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私が二歳の時、妹のソフィアは生まれた。
さすがにその当時の記憶はないが、気づいた時には妹は両親の愛を独り占めにしていた。
「ソフィアちゃん。可愛いわね!さすが私の娘ね!」
「将来が楽しみだ!間違ってもフローラみたいにはなるなよ!」
両親は私の目の前で、毎日のようにソフィアに言っていた。
最初は困惑した。
あんなに優しく構ってくれた両親が、急にソフィアに夢中になって、私をほったらかしにしたことを。
だから両親に何とか構ってもらおうと、まだ幼い私は必死になった。
しかしそれは全て逆効果だった。
「フローラ。もう六歳になるんだからいい加減駄々をこねるのはやめろ」
「そうよ、あなたはお姉ちゃんなのよ。ソフィアのために我慢しなさい!」
四歳のソフィアは母の足にしがみつきながら、不思議そうに私を見ていた。
だが、心なしか口角が上がっているように見えた。
そうして時が流れていく毎に、ソフィアはどんどん頭角を現していった。
子供ながらにして容姿端麗と言えるほどの美形で、友達もたくさん出来た。
そんな自慢の娘を両親が放っておくはずもなく、今までよりもさらに甘やかし、彼女の望むものは何でも与えた。
ソフィアは味を占めたように、遠慮することもなく自分の欲しいものを両親にねだり、その中に私の所有物が入っていても気にしなかった。
私の大事なものはソフィアにたくさん奪われてしまったのだ。
しかし、そんなソフィアにも弱点が一つだけあった。
それは勉強だった。
容姿端麗で人当たりも良い彼女だが、勉強だけはどうしても苦手らしく、思うように成績が上がらなかった。
その度に家庭教師の先生は両親から激しく叱責され、何度も人が交代していった。
「お父さん、お母さん。あまり先生を叱らないで。勉強できない私が悪いの……」
ソフィアは目に涙を浮かべながら両親に言っていたが、火に油で、両親は更に優秀な先生を付けようと必死になった。
その様子を見てソフィアがニヤリと笑みを浮かべていたのを知っているのは、おそらく私だけだろう。
彼女はその天使のような笑顔で、人を操るのが好きなのかもしれない。
そう思ったのは、ある提案をされてからだった。
「お姉ちゃん。お願いがあるんだけど……」
妙に優しい口調で言ったソフィアは、私に自分の宿題を渡してきた。
「これ明日までにお願いね?」
「……え?これはあなたの宿題でしょ?あなたがやるべきじゃない?」
「……ふーん。そういう態度取るんだ。じゃあ仕方ないね。お姉ちゃんの好きな男の子にアタックしてソフィアのものにしちゃうね」
「え……そんな……」
彼女の目にはやりかねない強さがあった。
私は自分の初恋を守るために、宿題をやることを選択した。
しかし、その半年後。
私の初恋の男の子はソフィアと付き合い始めた……。
ソフィアは私なんかと違い、女の子としての美しさに溢れていた。
生まれた時から既に私なんかよりも、何倍も価値がある女の子だった。
だからきっと、全てを奪っても許されるのだ。
私の大事にしていたお人形も、指輪も、洋服も、初恋も、全部ソフィアに奪われた。
両親はそれを素晴らしいことと喜び、飽きもせずにソフィアを褒めた。
全部狂っている。
本当はそう叫んで殴ってやりたかった。
妹も両親も、簡単に彼女に心開いた初恋の男の子も。
だが、私にはそんなことできなかった。
これといって優れた所も勇気もない私は、そうやって周囲に搾取され生きていくのだ。
それが価値のない人間の生き方なのだ。
そう考えるようになった私は、家族に何の期待もしなくなった……
さすがにその当時の記憶はないが、気づいた時には妹は両親の愛を独り占めにしていた。
「ソフィアちゃん。可愛いわね!さすが私の娘ね!」
「将来が楽しみだ!間違ってもフローラみたいにはなるなよ!」
両親は私の目の前で、毎日のようにソフィアに言っていた。
最初は困惑した。
あんなに優しく構ってくれた両親が、急にソフィアに夢中になって、私をほったらかしにしたことを。
だから両親に何とか構ってもらおうと、まだ幼い私は必死になった。
しかしそれは全て逆効果だった。
「フローラ。もう六歳になるんだからいい加減駄々をこねるのはやめろ」
「そうよ、あなたはお姉ちゃんなのよ。ソフィアのために我慢しなさい!」
四歳のソフィアは母の足にしがみつきながら、不思議そうに私を見ていた。
だが、心なしか口角が上がっているように見えた。
そうして時が流れていく毎に、ソフィアはどんどん頭角を現していった。
子供ながらにして容姿端麗と言えるほどの美形で、友達もたくさん出来た。
そんな自慢の娘を両親が放っておくはずもなく、今までよりもさらに甘やかし、彼女の望むものは何でも与えた。
ソフィアは味を占めたように、遠慮することもなく自分の欲しいものを両親にねだり、その中に私の所有物が入っていても気にしなかった。
私の大事なものはソフィアにたくさん奪われてしまったのだ。
しかし、そんなソフィアにも弱点が一つだけあった。
それは勉強だった。
容姿端麗で人当たりも良い彼女だが、勉強だけはどうしても苦手らしく、思うように成績が上がらなかった。
その度に家庭教師の先生は両親から激しく叱責され、何度も人が交代していった。
「お父さん、お母さん。あまり先生を叱らないで。勉強できない私が悪いの……」
ソフィアは目に涙を浮かべながら両親に言っていたが、火に油で、両親は更に優秀な先生を付けようと必死になった。
その様子を見てソフィアがニヤリと笑みを浮かべていたのを知っているのは、おそらく私だけだろう。
彼女はその天使のような笑顔で、人を操るのが好きなのかもしれない。
そう思ったのは、ある提案をされてからだった。
「お姉ちゃん。お願いがあるんだけど……」
妙に優しい口調で言ったソフィアは、私に自分の宿題を渡してきた。
「これ明日までにお願いね?」
「……え?これはあなたの宿題でしょ?あなたがやるべきじゃない?」
「……ふーん。そういう態度取るんだ。じゃあ仕方ないね。お姉ちゃんの好きな男の子にアタックしてソフィアのものにしちゃうね」
「え……そんな……」
彼女の目にはやりかねない強さがあった。
私は自分の初恋を守るために、宿題をやることを選択した。
しかし、その半年後。
私の初恋の男の子はソフィアと付き合い始めた……。
ソフィアは私なんかと違い、女の子としての美しさに溢れていた。
生まれた時から既に私なんかよりも、何倍も価値がある女の子だった。
だからきっと、全てを奪っても許されるのだ。
私の大事にしていたお人形も、指輪も、洋服も、初恋も、全部ソフィアに奪われた。
両親はそれを素晴らしいことと喜び、飽きもせずにソフィアを褒めた。
全部狂っている。
本当はそう叫んで殴ってやりたかった。
妹も両親も、簡単に彼女に心開いた初恋の男の子も。
だが、私にはそんなことできなかった。
これといって優れた所も勇気もない私は、そうやって周囲に搾取され生きていくのだ。
それが価値のない人間の生き方なのだ。
そう考えるようになった私は、家族に何の期待もしなくなった……
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