機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
9 / 146
第一章 復讐その一 ジェイコブ=カートレット

白銀の翼

しおりを挟む
「なんだ、騒がしいな……」

 すると、ギルドの奥の部屋から顔をしかめながら大きく、髭を生やした中年の男が出てきた。
 というか……このギルドのマスターの“ゴライア”さんだ。

「マ、マスター……!」

 サラがダッシュでゴライアさんの元に行くと、すがるような瞳で訴えかける。

「はあ……で、一体何があったんだ?」
「そ、それが……(ゴニョゴニョ)」
「ふむ……」

 サラは、事の顛末をゴライアさんに小声で説明すると、ゴライアさんはこちらへとやって来た。

「今代の伯爵様とは初めまして、ですかな。このギルドのマスターをしております“ゴライア”と申します」
「“ライラ=カートレット”です」

 ライラ様とゴライアさんが向かい合いながら挨拶を交わす。
 その様子は、どう見ても熊のような悪党に襲われそうな小さな少女、という構図だな。

「それで……本日はどのようなご用件で?」
「先程、あの受付嬢にも話したのですが……私と侍女のハンナは、冒険者登録をしてこちらのアデル様とパーティーを組みに来たのです」
「ええ!? 伯爵様が冒険者に!?」

 ライラ様の申し出に、ゴライアさんが思わず叫ぶ。
 まあ……まさか貴族様が冒険者になりたいだなんて思わないだろう。

 しかも、“役立たず”の僕とパーティーを組むだなんて。

「いけませんか?」
「あ、ああいえ……別にそういう訳じゃないですが……」
「なら、すぐにでも手続きをしたいのですが……」
「か、かしこまりました……では、どうぞこちらへ……」

 ゴライアさんに案内され、ライラ様とハンナさんはギルマスの執務室へと入って行った。
 僕はといえば、二人と一緒には行かず、ギルドの広間に残ったままだ。

「さて、それじゃ聞き込みを……って」

 見ると、サラが忌々し気に僕を睨みつけていた。

「なんだい?」
「……『なんだい』じゃないですよー……一体どうやって領主様に取り入ったりしたんですかー……?」
「別に。僕はオマエから紹介されたクエストを達成しただけだよ」

 それだけ言うと、僕は無視するかのように傍にいた男の冒険者に話し掛けた。

「ゴメン、ちょっといい?」
「お、おう……な、なんだよ……」

 先程のやり取りを見ていた冒険者は、警戒するように恐る恐る返事した。

「いや……この街から王都までの間で、盗賊関係の噂って聞いたりしたことないかな?」
「盗賊? ……いや、特には……」
「そう……それじゃ、王国から出兵があったりとかっていうのも……」
「いや……それもねえな」

 うーん、少し聞き方を変えてみるか……。

「じゃあ別の質問。数か月前に伯爵様が賊に襲われた件、なんだけど……何か知っていることはないかな?」
「あれかあ……いや、賊に襲われて酷い目に遭ったってくらいで、それ以上はねえな……」
「そっか……ありがとう、助かったよ」
「お、おう……」

 男の冒険者から離れ、別の冒険者にも同様に尋ねるけど、返ってきた答えはどれも同じだった。
 冒険者達も、意図的に何かを隠してるって様子もないし……これは、根気よく調べるしかないな……。

 すると。

「アデル様!」

 ギルマスの部屋から出てきたライラ様が弾んだ声で僕を呼ぶと、ガシャガシャと音を立てながら僕の元へと駆け寄って来た。

「はは、無事冒険者登録はお済になりましたか?」
「はい! そ、それで、実は相談が……」

 そう言うと、ライラ様がモジモジし始めた。

「相談? 何でしょうか……」
「ふふ、ライラ様は私達パーティーの名前について、アデル様に決めて欲しいそうです」
「ハンナ!? 私が言おうと思ったのに!」

 頬を膨らませながらハンナさんをポカポカと叩くライラ様。
 そしてハンナさんも、苦笑しながらも嬉しそうにそれを受け止めていた。

「そ、それで……いかがでしょうか……?」
「そうですね……」

 パーティー名、かあ……。

 僕はチラリ、とライラ様を見る。

 ……うん、やっぱりこれ・・がピッタリじゃないかな。

「……では、『白銀の翼』でいかがでしょうか?」
「『白銀の翼』……いいですね、それ!」

 うん、ライラ様に気に入っていただけたようだ。

「アデル様、そのパーティー名にしようと考えた理由をお尋ねしても?」

 ハンナさんが微笑みながら聞いてきた。
 だけど、本当はハンナさんだってそれが相応しいと思ったんじゃないんですか?

 でも……あえて言おうか。

「それは、『白銀の翼』という名が、ライラ様そのものだからです。翼をもがれたライラ様が、より強く、白銀に輝く翼を手に入れた、ライラ様だから」
「……ですね」
「アデル様……はい!」

 満足げに頷くハンナさんと、嬉しそうに返事をするライラ様。

 僕達『白銀の翼』は、これから始まるんだ。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...