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Veil of Night
5.美術館内部
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美術館内部に侵入するのは容易いことだった。
電源が落とされれば警備の監視カメラも役に立たない。
隙を見て裏口から侵入し、慌てる警備員たちに背中側から麻酔銃をしっかりと打ち込んでいく。
今回は遠くからターゲット狙わない分、いくつか接近戦用の武器を持ち込む必要があった。
銃弾も数が多ければそれだけ金ががかる。
クーゲル的には経費がかさめばかさむほど、手に残る金が少なくなってしまう。
(ロウに請求してやろう。正直、遠くから一発狙う方が楽だ)
楽なのは確実に当てる腕があるからこそなのだが、クーゲルは面倒ごとを嫌う。
スマートに淡々とこなす方が自分にあっていると思っていた。
静寂に包まれる一方で、警備員と取り仕切る上司の声がホール内に響き渡っている。
電源の復旧はまだかと声高に叫んでいるようだが、予備電源まで丁寧に壊されているらしく暫くは復旧の見込みがないらしい。
用意周到なやり口も怪盗アンノウンならではだ。
「大変です! 警備室もやられてます!」
「どいつもこいつも……! いいか、アンノウンは必ず女神の心臓を狙ってくるはずだ。力のある者たちを回しておけ!」
女神の心臓というのが、アンノウンが狙っている宝石の名前だ。
手のひら大の大きな宝石で、今回の展示物の中でも目玉とされており資産家の私物であるコレクションの中でも最大級の価値を持つと言われていた。
混乱している中、資産家も警備責任者と思しき人物の前へ姿を見せる。
「いざとなれば、私自らがヤツとやり合いましょう。この闇を得意とするのはアンノウンだけではないことを思い知らせてやる」
「そんな、お手を煩わせるなど……」
「ヤツは間違いなく何かしらのトリックを駆使しているに違いない。あなた方が彼を相手にするには分が悪いでしょう。こちらには別種族から選出したガードマンもいます。ご心配なく」
「……っ、分かりました」
おそらく彼は美術館の関係者なのだろう。予告状が出た以上動かざるを得ないが、今までも怪盗アンノウンにはやられっぱなしで手も足も出ない状態だ。
それを知っている資産家がメンツを潰さない程度に美術館側にも協力させ、自らお宝を守ろうとしている構図らしい。
あの資産家は賞金がかけられていることもあり、ただの人間ではなさそうだ。
となれば、クーゲルが密かに準備してきた物を使うことになる事態も十分あり得る。
(後はアイツの仕事待ちだ。こちらも他のならず者で多少小遣い稼ぎができることを祈るしかないな)
クーゲルはアンノウンと別に単独に動く必要がある。
アンノウンがターゲットたちを引き付けている間にクーゲルも警備の数を減らし、宝石を奪って逃走する際に止めに来るであろうターゲットを仕留めればいい。
綿密な打ち合わせをした訳ではないが、クーゲルは自分の役割を勝手に察してやるべき仕事を淡々と進めていく。
警備関連が再始動するまではまだもう少し余裕があるため、クーゲルも多少大胆に動いて一人ずつ敵を眠らせていった。
人数は多いが、今のところ人間の警察関係者のみなので気を付けていればクーゲルが不利になることはない。
問題があるとすれば、自信満々の資産家が用意したというガードマンだろう。
彼らは一番のお宝がある美術館の最奥のメインホールを守っているはずだ。
(別種族だと豪語していたな。おそらくは屈強なオーガや獣人たちだろう。奴らは麻酔も効きにくいし無駄にタフだ)
クーゲルは弾を小まめに補充しながら、夜の美術館を音も立てずに忍び歩いていく。
電源が落とされれば警備の監視カメラも役に立たない。
隙を見て裏口から侵入し、慌てる警備員たちに背中側から麻酔銃をしっかりと打ち込んでいく。
今回は遠くからターゲット狙わない分、いくつか接近戦用の武器を持ち込む必要があった。
銃弾も数が多ければそれだけ金ががかる。
クーゲル的には経費がかさめばかさむほど、手に残る金が少なくなってしまう。
(ロウに請求してやろう。正直、遠くから一発狙う方が楽だ)
楽なのは確実に当てる腕があるからこそなのだが、クーゲルは面倒ごとを嫌う。
スマートに淡々とこなす方が自分にあっていると思っていた。
静寂に包まれる一方で、警備員と取り仕切る上司の声がホール内に響き渡っている。
電源の復旧はまだかと声高に叫んでいるようだが、予備電源まで丁寧に壊されているらしく暫くは復旧の見込みがないらしい。
用意周到なやり口も怪盗アンノウンならではだ。
「大変です! 警備室もやられてます!」
「どいつもこいつも……! いいか、アンノウンは必ず女神の心臓を狙ってくるはずだ。力のある者たちを回しておけ!」
女神の心臓というのが、アンノウンが狙っている宝石の名前だ。
手のひら大の大きな宝石で、今回の展示物の中でも目玉とされており資産家の私物であるコレクションの中でも最大級の価値を持つと言われていた。
混乱している中、資産家も警備責任者と思しき人物の前へ姿を見せる。
「いざとなれば、私自らがヤツとやり合いましょう。この闇を得意とするのはアンノウンだけではないことを思い知らせてやる」
「そんな、お手を煩わせるなど……」
「ヤツは間違いなく何かしらのトリックを駆使しているに違いない。あなた方が彼を相手にするには分が悪いでしょう。こちらには別種族から選出したガードマンもいます。ご心配なく」
「……っ、分かりました」
おそらく彼は美術館の関係者なのだろう。予告状が出た以上動かざるを得ないが、今までも怪盗アンノウンにはやられっぱなしで手も足も出ない状態だ。
それを知っている資産家がメンツを潰さない程度に美術館側にも協力させ、自らお宝を守ろうとしている構図らしい。
あの資産家は賞金がかけられていることもあり、ただの人間ではなさそうだ。
となれば、クーゲルが密かに準備してきた物を使うことになる事態も十分あり得る。
(後はアイツの仕事待ちだ。こちらも他のならず者で多少小遣い稼ぎができることを祈るしかないな)
クーゲルはアンノウンと別に単独に動く必要がある。
アンノウンがターゲットたちを引き付けている間にクーゲルも警備の数を減らし、宝石を奪って逃走する際に止めに来るであろうターゲットを仕留めればいい。
綿密な打ち合わせをした訳ではないが、クーゲルは自分の役割を勝手に察してやるべき仕事を淡々と進めていく。
警備関連が再始動するまではまだもう少し余裕があるため、クーゲルも多少大胆に動いて一人ずつ敵を眠らせていった。
人数は多いが、今のところ人間の警察関係者のみなので気を付けていればクーゲルが不利になることはない。
問題があるとすれば、自信満々の資産家が用意したというガードマンだろう。
彼らは一番のお宝がある美術館の最奥のメインホールを守っているはずだ。
(別種族だと豪語していたな。おそらくは屈強なオーガや獣人たちだろう。奴らは麻酔も効きにくいし無駄にタフだ)
クーゲルは弾を小まめに補充しながら、夜の美術館を音も立てずに忍び歩いていく。
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