とわに

空居アオ

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第3話

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 宴は子供が寝る時間よりも早く切り上げられた。
 ブーイングの嵐の殿方をご婦人方が追い立て、実に慣れた手つきで、あっという間に片づけをしてしまった。
 手伝おうとした神父とリュシアンに手を出す暇さえ与えなかった。
 本当に気持ちのいい人たちだ。
 最後の挨拶を交わして、女性たちを見送ると、神父は寝室へと引き上げ、リュシアンはその足で裏庭に出た。


 天空には皓々と輝くフルムーン。
 かつてこれほどあの球体を愛しいと感じたことがあっただろうか。

 花壇の前で歩を止める。
 仕方がないとはいえ、今夜はいつもよりたくさん人間の食事を口にした。
 空腹は満たされるし、とても美味だったとは思うけれど、いかんせんそれらはダンピールとしての本能を鈍らせる。
 その所為で興奮する細胞のひとつひとつが、いつもとは違う熱さで感情を、理性を刺激してくる。
 どことなく即物的で凶暴な衝動は厭わしくもあり、同時に幸福感をもたらす。
 これはこれで最上の時間を楽しむことができるだろう。
 しかし勢いのままのは、あまりにももったいない。
 獲物への冒涜にもあたる。
 リュシアンが欲しているのは「最上」ではなく、「至高」だ。
 だから気が身体の中を十分かつスムーズに巡るため、すなわちメイン・ディッシュを心ゆくまで味わうため、できるだけきれいにしておかなければならなかった。
 これは血によって行われる必要はない。
 植物から精気をもらうだけでいいのだ。
 幸い教会の庭には町の女性たちが育てている花がある。
 丹精を込めて手入れされているそれらの瑞々しい命は、人間の食事などよりよっぽど、ダンピールの身体に有益であった。



 ……夜は静かだ。
 これから起ころうとしていることを伏して待つかのように、刻一刻と静寂を深くする。
 小さな町の、小さな教会の裏庭に、ダンピールという人の形をした人でない生き物。
 大地に足を踏みしめ、両手を広げ、まるで濃紺の空を抱くように全身を開く。
 あれほど身体を熱く滾らせていた衝動が、取り込んだ植物の精気によって宥められ、清められていく。

 ああ…………

 ようやく――手に入る。
 手に入れる。

「なぁにしてんだ、センセー」

 ください。

「……ください」

 ください。

「センセー」
「あなたを、私に、ください」





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