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宮殿襲撃
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宮殿内に現れた不気味な人物の行動に、思わず目を背けるシン。その様子を見たケヴィンがどうしたのかと問い、彼の持つタブレットを覗き込むと、ケヴィンは食い入るように身を乗り出してその映像を覗き込む。
「これはッ・・・!見てください、シンさん。襲われた警備員が姿を消していきます!一体彼は何をされたので?」
「刺されたんだ、そいつに」
「それだけ?いや、刺されたのなら色々とおかしい点があると思うのですが・・・!」
その瞬間を目撃していなかったケヴィンには、シンの言うような出来事があったなど想像もつかなかった。刺されたと言うのだから、刃物や鋭利なもので肉体を貫かれたであろうことは分かる。
だがどう見ても映像には血液など映り込んでいなかった。刺された当人の警備隊の者は、確かに何かをされたようでその場に倒れていたが、警備隊の者にもそこにいた不気味な人物にも、そして床や壁といった周囲にも、一滴たりとも血液らしいものは見当たらない。
その代わりに刺されて倒れたと思われる警備隊の者は、まるで塵のようにその姿を消したのだ。何食わぬ様子で廊下を進む不気味な人物は、また別の警備隊によって引き止められた。
「そこの貴方、止まりなさい」
「ここは今、関係者以外立ち入り禁止になっています。・・・いや、そもそも外の奴らは何をやって・・・!?」
宮殿の外には、内部と同じように複数の警備隊や教団の護衛達によって、外部からの侵入者がないよう警戒体制に入っている。現にこの数日間の間、不審な人物や許可を得ていない人物の往来は一切なかったと知らされている。
なのに、その不気味な格好をした人物は騒ぎや噂を立てることなく宮殿内に侵入してきている。生命反応の検知や、魔法反応の対する警戒も完璧だったはずの宮殿にどうやって入ってきたのか。
二人の警備隊が不思議そうな表情で互いの反応を窺っていると、その人物は先程シンが言っていたように、突如片方の警備隊の者にぶつかると、身体を預けられた警備隊の者はまるで糸の切れた操り人形のようにその場に崩れてしまった。
咄嗟に身構えるもう一人の警備隊員に、言葉を発する暇すら与えぬ手際で袖を振り上げる謎の人物。すると、もう一人の方も意識を失ってしまったのか、その場で膝から崩れ落ち床に寝そべってしまった。
決定的瞬間を目の当たりにしたケヴィンとシンは、すぐにこの事を仲間とニノン、そして周りの者達に伝えなければと動き出す。
「シンさん!」
「分かってる!俺はみんなにこの事をッ」
「私はニノンさんと共に、周囲へこの話を伝えてきます!すぐに合流してください!」
急に騒がしくなる二人に、少し離れたところでタブレットを確認していたニノンは状況を察し、すぐに廊下へ出る扉の方へと向かった。
「どうした?何があった?」
「これを。緊急事態です。今は互いの監視のことは忘れ、すぐに皆にこの事をッ・・・!?」
先程の映像を共有していたタブレットでニノンに見せるケヴィン。廊下へと飛び出し周囲の確認をすると、既にそこでは護衛達によって戦闘が行われていた。
カメラの映像で見ていた不気味な格好をした人物は、既に彼らのいる階層まで上がって来ていたのだ。否、あの映像の人物が一瞬でここまで上がってきたのではなく、同じ格好をした人物が複数人で宮殿内へと襲撃を仕掛けてきたのだ。
「きッ貴様ッ!一体どこからッ!?」
不意を突かれた教団の護衛が、背後からやって来た別の何者かに得体の知れない何かで切り付けられる。教団の護衛を斬り伏せた謎の人物が二人、それを見つめていたケヴィンの方を振り返る。
ゾッとする感覚に思わず後退りするケヴィン。そこへ、淡い光に身を包んだ大きな手が壁を破壊して飛び出し、二人の謎の人物を握りしめる。
「テメェらが今回の騒ぎの元凶かぁ!?あぁ!?」
扉を蹴破り現れたのは、ブルースの護衛であるバルトロメオだった。彼は捕らえた謎の二人を、彼の背後の壁から生えた大きな手で、鬱憤を晴らすかのように力一杯握りしめた。
「まっ待て!殺しては・・・!」
しかし捕われた謎の人物達は、大きな手に握り締められることで、彼らが斬り伏せてきた警備隊や護衛と同じように、塵となって消えてしまったのだ。
「あぁ?・・・なんだこりゃぁ?消えちまった・・・」
目の前に差し迫った危機を難なく退けたバルトロメオ。その様子を見て安堵したケヴィンが声をかける。
「ご無事なようで、バルトロメオ氏」
「寝込みを襲うたぁ・・・。コイツらが犯人かぁ!?」
「いえ、彼らが今までの犯行の犯人だとするならば、監視カメラにその姿が映っている筈です。しかし今までの監視カメラの映像には、このような者達の姿は一切残っていませんでした」
「じゃぁコイツらは?」
「恐らく犯人の何らかの術かと・・・」
ここに来てこのような強硬手段とも取れる犯行を実行してきたっということは、犯人側で何らかのトラブルがあったのか、或いは計画が既に成就したかのどちらかだろう。
現段階でどちらであるかを絞ることは出来ない。大半の場合は後者のように、何があろうと心配する必要がなくなったが故の大胆な行動とも取れるだろうが、今回はケヴィン達によって計画的にトラブルを引き起こされているはず。
マティアス司祭とブルース・ワルターの件が、その例である。それぞれ司祭の時はその日の内に二名の人物が殺害されるという事態を引き起こし、ブルースの際は現状のような事態が弾き起こったと推測できる。
するとそこへ、ケヴィンのタブレットを持ったオイゲンから連絡が入る。
「ケヴィン、聞こえるか?宮殿の各所で妙な人物による襲撃を受けたという報告が鳴り止まない状況だ。そちらは無事か?」
「えぇ、こちらでも同じような状況です。今もベルトロメオ氏に助けていただいたところです」
タブレットで会話をするケヴィンを見て、今まで連絡を遣さなかったことに対し追及するように近づいてくるニノン。今まで何をしていたのか、もっと早くに連絡を取れていれば、現在のような事態にもならなかったのではないかと責め立てる。
「連絡が遅れてしまったことに関しては、申し訳ないと思っている。しかしこのような事態になることを推測出来ていた訳ではない。君には引き続き彼らと行動を共にしてもらいたい」
「えぇ、それは勿論だけれど・・・」
「加えて緊急事態だ。監視の役割の優先度を最低限可能なレベルまでに引き下げる。全員にも通達しているが、ここからは各々の判断に任せる。戦況を見つつ、同行者らと共に協力しつつ事態の収束に努めてもらいたい」
「これはッ・・・!見てください、シンさん。襲われた警備員が姿を消していきます!一体彼は何をされたので?」
「刺されたんだ、そいつに」
「それだけ?いや、刺されたのなら色々とおかしい点があると思うのですが・・・!」
その瞬間を目撃していなかったケヴィンには、シンの言うような出来事があったなど想像もつかなかった。刺されたと言うのだから、刃物や鋭利なもので肉体を貫かれたであろうことは分かる。
だがどう見ても映像には血液など映り込んでいなかった。刺された当人の警備隊の者は、確かに何かをされたようでその場に倒れていたが、警備隊の者にもそこにいた不気味な人物にも、そして床や壁といった周囲にも、一滴たりとも血液らしいものは見当たらない。
その代わりに刺されて倒れたと思われる警備隊の者は、まるで塵のようにその姿を消したのだ。何食わぬ様子で廊下を進む不気味な人物は、また別の警備隊によって引き止められた。
「そこの貴方、止まりなさい」
「ここは今、関係者以外立ち入り禁止になっています。・・・いや、そもそも外の奴らは何をやって・・・!?」
宮殿の外には、内部と同じように複数の警備隊や教団の護衛達によって、外部からの侵入者がないよう警戒体制に入っている。現にこの数日間の間、不審な人物や許可を得ていない人物の往来は一切なかったと知らされている。
なのに、その不気味な格好をした人物は騒ぎや噂を立てることなく宮殿内に侵入してきている。生命反応の検知や、魔法反応の対する警戒も完璧だったはずの宮殿にどうやって入ってきたのか。
二人の警備隊が不思議そうな表情で互いの反応を窺っていると、その人物は先程シンが言っていたように、突如片方の警備隊の者にぶつかると、身体を預けられた警備隊の者はまるで糸の切れた操り人形のようにその場に崩れてしまった。
咄嗟に身構えるもう一人の警備隊員に、言葉を発する暇すら与えぬ手際で袖を振り上げる謎の人物。すると、もう一人の方も意識を失ってしまったのか、その場で膝から崩れ落ち床に寝そべってしまった。
決定的瞬間を目の当たりにしたケヴィンとシンは、すぐにこの事を仲間とニノン、そして周りの者達に伝えなければと動き出す。
「シンさん!」
「分かってる!俺はみんなにこの事をッ」
「私はニノンさんと共に、周囲へこの話を伝えてきます!すぐに合流してください!」
急に騒がしくなる二人に、少し離れたところでタブレットを確認していたニノンは状況を察し、すぐに廊下へ出る扉の方へと向かった。
「どうした?何があった?」
「これを。緊急事態です。今は互いの監視のことは忘れ、すぐに皆にこの事をッ・・・!?」
先程の映像を共有していたタブレットでニノンに見せるケヴィン。廊下へと飛び出し周囲の確認をすると、既にそこでは護衛達によって戦闘が行われていた。
カメラの映像で見ていた不気味な格好をした人物は、既に彼らのいる階層まで上がって来ていたのだ。否、あの映像の人物が一瞬でここまで上がってきたのではなく、同じ格好をした人物が複数人で宮殿内へと襲撃を仕掛けてきたのだ。
「きッ貴様ッ!一体どこからッ!?」
不意を突かれた教団の護衛が、背後からやって来た別の何者かに得体の知れない何かで切り付けられる。教団の護衛を斬り伏せた謎の人物が二人、それを見つめていたケヴィンの方を振り返る。
ゾッとする感覚に思わず後退りするケヴィン。そこへ、淡い光に身を包んだ大きな手が壁を破壊して飛び出し、二人の謎の人物を握りしめる。
「テメェらが今回の騒ぎの元凶かぁ!?あぁ!?」
扉を蹴破り現れたのは、ブルースの護衛であるバルトロメオだった。彼は捕らえた謎の二人を、彼の背後の壁から生えた大きな手で、鬱憤を晴らすかのように力一杯握りしめた。
「まっ待て!殺しては・・・!」
しかし捕われた謎の人物達は、大きな手に握り締められることで、彼らが斬り伏せてきた警備隊や護衛と同じように、塵となって消えてしまったのだ。
「あぁ?・・・なんだこりゃぁ?消えちまった・・・」
目の前に差し迫った危機を難なく退けたバルトロメオ。その様子を見て安堵したケヴィンが声をかける。
「ご無事なようで、バルトロメオ氏」
「寝込みを襲うたぁ・・・。コイツらが犯人かぁ!?」
「いえ、彼らが今までの犯行の犯人だとするならば、監視カメラにその姿が映っている筈です。しかし今までの監視カメラの映像には、このような者達の姿は一切残っていませんでした」
「じゃぁコイツらは?」
「恐らく犯人の何らかの術かと・・・」
ここに来てこのような強硬手段とも取れる犯行を実行してきたっということは、犯人側で何らかのトラブルがあったのか、或いは計画が既に成就したかのどちらかだろう。
現段階でどちらであるかを絞ることは出来ない。大半の場合は後者のように、何があろうと心配する必要がなくなったが故の大胆な行動とも取れるだろうが、今回はケヴィン達によって計画的にトラブルを引き起こされているはず。
マティアス司祭とブルース・ワルターの件が、その例である。それぞれ司祭の時はその日の内に二名の人物が殺害されるという事態を引き起こし、ブルースの際は現状のような事態が弾き起こったと推測できる。
するとそこへ、ケヴィンのタブレットを持ったオイゲンから連絡が入る。
「ケヴィン、聞こえるか?宮殿の各所で妙な人物による襲撃を受けたという報告が鳴り止まない状況だ。そちらは無事か?」
「えぇ、こちらでも同じような状況です。今もベルトロメオ氏に助けていただいたところです」
タブレットで会話をするケヴィンを見て、今まで連絡を遣さなかったことに対し追及するように近づいてくるニノン。今まで何をしていたのか、もっと早くに連絡を取れていれば、現在のような事態にもならなかったのではないかと責め立てる。
「連絡が遅れてしまったことに関しては、申し訳ないと思っている。しかしこのような事態になることを推測出来ていた訳ではない。君には引き続き彼らと行動を共にしてもらいたい」
「えぇ、それは勿論だけれど・・・」
「加えて緊急事態だ。監視の役割の優先度を最低限可能なレベルまでに引き下げる。全員にも通達しているが、ここからは各々の判断に任せる。戦況を見つつ、同行者らと共に協力しつつ事態の収束に努めてもらいたい」
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