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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子
306.騎士団長の馬鹿力
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「それがですね。騎士の目の前から男が一瞬消えたらしいんです。そこに駆けつけた団長が思いっきり剣を振って切り飛ばすように、風圧を巻き起こしたら……それが消えていたはずの男に当たって」
「当たって?」
いちいち復唱するレイちゃんが可愛いとツッコミたいが、話が進まないので仕方なく先を顎で促す。
「男を気絶させたそうです。消えていた男の姿が現れてバタンと倒れたらしいですけど。団長の剣圧はどうなってるんだか」
「アイツ、思い切り剣が振り回せなくてムラムラしてたのかァ? 馬鹿力が役に立って良かったじゃねぇか」
姿を消す魔道具の効果かどうかは知らねぇが、うまく逃げるつもりが失敗したってことだよな。
ウルガーと共に途中見つけた分かれ道を進んで洞窟を抜け出すと、外で待機していた騎士も合流する。
一部始終を目撃した騎士が道すがらウルガーから聞いた話の補足として、男が気絶するまでの経緯を話し始めた。
そいつの話をまとめるとこうだ。
まず、洞窟から抜け出たローブの男は辺りを囲む騎士たちに見つかって包囲された。
だが、男は騎士の追跡をかわして森のある方角へ向かって走り去ろうとする。
どこに向かっていたのかは分からねぇが、姿まで消していたから見えねぇ状態だ。
そこへ物凄い勢いで駆けつけたディーが、いきなり剣を振り抜いたら何故か見えない男を吹き飛ばしてたってことらしい。
そりゃウルガーの説明もおかしな話になるってもんだよな。
「ディートリッヒ様は本当に凄いお方です」
「レイヴン……あのなぁ。ただの馬鹿力だろ。褒めるところじゃねぇし」
「テオドール様も凄いですよー」
「ウルガー、お前ケンカ売ってんのか?」
「まさかー! テオドール様にケンカを売るだなんて命がいくつあっても足りませんよ」
この副団長さまは、いつも適当なことばっかり言いやがって。
やり取りをしているうちに、ローブの男が転がっている場所まで辿り着いた。
地面に伏している男は、魔封じの鎖で巻かれていてピクリとも動かない。
「来たか」
「相変わらず馬鹿力だな。何も考えてねぇところがお前らしいが」
「捕縛するために振るった力であり、考えて行動した結果だ。それよりもコイツを尋問しなくてはな」
ディーが足元に転がる男へ目線を落とし、ない頭を捻って考える仕草をする。
今は意識もねぇし大人しいもんだが、起こすとまた魔物を呼び出して反撃しそうだしな。
下手に刺激すると、洞窟での戦闘と同じ流れになる可能性もある。
その場にしゃがんで、男の様子を注意深く観察してみる。
コイツは魔物使いで確定だが、召還陣を書けるヤツと魔法に精通しているヤツが同一人物かどうかは分からねぇ。
背後にいるのはやっぱり人間よりも知識があるヤツなんじゃねぇかと、嫌な考えが頭の片隅をよぎる。
「当たって?」
いちいち復唱するレイちゃんが可愛いとツッコミたいが、話が進まないので仕方なく先を顎で促す。
「男を気絶させたそうです。消えていた男の姿が現れてバタンと倒れたらしいですけど。団長の剣圧はどうなってるんだか」
「アイツ、思い切り剣が振り回せなくてムラムラしてたのかァ? 馬鹿力が役に立って良かったじゃねぇか」
姿を消す魔道具の効果かどうかは知らねぇが、うまく逃げるつもりが失敗したってことだよな。
ウルガーと共に途中見つけた分かれ道を進んで洞窟を抜け出すと、外で待機していた騎士も合流する。
一部始終を目撃した騎士が道すがらウルガーから聞いた話の補足として、男が気絶するまでの経緯を話し始めた。
そいつの話をまとめるとこうだ。
まず、洞窟から抜け出たローブの男は辺りを囲む騎士たちに見つかって包囲された。
だが、男は騎士の追跡をかわして森のある方角へ向かって走り去ろうとする。
どこに向かっていたのかは分からねぇが、姿まで消していたから見えねぇ状態だ。
そこへ物凄い勢いで駆けつけたディーが、いきなり剣を振り抜いたら何故か見えない男を吹き飛ばしてたってことらしい。
そりゃウルガーの説明もおかしな話になるってもんだよな。
「ディートリッヒ様は本当に凄いお方です」
「レイヴン……あのなぁ。ただの馬鹿力だろ。褒めるところじゃねぇし」
「テオドール様も凄いですよー」
「ウルガー、お前ケンカ売ってんのか?」
「まさかー! テオドール様にケンカを売るだなんて命がいくつあっても足りませんよ」
この副団長さまは、いつも適当なことばっかり言いやがって。
やり取りをしているうちに、ローブの男が転がっている場所まで辿り着いた。
地面に伏している男は、魔封じの鎖で巻かれていてピクリとも動かない。
「来たか」
「相変わらず馬鹿力だな。何も考えてねぇところがお前らしいが」
「捕縛するために振るった力であり、考えて行動した結果だ。それよりもコイツを尋問しなくてはな」
ディーが足元に転がる男へ目線を落とし、ない頭を捻って考える仕草をする。
今は意識もねぇし大人しいもんだが、起こすとまた魔物を呼び出して反撃しそうだしな。
下手に刺激すると、洞窟での戦闘と同じ流れになる可能性もある。
その場にしゃがんで、男の様子を注意深く観察してみる。
コイツは魔物使いで確定だが、召還陣を書けるヤツと魔法に精通しているヤツが同一人物かどうかは分からねぇ。
背後にいるのはやっぱり人間よりも知識があるヤツなんじゃねぇかと、嫌な考えが頭の片隅をよぎる。
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