【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子

136.何か面白くない

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「あ、あの……ご注文は?」
「わざわざ取りに来てくれたんですね? ありがとう。隣の怖いおじさんはどうせ放っておいても飲むのでビールを。俺も……」
「……ッチ。これだから顔のイイヤツは。お前はジンジャーエールにしておけ。すぐ酔っ払うんだからよ」
「何か言ってるけど、そこは無視して……はいはい。別に無理して飲むつもりじゃなかったです。お酒は以上で。後はさっぱりしたものって何かありますか?」
「今日は、新鮮なお野菜をたくさん頂いてまして。そのまま切ってお出ししてます。女将さんが手作りのディップソースを作ってますので、それを付けて食べると美味しいですよ」

 緊張しながらも、丁寧に説明してくれるオネェちゃんにそれも一緒にお願いします、と、レイヴンが一旦注文を終えてからカウンターの女将へと向き直る。

「誰かさんと違って、優しい子は自然とモテるねぇ。顔良し、性格良しならどこに行っても恥ずかしくないねぇ。今日はたくさん食べていきな?」
「ありがとうございます。俺なんかより皆さんのほうが親切ですし。いつもお世話になっていますから」
「出たよ、レイヴンの猫被り。これだからにゃんこは気まぐれなんだよなァ」
「……うるさいですよ、師匠。ほら待望のビールがきましたから静かに飲んでください」

 目の前にマグが置かれると、早速手を伸ばして一気に呷る。

「うわぁ……あの人もう飲み干してません?」
「いつもこんな調子だよ。全く。ほら、これも食べな?」

 大皿に分厚く切られた肉と炒められた野菜が載っている。
 肉は外側をじっくりと焼かれているが、中は柔かいままで美味しそうだ。
 上からトマトのソースがかかっており食欲をそそる。
 
 レイヴンのジンジャエールと切られた野菜もやってきて、一気にカウンター上が賑やかになってくる。

「ん……このお野菜は本当に新鮮ですね。ソースなしでも美味しい。でも、このソースも美味しそうです。これは……レモン?」
「そうそう、混ぜてみたんだよ。ちょっと酸っぱいかもしれないけどねぇ」
「そんな野菜をムシャムシャして美味いかぁ? まぁ、小動物っぽいもんな」
「今日はやたらと噛みついてきますね、師匠。大人しくビール飲んでてくださいよ」

お替りの催促をすると、黙らせるようにドン、と女将がマグを置いてくる。

「あたしは美味しく食べてくれる子の味方だからね。美味くないと言うヤツに出す飯はないよ!」
「野菜は野菜だろうが。別に女将の料理をけなしてねぇのによ。なぁ、姉ちゃん。俺の膝の上で一緒に飲まねぇか?」
「え? その……困ります……」
「師匠ー? 俺の前でそういうことしたらどうなるか分かってますよね?」

 店員のオネェちゃんはサッとレイヴンの背に隠れて震えてやがる。
 オネェちゃんまでレイヴン贔屓ってか?
 
 何か面白くねぇな。

 俺の態度を察しているくせに、レイヴンは無視して食事の続きを楽しみ始めた。

 こういう時、ホント冷たいんだよな。
 コッチはさっきから除け者にされてばっかりだってのによ。
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