【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

文字の大きさ
上 下
136 / 483
第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子

133.祭りの後片付け<レイヴン・テオドール視点>

しおりを挟む
 翌日、祭りのために置いておいた魔石を回収するために師匠と俺で手分けして動いていた。
 ある程度は今後のために残しておくものの全てをこのまま動かすには予算も魔力も足りないため、過分なものは撤去していく。

「師匠の方が早く終わりそうだな。王宮側は老朽化したものと元々変えていたし、あちらは撤去するものが少ないはず……」

 今日も書類を見ながら声に出して確認していると、魔塔所属の魔法使いから予定のものを撤去し終えた報告が入る。

「予定より早かったな。その魔石は魔塔で保管する。手分けして運んでおいてくれ」
「はい。畏まりました。補佐官様、我々は魔塔に戻って各々の作業に戻ってよろしいでしょうか?」
「あぁ。皆に伝えてくれ。私と魔塔主様はまだやることが残っているから、皆は王宮から頼まれている作業と魔法の訓練を引き続き行うように」

 報告に来た魔法使いは回収した魔石を持って他の魔法使いにも指示を伝えていく。
 元々その予定で組んであるので問題はないはずだ。

 一旦書類を目から離して提げていた袋にしまい込む。

「後は薬と研究用の魔石を見に行かないと。先に店に行っていようかな……」

 軽く伸びをしていると、視線の先に遠目でも師匠が珍しく歩いて近づいてくる。
 避ける町民、慣れているので声を掛ける町民もいるが、今日は機嫌が良いらしく師匠も軽い挨拶をしながら俺の前で立ち止まった。

「そっちも早かったな。アイツらも引き上げたし、今日しなくちゃいけねぇ面倒なことは大体終わったな」
「お疲れさまです、師匠。貴賓をアイツら呼ばわりしないでくださいよ、もう。ところで、今日はちゃんと歩いて来たんですね」
「街中にいきなり飛んでくる訳にも行かねぇだろ? 別にココは歩きながら煙草も吸えるし、そこまでダルくねぇからな」
「この前飛んできた人が何を言ってるんですか。言うこと成すこと、毎回適当すぎるんですよ。それと、煙草は迷惑になるので歩きながら吸わないでください」

 しっかりと咥え煙草で現れた師匠に苦言を呈すると、師匠も渋々煙草を揉み消す。
 地面を汚すなんて以ての外なので、吸い殻もきちんと魔法で燃やして処理をしてもらう。

「それで師匠、先に薬屋でいいですか?」
「別に薬は届けさせればいいのによ。なんでわざわざ取りに行かなくちゃいけねぇんだろうなぁ」
「師匠が予算で自分用の薬の材料を混ぜるからでしょう? ギャンブルで使った分、魔塔の予算使い込むとか、俺が後で返済させてなかったら牢屋行きですからね! これですら、俺が頭を下げてなんとかお願いしてるからいいものの……」
「分かった、分かったって! ほら、行くぞ!」

 説教が長引きそうだと思ったのか、師匠が俺の腕を引っ張り無理矢理歩かせようとする。

「もう、急に歩き出さないでくださいよ! ホント、自分勝手すぎるし。離してください、自分で歩けますから」

 師匠の手を振り払い、早足で薬屋へと向かう。

 俺のことをニヤニヤ顔で見てるのが、見なくても分かるし。
 のんびりと後からついてきてるみたいだし、後は無視して目的地へと急いだ方が良さそうだ。

 +++

「いつもありがとうございます。ご注文の品は以上でしょうか?」
「あぁ。この薬の出来は悪くねぇな。これならアイツの調合も時間短縮できそうだ」

 俺が確認している間にレイヴンが支払いを済ませ、受け取った薬を袋へ仕舞っていく。
 別の薬に気を取られないうちにと素早く取引を終えてしまうと、俺を急かして外に出る。

「おいおい、そんなに急がなくてもいいだろ」
「放っておいたら何を買うか分かりませんから。俺の前では妙な物は買わせません」
「妙な物って。お前は俺の母親かぁ? ……まぁいいや。さっさとジジイの店に行くぞ」

 俺のこと何だと思ってるんだよ、毎回毎回。
 まぁ、レイちゃんと買い物だと思えば楽しいモンだが。
 
 イイ気分だし、肩を引き寄せて鼻歌混じりで歩き始める。
 肩を寄せすぎたせいで、身長差でうまく歩けないレイヴンが時々たたらを踏みながら、それでも大人しく一緒に道を進む。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件

深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。 ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが―― その内容がとても信じられないもので… bloveさんにも投稿しております。 完結しました。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

処理中です...