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ちょっとした有名人
しおりを挟む どういうことなのか警備の男に尋ねると、昨日のジークベルト大司教に続きルーカス司祭が宮殿内で遺体となって発見された事により、何者かが教団関係者を狙っているのではないかと、アルバの警備隊や教団の護衛隊が動き出しているのだという。
もし本当に犯人がいるのだとして、教団関係者を狙っているのなら次に狙われるのは、ルーカス司祭と同じくアルバの街で司祭をしているマティアスか、大司教の護衛でやって来た護衛隊長のオイゲンが妥当だろう。
しかしオイゲンは教団の中でも屈指の強者であり、その実力は教団最強の盾と称される程の人物。そんな彼をターゲットに選ぶとなると、それ相応の実力を持った手練れでなければ不可能。
そう考えると自ずと次に狙われるのはマティアス司祭となる。教団関係者内に犯人がいるとしても、真っ先に疑われるのはこの二人。だがオイゲンにはアリバイがあり、マティアス司祭はシン達やケヴィンの証言はあれど、信用度が足りないといったところだろう。
その場合でもマティアス司祭が疑われてしまうため、どちらにせよマティアス司祭を隔離しておくのにはメリットがあるのだそうだ。
「だからって突然過ぎませんか?もう少し猶予があっても・・・」
「彼が犯人だった場合、猶予などと言ってる場合ではないのですよ。あなた方のところには、おって別の監視役を送ります。それまで割り当てられている部屋でお待ち下さい」
「ちょっと待ってください!やっと調査が始められるようになったというのにッ・・・」
警備隊はケヴィンの言葉に聞く耳を持たず、そのまま大人しく部屋へ戻るよう背中を押されてしまう。こうなってしまっては変に逆らって問題になる方が面倒だと、一行は渋々来た道を戻り始めた。
「マティアス司祭・・・大丈夫かな?」
「マティアスの無実はアタシらが知ってる。アタシらの行動次第でアイツの無実を証明できるかもしれないんだ。とりあえずアタシらは大人しくしてるしかないだろ」
「・・・・・」
一人黙って考え込んでしまうケヴィン。道中彼は無言のまま一行について行き割り当てられている宮殿の一室へと戻っていると、また良からぬことを考えているのではと心配になり、彼の考えについて尋ねる。
「ケヴィン・・・すまないが俺達は他の者達と比べると、信用も知名度もない。マティアス司祭の無実を証明出来るだけの信頼を勝ち取らないと・・・。だから余計な真似は出来なくなってします。分かってくれるな?」
「えぇ、皆さんには無茶はさせられません。ですが知名度が無いというのは少し謙遜のし過ぎでは?あなた方の事は全員ではありませんが、少し調べれば出てきますよ」
「え?」
そう言ってケヴィンが見せてくれたのは、一部の者達の間で流通しているという新聞だった。その中の記事にはこう書かれていた。
“フォリーキャナルレースの歴史に名を刻む、彗星の如く現れた超新星“
「これって・・・!!」
「一般的にはあまり流通していない新聞です。ですが、その手の人達の記憶には新しいでしょう。一部の人達はあなた方に注目しているかもしれませんね」
「こんなもの一体どこで!?」
シンの慌てぶりに一行は思わず視線を向ける。その中心にあったのは例の新聞記事で、皆もその記事を確認しては一部で喜びの感情を露わにし、もう一部では多少なり有名になってしまったことに頭を抱えた。
「おい見ろよ!俺の船だぜ?インタビューの時の写真かぁ?これぇ!?」
「すごい!皆さん、何かの大会にでも出場されていたのですか!?」
喜ぶツバキやアカリとは反対に、目を覆うように手を当てるツクヨ。
「まずいよ・・・。これが後々響いてこなければ良いけど・・・」
悲観する現実世界からやって来た三人に、ケヴィンは記事の写真を見ながら補足をするように、この新聞からどのような影響があるのかをシン達に伝える。
「そんなに悲観することもありませんよ。先程も言いましたがマイナーな新聞社のものです。それにフォリーキャナルレースと言えば、有名な三大海賊が上位を独占していることで、その手の人達の間では有名です。逆にあなた方の勇姿を見て、夢を見る人達が増えると思いますよ?要するに“良い刺激“という奴です」
フォローを入れて何とか安心させようとしているのか、ケヴィンは続けて別の写真があるページを開き、その記事を彼らに見せる。そこには“シー・ギャング“のボスであるキングと一緒に写るシンの姿があった。
「この彼とはお知り合いですか?」
「あっ・・・あぁ、レースの時はすごく世話になったし助けられた・・・」
それを聞いて口角を上げたケヴィンは、彼との繋がりがきっとあなた達を良からぬものから守るだろうと口にしたのだ。
裏の世界で名を馳せるというキングは、しがない探偵の一人でさえもそのその組織の名を恐れ、アークシティと同様に敵対したくない組織として名を挙げる者も多いのだと語る。
「ってことは、音楽界隈の方々には目につくような記事ではない、と?」
「殆ど気にしなくても大丈夫かと。若干、ベルヘルム氏が調べかねないかと言ったところでしょうか。話した感じだと用心深い人物のようでしたからね」
「ベルヘルムか・・・。彼は事件の調査に動き出すと思うか?」
「どうでしょうか。ジークベルト氏の件で疑われていましたので、今回のルーカス氏の方には関わらないと思いますけど・・・」
ジークベルト大司教の時には、彼の遺体から僅かながらの毒素が検出され、その原因がアルバへ持ち込んだという珍しい茶葉にあった。それと同じものを所有していたことで犯人ではないかと疑いの目を向けられていたベルヘルムだったが、彼が犯行に及んだという証拠も動機も無いことから、あくまで疑いに留まっていた。
ルーカス司祭の死因は心臓発作。そして遺体が発見された部屋は、荒らされた様子もなければ物が散らばっている事もなかった。争った形跡がなく、部屋は警備隊により封鎖されていたことからも密室であったことが窺える。
更に難解となった二件目の事件。今回ばかりは、特定の誰かを容疑者としてあげるのも難しい。
もし本当に犯人がいるのだとして、教団関係者を狙っているのなら次に狙われるのは、ルーカス司祭と同じくアルバの街で司祭をしているマティアスか、大司教の護衛でやって来た護衛隊長のオイゲンが妥当だろう。
しかしオイゲンは教団の中でも屈指の強者であり、その実力は教団最強の盾と称される程の人物。そんな彼をターゲットに選ぶとなると、それ相応の実力を持った手練れでなければ不可能。
そう考えると自ずと次に狙われるのはマティアス司祭となる。教団関係者内に犯人がいるとしても、真っ先に疑われるのはこの二人。だがオイゲンにはアリバイがあり、マティアス司祭はシン達やケヴィンの証言はあれど、信用度が足りないといったところだろう。
その場合でもマティアス司祭が疑われてしまうため、どちらにせよマティアス司祭を隔離しておくのにはメリットがあるのだそうだ。
「だからって突然過ぎませんか?もう少し猶予があっても・・・」
「彼が犯人だった場合、猶予などと言ってる場合ではないのですよ。あなた方のところには、おって別の監視役を送ります。それまで割り当てられている部屋でお待ち下さい」
「ちょっと待ってください!やっと調査が始められるようになったというのにッ・・・」
警備隊はケヴィンの言葉に聞く耳を持たず、そのまま大人しく部屋へ戻るよう背中を押されてしまう。こうなってしまっては変に逆らって問題になる方が面倒だと、一行は渋々来た道を戻り始めた。
「マティアス司祭・・・大丈夫かな?」
「マティアスの無実はアタシらが知ってる。アタシらの行動次第でアイツの無実を証明できるかもしれないんだ。とりあえずアタシらは大人しくしてるしかないだろ」
「・・・・・」
一人黙って考え込んでしまうケヴィン。道中彼は無言のまま一行について行き割り当てられている宮殿の一室へと戻っていると、また良からぬことを考えているのではと心配になり、彼の考えについて尋ねる。
「ケヴィン・・・すまないが俺達は他の者達と比べると、信用も知名度もない。マティアス司祭の無実を証明出来るだけの信頼を勝ち取らないと・・・。だから余計な真似は出来なくなってします。分かってくれるな?」
「えぇ、皆さんには無茶はさせられません。ですが知名度が無いというのは少し謙遜のし過ぎでは?あなた方の事は全員ではありませんが、少し調べれば出てきますよ」
「え?」
そう言ってケヴィンが見せてくれたのは、一部の者達の間で流通しているという新聞だった。その中の記事にはこう書かれていた。
“フォリーキャナルレースの歴史に名を刻む、彗星の如く現れた超新星“
「これって・・・!!」
「一般的にはあまり流通していない新聞です。ですが、その手の人達の記憶には新しいでしょう。一部の人達はあなた方に注目しているかもしれませんね」
「こんなもの一体どこで!?」
シンの慌てぶりに一行は思わず視線を向ける。その中心にあったのは例の新聞記事で、皆もその記事を確認しては一部で喜びの感情を露わにし、もう一部では多少なり有名になってしまったことに頭を抱えた。
「おい見ろよ!俺の船だぜ?インタビューの時の写真かぁ?これぇ!?」
「すごい!皆さん、何かの大会にでも出場されていたのですか!?」
喜ぶツバキやアカリとは反対に、目を覆うように手を当てるツクヨ。
「まずいよ・・・。これが後々響いてこなければ良いけど・・・」
悲観する現実世界からやって来た三人に、ケヴィンは記事の写真を見ながら補足をするように、この新聞からどのような影響があるのかをシン達に伝える。
「そんなに悲観することもありませんよ。先程も言いましたがマイナーな新聞社のものです。それにフォリーキャナルレースと言えば、有名な三大海賊が上位を独占していることで、その手の人達の間では有名です。逆にあなた方の勇姿を見て、夢を見る人達が増えると思いますよ?要するに“良い刺激“という奴です」
フォローを入れて何とか安心させようとしているのか、ケヴィンは続けて別の写真があるページを開き、その記事を彼らに見せる。そこには“シー・ギャング“のボスであるキングと一緒に写るシンの姿があった。
「この彼とはお知り合いですか?」
「あっ・・・あぁ、レースの時はすごく世話になったし助けられた・・・」
それを聞いて口角を上げたケヴィンは、彼との繋がりがきっとあなた達を良からぬものから守るだろうと口にしたのだ。
裏の世界で名を馳せるというキングは、しがない探偵の一人でさえもそのその組織の名を恐れ、アークシティと同様に敵対したくない組織として名を挙げる者も多いのだと語る。
「ってことは、音楽界隈の方々には目につくような記事ではない、と?」
「殆ど気にしなくても大丈夫かと。若干、ベルヘルム氏が調べかねないかと言ったところでしょうか。話した感じだと用心深い人物のようでしたからね」
「ベルヘルムか・・・。彼は事件の調査に動き出すと思うか?」
「どうでしょうか。ジークベルト氏の件で疑われていましたので、今回のルーカス氏の方には関わらないと思いますけど・・・」
ジークベルト大司教の時には、彼の遺体から僅かながらの毒素が検出され、その原因がアルバへ持ち込んだという珍しい茶葉にあった。それと同じものを所有していたことで犯人ではないかと疑いの目を向けられていたベルヘルムだったが、彼が犯行に及んだという証拠も動機も無いことから、あくまで疑いに留まっていた。
ルーカス司祭の死因は心臓発作。そして遺体が発見された部屋は、荒らされた様子もなければ物が散らばっている事もなかった。争った形跡がなく、部屋は警備隊により封鎖されていたことからも密室であったことが窺える。
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