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事件前夜の出来事
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ルーカス司祭の遺体が発見されたという報告があった日の前日の夜。アルバの街を包み込むように流れていた優しい音色の音楽。宮殿内にいたシン達の元にもその音色が届き、一行は安らかな眠りについていた。
だがそんな中、眠らずに部屋を歩きミアが開けたままにしていた窓を閉める人物がいた。それはまだ警備隊に連れていかれる前のマティアス司祭だった。
戸締まりをした彼は、酔いと音楽で机に突っ伏して眠るミアに、そっと起こさぬよう羽織り物をかける。
「マティアス氏・・・起きていらしたのですね」
暗い部屋の中で目を覚ましているのは自分だけだと思っていたマティアスは、どこからか聞こえて来た声に一瞬身を屈めて驚く。すぐに声のした方に視線を向けると、そこにはケヴィンがいた。
どういう訳か、彼も眠らずに起きていたようだ。
「ケヴィンさん、起きていらしたのですか」
「えぇ、何とか目を開けているといった状況ですが・・・。二日酔いは大丈夫でしたか?」
「はい、皆さんのおかげでこの通り。よく寝たせいか、眠気もすっかり引っ込んでしまいまして・・・。これでは昼夜逆転してしまいますね」
冗談を言いながらも落ち着いた様子で談笑するマティアスだが、ケヴィンは眠気にやられ今にもその場で意識を失いそうになっていた。
「すみません・・・私は少し疲れが溜まってしまったようで・・・」
「無理をなさっては、自慢の推理力に支障をきたしてしまいますよ。さぁ、ベッドが空いていますので横になって下さい」
そう言ってフラフラとしているケヴィンの身体を支えて、部屋に置かれているベッドのところまで彼を連れて行くマティアス。力が入らぬ身体をマティアスに預け、そのまま無抵抗のまま運ばれたケヴィンは、ベッドの上に腰を下ろす。
「寝る前に一つ・・・あなたにお渡ししたい物が・・・」
「渡したい物?」
「これを・・・」
ケヴィンは懐から小さなケースに入った、何かの錠剤を取り出してマティアスへと渡す。これが何の薬かを尋ねるマティアスだったが、ケヴィンは彼のその声が聞こえていないのか、先に伝えなければいけない事を彼に語る。
ケヴィンはジークベルト大司教の死から、犯人は彼の行動や目的、そして持ち物などまで細かに把握していた可能性があると考えた。計画的に行われた犯行だと考えるケヴィンは、事件がこれだけで済むとは思っていなかったようだ。
そうなると犯人が次に狙いそうな人物として、教団関係者が危ないのではと思っていた。故にルーカス司祭とも接触を試みたのだが、彼は容疑者として面会が叶わない状況下にあり、マティアスに渡した物と同じものを渡しそびれてしまったのだという。
「目が冴えているのなら好都合です・・・。いいですか?恐らく深夜か明け方に、もう一度宮殿内で大きな動きがあるかもしれません。そうなった時は貴方の身も危ない・・・。自身の立場が危うくなり、危険を感じたらすぐにそれを飲んで下さい・・・」
「これは何の薬なのですか?」
「すみません・・・どうか私を信じて・・・」
「ケヴィンさん?ケヴィンさん!」
突然渡された物に困惑しつつ、それが何の薬なのか答えも聞けないまま、ケヴィンは深い眠りについてしまった。何度か肩を揺さぶったが、ケヴィンが目を覚ますことはなかった。
得体の知れない薬など、そうそう口にできるものではない。ケヴィンは自分を信じてくれと口にしたが、大して関係を深めた訳でもない人間の言葉を、疑いもせずに鵜呑みにできるほどマティアスも単純ではなかった。
しかし、彼が意識を失う前に述べていた考察と推理を聞き、自分の身にも危険が及ぶ可能性があるのだと考えると、その薬を手放す事もできない。迷った挙句、彼はケヴィンから貰った薬を懐へとしまい、彼もまた音楽に耳を傾けながらソファーに座り夜を明かした。
だがそんな中、眠らずに部屋を歩きミアが開けたままにしていた窓を閉める人物がいた。それはまだ警備隊に連れていかれる前のマティアス司祭だった。
戸締まりをした彼は、酔いと音楽で机に突っ伏して眠るミアに、そっと起こさぬよう羽織り物をかける。
「マティアス氏・・・起きていらしたのですね」
暗い部屋の中で目を覚ましているのは自分だけだと思っていたマティアスは、どこからか聞こえて来た声に一瞬身を屈めて驚く。すぐに声のした方に視線を向けると、そこにはケヴィンがいた。
どういう訳か、彼も眠らずに起きていたようだ。
「ケヴィンさん、起きていらしたのですか」
「えぇ、何とか目を開けているといった状況ですが・・・。二日酔いは大丈夫でしたか?」
「はい、皆さんのおかげでこの通り。よく寝たせいか、眠気もすっかり引っ込んでしまいまして・・・。これでは昼夜逆転してしまいますね」
冗談を言いながらも落ち着いた様子で談笑するマティアスだが、ケヴィンは眠気にやられ今にもその場で意識を失いそうになっていた。
「すみません・・・私は少し疲れが溜まってしまったようで・・・」
「無理をなさっては、自慢の推理力に支障をきたしてしまいますよ。さぁ、ベッドが空いていますので横になって下さい」
そう言ってフラフラとしているケヴィンの身体を支えて、部屋に置かれているベッドのところまで彼を連れて行くマティアス。力が入らぬ身体をマティアスに預け、そのまま無抵抗のまま運ばれたケヴィンは、ベッドの上に腰を下ろす。
「寝る前に一つ・・・あなたにお渡ししたい物が・・・」
「渡したい物?」
「これを・・・」
ケヴィンは懐から小さなケースに入った、何かの錠剤を取り出してマティアスへと渡す。これが何の薬かを尋ねるマティアスだったが、ケヴィンは彼のその声が聞こえていないのか、先に伝えなければいけない事を彼に語る。
ケヴィンはジークベルト大司教の死から、犯人は彼の行動や目的、そして持ち物などまで細かに把握していた可能性があると考えた。計画的に行われた犯行だと考えるケヴィンは、事件がこれだけで済むとは思っていなかったようだ。
そうなると犯人が次に狙いそうな人物として、教団関係者が危ないのではと思っていた。故にルーカス司祭とも接触を試みたのだが、彼は容疑者として面会が叶わない状況下にあり、マティアスに渡した物と同じものを渡しそびれてしまったのだという。
「目が冴えているのなら好都合です・・・。いいですか?恐らく深夜か明け方に、もう一度宮殿内で大きな動きがあるかもしれません。そうなった時は貴方の身も危ない・・・。自身の立場が危うくなり、危険を感じたらすぐにそれを飲んで下さい・・・」
「これは何の薬なのですか?」
「すみません・・・どうか私を信じて・・・」
「ケヴィンさん?ケヴィンさん!」
突然渡された物に困惑しつつ、それが何の薬なのか答えも聞けないまま、ケヴィンは深い眠りについてしまった。何度か肩を揺さぶったが、ケヴィンが目を覚ますことはなかった。
得体の知れない薬など、そうそう口にできるものではない。ケヴィンは自分を信じてくれと口にしたが、大して関係を深めた訳でもない人間の言葉を、疑いもせずに鵜呑みにできるほどマティアスも単純ではなかった。
しかし、彼が意識を失う前に述べていた考察と推理を聞き、自分の身にも危険が及ぶ可能性があるのだと考えると、その薬を手放す事もできない。迷った挙句、彼はケヴィンから貰った薬を懐へとしまい、彼もまた音楽に耳を傾けながらソファーに座り夜を明かした。
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