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いきなり強豪相手とかありえない!?鮮烈戦慄のデビュー戦!
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そして…7月となり、日本各地で全国の球児達が白球を追い、甲子園を目指す夏の高校野球予選大会。
その東東京代表決定戦が始まった。
総見寺彩奈という女子選手の出場は、前日になってようやくマスコミ、ネットを揺るがす一大センセーションとなった。
賛否両論…
盛りあがるからいいじゃん。
女性参加はとにかく画期的!他の女子選手達にとっても夢が広がる。
そう言う意見もあれば、他ならぬ硬式女子野球の選手達本人からも含め
「正直ナメてない?」
「軟式の経験すらないんでしょ?」
「ちゃんと女子野球があるのだからそちらに行かないと。
これ見よがしに男子に混じる理由は何?」
「男子が扱う硬式ボールの危険性は?」
「話題作りにしてはお粗末。」
表のメディア、あるいはネットSNSには様々な意見が溢れた。
さて、「答え」は…。
大会3日目に出る事となる。
聖ファラリス学園ナインには、少なからず動揺が尾を引いていた。
彩奈の出場とかではなく、トーナメントの組み合わせ抽選が決まった時のものであった。
確かに今年は不運にもシード権がない。
しかし、何も優勝候補の一角、湾岸高校と当たることはないではないか!
一回戦から…。
一回表…。ファラリス学園は後攻めなので、いきなり彩奈がマウンドに上がることがある。
ベンチ部員達は…相手チームのフィジカル猛者たちが三塁側ベンチで見せる強者の笑みに若干気圧されていた。
実際甲子園出場春夏合わせ25回(ファラリスは5年前を最後に7回)しかも春に最高ベスト4に入っている、野球を多少知っていれば誰もが耳にしている全国レベルのチームであった…他にそれを上回るチームが今大会同じ地区内にいるとはいえ。
今年は春先の不運なケガ人、体調不良のエース、レギュラー達も復帰し、当然ドラフト候補も含めた強力打線の強豪復活と目されていた。
「…そんな素晴らしいチームをどっかのバカキャプテンが引いちまうんだよなぁ」
「しょーがねー内田さんのやる事だ。やらかしの天才だからな。」
「打てない肩ない、足も遅い。守備だけ努力マンでセカンドレギュラーになった不器用だし。」
2年生の連中は堂々と大声でそんなことを言う。
緊張気味にボール回しと声出しをするその内田俊之キャプテン。
そしてゆっくり投球練習をする注目の総見寺彩奈。
おろしたてのユニフォームに背番号11。
何故かそれが異様に映えて見えた。
スタンドからは一般客も好奇心から多めに来ている。
「おー可愛いじゃん。どんなゴリラかと思ったらよー」
「えーでも舐めてない?髪くらいちゃんとまとめて帽子被れっての!」
「どっち道注目集める方に切り替えたんだろ。
今年私学3強どこも強いし…。アイドル扱いだよただの」
「頑張ってー彩奈ー!」
一方、湾岸ベンチ。
「マジで先発のマウンドにあげてきやがった。向こう頭大丈夫か?
故障あがりの明智無理でも、確か成川も投げられたろ?」
「でも結構フォームは様になってるぜ?」
「…ってもいいとこ、130キロ台だぜ?
女子にしちゃ凄いけど、打ちごろだっての。」
「お前ら油断はするな!途中で明智に変えてくるかもしれん!初回であの女投げてるうちに容赦せず試合を決めろ!」
「大丈夫っすよ監督。俺が最低長打をかましてきますから。」
「頼むぜ永岡!7点くらい取れば心折れるだろ笑」
そして…試合開始のサイレン。
唯一主力で春大会気を吐いた永岡は、実に7割の打率をマークしている。
対する彩奈、セットポジションからの投球…。
(さー総見寺彩奈ちゃん、越えられない壁ってのを教えてやるよ。)
永岡は弓を引き絞るようにバットを構える。
彩奈の脚が高々と上がる…その次の瞬間!
スパァン!!
爆発音、と言うか破裂音というのか?
真ん中高めに構えたファラリス正捕手山倉のミットに一瞬で突き刺さったのだ。
この華奢な少女の投げた球は。
!!!!
それを理解するのに観客も、球審も、湾岸高校ナインも、そして打席にいる永岡すらも4秒ほどの時間を要した。
「す、ストライク…」
どわーっと、満員ではないがそれなりに詰めかけた観客のボルテージが上がる。
自分達は今、とんでもない奇跡を見た。
そして…。
球場スコアボードの液晶が、「158」と表示…!
クッ…この俺が…見えなかった…だと?
目を血走らせつつも、構え直し呼吸を整える永岡。
あの身体でどうやって…いや、いまは集中しろ!
はい、次いっくよー。
当の彩奈は、爽やかでさえあるリラックスした表情で再び脚を上げる。
そこからのモーションが速い。もちろん投げ急いでるのでなく、身体のバネとうねり、しなりが普通でないのだ。
「くあっ!」
今度は振りに行く永岡。
だがボールの影も捉えられない。
ストライイクッ!!
再び、真ん中高め、ややボールゾーンで捕球する山倉、両手で押さえに行かないとスピンが凄すぎてミットを弾かれてしまうのだ。
つ、次は当てる…
次の瞬間、永岡は自分の思考に愕然とした。
そんな、この俺が、そんなレベルで苦しんでしまう相手、肉眼でろくに捉えられない。
そんな超速球。
しかも投げているのはタメ年の女子。
こんなバカなことが…あってたまるか。
「うおらあ!」
自分を必死に鼓舞する。意地でも打ち返す!
しかし、この才能あふれるリードオフマンの気迫も虚しく…。
銃声を思わせる破裂音!
「ストライック、バッターアウトッ!」
159キロのストレート。外角高め。
ギリギリのゾーンで山倉が捕球。
その直後に空を切る永岡のバット。
キャッチャーミットに入ってから…この俺が、「着払い」だと!?
屈辱に震えながらベンチに駆け戻る永岡。
大歓声はやまない。
そして2番本山も三球三振!
ど真ん中と思い、バットを短く持ってコンパクトに振っても高めボールゾーンでボールはキャッチされる。
(クッ、浮き上がる…ホップする球ってレベルじゃねえぞこれ…速いだけじゃない。
スピンレート、回転数がエグ過ぎるんだ…)
一方、ライトの守備位置にいるファラリス学園背番号1、明智洸太郎。
(今ので156キロ。
約束通り、ちゃんと総見寺は出力を抑えてくれてるようだ。
ふふ、先は長いし、力を解放し切ってしまうと彼女の身体がどうなるかもわからない。
今日はこのままいけば鉄板だろう…)
その本人、彩奈は、背中をこちらに向け、腕を後ろに回してピースサインをくれた…。
その東東京代表決定戦が始まった。
総見寺彩奈という女子選手の出場は、前日になってようやくマスコミ、ネットを揺るがす一大センセーションとなった。
賛否両論…
盛りあがるからいいじゃん。
女性参加はとにかく画期的!他の女子選手達にとっても夢が広がる。
そう言う意見もあれば、他ならぬ硬式女子野球の選手達本人からも含め
「正直ナメてない?」
「軟式の経験すらないんでしょ?」
「ちゃんと女子野球があるのだからそちらに行かないと。
これ見よがしに男子に混じる理由は何?」
「男子が扱う硬式ボールの危険性は?」
「話題作りにしてはお粗末。」
表のメディア、あるいはネットSNSには様々な意見が溢れた。
さて、「答え」は…。
大会3日目に出る事となる。
聖ファラリス学園ナインには、少なからず動揺が尾を引いていた。
彩奈の出場とかではなく、トーナメントの組み合わせ抽選が決まった時のものであった。
確かに今年は不運にもシード権がない。
しかし、何も優勝候補の一角、湾岸高校と当たることはないではないか!
一回戦から…。
一回表…。ファラリス学園は後攻めなので、いきなり彩奈がマウンドに上がることがある。
ベンチ部員達は…相手チームのフィジカル猛者たちが三塁側ベンチで見せる強者の笑みに若干気圧されていた。
実際甲子園出場春夏合わせ25回(ファラリスは5年前を最後に7回)しかも春に最高ベスト4に入っている、野球を多少知っていれば誰もが耳にしている全国レベルのチームであった…他にそれを上回るチームが今大会同じ地区内にいるとはいえ。
今年は春先の不運なケガ人、体調不良のエース、レギュラー達も復帰し、当然ドラフト候補も含めた強力打線の強豪復活と目されていた。
「…そんな素晴らしいチームをどっかのバカキャプテンが引いちまうんだよなぁ」
「しょーがねー内田さんのやる事だ。やらかしの天才だからな。」
「打てない肩ない、足も遅い。守備だけ努力マンでセカンドレギュラーになった不器用だし。」
2年生の連中は堂々と大声でそんなことを言う。
緊張気味にボール回しと声出しをするその内田俊之キャプテン。
そしてゆっくり投球練習をする注目の総見寺彩奈。
おろしたてのユニフォームに背番号11。
何故かそれが異様に映えて見えた。
スタンドからは一般客も好奇心から多めに来ている。
「おー可愛いじゃん。どんなゴリラかと思ったらよー」
「えーでも舐めてない?髪くらいちゃんとまとめて帽子被れっての!」
「どっち道注目集める方に切り替えたんだろ。
今年私学3強どこも強いし…。アイドル扱いだよただの」
「頑張ってー彩奈ー!」
一方、湾岸ベンチ。
「マジで先発のマウンドにあげてきやがった。向こう頭大丈夫か?
故障あがりの明智無理でも、確か成川も投げられたろ?」
「でも結構フォームは様になってるぜ?」
「…ってもいいとこ、130キロ台だぜ?
女子にしちゃ凄いけど、打ちごろだっての。」
「お前ら油断はするな!途中で明智に変えてくるかもしれん!初回であの女投げてるうちに容赦せず試合を決めろ!」
「大丈夫っすよ監督。俺が最低長打をかましてきますから。」
「頼むぜ永岡!7点くらい取れば心折れるだろ笑」
そして…試合開始のサイレン。
唯一主力で春大会気を吐いた永岡は、実に7割の打率をマークしている。
対する彩奈、セットポジションからの投球…。
(さー総見寺彩奈ちゃん、越えられない壁ってのを教えてやるよ。)
永岡は弓を引き絞るようにバットを構える。
彩奈の脚が高々と上がる…その次の瞬間!
スパァン!!
爆発音、と言うか破裂音というのか?
真ん中高めに構えたファラリス正捕手山倉のミットに一瞬で突き刺さったのだ。
この華奢な少女の投げた球は。
!!!!
それを理解するのに観客も、球審も、湾岸高校ナインも、そして打席にいる永岡すらも4秒ほどの時間を要した。
「す、ストライク…」
どわーっと、満員ではないがそれなりに詰めかけた観客のボルテージが上がる。
自分達は今、とんでもない奇跡を見た。
そして…。
球場スコアボードの液晶が、「158」と表示…!
クッ…この俺が…見えなかった…だと?
目を血走らせつつも、構え直し呼吸を整える永岡。
あの身体でどうやって…いや、いまは集中しろ!
はい、次いっくよー。
当の彩奈は、爽やかでさえあるリラックスした表情で再び脚を上げる。
そこからのモーションが速い。もちろん投げ急いでるのでなく、身体のバネとうねり、しなりが普通でないのだ。
「くあっ!」
今度は振りに行く永岡。
だがボールの影も捉えられない。
ストライイクッ!!
再び、真ん中高め、ややボールゾーンで捕球する山倉、両手で押さえに行かないとスピンが凄すぎてミットを弾かれてしまうのだ。
つ、次は当てる…
次の瞬間、永岡は自分の思考に愕然とした。
そんな、この俺が、そんなレベルで苦しんでしまう相手、肉眼でろくに捉えられない。
そんな超速球。
しかも投げているのはタメ年の女子。
こんなバカなことが…あってたまるか。
「うおらあ!」
自分を必死に鼓舞する。意地でも打ち返す!
しかし、この才能あふれるリードオフマンの気迫も虚しく…。
銃声を思わせる破裂音!
「ストライック、バッターアウトッ!」
159キロのストレート。外角高め。
ギリギリのゾーンで山倉が捕球。
その直後に空を切る永岡のバット。
キャッチャーミットに入ってから…この俺が、「着払い」だと!?
屈辱に震えながらベンチに駆け戻る永岡。
大歓声はやまない。
そして2番本山も三球三振!
ど真ん中と思い、バットを短く持ってコンパクトに振っても高めボールゾーンでボールはキャッチされる。
(クッ、浮き上がる…ホップする球ってレベルじゃねえぞこれ…速いだけじゃない。
スピンレート、回転数がエグ過ぎるんだ…)
一方、ライトの守備位置にいるファラリス学園背番号1、明智洸太郎。
(今ので156キロ。
約束通り、ちゃんと総見寺は出力を抑えてくれてるようだ。
ふふ、先は長いし、力を解放し切ってしまうと彼女の身体がどうなるかもわからない。
今日はこのままいけば鉄板だろう…)
その本人、彩奈は、背中をこちらに向け、腕を後ろに回してピースサインをくれた…。
応援ありがとうございます!
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