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数日後。
部屋で本を読んでいると、部屋の扉がノックも無しに突然開いた。
そこには栗色の髪の毛の、可愛らしい令嬢が立っていて、無遠慮に部屋へと入ってくる。
「あなたがフレイム王子の婚約者の、アクアさんですね?」
言葉だけは丁寧だが、突然部屋に入ってくるあたり、礼儀は知らないらしい。
私は本をパタリと閉じると、椅子から立ち上がる。
「申し訳ありません。今は読書の時間ですので、お帰り頂けますか?」
彼女の名前などは気にもならなかった。
しかしそれが彼女の怒りを触発したのか、目つきが鋭くなる。
「私はフレイム王子の愛人のシアと申します。爵位はあなたよりも低い伯爵令嬢ですが、私の方を愛していると王子も名言されています。この意味が分かりますね?」
なるほど。
爵位や立場は下だが、愛に関していえば自分の方が勝っている。
彼女……シアはそう言いたいのだろう。
「分かりました」
わざとではないが淡々と答えてしまい、シアは眉間にしわを寄せた。
「どうやらまだ意味がよく分かっておられないようですね。あなたはフレイム王子の愛も受けていないし、そもそも婚約者には相応しくありません。感情希薄な令嬢よりも、私のような美しさに溢れた令嬢の方が、フレイム王子には相応しいです!」
「確かにそうかもしれません。しかし、私とフレイム王子の婚約を決めたのは国王様です。国王様の意見に反対をするということで、よろしいですか?」
「え……」
シアの顔が分かりやすく曇った。
しかし何かを思い出したように我に返ると、私に指を差した。
「あなたみたいな人にそんなことを言われる筋合いはないわ!」
敬語がなくなったこの姿こそが、彼女の本性みたいだ。
私は煩わしさを感じて、小さくため息をはく。
「シアさん。私とフレイム王子の婚約に反対をするというのなら、それは国王様に反対をするということ。伯爵令嬢のあなたにその覚悟がありますか? ないのなら話は終わりです。私に対しての無礼は水に流しますから、お帰りください」
今度は意図的に、言葉に怒りを込めた。
しかしシアには上手く伝わらなかったらしく、彼女は不敵な笑みを浮べている。
「あなたに無礼を働いて何が悪いというの? 本当は公爵家でもないくせに」
「え……」
ナイフで心臓を刺された気がした。
まさか、あのことを知っているというのだろうか。
シアは私の驚いた顔を見て、猫を被る余裕が出てきたらしい。
落ち着いた声で言った。
「アクアさん。フレイム王子と婚約解消をして頂けないでしょうか? あなたから事情を話して頂ければ、王子も納得すると思うので」
シアの声が不気味に聞こえた。
心臓の鼓動が早くなる。
嫌な記憶が脳裏を走り、体中が熱くなった。
「それとも私の口から説明致しましょうか? あなたが養子だって」
私の秘密を彼女は知っているみたいだ。
「どうして知っているの?」
私の問いに、シアはニヤリと笑みを深める。
「私、これでも頭脳派なんですよ? 敵になりそうな人のことは徹底的に調べるんです。あなたの子供時代のことを調べようとしたんですが何にも情報がなくて……それが逆に怪しいと思って、故郷にもお邪魔させて頂きました」
「は?」
怒りの感情が胸に広がった。
あの場所は、こんな女がいていい場所じゃない。
シアは私を嘲るように、ケラケラと笑った。
そして目に嬉しそうな色を浮かべると、大声を出した。
「あなたの負けよアクア! さっさと婚約解消しなさい! 平民風情が!」
部屋で本を読んでいると、部屋の扉がノックも無しに突然開いた。
そこには栗色の髪の毛の、可愛らしい令嬢が立っていて、無遠慮に部屋へと入ってくる。
「あなたがフレイム王子の婚約者の、アクアさんですね?」
言葉だけは丁寧だが、突然部屋に入ってくるあたり、礼儀は知らないらしい。
私は本をパタリと閉じると、椅子から立ち上がる。
「申し訳ありません。今は読書の時間ですので、お帰り頂けますか?」
彼女の名前などは気にもならなかった。
しかしそれが彼女の怒りを触発したのか、目つきが鋭くなる。
「私はフレイム王子の愛人のシアと申します。爵位はあなたよりも低い伯爵令嬢ですが、私の方を愛していると王子も名言されています。この意味が分かりますね?」
なるほど。
爵位や立場は下だが、愛に関していえば自分の方が勝っている。
彼女……シアはそう言いたいのだろう。
「分かりました」
わざとではないが淡々と答えてしまい、シアは眉間にしわを寄せた。
「どうやらまだ意味がよく分かっておられないようですね。あなたはフレイム王子の愛も受けていないし、そもそも婚約者には相応しくありません。感情希薄な令嬢よりも、私のような美しさに溢れた令嬢の方が、フレイム王子には相応しいです!」
「確かにそうかもしれません。しかし、私とフレイム王子の婚約を決めたのは国王様です。国王様の意見に反対をするということで、よろしいですか?」
「え……」
シアの顔が分かりやすく曇った。
しかし何かを思い出したように我に返ると、私に指を差した。
「あなたみたいな人にそんなことを言われる筋合いはないわ!」
敬語がなくなったこの姿こそが、彼女の本性みたいだ。
私は煩わしさを感じて、小さくため息をはく。
「シアさん。私とフレイム王子の婚約に反対をするというのなら、それは国王様に反対をするということ。伯爵令嬢のあなたにその覚悟がありますか? ないのなら話は終わりです。私に対しての無礼は水に流しますから、お帰りください」
今度は意図的に、言葉に怒りを込めた。
しかしシアには上手く伝わらなかったらしく、彼女は不敵な笑みを浮べている。
「あなたに無礼を働いて何が悪いというの? 本当は公爵家でもないくせに」
「え……」
ナイフで心臓を刺された気がした。
まさか、あのことを知っているというのだろうか。
シアは私の驚いた顔を見て、猫を被る余裕が出てきたらしい。
落ち着いた声で言った。
「アクアさん。フレイム王子と婚約解消をして頂けないでしょうか? あなたから事情を話して頂ければ、王子も納得すると思うので」
シアの声が不気味に聞こえた。
心臓の鼓動が早くなる。
嫌な記憶が脳裏を走り、体中が熱くなった。
「それとも私の口から説明致しましょうか? あなたが養子だって」
私の秘密を彼女は知っているみたいだ。
「どうして知っているの?」
私の問いに、シアはニヤリと笑みを深める。
「私、これでも頭脳派なんですよ? 敵になりそうな人のことは徹底的に調べるんです。あなたの子供時代のことを調べようとしたんですが何にも情報がなくて……それが逆に怪しいと思って、故郷にもお邪魔させて頂きました」
「は?」
怒りの感情が胸に広がった。
あの場所は、こんな女がいていい場所じゃない。
シアは私を嘲るように、ケラケラと笑った。
そして目に嬉しそうな色を浮かべると、大声を出した。
「あなたの負けよアクア! さっさと婚約解消しなさい! 平民風情が!」
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