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蒼海の血路
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「なんとか、ほぼ全機発艦出来たか…。」
淵田美津雄総隊長は、後方を顧みつつひとりごちる、何機かは、中途でF4Fに喰われたようだが…。
淵田自身、原因不明の体調不良。
軍医からは、「今は艦内静養し内地の病院で再検査を」と言われてはいるのだが…。
いま彼らを率いられるのは自分しかいない!
あの久保拓也とか言う航空参謀代行、どこまで信に値するか分からない。が、少なくとも、このタイミングでの出撃の判断は間違っていないと考える!
とにかく、加賀の無念を…
あそこに居る知った顔は無論一人や二人ではない…
そう、加賀の運命は悲惨であった。
初弾の250キロ爆弾が甲板を突き破り、丁度格納庫の搭載する機のない余剰の爆弾の積み上げ場所に命中してしまったのである。
1回目の大爆発で甲板のほぼ半分が吹き飛び、誘爆が誘爆を呼び2回目の大爆発で艦橋が炎に包まれる…。
完全に、「軍艦」としての機能を喪失してしまったのである。
偶々甲板上にいた、搭乗員整備員も多く、咄嗟に海に飛び込んで難を逃れたのが不幸中の幸いであったが…。
一方、迎え撃つフレッチャー少将の任務部隊。
ミッドウェイ基地からの応援も含めて
直掩戦闘機隊82機。
なんとか、送り出した奴らの帰る家を残してやってくれ。
ヨークタウン艦橋から、空を見上げるフレッチャーと幕僚達。
日本攻撃隊零戦65機は、数的優位のアメリカ戦闘機隊を引き受けて、味方の艦爆、艦攻隊の血路を開く。
「反応が遅い!」
言いながら、本日累計6機目の敵機を墜とす岩本徹三。
今のはもしかしたら地上基地からの増援かも知れん。
空母艦載機のそれより遥かに劣る練度。
先方としても、いくら国力に勝ろうとも、貴重な熟練搭乗員は、そう簡単には補充増員出来んようだな。
…まぁ、岩本の技量とこの時点での零戦21型の性能が卓越し過ぎてもいるのだが…。
そして…海上では上空以上の地獄…。
瑞鶴の99艦爆12機の群れが、大西洋から回航されたばかりの空母ワスプに殺到。
なんと12機のうち9機が、250キロ爆弾をワスプ甲板に命中させたのである!
一発が格納庫の燃料集積エリアを打ち抜き、灼熱地獄と化すワスプ。
そこ以外からも他の爆弾で、大小様々な誘爆を引き起こすワスプ。
さらに魚雷2発が命中し、完全に息の根を止められる…。
「こちらも行くぞ!」
海面スレスレを這い、ヨークタウンに向かう淵田の97艦攻。
プロペラが海水面を叩くまで低空を這う技術は流石であったが、そもそも実戦の、しかもこれだけ激しい対空砲火の中の雷撃はなんやかや初めて…。
「距離1100、投下!!」
引き起こし離脱する淵田機…。
あー外れたっ!
と、最後尾にいる機銃手が叫ぶ。
(そう上手くはいかねえか…いや、俺がびびって早く投下してしまったのが悪い。)
しかし、頼もしい僚機達が…2発、いや3発…!
更には艦爆からの爆弾も4発命中する。
ヨークタウン艦橋。
「フレッチャー閣下、この艦は持ちません、退艦なされませ!」
バックマスター艦長の言葉に、フレッチャーは天を仰ぐ。
「…珊瑚海の傷が開いちまったってところか」
「申し訳ございません。なにぶん機能回復を最低限間に合わせただけの応急処置で、水密区間もガバガバのまま…」
「貴官の責任ではないさ…。
この際は一人でも多く助かる事を考えよう。
貴官も死ぬなよ!」
一足先に、艦を後にするフレッチャーであった。
今頃は恐らく、スプルーアンスの方も…。
淵田美津雄総隊長は、後方を顧みつつひとりごちる、何機かは、中途でF4Fに喰われたようだが…。
淵田自身、原因不明の体調不良。
軍医からは、「今は艦内静養し内地の病院で再検査を」と言われてはいるのだが…。
いま彼らを率いられるのは自分しかいない!
あの久保拓也とか言う航空参謀代行、どこまで信に値するか分からない。が、少なくとも、このタイミングでの出撃の判断は間違っていないと考える!
とにかく、加賀の無念を…
あそこに居る知った顔は無論一人や二人ではない…
そう、加賀の運命は悲惨であった。
初弾の250キロ爆弾が甲板を突き破り、丁度格納庫の搭載する機のない余剰の爆弾の積み上げ場所に命中してしまったのである。
1回目の大爆発で甲板のほぼ半分が吹き飛び、誘爆が誘爆を呼び2回目の大爆発で艦橋が炎に包まれる…。
完全に、「軍艦」としての機能を喪失してしまったのである。
偶々甲板上にいた、搭乗員整備員も多く、咄嗟に海に飛び込んで難を逃れたのが不幸中の幸いであったが…。
一方、迎え撃つフレッチャー少将の任務部隊。
ミッドウェイ基地からの応援も含めて
直掩戦闘機隊82機。
なんとか、送り出した奴らの帰る家を残してやってくれ。
ヨークタウン艦橋から、空を見上げるフレッチャーと幕僚達。
日本攻撃隊零戦65機は、数的優位のアメリカ戦闘機隊を引き受けて、味方の艦爆、艦攻隊の血路を開く。
「反応が遅い!」
言いながら、本日累計6機目の敵機を墜とす岩本徹三。
今のはもしかしたら地上基地からの増援かも知れん。
空母艦載機のそれより遥かに劣る練度。
先方としても、いくら国力に勝ろうとも、貴重な熟練搭乗員は、そう簡単には補充増員出来んようだな。
…まぁ、岩本の技量とこの時点での零戦21型の性能が卓越し過ぎてもいるのだが…。
そして…海上では上空以上の地獄…。
瑞鶴の99艦爆12機の群れが、大西洋から回航されたばかりの空母ワスプに殺到。
なんと12機のうち9機が、250キロ爆弾をワスプ甲板に命中させたのである!
一発が格納庫の燃料集積エリアを打ち抜き、灼熱地獄と化すワスプ。
そこ以外からも他の爆弾で、大小様々な誘爆を引き起こすワスプ。
さらに魚雷2発が命中し、完全に息の根を止められる…。
「こちらも行くぞ!」
海面スレスレを這い、ヨークタウンに向かう淵田の97艦攻。
プロペラが海水面を叩くまで低空を這う技術は流石であったが、そもそも実戦の、しかもこれだけ激しい対空砲火の中の雷撃はなんやかや初めて…。
「距離1100、投下!!」
引き起こし離脱する淵田機…。
あー外れたっ!
と、最後尾にいる機銃手が叫ぶ。
(そう上手くはいかねえか…いや、俺がびびって早く投下してしまったのが悪い。)
しかし、頼もしい僚機達が…2発、いや3発…!
更には艦爆からの爆弾も4発命中する。
ヨークタウン艦橋。
「フレッチャー閣下、この艦は持ちません、退艦なされませ!」
バックマスター艦長の言葉に、フレッチャーは天を仰ぐ。
「…珊瑚海の傷が開いちまったってところか」
「申し訳ございません。なにぶん機能回復を最低限間に合わせただけの応急処置で、水密区間もガバガバのまま…」
「貴官の責任ではないさ…。
この際は一人でも多く助かる事を考えよう。
貴官も死ぬなよ!」
一足先に、艦を後にするフレッチャーであった。
今頃は恐らく、スプルーアンスの方も…。
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