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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子
134.師匠と弟子でお買い物
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「……やっと着いた……。もう、師匠! 街の皆さんにも笑われてたんですけど!」
「仲良しって感じで良かったじゃねぇか? 何照れてんだよ」
「どこがですが……引きずられてる可哀想な子どもみたいに思われてましたよ絶対」
店の前でいつものようにやり取りをしていると、店の扉が音を立てて急に開く。
「ワシの店の前で何を騒いどるんじゃ! 用があるならさっさと中に入らんか!」
「すみません! クソルキさん。失礼しました」
「んだよ、ジジイ。相変わらずいちいち突っかかってきやがって」
相変わらずジジイは腹立つ態度しかとらねぇんだよな。
これでよく客商売ができるよなぁ?
俺がイライラしてるのに気づいたレイヴンが、俺の背を押してきたから、自然と店内へとなだれ込む形になった。
「今日は師匠と一緒に魔石を見せてもらおうと思いまして。魔道具用のお願いしていたものと、後は……」
恥ずかしがったレイヴンが言い淀む。
笑ってレイヴンの手首を掴んで自分の手首と合わせて見せる。
「ブレスレットに合いそうな魔石、あるだろ? コイツと俺の分を頼みたい」
「ほう? お前さんたちにのう。まぁ、いいわい。いくつか見繕ってやろう」
ジジイはブレスレットを観察し、二つのブレスレットを見比べて暫し思案すると一度店の奥に引っ込んでから、幾つかの魔石を持って戻ってくる。
ケースの中に載っている魔石は全て違う輝きを放っており、形も少しずつ違っている。
透き通っている魔石もあれば、しっかりと色の染まっている魔石もある。
興味本位で俺がひょいとつまみあげると、ジジイがペチと手を叩いて睨みつけてきやがった。
「痛ぇな! 何しやがるクソジジイ!」
「誰が勝手に触っていいと言った! ワシはレイヴンに見せようとしたしたんじゃ。ほれ、レイヴン。見てみぃ」
態度をコロリと変えて孫を可愛がるような笑顔でレイヴンに魔石を見せやがって。
自然と舌打ちする。
俺がイラっとしているのを無視したレイヴンは誘われるがままに魔石を見て手を翳す。
レイヴンは興味津々で、見ていると気分も落ち着いてくる。
「この魔石は色も透き通っていてキレイですね。こちらが…… 防御魔法で、こちらは回復魔法ですね。やっぱりブレスレットに入れるなら補助系になりますよね。魔力強化も悪くないと思いますけど……」
「お前は危なっかしいんだから、いざという時に役に立つやつにしとけ」
「別に好きなの選んだっていいじゃないですか。何か言い方が腹立つなぁ」
レイヴンが文句を言うと、ジジイまで俺に向かってそうじゃそうじゃ! と噛みついて加勢してきやがる。
「いつもより二倍煩ぇ! じゃあ、適当に一番高いヤツにしとけ。ジジイのとっておきがあるだろ」
「当たり前じゃ。ここにあるのはどれも一級品じゃからな。アンタはどれでも構わんが、レイヴンには怪我をしてほしくないからの」
「クソルキさん、ありがとうございます。俺のことを心配して下さってるんですね」
楽しく会話をする二人と何故か除け者にされている俺とで、どの魔石にしようかと話が進んでいく。
結局俺とジジイに説得されたレイヴンがいざという時に身を守る魔石にするということになり、俺の魔石についてはまた後日ということになった。
「何ですか……その内緒っていうのは。子どもみたいに」
「まぁいいじゃねぇか。じゃあな、爺さん」
「お前には会いたくないわい。レイヴン今度はゆっくりと茶でも飲みに来るんじゃぞ」
「いつもありがとうございます。また寄らせて頂きますね」
ジジイに挨拶をし笑顔で店を出たレイヴンを置いて、また一旦引き返して店内へと戻ろうと踵を返すと、何事かと声をかけようとしたレイヴンと目が合う。
「すぐ戻る」
一言先に声をかけると、レイヴンは疑問そうな顔を見せたが大人しくその場で待機する。
軽く手を振り、また店の中へと戻る。
「仲良しって感じで良かったじゃねぇか? 何照れてんだよ」
「どこがですが……引きずられてる可哀想な子どもみたいに思われてましたよ絶対」
店の前でいつものようにやり取りをしていると、店の扉が音を立てて急に開く。
「ワシの店の前で何を騒いどるんじゃ! 用があるならさっさと中に入らんか!」
「すみません! クソルキさん。失礼しました」
「んだよ、ジジイ。相変わらずいちいち突っかかってきやがって」
相変わらずジジイは腹立つ態度しかとらねぇんだよな。
これでよく客商売ができるよなぁ?
俺がイライラしてるのに気づいたレイヴンが、俺の背を押してきたから、自然と店内へとなだれ込む形になった。
「今日は師匠と一緒に魔石を見せてもらおうと思いまして。魔道具用のお願いしていたものと、後は……」
恥ずかしがったレイヴンが言い淀む。
笑ってレイヴンの手首を掴んで自分の手首と合わせて見せる。
「ブレスレットに合いそうな魔石、あるだろ? コイツと俺の分を頼みたい」
「ほう? お前さんたちにのう。まぁ、いいわい。いくつか見繕ってやろう」
ジジイはブレスレットを観察し、二つのブレスレットを見比べて暫し思案すると一度店の奥に引っ込んでから、幾つかの魔石を持って戻ってくる。
ケースの中に載っている魔石は全て違う輝きを放っており、形も少しずつ違っている。
透き通っている魔石もあれば、しっかりと色の染まっている魔石もある。
興味本位で俺がひょいとつまみあげると、ジジイがペチと手を叩いて睨みつけてきやがった。
「痛ぇな! 何しやがるクソジジイ!」
「誰が勝手に触っていいと言った! ワシはレイヴンに見せようとしたしたんじゃ。ほれ、レイヴン。見てみぃ」
態度をコロリと変えて孫を可愛がるような笑顔でレイヴンに魔石を見せやがって。
自然と舌打ちする。
俺がイラっとしているのを無視したレイヴンは誘われるがままに魔石を見て手を翳す。
レイヴンは興味津々で、見ていると気分も落ち着いてくる。
「この魔石は色も透き通っていてキレイですね。こちらが…… 防御魔法で、こちらは回復魔法ですね。やっぱりブレスレットに入れるなら補助系になりますよね。魔力強化も悪くないと思いますけど……」
「お前は危なっかしいんだから、いざという時に役に立つやつにしとけ」
「別に好きなの選んだっていいじゃないですか。何か言い方が腹立つなぁ」
レイヴンが文句を言うと、ジジイまで俺に向かってそうじゃそうじゃ! と噛みついて加勢してきやがる。
「いつもより二倍煩ぇ! じゃあ、適当に一番高いヤツにしとけ。ジジイのとっておきがあるだろ」
「当たり前じゃ。ここにあるのはどれも一級品じゃからな。アンタはどれでも構わんが、レイヴンには怪我をしてほしくないからの」
「クソルキさん、ありがとうございます。俺のことを心配して下さってるんですね」
楽しく会話をする二人と何故か除け者にされている俺とで、どの魔石にしようかと話が進んでいく。
結局俺とジジイに説得されたレイヴンがいざという時に身を守る魔石にするということになり、俺の魔石についてはまた後日ということになった。
「何ですか……その内緒っていうのは。子どもみたいに」
「まぁいいじゃねぇか。じゃあな、爺さん」
「お前には会いたくないわい。レイヴン今度はゆっくりと茶でも飲みに来るんじゃぞ」
「いつもありがとうございます。また寄らせて頂きますね」
ジジイに挨拶をし笑顔で店を出たレイヴンを置いて、また一旦引き返して店内へと戻ろうと踵を返すと、何事かと声をかけようとしたレイヴンと目が合う。
「すぐ戻る」
一言先に声をかけると、レイヴンは疑問そうな顔を見せたが大人しくその場で待機する。
軽く手を振り、また店の中へと戻る。
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