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無意識な信用
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一行が仕方がなく部屋へ戻って来ると、入口の前で警備の者と話しをしている者達がいた。その一行は独特な衣装に身を包んだアンドレイ一行だった。
「おや、お戻りのようですよ」
「お客人がいらっしゃっているとは・・・。我々に何か用ですか?」
ケヴィンの質問に、アンドレイは今朝の事件の話を語り始める。だがその話はシン達も知っており、彼らが来た目的というのは別の情報を知らせに来たというものだったのだ。
「別の知らせ?一体何のことでしょう?」
「あなた方と一緒にいらしたマティアス司祭の件ですよ」
「マティアス氏の・・・?」
「警備隊に身柄を拘束されてしまったのでしょう?しかし妙だとは思いませんでしたか?」
アンドレイの言うように、マティアスが警備隊に連れていかれたのは突然の出来事だった。それも一緒にいたシン達やケヴィンに対し、事前に連絡があった訳でもない。
犯人が宮殿内にいるのなら、マティアスの身を守るという目的もあるようだったが、それにしたって強引な手口と言わざるを得ない。
「と、言いますと?」
「あなた方の事を警備隊に報告した者がいるのです。その人物とは“ベルヘルム“です」
「!?」
彼がなぜそのような事をしたのかは分からない。彼なりに推理をする中で、シン達やケヴィンと同じで、犯人は教団関係者を狙っているという結論にいきついたのだろうか。
「何でも、昨日の礼だと彼は言っていましたが・・・ベルヘルムと何かあったのですか?」
ケヴィンにもシンにも心当たりなどはなかった。昨日の件といえば彼の部屋に押し入り、ジークベルト大司教の事件に関して幾つか質問をしたくらいだろう。
よもや、質問攻めにした事を根に持っていたとでもいうのだろうか。アンドレイの話では、ベルヘルムは今ルーカス司祭の遺体が発見された現場へと向かったそうだ。一行とは別のルートで向かったようで、移動の際に出くわす事はなかったが。
「何にしても、これであなた方は行動制限をかけられてしまったという訳です。今回の事件に関する調査もろくに出来ないかもしれませんね」
「えぇ、困ったものです。我々はただ事件の解決に協力しようとしているだけなのに・・・」
「犯人が分からない以上、誰も信用できないので仕方のない事でしょうけどね。そこで私達の出番という訳です!」
「出番?」
「身動きの取れないあなた方に代わり、我々が調査や聞き込みをして差し上げましょう。そしてあなた方にはそれを元に推理してもらいたいのです。要するに情報を調達して来るから、推理と考察を我々に共有しろ、という事です」
笑顔で語るアンドレイの口調に、一瞬恐怖を感じた。単純にこれまでにない強い言葉を聞いたからなのか、はたまた彼の話術に何か仕掛けてでもあったのだろうか。
しかし、どちらにせよ新たな監視役が送り込まれるのをただ待つことしかできない一行にとって、断る理由などないかなり条件のいい話だった。これもケヴィンの探偵としての名が持ち込んだ結果だろう。
「それは願ってもない交渉ですが・・・何故アンドレイ氏はそんな事を?」
「それは勿論、一刻も早く開放してもらう為ですよ。その為には名探偵“オーギュスト・ケヴィン“の力が必要だと判断したのです。それと意味があるかは分かりませんが、我々の方からあなた方の所に送り込まれる監視役の斡旋をして起きました。そちらに関してはあまり期待はしないで下さいね」
二人の会話を警備隊が止めに入らないことから、シン達が部屋から出ることはできないが、外からの来客と話をするくらいなら可能なようだ。だが恐らく、部屋に入って話すことはできないかも知れない。
今の状況のように、警備隊や護衛隊が効いている前での会話が条件になっているのかも知れない。故にある程度の言葉選びが重要となってくる。犯人に繋がる情報が、警備隊を指揮する教団側の人間であるなどと彼らの前で口にすれば、危険な思想の喪落ち主だと拘束されかねない。
「分かりました。私達にとっても外の情報を知れるというのは好都合です」
「交渉成立ですね。冴えたる推理、期待していますよ。それでは我々もこれから現場へ行ってこようと思いますのでこれで。警備隊の方々もご苦労様です」
警備隊に話を聞かれている事もあるからか、アンドレイら一行はそれ以上余計な事を話す事なく、速やかにその場を去っていった。ケヴィンは今の会話を聞いていた警備隊の者達に、外の者達との会話は今の状況と同じであれば可能なのかと確認する。
どうやら彼らの思っていた通り、部屋の前で警備隊達の目や耳がある前でなら可能だとの事だった。彼らが去った後に部屋に入っていく一行。どれだけ待つ事になるか分からない中、アンドレイが言っていたベルヘルムのお礼と言う名の密告とも取れる行動について、シンはケヴィンの意見を乞う。
「ベルヘルムは何故あんな事を?俺達を疑っているのかな?」
シンの質問に対し、ケヴィンは神妙な面持ちで彼の問いに答える。だが彼の口から語られたのは、シンの求める答えではなく耳に入った情報を無意識に鵜呑みにしていることに関しての注意喚起をする言葉だった。
「彼が疑っているかに関しては分かりませんが、そもそもベルヘルム氏がそのような事を警備隊に報告したという話を断定するのはまだ早いですよ」
「え?」
「アンドレイ氏の言葉が真実であるか、それを判断するのがまだ早いという事です」
シン達はアンドレイらと会食し、仲を深めた訳だがそれを信用できる仲になったと判断するにはまだ早過ぎると、ケヴィンはシンに告げる。現にシンは無意識にアンドレイの言葉を信用し、あたかもベルヘルムの報告によって行動を制限される結果になったと思い込んでいたが、そもそもアンドレイの言葉が真実であるかをまだ確かめていないのだと進言した。
「おや、お戻りのようですよ」
「お客人がいらっしゃっているとは・・・。我々に何か用ですか?」
ケヴィンの質問に、アンドレイは今朝の事件の話を語り始める。だがその話はシン達も知っており、彼らが来た目的というのは別の情報を知らせに来たというものだったのだ。
「別の知らせ?一体何のことでしょう?」
「あなた方と一緒にいらしたマティアス司祭の件ですよ」
「マティアス氏の・・・?」
「警備隊に身柄を拘束されてしまったのでしょう?しかし妙だとは思いませんでしたか?」
アンドレイの言うように、マティアスが警備隊に連れていかれたのは突然の出来事だった。それも一緒にいたシン達やケヴィンに対し、事前に連絡があった訳でもない。
犯人が宮殿内にいるのなら、マティアスの身を守るという目的もあるようだったが、それにしたって強引な手口と言わざるを得ない。
「と、言いますと?」
「あなた方の事を警備隊に報告した者がいるのです。その人物とは“ベルヘルム“です」
「!?」
彼がなぜそのような事をしたのかは分からない。彼なりに推理をする中で、シン達やケヴィンと同じで、犯人は教団関係者を狙っているという結論にいきついたのだろうか。
「何でも、昨日の礼だと彼は言っていましたが・・・ベルヘルムと何かあったのですか?」
ケヴィンにもシンにも心当たりなどはなかった。昨日の件といえば彼の部屋に押し入り、ジークベルト大司教の事件に関して幾つか質問をしたくらいだろう。
よもや、質問攻めにした事を根に持っていたとでもいうのだろうか。アンドレイの話では、ベルヘルムは今ルーカス司祭の遺体が発見された現場へと向かったそうだ。一行とは別のルートで向かったようで、移動の際に出くわす事はなかったが。
「何にしても、これであなた方は行動制限をかけられてしまったという訳です。今回の事件に関する調査もろくに出来ないかもしれませんね」
「えぇ、困ったものです。我々はただ事件の解決に協力しようとしているだけなのに・・・」
「犯人が分からない以上、誰も信用できないので仕方のない事でしょうけどね。そこで私達の出番という訳です!」
「出番?」
「身動きの取れないあなた方に代わり、我々が調査や聞き込みをして差し上げましょう。そしてあなた方にはそれを元に推理してもらいたいのです。要するに情報を調達して来るから、推理と考察を我々に共有しろ、という事です」
笑顔で語るアンドレイの口調に、一瞬恐怖を感じた。単純にこれまでにない強い言葉を聞いたからなのか、はたまた彼の話術に何か仕掛けてでもあったのだろうか。
しかし、どちらにせよ新たな監視役が送り込まれるのをただ待つことしかできない一行にとって、断る理由などないかなり条件のいい話だった。これもケヴィンの探偵としての名が持ち込んだ結果だろう。
「それは願ってもない交渉ですが・・・何故アンドレイ氏はそんな事を?」
「それは勿論、一刻も早く開放してもらう為ですよ。その為には名探偵“オーギュスト・ケヴィン“の力が必要だと判断したのです。それと意味があるかは分かりませんが、我々の方からあなた方の所に送り込まれる監視役の斡旋をして起きました。そちらに関してはあまり期待はしないで下さいね」
二人の会話を警備隊が止めに入らないことから、シン達が部屋から出ることはできないが、外からの来客と話をするくらいなら可能なようだ。だが恐らく、部屋に入って話すことはできないかも知れない。
今の状況のように、警備隊や護衛隊が効いている前での会話が条件になっているのかも知れない。故にある程度の言葉選びが重要となってくる。犯人に繋がる情報が、警備隊を指揮する教団側の人間であるなどと彼らの前で口にすれば、危険な思想の喪落ち主だと拘束されかねない。
「分かりました。私達にとっても外の情報を知れるというのは好都合です」
「交渉成立ですね。冴えたる推理、期待していますよ。それでは我々もこれから現場へ行ってこようと思いますのでこれで。警備隊の方々もご苦労様です」
警備隊に話を聞かれている事もあるからか、アンドレイら一行はそれ以上余計な事を話す事なく、速やかにその場を去っていった。ケヴィンは今の会話を聞いていた警備隊の者達に、外の者達との会話は今の状況と同じであれば可能なのかと確認する。
どうやら彼らの思っていた通り、部屋の前で警備隊達の目や耳がある前でなら可能だとの事だった。彼らが去った後に部屋に入っていく一行。どれだけ待つ事になるか分からない中、アンドレイが言っていたベルヘルムのお礼と言う名の密告とも取れる行動について、シンはケヴィンの意見を乞う。
「ベルヘルムは何故あんな事を?俺達を疑っているのかな?」
シンの質問に対し、ケヴィンは神妙な面持ちで彼の問いに答える。だが彼の口から語られたのは、シンの求める答えではなく耳に入った情報を無意識に鵜呑みにしていることに関しての注意喚起をする言葉だった。
「彼が疑っているかに関しては分かりませんが、そもそもベルヘルム氏がそのような事を警備隊に報告したという話を断定するのはまだ早いですよ」
「え?」
「アンドレイ氏の言葉が真実であるか、それを判断するのがまだ早いという事です」
シン達はアンドレイらと会食し、仲を深めた訳だがそれを信用できる仲になったと判断するにはまだ早過ぎると、ケヴィンはシンに告げる。現にシンは無意識にアンドレイの言葉を信用し、あたかもベルヘルムの報告によって行動を制限される結果になったと思い込んでいたが、そもそもアンドレイの言葉が真実であるかをまだ確かめていないのだと進言した。
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