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射手砲術比べ
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「敵船後方より船が接近中!赤い船体をしています!」
ロッシュの船員が、ハオランと別れた後のグレイスが乗る船に気が付いた。戦況こそロッシュ軍が押しているものの、勢いでは断然グレイス軍が有利であり、この状況での船長の帰還は更に彼らの勢いを加速させるものとなるだろう。
「何・・・?そうか、さっきのうるせぇ雄叫びはそういう事だったのか。グレイスの戦術は聞いた事がある・・・だが、らしくねぇなとは思ってた・・・。なるほどなるほど、グレイスの奴ぁ不在だったか」
不適な笑みを浮かべながら、今おかれている戦況に一人納得した様子で椅子に腰掛けるロッシュ。すると彼は勢い良く椅子から立ち上がり、自ら特定の船員と連絡を取り出した。
「フェリクス、お前の位置から敵船の援軍は狙えるか?」
「いえ・・・残念ですが・・・。私の位置からでも視認は出来ているんですが、距離が開き過ぎていますねぇ・・・」
「分かった、お前は引き続き敵船の数を減らすことに尽力してくれ」
通信相手の返事を聞くまでもなく連絡を切ったロッシュは、自ら甲板に設置されている大砲へ近づいて行き、グレイスの乗る船が接近する方角を狙っている船員の元へ赴く。
「せ・・・船長!?申し訳ありません!今すぐ敵の船を撃沈させますのでッ・・・!」
すぐ側にまで歩み寄って来たロッシュに、まるで化け物でも見たかのように驚愕し血の気を引かせながら、噴き出すような汗をかき始める船員。ロッシュは彼の装填作業を中断させ、何やら砲弾に手を触れる。
「構わん。・・・・・よし、続けろ。いいな?出来るだけあの船を狙え」
「りょッ・・・了解ですッ!」
船員の男がロッシュの触れた砲弾を大砲に込める。ロッシュは腕を組み、その様子を後ろで確認するかのように立っている。発射の準備が整うと男は恐る恐るロッシュの表情を伺うと、彼は顎で発射の合図をする。急ぎ狙いを定め発射すると、砲弾は目に見えない速度で飛んでいき、火花と煙を砲身から噴き出させる。
「・・・え?飛距離が・・・」
男が撃った砲撃は、グレイスの乗る船すれすれに着弾する。それまで撃った砲撃は近づいて来ているとはいえ、グレイスの船に届くことはなかった。しかし、ロッシュが男の元を訪れた途端、砲撃の飛距離が伸びたように男は感じた。角度や火薬の量を変えようと、届く筈のない砲撃が届いたことに男は驚いたのだ。
「上出来だ。引き続きグレイス目掛けて放ち続けろ」
またロッシュは男の反応を見ることなく立ち去り、背中で了解の返事を聞きながら次の大砲の設置場所へと向かう。
「なッ・・・!?何で突然弾がここまで飛んで来るようになったッ!?」
間一髪のところで避けることが出来たが、これ以上砲撃を浴び続けるのはマズイと、今までの経験や感で察したグレイスは敵船と交戦中の仲間であるエリクに通信を入れる。
「エリクッ!アンタのスキル範囲にアタシの船は入ってるかい!?」
「せッ・・・船長ッ!?び・・・ビックリしたぁ。・・・えぇ、ギリギリ今入りましたよ」
風水の羅盤上で座るエリクが首と肩で通信機を器用に挟みながら、話をしている。
グレイス軍で遠距離の攻撃やサポートを担当している男、名をエリク・ヴァイヤン。彼のクラスは船や陸上で主に使われ大砲や、手持ち用の火砲といったものを扱う砲術士というクラスで、砲撃の火力や距離、範囲の拡大など様々なパッシブスキルを有する。
更に彼もまたグレイスやミアと同じように二つのクラスに就く、ダブルクラスの者であり、彼の座る羅盤こそもう一つのクラスに必要な道具だった。
「よしッ!それじゃぁアンタのスキルで風を起こして、アタシの到着を早めてくれ!敵の砲撃が急に正確になり出した・・・。このままでは合流前に沈められちまうッ!」
「えぇ、俺も妙に思ってたところです。俺のスキルによる防御壁を無視して砲撃が飛んでくる・・・。無効化するスキルを使っている様子はないんですけどねぇ・・・。あぁ・・・思い出したら腹が立って来たッ・・・!ぁああックソッ!んでだよッ!!おかしいだろうがッ!!」
再び激昂し始めるエリクが羅盤の上で立ち上がり、置いてある器具を蹴散らし暴れ始める。通信機越しに聞こえてくる物が壁にぶつかったり転がる音を、思わず通信機を離し耳を塞ぐグレイス。大きな溜息をつき、また始まったと頭を抱えながら、もう一度エリクとの通信を試みる。
「お~い・・・エ・・・エリク?今はそれどころじゃ・・・」
「あ・・・すいません、取り乱してしまいました。既にスキルは使いました。もうすぐ船長の元に風が吹く筈ですよ」
彼の言葉に船の速度メーターを見るグレイスは、みるみる上がる船の速度に気分を良くする。彼女の船の周りに風が起こり、船を仲間の元へと引き寄せる。エリクのもう一つのクラス、それは天候や地形、運気までをも操り戦況を有利に進める環境を作り出す風水士だった。
「お?よ~し・・・そんじゃぁアタシも始めるかね。待たせたねぇ野郎共・・・こっから反撃に出るよッ!」
そう言うとグレイスは船の甲板に出て、仲間との合流までの間踊りを踊り始める。それは彼女のクラスのスキルであり、範囲内の味方をサポートするバフ効果を付与する踊りであった。
スキルの効果範囲に近づいたグレイスのおかげで、彼女の船団は砲撃技術のスキルを持つ者達の能力が向上し始め、ロッシュ軍を徐々に押し返し始めた。
「これは・・・ふふ、船長戻ってきた様ですね」
シェイカーを握るスーツ姿の男が嬉しそうにシルヴィに話しかけると、彼女は嬉しそうに武器を握り、猛々しく燃え盛る彼女の闘志は益々その勢いを膨らませる。
「ぅぉぉぉッッしゃぁぁあああッ!!姉さんが帰ってくるぜぇ!覚悟しとけよぉ!?ロッシュんとこの野郎共ぉ!血祭りにあげてやるぜぇ!」
血管が浮き出るほどの力を込めたシルヴィが、手にした手斧を勢い良く敵船に放ると、凄まじい威力で船体を突き抜けていった。
ロッシュの船員が、ハオランと別れた後のグレイスが乗る船に気が付いた。戦況こそロッシュ軍が押しているものの、勢いでは断然グレイス軍が有利であり、この状況での船長の帰還は更に彼らの勢いを加速させるものとなるだろう。
「何・・・?そうか、さっきのうるせぇ雄叫びはそういう事だったのか。グレイスの戦術は聞いた事がある・・・だが、らしくねぇなとは思ってた・・・。なるほどなるほど、グレイスの奴ぁ不在だったか」
不適な笑みを浮かべながら、今おかれている戦況に一人納得した様子で椅子に腰掛けるロッシュ。すると彼は勢い良く椅子から立ち上がり、自ら特定の船員と連絡を取り出した。
「フェリクス、お前の位置から敵船の援軍は狙えるか?」
「いえ・・・残念ですが・・・。私の位置からでも視認は出来ているんですが、距離が開き過ぎていますねぇ・・・」
「分かった、お前は引き続き敵船の数を減らすことに尽力してくれ」
通信相手の返事を聞くまでもなく連絡を切ったロッシュは、自ら甲板に設置されている大砲へ近づいて行き、グレイスの乗る船が接近する方角を狙っている船員の元へ赴く。
「せ・・・船長!?申し訳ありません!今すぐ敵の船を撃沈させますのでッ・・・!」
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「構わん。・・・・・よし、続けろ。いいな?出来るだけあの船を狙え」
「りょッ・・・了解ですッ!」
船員の男がロッシュの触れた砲弾を大砲に込める。ロッシュは腕を組み、その様子を後ろで確認するかのように立っている。発射の準備が整うと男は恐る恐るロッシュの表情を伺うと、彼は顎で発射の合図をする。急ぎ狙いを定め発射すると、砲弾は目に見えない速度で飛んでいき、火花と煙を砲身から噴き出させる。
「・・・え?飛距離が・・・」
男が撃った砲撃は、グレイスの乗る船すれすれに着弾する。それまで撃った砲撃は近づいて来ているとはいえ、グレイスの船に届くことはなかった。しかし、ロッシュが男の元を訪れた途端、砲撃の飛距離が伸びたように男は感じた。角度や火薬の量を変えようと、届く筈のない砲撃が届いたことに男は驚いたのだ。
「上出来だ。引き続きグレイス目掛けて放ち続けろ」
またロッシュは男の反応を見ることなく立ち去り、背中で了解の返事を聞きながら次の大砲の設置場所へと向かう。
「なッ・・・!?何で突然弾がここまで飛んで来るようになったッ!?」
間一髪のところで避けることが出来たが、これ以上砲撃を浴び続けるのはマズイと、今までの経験や感で察したグレイスは敵船と交戦中の仲間であるエリクに通信を入れる。
「エリクッ!アンタのスキル範囲にアタシの船は入ってるかい!?」
「せッ・・・船長ッ!?び・・・ビックリしたぁ。・・・えぇ、ギリギリ今入りましたよ」
風水の羅盤上で座るエリクが首と肩で通信機を器用に挟みながら、話をしている。
グレイス軍で遠距離の攻撃やサポートを担当している男、名をエリク・ヴァイヤン。彼のクラスは船や陸上で主に使われ大砲や、手持ち用の火砲といったものを扱う砲術士というクラスで、砲撃の火力や距離、範囲の拡大など様々なパッシブスキルを有する。
更に彼もまたグレイスやミアと同じように二つのクラスに就く、ダブルクラスの者であり、彼の座る羅盤こそもう一つのクラスに必要な道具だった。
「よしッ!それじゃぁアンタのスキルで風を起こして、アタシの到着を早めてくれ!敵の砲撃が急に正確になり出した・・・。このままでは合流前に沈められちまうッ!」
「えぇ、俺も妙に思ってたところです。俺のスキルによる防御壁を無視して砲撃が飛んでくる・・・。無効化するスキルを使っている様子はないんですけどねぇ・・・。あぁ・・・思い出したら腹が立って来たッ・・・!ぁああックソッ!んでだよッ!!おかしいだろうがッ!!」
再び激昂し始めるエリクが羅盤の上で立ち上がり、置いてある器具を蹴散らし暴れ始める。通信機越しに聞こえてくる物が壁にぶつかったり転がる音を、思わず通信機を離し耳を塞ぐグレイス。大きな溜息をつき、また始まったと頭を抱えながら、もう一度エリクとの通信を試みる。
「お~い・・・エ・・・エリク?今はそれどころじゃ・・・」
「あ・・・すいません、取り乱してしまいました。既にスキルは使いました。もうすぐ船長の元に風が吹く筈ですよ」
彼の言葉に船の速度メーターを見るグレイスは、みるみる上がる船の速度に気分を良くする。彼女の船の周りに風が起こり、船を仲間の元へと引き寄せる。エリクのもう一つのクラス、それは天候や地形、運気までをも操り戦況を有利に進める環境を作り出す風水士だった。
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そう言うとグレイスは船の甲板に出て、仲間との合流までの間踊りを踊り始める。それは彼女のクラスのスキルであり、範囲内の味方をサポートするバフ効果を付与する踊りであった。
スキルの効果範囲に近づいたグレイスのおかげで、彼女の船団は砲撃技術のスキルを持つ者達の能力が向上し始め、ロッシュ軍を徐々に押し返し始めた。
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「ぅぉぉぉッッしゃぁぁあああッ!!姉さんが帰ってくるぜぇ!覚悟しとけよぉ!?ロッシュんとこの野郎共ぉ!血祭りにあげてやるぜぇ!」
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