【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子

133.祭りの後片付け<レイヴン・テオドール視点>

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 翌日、祭りのために置いておいた魔石を回収するために師匠と俺で手分けして動いていた。
 ある程度は今後のために残しておくものの全てをこのまま動かすには予算も魔力も足りないため、過分なものは撤去していく。

「師匠の方が早く終わりそうだな。王宮側は老朽化したものと元々変えていたし、あちらは撤去するものが少ないはず……」

 今日も書類を見ながら声に出して確認していると、魔塔所属の魔法使いから予定のものを撤去し終えた報告が入る。

「予定より早かったな。その魔石は魔塔で保管する。手分けして運んでおいてくれ」
「はい。畏まりました。補佐官様、我々は魔塔に戻って各々の作業に戻ってよろしいでしょうか?」
「あぁ。皆に伝えてくれ。私と魔塔主様はまだやることが残っているから、皆は王宮から頼まれている作業と魔法の訓練を引き続き行うように」

 報告に来た魔法使いは回収した魔石を持って他の魔法使いにも指示を伝えていく。
 元々その予定で組んであるので問題はないはずだ。

 一旦書類を目から離して提げていた袋にしまい込む。

「後は薬と研究用の魔石を見に行かないと。先に店に行っていようかな……」

 軽く伸びをしていると、視線の先に遠目でも師匠が珍しく歩いて近づいてくる。
 避ける町民、慣れているので声を掛ける町民もいるが、今日は機嫌が良いらしく師匠も軽い挨拶をしながら俺の前で立ち止まった。

「そっちも早かったな。アイツらも引き上げたし、今日しなくちゃいけねぇ面倒なことは大体終わったな」
「お疲れさまです、師匠。貴賓をアイツら呼ばわりしないでくださいよ、もう。ところで、今日はちゃんと歩いて来たんですね」
「街中にいきなり飛んでくる訳にも行かねぇだろ? 別にココは歩きながら煙草も吸えるし、そこまでダルくねぇからな」
「この前飛んできた人が何を言ってるんですか。言うこと成すこと、毎回適当すぎるんですよ。それと、煙草は迷惑になるので歩きながら吸わないでください」

 しっかりと咥え煙草で現れた師匠に苦言を呈すると、師匠も渋々煙草を揉み消す。
 地面を汚すなんて以ての外なので、吸い殻もきちんと魔法で燃やして処理をしてもらう。

「それで師匠、先に薬屋でいいですか?」
「別に薬は届けさせればいいのによ。なんでわざわざ取りに行かなくちゃいけねぇんだろうなぁ」
「師匠が予算で自分用の薬の材料を混ぜるからでしょう? ギャンブルで使った分、魔塔の予算使い込むとか、俺が後で返済させてなかったら牢屋行きですからね! これですら、俺が頭を下げてなんとかお願いしてるからいいものの……」
「分かった、分かったって! ほら、行くぞ!」

 説教が長引きそうだと思ったのか、師匠が俺の腕を引っ張り無理矢理歩かせようとする。

「もう、急に歩き出さないでくださいよ! ホント、自分勝手すぎるし。離してください、自分で歩けますから」

 師匠の手を振り払い、早足で薬屋へと向かう。

 俺のことをニヤニヤ顔で見てるのが、見なくても分かるし。
 のんびりと後からついてきてるみたいだし、後は無視して目的地へと急いだ方が良さそうだ。

 +++

「いつもありがとうございます。ご注文の品は以上でしょうか?」
「あぁ。この薬の出来は悪くねぇな。これならアイツの調合も時間短縮できそうだ」

 俺が確認している間にレイヴンが支払いを済ませ、受け取った薬を袋へ仕舞っていく。
 別の薬に気を取られないうちにと素早く取引を終えてしまうと、俺を急かして外に出る。

「おいおい、そんなに急がなくてもいいだろ」
「放っておいたら何を買うか分かりませんから。俺の前では妙な物は買わせません」
「妙な物って。お前は俺の母親かぁ? ……まぁいいや。さっさとジジイの店に行くぞ」

 俺のこと何だと思ってるんだよ、毎回毎回。
 まぁ、レイちゃんと買い物だと思えば楽しいモンだが。
 
 イイ気分だし、肩を引き寄せて鼻歌混じりで歩き始める。
 肩を寄せすぎたせいで、身長差でうまく歩けないレイヴンが時々たたらを踏みながら、それでも大人しく一緒に道を進む。
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