞬不貞腐れたような表情を浮かべる彩奈。
しまった…。
明智や成川が軽い焦りを覚えた時。
「すみませんでした!チーム一同気をつけさせます!」
クソデカ大声を発したのは「一応主将」内田であった。
過剰なまでの謝罪の一例に、審判も頷くしかなかった。
(ナイスじゃねーかキャプテン)
内心苦笑する明智だった。

が…
湾岸高校監督がニヤリと笑い、周囲に何かを伝えている。
その直後…。
「おーおー怒られてんじゃねーよ」
「なってねーよな、姫気取りのアイドルは!」
「礼儀知らずは高校野球にいらねんだわ!」

ヤジ攻勢か…。
ただでさえ掴みかねる彩奈のメンタルがどうなるか…。
キレて一気にギアチェンジ、リミッター解除なんかしたら…?

明智の心配をよそに、相手の4番江藤に対し一球目を投げる彩奈。
ストライク!
150キロジャスト。インハイギリギリ。
普通なら豪速球だが…。

「あれぇ~球速落ちてね?」
「効いてる効いてるー笑」
「ガス欠かも知れないぜ?」
「江藤さんぶち込んで下さい!」

ニヤリと笑い構え直す江藤。
主に地区予選でとはいえ成川に次ぐ高校通算72ホームランの強打者である。

2球目!アウトローギリギリ。
149キロ。
(いい制球だがさっきまでの迫力はない、打ち頃っ!)
ストライクツー!
!!?
当たらなかった!?
バットを振り急いだか?変化球ではなく素直な4シームのストレートなのに?
タイムをとり、バットを2.3回振って確認作業をする。
そして右バッターボックスに構え直す。
こんな女にいいようにされるわけにはいかねー!
打つ!
インハイに再び150キロ。全く機械のように正確に。
力みすぎず、8分目の力で確実に芯で捉え…。
ぶおっ!
だが、ボールの行き先はレフトスタンドでなく、キャッチャーミットであった。
ストライクバッターアウトッッ!!

ぐぬう!やられた!
球速帯を遅くしてもボールがホップして(見える)ことには変わりない。
俺がボールの下をくぐって空振り…なんつう屈辱!

「ほらほら走ってベンチ戻れよー!」
彩奈の声が追い討ちをかける。

黙ってないで野次り続けろ!

そう言いかけた湾岸監督も含め、向こうのベンチは凍りつく。

明智も苦笑いするしかない。
(球速帯だけ落として回転軸と回転数はほぼ変えない。
あらゆる一流投手が何年も苦労して身につけられるかどうか、ってことをあっさりと…彼女は野球とかいうカテゴリー超えてとんでもない存在だな…。)







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