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第一章 復讐その一 ジェイコブ=カートレット
白銀の翼
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「なんだ、騒がしいな……」
すると、ギルドの奥の部屋から顔をしかめながら大きく、髭を生やした中年の男が出てきた。
というか……このギルドのマスターの“ゴライア”さんだ。
「マ、マスター……!」
サラがダッシュでゴライアさんの元に行くと、縋るような瞳で訴えかける。
「はあ……で、一体何があったんだ?」
「そ、それが……(ゴニョゴニョ)」
「ふむ……」
サラは、事の顛末をゴライアさんに小声で説明すると、ゴライアさんはこちらへとやって来た。
「今代の伯爵様とは初めまして、ですかな。このギルドのマスターをしております“ゴライア”と申します」
「“ライラ=カートレット”です」
ライラ様とゴライアさんが向かい合いながら挨拶を交わす。
その様子は、どう見ても熊のような悪党に襲われそうな小さな少女、という構図だな。
「それで……本日はどのようなご用件で?」
「先程、あの受付嬢にも話したのですが……私と侍女のハンナは、冒険者登録をしてこちらのアデル様とパーティーを組みに来たのです」
「ええ!? 伯爵様が冒険者に!?」
ライラ様の申し出に、ゴライアさんが思わず叫ぶ。
まあ……まさか貴族様が冒険者になりたいだなんて思わないだろう。
しかも、“役立たず”の僕とパーティーを組むだなんて。
「いけませんか?」
「あ、ああいえ……別にそういう訳じゃないですが……」
「なら、すぐにでも手続きをしたいのですが……」
「か、かしこまりました……では、どうぞこちらへ……」
ゴライアさんに案内され、ライラ様とハンナさんはギルマスの執務室へと入って行った。
僕はといえば、二人と一緒には行かず、ギルドの広間に残ったままだ。
「さて、それじゃ聞き込みを……って」
見ると、サラが忌々し気に僕を睨みつけていた。
「なんだい?」
「……『なんだい』じゃないですよー……一体どうやって領主様に取り入ったりしたんですかー……?」
「別に。僕はオマエから紹介されたクエストを達成しただけだよ」
それだけ言うと、僕は無視するかのように傍にいた男の冒険者に話し掛けた。
「ゴメン、ちょっといい?」
「お、おう……な、なんだよ……」
先程のやり取りを見ていた冒険者は、警戒するように恐る恐る返事した。
「いや……この街から王都までの間で、盗賊関係の噂って聞いたりしたことないかな?」
「盗賊? ……いや、特には……」
「そう……それじゃ、王国から出兵があったりとかっていうのも……」
「いや……それもねえな」
うーん、少し聞き方を変えてみるか……。
「じゃあ別の質問。数か月前に伯爵様が賊に襲われた件、なんだけど……何か知っていることはないかな?」
「あれかあ……いや、賊に襲われて酷い目に遭ったってくらいで、それ以上はねえな……」
「そっか……ありがとう、助かったよ」
「お、おう……」
男の冒険者から離れ、別の冒険者にも同様に尋ねるけど、返ってきた答えはどれも同じだった。
冒険者達も、意図的に何かを隠してるって様子もないし……これは、根気よく調べるしかないな……。
すると。
「アデル様!」
ギルマスの部屋から出てきたライラ様が弾んだ声で僕を呼ぶと、ガシャガシャと音を立てながら僕の元へと駆け寄って来た。
「はは、無事冒険者登録はお済になりましたか?」
「はい! そ、それで、実は相談が……」
そう言うと、ライラ様がモジモジし始めた。
「相談? 何でしょうか……」
「ふふ、ライラ様は私達パーティーの名前について、アデル様に決めて欲しいそうです」
「ハンナ!? 私が言おうと思ったのに!」
頬を膨らませながらハンナさんをポカポカと叩くライラ様。
そしてハンナさんも、苦笑しながらも嬉しそうにそれを受け止めていた。
「そ、それで……いかがでしょうか……?」
「そうですね……」
パーティー名、かあ……。
僕はチラリ、とライラ様を見る。
……うん、やっぱりこれがピッタリじゃないかな。
「……では、『白銀の翼』でいかがでしょうか?」
「『白銀の翼』……いいですね、それ!」
うん、ライラ様に気に入っていただけたようだ。
「アデル様、そのパーティー名にしようと考えた理由をお尋ねしても?」
ハンナさんが微笑みながら聞いてきた。
だけど、本当はハンナさんだってそれが相応しいと思ったんじゃないんですか?
でも……あえて言おうか。
「それは、『白銀の翼』という名が、ライラ様そのものだからです。翼をもがれたライラ様が、より強く、白銀に輝く翼を手に入れた、ライラ様だから」
「……ですね」
「アデル様……はい!」
満足げに頷くハンナさんと、嬉しそうに返事をするライラ様。
僕達『白銀の翼』は、これから始まるんだ。
すると、ギルドの奥の部屋から顔をしかめながら大きく、髭を生やした中年の男が出てきた。
というか……このギルドのマスターの“ゴライア”さんだ。
「マ、マスター……!」
サラがダッシュでゴライアさんの元に行くと、縋るような瞳で訴えかける。
「はあ……で、一体何があったんだ?」
「そ、それが……(ゴニョゴニョ)」
「ふむ……」
サラは、事の顛末をゴライアさんに小声で説明すると、ゴライアさんはこちらへとやって来た。
「今代の伯爵様とは初めまして、ですかな。このギルドのマスターをしております“ゴライア”と申します」
「“ライラ=カートレット”です」
ライラ様とゴライアさんが向かい合いながら挨拶を交わす。
その様子は、どう見ても熊のような悪党に襲われそうな小さな少女、という構図だな。
「それで……本日はどのようなご用件で?」
「先程、あの受付嬢にも話したのですが……私と侍女のハンナは、冒険者登録をしてこちらのアデル様とパーティーを組みに来たのです」
「ええ!? 伯爵様が冒険者に!?」
ライラ様の申し出に、ゴライアさんが思わず叫ぶ。
まあ……まさか貴族様が冒険者になりたいだなんて思わないだろう。
しかも、“役立たず”の僕とパーティーを組むだなんて。
「いけませんか?」
「あ、ああいえ……別にそういう訳じゃないですが……」
「なら、すぐにでも手続きをしたいのですが……」
「か、かしこまりました……では、どうぞこちらへ……」
ゴライアさんに案内され、ライラ様とハンナさんはギルマスの執務室へと入って行った。
僕はといえば、二人と一緒には行かず、ギルドの広間に残ったままだ。
「さて、それじゃ聞き込みを……って」
見ると、サラが忌々し気に僕を睨みつけていた。
「なんだい?」
「……『なんだい』じゃないですよー……一体どうやって領主様に取り入ったりしたんですかー……?」
「別に。僕はオマエから紹介されたクエストを達成しただけだよ」
それだけ言うと、僕は無視するかのように傍にいた男の冒険者に話し掛けた。
「ゴメン、ちょっといい?」
「お、おう……な、なんだよ……」
先程のやり取りを見ていた冒険者は、警戒するように恐る恐る返事した。
「いや……この街から王都までの間で、盗賊関係の噂って聞いたりしたことないかな?」
「盗賊? ……いや、特には……」
「そう……それじゃ、王国から出兵があったりとかっていうのも……」
「いや……それもねえな」
うーん、少し聞き方を変えてみるか……。
「じゃあ別の質問。数か月前に伯爵様が賊に襲われた件、なんだけど……何か知っていることはないかな?」
「あれかあ……いや、賊に襲われて酷い目に遭ったってくらいで、それ以上はねえな……」
「そっか……ありがとう、助かったよ」
「お、おう……」
男の冒険者から離れ、別の冒険者にも同様に尋ねるけど、返ってきた答えはどれも同じだった。
冒険者達も、意図的に何かを隠してるって様子もないし……これは、根気よく調べるしかないな……。
すると。
「アデル様!」
ギルマスの部屋から出てきたライラ様が弾んだ声で僕を呼ぶと、ガシャガシャと音を立てながら僕の元へと駆け寄って来た。
「はは、無事冒険者登録はお済になりましたか?」
「はい! そ、それで、実は相談が……」
そう言うと、ライラ様がモジモジし始めた。
「相談? 何でしょうか……」
「ふふ、ライラ様は私達パーティーの名前について、アデル様に決めて欲しいそうです」
「ハンナ!? 私が言おうと思ったのに!」
頬を膨らませながらハンナさんをポカポカと叩くライラ様。
そしてハンナさんも、苦笑しながらも嬉しそうにそれを受け止めていた。
「そ、それで……いかがでしょうか……?」
「そうですね……」
パーティー名、かあ……。
僕はチラリ、とライラ様を見る。
……うん、やっぱりこれがピッタリじゃないかな。
「……では、『白銀の翼』でいかがでしょうか?」
「『白銀の翼』……いいですね、それ!」
うん、ライラ様に気に入っていただけたようだ。
「アデル様、そのパーティー名にしようと考えた理由をお尋ねしても?」
ハンナさんが微笑みながら聞いてきた。
だけど、本当はハンナさんだってそれが相応しいと思ったんじゃないんですか?
でも……あえて言おうか。
「それは、『白銀の翼』という名が、ライラ様そのものだからです。翼をもがれたライラ様が、より強く、白銀に輝く翼を手に入れた、ライラ様だから」
「……ですね」
「アデル様……はい!」
満足げに頷くハンナさんと、嬉しそうに返事をするライラ様。
僕達『白銀の翼』は、これから始まるんだ。
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