【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子

307.すべきことは

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「喋る前に舌噛み切るんじゃねぇか? 自白薬、今は持ってねぇし。どうすっかな。試しにコイツの魔力マナの大本を辿ってみるのもアリか」
「お前、そんな薬も作っているのか?」
「ぁ? 貴重な材料使うから、お遊びでは使わねぇし。使うならレイヴンに使いたかったんだよなぁ」
「師匠! 真面目にやってください! なんでそこで俺の名前が出てくるんですか」

 レイヴンの本音を聞けたらいいよなぁと思って、色々試して作ってたんだけどなぁ。
 ふざけたやり取りも混ぜながら、男に手のひらを翳して魔力マナの流れを読む。
 
 魔物使い自体は妙な身体改造でもしない限りは魔法を使用できないし、裏にいるヤツこそが魔法が使える何者かだ。
 そう読んで試してみたんだんだが、フッと嫌な流れを感じる。
 コイツの身体に纏わりついているのは、洞窟の中で感じた召還陣の胸糞悪い不穏な力だ。
 
 神出鬼没で出どころが掴めないのは、人間を召還陣で飛ばしてるってことか。
 移動用じゃねぇってのに、移動テレポートと似たような原理を一体誰が生み出したんだか。
 同じ不穏な力の流れが、少し離れた場所に固まっているのを感じる。

「そこまで遠くないところに大本がいやがる。方角的にはアッチだな」

 俺は立ち上がり、北西を指さす。
 ここが街のはずれの洞窟付近だとして、この方角を進んだ先には街道が続いているはずだ。
 更に進んでいくとしたら、最近行き来したばっかりの場所に繋がっちまうよなぁ。
 
「その方角は……」
「エルフの里の方角。ただ、方角が一致しているだけで側とは限らねぇけど、距離的には近そうだ」

 俺の言葉にレイヴンの顔が強張る。
 安心させるように、肩に手を置いてポンと叩いた。

「あくまで痕跡を辿っただけだが、召喚陣を利用してここまで飛んで来ていることを考えると中継地点の一つかもしれねぇな。俺の移動テレポートほど距離は出せねぇだろうし、召喚陣は本来移動に使うものじゃねぇ」
「師匠、召還陣はその名の通り召還に特化している魔法陣ですよね。だから移動用ではないということでしょうけど……中継地点だとしても、エルフの里の近くだなんて」
「さすがにエルフの里でも警戒しているだろうからな。怪しいことがあれば連絡を寄越すだろ。来てねぇってことは安全ってことだ。召還陣には何かしら秘密があるんだろうよ」

 軽く言ったつもりだったが、真面目な話になっちまったな。
 ディーも無言だったが、ゆっくりと顔を上げて重い口を開いた。

「この男は連行する。一旦陛下に報告し、テオドールの言う場所へと改めて出向く必要があるな」
「その間に痕跡が辿れなくなると困るし、俺とレイヴンだけでも先行したいんだがな」
「団長、ただでさえ私たちは後手に回っています。ここはテオドール様の言う通りにして、我々は準備をして駆けつけましょう。必要な物があれば俺たちが持っていきます」

 ウルガーが俺の意見を尊重し、言い渋るディーを納得させようと畳み込んだ。
 さすが口が上手い副団長さまだな。
 ディーは全員の顔を見回す。

「分かった。だが、無茶をするなよ」
 
 ディーも最終的には折れて納得したみたいだな。
 ウルガーに何やら伝言しているのを眺めていると、レイヴンが不安そうな顔で俺を見上げてくる。

「師匠、行きましょう! エルフの里にまた危険が及ぶのは……」
「そういうと思った。なら、一緒に行くのが正解だろ? じゃあ行くぜ、レイヴン」

 俺はレイヴンの腰を抱くと、移動テレポートであっという間に姿を消した。
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