あなたが興味あるのは妹だけですよね？

４

少し褒めたらすぐに赤くなった。
男の子ってみんな単純。

「ソフィアさん。ぼ、僕と付き合ってくれませんか？」

そう私に言ってきたのは、お姉ちゃんが好きだった男の子。
本当はこの子には手を出さないってお姉ちゃんに約束したけど、どうしよっかな。

「うーん……でも、お姉ちゃんに悪いし……」

一応約束は守ってあげようかな。
あくまで、私は……だけどね。

「そんなの気にしなくていいよ！フローラのことなんて僕全然タイプじゃないし！あいつブスだし！ソフィアの方が何倍も可愛いよ！」

「で、でも……私……お姉ちゃんに何されるか……」

たくさん練習したから、涙を自然に出すことができるようになった。
今回もちょっと泣いてみたら効果的面だった。
彼は私を肩を掴んで、まるで自分が主人公であるかのように言った。

「あいつが何かしてきても僕が守るよ！約束する！」

「本当に？」

「ああ！本当さ！君のためなら命をかける！」

こういう馬鹿ほど、簡単に命をかけたがる。
そう言えば女の子が喜ぶと本気で思っているのかしら。

「じゃ、じゃあ……よろしくお願いします」

この上目遣いも練習済みだ。
彼は真っ赤になって、嬉しそうに笑った……


「ソフィア！ソフィア！」

扉を叩く音で私は目を覚ました。
壁にかけられた時計を見ると、すでに昼の十二時になっていた。

「ふっ……懐かしい思い出ね……」

私はベッドから抜け出すと、自室の扉を開けた。
そこには心配した様子のロイドの姿があった。

「大丈夫かい？どこか体調でも悪いの？」

昼まで寝ている私を心配して、部屋まで来たみたいだ。

「ううん。大丈夫。ただ……ちょっと怖い夢を見ちゃって……」

小動物のように体を縮こませてみると、ロイドが優しく抱きしめてくれた。

「大丈夫。僕が一生守るからね。命をかけて」

「ふふっ……ありがとう。ロイドさぁん」

どうして馬鹿はすぐに命をかけたがるのだろう。
そんなに愛が欲しいのだろうか、すごいねと褒めて欲しいのだろうか。

「ロイドさん。私のこと好きですかぁ？」

お姉ちゃんの元婚約者。
今は私の婚約者。

「ああもちろんだ！月よりも美しい君を愛している！」

つまり私の見た目が好きということなのだろうか。
私の性格とかじゃなくて、この見た目を愛しているのだろうか。

「ありがとうございますぅ……他にどんな所が好きですかぁ？」

「え？他？そ、そうだな……スタイルがいい所かな？」

なに焦ってるの？
私のこと愛しているんでしょ、お姉ちゃんよりも好きなんでしょ？
なんで見た目しかいい所言えないの？
おかしいんじゃないの？

って、私こそなに焦っているのかしら。
彼は今までの人達と同じってだけじゃない。
そんなこと昔から決まっているじゃない。

「嬉しいなぁ……」

作った笑顔に皆簡単に騙される。
ロイドも気を許し、顔いっぱいに笑顔を広げている。
私の心も知らないで、自分勝手に想像して、私を聖人君主であるかのように扱う。

両親がその典型だ。
容姿に優れていた私を褒め続け、欲しいものは何でもくれた。
でもそれは私が美しい見た目で生まれてきたから。

お姉ちゃんみたいなパッとしない見た目だったら、きっとこんなに贅沢をさせてもらえなかった。

時々愛が分からなくなる。
目の前のこの人は、一体私の何が好きで話しているのか。
何が好きで愛を叫ぶのか。

出てくる言葉は皆同じ。
可愛いとか綺麗とか美しいとか……。
定型文みたいにそれを使って、そこに愛でも添えて言えば、私が喜ぶと思ってる。

「……ソフィア？ど、どうかしたのかい？」

あらいけない。
少し考えすぎてしまったみたい。

「いえ、何でもありません。ただ……ロイドさんと一緒にいられるのがとても幸せで……つい……」

「そ、そうか？ははっ……僕も君みたいな美人と婚約できて嬉しいよ」

きっとこの人も私の見た目が好きで、お姉ちゃんを捨てたのだ。
両親と同じ、お姉ちゃんの初恋の男の子と同じ。

私の価値ってなんだろう。
笑顔を振りまく間にも、私は考えてしまう。

もし容姿が優れてなかったら……お姉ちゃんみたいな顔で生まれてきたら私はどんな人生を迎えていただろうか。
価値のない女性として誰からも愛されない日々を過ごすのだろうか。

それを考えると怖くなる。
まるで、綱渡りをしている気分になるから。

だから私は今日も気持ちを押し殺す。
私の幸せのために。