139 / 483
第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子
136.何か面白くない
しおりを挟む
「あ、あの……ご注文は?」
「わざわざ取りに来てくれたんですね? ありがとう。隣の怖いおじさんはどうせ放っておいても飲むのでビールを。俺も……」
「……ッチ。これだから顔のイイヤツは。お前はジンジャーエールにしておけ。すぐ酔っ払うんだからよ」
「何か言ってるけど、そこは無視して……はいはい。別に無理して飲むつもりじゃなかったです。お酒は以上で。後はさっぱりしたものって何かありますか?」
「今日は、新鮮なお野菜をたくさん頂いてまして。そのまま切ってお出ししてます。女将さんが手作りのディップソースを作ってますので、それを付けて食べると美味しいですよ」
緊張しながらも、丁寧に説明してくれるオネェちゃんにそれも一緒にお願いします、と、レイヴンが一旦注文を終えてからカウンターの女将へと向き直る。
「誰かさんと違って、優しい子は自然とモテるねぇ。顔良し、性格良しならどこに行っても恥ずかしくないねぇ。今日はたくさん食べていきな?」
「ありがとうございます。俺なんかより皆さんのほうが親切ですし。いつもお世話になっていますから」
「出たよ、レイヴンの猫被り。これだからにゃんこは気まぐれなんだよなァ」
「……うるさいですよ、師匠。ほら待望のビールがきましたから静かに飲んでください」
目の前にマグが置かれると、早速手を伸ばして一気に呷る。
「うわぁ……あの人もう飲み干してません?」
「いつもこんな調子だよ。全く。ほら、これも食べな?」
大皿に分厚く切られた肉と炒められた野菜が載っている。
肉は外側をじっくりと焼かれているが、中は柔かいままで美味しそうだ。
上からトマトのソースがかかっており食欲をそそる。
レイヴンのジンジャエールと切られた野菜もやってきて、一気にカウンター上が賑やかになってくる。
「ん……このお野菜は本当に新鮮ですね。ソースなしでも美味しい。でも、このソースも美味しそうです。これは……レモン?」
「そうそう、混ぜてみたんだよ。ちょっと酸っぱいかもしれないけどねぇ」
「そんな野菜をムシャムシャして美味いかぁ? まぁ、小動物っぽいもんな」
「今日はやたらと噛みついてきますね、師匠。大人しくビール飲んでてくださいよ」
お替りの催促をすると、黙らせるようにドン、と女将がマグを置いてくる。
「あたしは美味しく食べてくれる子の味方だからね。美味くないと言うヤツに出す飯はないよ!」
「野菜は野菜だろうが。別に女将の料理をけなしてねぇのによ。なぁ、姉ちゃん。俺の膝の上で一緒に飲まねぇか?」
「え? その……困ります……」
「師匠ー? 俺の前でそういうことしたらどうなるか分かってますよね?」
店員のオネェちゃんはサッとレイヴンの背に隠れて震えてやがる。
オネェちゃんまでレイヴン贔屓ってか?
何か面白くねぇな。
俺の態度を察しているくせに、レイヴンは無視して食事の続きを楽しみ始めた。
こういう時、ホント冷たいんだよな。
コッチはさっきから除け者にされてばっかりだってのによ。
「わざわざ取りに来てくれたんですね? ありがとう。隣の怖いおじさんはどうせ放っておいても飲むのでビールを。俺も……」
「……ッチ。これだから顔のイイヤツは。お前はジンジャーエールにしておけ。すぐ酔っ払うんだからよ」
「何か言ってるけど、そこは無視して……はいはい。別に無理して飲むつもりじゃなかったです。お酒は以上で。後はさっぱりしたものって何かありますか?」
「今日は、新鮮なお野菜をたくさん頂いてまして。そのまま切ってお出ししてます。女将さんが手作りのディップソースを作ってますので、それを付けて食べると美味しいですよ」
緊張しながらも、丁寧に説明してくれるオネェちゃんにそれも一緒にお願いします、と、レイヴンが一旦注文を終えてからカウンターの女将へと向き直る。
「誰かさんと違って、優しい子は自然とモテるねぇ。顔良し、性格良しならどこに行っても恥ずかしくないねぇ。今日はたくさん食べていきな?」
「ありがとうございます。俺なんかより皆さんのほうが親切ですし。いつもお世話になっていますから」
「出たよ、レイヴンの猫被り。これだからにゃんこは気まぐれなんだよなァ」
「……うるさいですよ、師匠。ほら待望のビールがきましたから静かに飲んでください」
目の前にマグが置かれると、早速手を伸ばして一気に呷る。
「うわぁ……あの人もう飲み干してません?」
「いつもこんな調子だよ。全く。ほら、これも食べな?」
大皿に分厚く切られた肉と炒められた野菜が載っている。
肉は外側をじっくりと焼かれているが、中は柔かいままで美味しそうだ。
上からトマトのソースがかかっており食欲をそそる。
レイヴンのジンジャエールと切られた野菜もやってきて、一気にカウンター上が賑やかになってくる。
「ん……このお野菜は本当に新鮮ですね。ソースなしでも美味しい。でも、このソースも美味しそうです。これは……レモン?」
「そうそう、混ぜてみたんだよ。ちょっと酸っぱいかもしれないけどねぇ」
「そんな野菜をムシャムシャして美味いかぁ? まぁ、小動物っぽいもんな」
「今日はやたらと噛みついてきますね、師匠。大人しくビール飲んでてくださいよ」
お替りの催促をすると、黙らせるようにドン、と女将がマグを置いてくる。
「あたしは美味しく食べてくれる子の味方だからね。美味くないと言うヤツに出す飯はないよ!」
「野菜は野菜だろうが。別に女将の料理をけなしてねぇのによ。なぁ、姉ちゃん。俺の膝の上で一緒に飲まねぇか?」
「え? その……困ります……」
「師匠ー? 俺の前でそういうことしたらどうなるか分かってますよね?」
店員のオネェちゃんはサッとレイヴンの背に隠れて震えてやがる。
オネェちゃんまでレイヴン贔屓ってか?
何か面白くねぇな。
俺の態度を察しているくせに、レイヴンは無視して食事の続きを楽しみ始めた。
こういう時、ホント冷たいんだよな。
コッチはさっきから除け者にされてばっかりだってのによ。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
手紙
ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。
そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。
すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜
ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。
恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。
※猫と話せる店主等、特殊設定あり
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

僕のおじさんは☓☓でした
林 業
BL
両親が死んだ。
引取ってくれる親戚がいないということで、施設に入る直前だったとき、絶縁状態だった母の兄に引き取られた。
彼には一緒に住んでいる人がいると言う。
それでもという条件で一緒にすむことになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる