World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
1,178 / 1,646

作品披露

しおりを挟む
 「何をしているのですか?」

 「は?何って、迎撃準備だろ。丁度試しておきたい物があるんだよ」

 彼が試しておきたい物というのは、前日に徹夜で打ち込んでいた発明品のことだろう。しかし迎撃準備とは一体どういう事なのだろう。オルレラでの活躍もあるので、彼自身がガジェットによって戦闘を行うことも考えられる。

 「迎撃準備って・・・まさか貴方も戦うおつもりですか?」

 「う~ん・・・あんまり重たい戦闘じゃなけりゃそれもいいかもしれねぇけど。俺の本分はそうじゃなくて、あくまでサポートだからな。お!あったあった。まずは軽いものから・・・」

 ツバキが荷物から取り出したのは、綺麗な装飾が施された指輪だった。

 「まぁ!綺麗な指輪。でもそれが一体何のサポートに?」

 「気がはぇなぁ。指輪は指輪なんだけど、これは装備品のアクセサリーってもんの一つでな。装備した者の能力を向上させたり、付与効果をもたらすことができんだよ。んで!コイツには受けるダメージを軽減させる効果が付与してある」

 彼の話では、そのダメージ軽減の指輪はその名の通り受けるダメージを軽減する他にも、一定値以下のダメージを無効化する効果もあるのだという。簡単に言えば、自身のレベルよりもだいぶ低い相手の攻撃なら無効化できるというものらしい。

 だが当然、格下の相手でもアイテムによる攻撃や爆発物、固定ダメージなどは無効化する事はできないそうだ。そんな話をされても、記憶のないアカリには分からなかったが、そういったダメージもあるのだという学びを得ていた。

 「ほらツクヨ、コイツは前線で戦うアンタに丁度いい」

 「へぇ!器用なもんだね。あの店で買った指輪だろ?こんなに様になるなんてねぇ。ありがとう、大事にするよ!」

 「おいおい、そんな大層なモンじゃねぇんだから雑に使ってくれて構わないぜ?それに、大きなダメージを受けると壊れちまうから気をつけてな。ほら、シンにも・・・」

 そういってツバキがシンに渡したのは、ツクヨとは違った装飾が施された指輪だった。

 「ん?ツクヨのとはちょっと違うみたいだな」

 「そっちは能力上昇の効果があるアクセサリーなんだ。お前らには実験台になってもらうぜ!ちゃんと使える物が作れたかどうかのな」

 シンが渡されたのは、ツクヨの渡された付与効果のある装備品とは違い、補助的な効果や目にみえる効果は無いものの、装備した者のステータスを向上させる装備品らしい。

 それを聞いたシンは、ツバキ達のようにこの世界の住人には見えないステータス画面を開き、実際に彼の発明品を装備してみた。すると、素早さの能力値が僅かに向上し、装備品の説明欄に相手からのヘイトを和らげる効果があると記されていた。

 「ありがとうツバキ。確かにアクセサリーの類は装備してなかったからな。今後はその辺も気にして装備を整えるか・・・」

 一行の会話とやり取りを見ていたギルドの傭兵の男が興味を示して、ツバキの発明品について尋ねる。

 「面白れぇモン持ってんじゃねぇか坊主!実験台ってんなら、俺でよけりゃ協力するぜ?」

 「え!?そんな実験を人様にさせる訳には・・・」

 気の許せる仲間であるのならまだしも、どんな戦闘でも怪我や命の危険が付き纏うもの。そんな戦いの中で発明品の効果が発揮されるかどうかの実験に、他人を巻き込めないと止めに入ろうとするツクヨだったが、元々装備してないところにプラスで効果が付くだけなら、何も装備してない想定で戦っていれば問題ないと語る傭兵の男。

 「おう!それじゃぁアンタには、シンやツクヨとは違うモンをくれてやるぜ!アンタのクラスは?」

 「俺ぁゴリゴリの最前職、タンク役のナイトだ」

 「そいつは丁度いい!じゃぁアンタにはちょっと変わったモンを・・・。こっちはだいぶ早い段階で壊れちまうが、効果が目に見えて分かり易い」

 ツバキが傭兵の男に渡したのは、受けたダメージ分を自動で回復するという装飾品だった。シンやツクヨに渡した指輪とは違い、少し大きめでがっちりとしたブレスレット型の装飾品で、付与できる効果の種類や効果もより大きくなっているようだ。

 「あらかじめ込めてある回復効果分を使い切ると壊れちまうから気をつけてな」

 「おうよ!勝手に装備から外れるんなら、分かり易いってモンだな!」

 互いにメリットのある取引で、ツバキも傭兵の男も満足そうにしている。すると、周囲の警戒にあたっていた感知スキルを展開していたギルドの傭兵が、馬車に近づいてくるモンスターの気配を感知する。

 「来たぞ!後方に四足獣の小型のモンスターが複数!どうやら群れでやって来たようだ。数はそれほど多くないが、動きが早い!すぐに追いつかれるぞ」

 「早速出番だな!商人の旦那ぁ!追手を振り払う、馬車を止めてくれ!」

 「わっ分かったッ・・・!よろしくお願いしますよ!皆さん方!」

 徐々に速度を落としていく馬車。先陣を切って身を乗り出したのは、先程ツバキから回復のアクセサリーを受け取ったギルドの傭兵で、ナイトのクラスに就いているという男だった。

 「俺が奴らのヘイトを集める!後は適当に頼むぜぇ!」

 そういって豪快に馬車から飛び降りた男は、スキルを使いモンスターの攻撃対象を一手に引き受けた。馬車を追っていたモンスターの群れの後方に広がっていた個体も、標的を馬車から傭兵の男に切り替え向きを変える。

 「ツバキの装備を試すんだろ?んじゃぁアタシは馬車で援護するよ」

 「俺も馬車に残るよ。能力の上昇はすでに確認出来てるし、近接戦闘ができる奴も残っておいた方がいいだろう」

 シンとミアは馬車に残り、他にモンスターが来ても迎撃できるように待機する事になった。

 「分かった!じゃぁ私は彼と一緒に後方のモンスターを片付けてくるよ!」

 少し遅れて、ツクヨも馬車から飛び降りモンスターと戦い始めている傭兵の男の元へと向かっていった。他の馬車からも数人の冒険者やギルドの傭兵が身を乗り出し、モンスターの追手を瞬く間に退治してみせた。

 取り囲むようにモンスターの連撃を引き受けていたナイトの男の身体からは、回復効果のあるアイテムや魔法を受けた時と同じ淡い緑色の光が溢れていた。恐らくアレがツバキの渡した装備品の効果なのだろう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...