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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子
137.子どもじみた嫉妬
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レイヴンは久しぶりの女将の料理を堪能して満足してるみてぇだが。
俺はその間も何杯もマグを開けて酒を飲み、料理もそこそこにしか食べなかった。
別に具合が悪いわけでもねぇが、妙にイラつきが止まらない。
レイヴンは俺のことなどあまり気に留めずに食事の時間を楽しんでいた。
それも何だか見ていてつまらない。
何だかガキみてぇなことを考えている自分にもイラついて、気づけばいつもより多めに酒を煽っていた。
「ごちそうさまでした。本当にハリシャさんの料理は美味しいです。また食べに来ますね」
「いつでも大歓迎だよ。しっかし、そっちの魔塔主様はさっきから不機嫌で見てらんないねぇ。大変だろうけど連れて帰っておくれ」
ハリシャが溜め息混じりで俺を指し示す。
俺が無視しているとレイヴンも苦笑しながら、はい、と頷く。
そんなやり取りをしていると、また店員のオネェちゃんがレイヴンの側までやってきた。
「あの、補佐官様。また来て下さいね。お待ちしてます」
「はい、ありがとうございます。今度は師匠がいない時に来ます」
その言葉を聞いたオネェちゃんが嬉しそうな顔をする。
ったく。
これだから無自覚美形は。
そういう顔すると勘違いするんだよ。
純粋無垢っぽいオネェちゃんは特にな。
むくりとカウンターから起き上がり、レイヴンの腕を掴む。
カウンターにお金を乱暴に置いた。
「行くぞ」
無理矢理にでもレイヴンを引きずって行こうと腕を引く。
レイヴンも慌てて頭を下げているが店の外へと何とか引きずり出した。
「もう、何なんですか! あの子、怖がってましたよ? 師匠がそういう態度取るから……」
「煩ぇなぁー。お前こそ可愛い子に声掛けられて、ご機嫌だったじゃねぇか」
「はぁ? 別に普通に話していただけですけど。お店の人と話さないと注文もできないでしょう? お酒もたくさん飲んだのに、なんでそんなに不機嫌なんですか……面倒臭い」
レイヴンが長く息を吐いている。
ホント、どうして俺にはそういう態度ばっかとるんだか。
素直なのはベッドの上だけか?
さらに強く腕を掴んでレイヴンを無理矢理歩かせる。
レイヴンが抗議しても耳を貸さずに店裏の暗がりへと連れ込むと壁に背中を押し付ける。
「機嫌が悪いのを俺で解消するの、やめてくれません? こんなところに人を連れ込んで……女の子だったら悲鳴をあげてるところですよ?」
「……いいぜ、あげても。どうせ遮断すれば聞こえねぇ」
片手でレイヴンを壁に押し付けたまま、呪文を紡いで防音結界を展開する。
胸の辺りを押し付けられているせいか息苦しそうなレイヴンが軽く咳き込むが、それでも開放する気にならない。
「師匠、苦しいんですけど……それに、何でわざわざ防音結界を……」
「すぐ誰にでも愛想を振りまきやがって。気に入らねぇ。ホント、これだから無自覚は。こうでもしなきゃ分からねぇよな」
いつものように、まずは煩い口を唇で覆い隠して黙らせる。
俺の悪党のようなやり口にさすがにレイヴンも思い切り抵抗してきて唇に歯を立ててきた。
口の中に広がる血の味はとても苦く気分は最悪だ。
だが、それくらいじゃイラつきがどうも収まらない。
俺はその間も何杯もマグを開けて酒を飲み、料理もそこそこにしか食べなかった。
別に具合が悪いわけでもねぇが、妙にイラつきが止まらない。
レイヴンは俺のことなどあまり気に留めずに食事の時間を楽しんでいた。
それも何だか見ていてつまらない。
何だかガキみてぇなことを考えている自分にもイラついて、気づけばいつもより多めに酒を煽っていた。
「ごちそうさまでした。本当にハリシャさんの料理は美味しいです。また食べに来ますね」
「いつでも大歓迎だよ。しっかし、そっちの魔塔主様はさっきから不機嫌で見てらんないねぇ。大変だろうけど連れて帰っておくれ」
ハリシャが溜め息混じりで俺を指し示す。
俺が無視しているとレイヴンも苦笑しながら、はい、と頷く。
そんなやり取りをしていると、また店員のオネェちゃんがレイヴンの側までやってきた。
「あの、補佐官様。また来て下さいね。お待ちしてます」
「はい、ありがとうございます。今度は師匠がいない時に来ます」
その言葉を聞いたオネェちゃんが嬉しそうな顔をする。
ったく。
これだから無自覚美形は。
そういう顔すると勘違いするんだよ。
純粋無垢っぽいオネェちゃんは特にな。
むくりとカウンターから起き上がり、レイヴンの腕を掴む。
カウンターにお金を乱暴に置いた。
「行くぞ」
無理矢理にでもレイヴンを引きずって行こうと腕を引く。
レイヴンも慌てて頭を下げているが店の外へと何とか引きずり出した。
「もう、何なんですか! あの子、怖がってましたよ? 師匠がそういう態度取るから……」
「煩ぇなぁー。お前こそ可愛い子に声掛けられて、ご機嫌だったじゃねぇか」
「はぁ? 別に普通に話していただけですけど。お店の人と話さないと注文もできないでしょう? お酒もたくさん飲んだのに、なんでそんなに不機嫌なんですか……面倒臭い」
レイヴンが長く息を吐いている。
ホント、どうして俺にはそういう態度ばっかとるんだか。
素直なのはベッドの上だけか?
さらに強く腕を掴んでレイヴンを無理矢理歩かせる。
レイヴンが抗議しても耳を貸さずに店裏の暗がりへと連れ込むと壁に背中を押し付ける。
「機嫌が悪いのを俺で解消するの、やめてくれません? こんなところに人を連れ込んで……女の子だったら悲鳴をあげてるところですよ?」
「……いいぜ、あげても。どうせ遮断すれば聞こえねぇ」
片手でレイヴンを壁に押し付けたまま、呪文を紡いで防音結界を展開する。
胸の辺りを押し付けられているせいか息苦しそうなレイヴンが軽く咳き込むが、それでも開放する気にならない。
「師匠、苦しいんですけど……それに、何でわざわざ防音結界を……」
「すぐ誰にでも愛想を振りまきやがって。気に入らねぇ。ホント、これだから無自覚は。こうでもしなきゃ分からねぇよな」
いつものように、まずは煩い口を唇で覆い隠して黙らせる。
俺の悪党のようなやり口にさすがにレイヴンも思い切り抵抗してきて唇に歯を立ててきた。
口の中に広がる血の味はとても苦く気分は最悪だ。
だが、それくらいじゃイラつきがどうも収まらない。
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