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World of Fantasia
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砲撃が飛び交う中、敵船の援軍ににより劣勢に立たされている紅蓮の海賊船から猛々しい女性の声で、船員に指示を飛ばす声が聞こえてくる。彼女の戦況に応じた素早い指示のおかげで船体は大きな痛手を受ける事なく、何とか持ち堪えているような状態だ。
「姉さんが帰って来るまで、何としても持ち堪えるんだッ!今は物資の貯蔵を気にしてる余裕はない・・・。ぶっ潰されちまうくらいなら、全部使っちまう勢いでぶっ放しなッ!」
彼女の号令に船員達も声を張り上げ、猛々しく咆哮する。砲撃音に負けじと気合いを込めた雄叫びや掛け声を出し、劣勢の中でも船団の士気は高く保たれている。そこへ、彼らの船目掛けて砲弾が飛んで来る。
「シルヴィさんッ!一発撃ち漏らした砲弾が飛んで来ます!」
「おいおい・・・あの胡散臭せぇ奴は何やってやがるッ・・・!誰か砲撃の準備を・・・」
シルヴィと呼ばれる女性が甲板を走り、発砲の準備が整っている大砲があるか急ぎ聞いて回る中、船内から黒いスーツのような姿をした年配の男が、カクテルなどを作る器具であるシェイカーを振りながら現れる。
「シルヴィさん、ここは私が・・・」
そういうと男は、先程まで振り続けていたシェイカーをデッキの手摺りにそっと置く。するとシェイカーの後方から中のものが吹き出し、飛んで来る砲弾目掛けて物凄い勢いで飛んで行く。ジェット噴射の動力を得たシェイカーが砲弾に命中すると、まるで砲弾同士のぶつかり合いを思わせる激しい爆発が起こった。
「アンタ、まだ中にいたのか?こんなクソ忙しい時によぉ」
「申し訳ありません。私の戦闘に用いる道具の貯蓄はそれ程ないもので・・・。有り合わせで作るのに少々時間を取られてしまいました・・・」
派手な爆音を響かせ、空を火花による茜色と爆煙の黒煙で染め上げながら困った顔で余裕そうな笑みを見せる男。一先ずの一難が去って安堵する女が大きく息を吐き、腰を折る。少しの間を開け起き上がりながらスーツの男に近づき肩を叩く。
「準備が整ったんなら、これから反撃と行くぜぇッ!船底のアイツは起きてんだろうなぁ!?撃ち漏らすなんてらしくねぇじゃねぇの・・・」
「どうやら相手方に手練れがいるようですよ?彼の弾幕や策を潜り抜けて来る砲撃がたまにあるそうです。そちらは私が何とかします。貴方が攻撃に専念出来る様に・・・ね?」
拳を突き出した二人は、互いの拳を軽く小突きそれぞれの役割を果たしに向かう。その頃、二人の話に出ていた船底にて敵襲を妨害しているという人物は、船内部に設置された大砲を船員達に操作させるための細かい指示を出していた。方角や斜度、風向きを船員に伝え、飛んで来る砲撃を撃ち落としたり、彼自身のクラスを使い妨害工作を行なっていたのだ。
「クソッ!クソッ!クソがッ!!何で俺のスキルを掻い潜れるッ!また俺がサボってるって言われんじゃぁねぇかッ!・・・どんな砲弾使ってんだ!?どんな魔法使ってんだ!?どんなチート使ってんだッ!?あぁぁああッ!?」
「あ・・・あの、エリクさん・・・?次はどう撃てば・・・?」
「あぁ・・・すいません、次はですね・・・」
先程まで沸騰したヤカンのように憤怒していた男は、次弾装填を終えた船員に話かけられ我に帰る。事細かに大砲の角度を調整し、何秒後に発射するかまで綿密な準備をし、男の合図で砲撃すると見事敵船に命中させて見せた。
「お見事お見事。ん~想定通りに事が運ぶと気持ちが良いですねぇ。流石でございます」
「い・・・いえ、これはエリクさんのおかげですよ・・・」
実力はあるのだが、情緒不安定で扱いづらいグレイス軍の砲撃手を一手に担うエリクと呼ばれる男。その後彼は小窓から外の様子を伺うと、床に広げた風水の羅盤を読み何やらスキルを使い出した。
甲板ではシルヴィとスーツの男が、船内ではエリクが敵船の砲撃を防ぎつつ攻撃を仕掛ける事で時間を稼いだおかげで、漸く彼らにとって大望の吉報が届く。
「おーいッ!船長の船が戻って来たぞッ!」
マストを登り望遠鏡でグレイスの姿を捉えた船員が、声を張り上げて仲間達に伝える。それを聞いたシルヴィが鼓舞するように船員の士気を高める。
「野郎どもッ!もう少しの辛抱だッ!姉さんが戻ったら敵さんに今までぶち込まれた分、キッチリ払って貰おうじゃねぇかッ!!」
「ぅぉぉぉおおおおおッ!!」
ビリビリと空気を振動させるような雄叫びで、グレイス軍のボルテージはマックスに達する。その紅蓮の船体に相応しい燃え上がるような闘志に当てられ、ロッシュの船団は優勢である筈なのに息を呑んで尻込みをするのだった。
「姉さんが帰って来るまで、何としても持ち堪えるんだッ!今は物資の貯蔵を気にしてる余裕はない・・・。ぶっ潰されちまうくらいなら、全部使っちまう勢いでぶっ放しなッ!」
彼女の号令に船員達も声を張り上げ、猛々しく咆哮する。砲撃音に負けじと気合いを込めた雄叫びや掛け声を出し、劣勢の中でも船団の士気は高く保たれている。そこへ、彼らの船目掛けて砲弾が飛んで来る。
「シルヴィさんッ!一発撃ち漏らした砲弾が飛んで来ます!」
「おいおい・・・あの胡散臭せぇ奴は何やってやがるッ・・・!誰か砲撃の準備を・・・」
シルヴィと呼ばれる女性が甲板を走り、発砲の準備が整っている大砲があるか急ぎ聞いて回る中、船内から黒いスーツのような姿をした年配の男が、カクテルなどを作る器具であるシェイカーを振りながら現れる。
「シルヴィさん、ここは私が・・・」
そういうと男は、先程まで振り続けていたシェイカーをデッキの手摺りにそっと置く。するとシェイカーの後方から中のものが吹き出し、飛んで来る砲弾目掛けて物凄い勢いで飛んで行く。ジェット噴射の動力を得たシェイカーが砲弾に命中すると、まるで砲弾同士のぶつかり合いを思わせる激しい爆発が起こった。
「アンタ、まだ中にいたのか?こんなクソ忙しい時によぉ」
「申し訳ありません。私の戦闘に用いる道具の貯蓄はそれ程ないもので・・・。有り合わせで作るのに少々時間を取られてしまいました・・・」
派手な爆音を響かせ、空を火花による茜色と爆煙の黒煙で染め上げながら困った顔で余裕そうな笑みを見せる男。一先ずの一難が去って安堵する女が大きく息を吐き、腰を折る。少しの間を開け起き上がりながらスーツの男に近づき肩を叩く。
「準備が整ったんなら、これから反撃と行くぜぇッ!船底のアイツは起きてんだろうなぁ!?撃ち漏らすなんてらしくねぇじゃねぇの・・・」
「どうやら相手方に手練れがいるようですよ?彼の弾幕や策を潜り抜けて来る砲撃がたまにあるそうです。そちらは私が何とかします。貴方が攻撃に専念出来る様に・・・ね?」
拳を突き出した二人は、互いの拳を軽く小突きそれぞれの役割を果たしに向かう。その頃、二人の話に出ていた船底にて敵襲を妨害しているという人物は、船内部に設置された大砲を船員達に操作させるための細かい指示を出していた。方角や斜度、風向きを船員に伝え、飛んで来る砲撃を撃ち落としたり、彼自身のクラスを使い妨害工作を行なっていたのだ。
「クソッ!クソッ!クソがッ!!何で俺のスキルを掻い潜れるッ!また俺がサボってるって言われんじゃぁねぇかッ!・・・どんな砲弾使ってんだ!?どんな魔法使ってんだ!?どんなチート使ってんだッ!?あぁぁああッ!?」
「あ・・・あの、エリクさん・・・?次はどう撃てば・・・?」
「あぁ・・・すいません、次はですね・・・」
先程まで沸騰したヤカンのように憤怒していた男は、次弾装填を終えた船員に話かけられ我に帰る。事細かに大砲の角度を調整し、何秒後に発射するかまで綿密な準備をし、男の合図で砲撃すると見事敵船に命中させて見せた。
「お見事お見事。ん~想定通りに事が運ぶと気持ちが良いですねぇ。流石でございます」
「い・・・いえ、これはエリクさんのおかげですよ・・・」
実力はあるのだが、情緒不安定で扱いづらいグレイス軍の砲撃手を一手に担うエリクと呼ばれる男。その後彼は小窓から外の様子を伺うと、床に広げた風水の羅盤を読み何やらスキルを使い出した。
甲板ではシルヴィとスーツの男が、船内ではエリクが敵船の砲撃を防ぎつつ攻撃を仕掛ける事で時間を稼いだおかげで、漸く彼らにとって大望の吉報が届く。
「おーいッ!船長の船が戻って来たぞッ!」
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「野郎どもッ!もう少しの辛抱だッ!姉さんが戻ったら敵さんに今までぶち込まれた分、キッチリ払って貰おうじゃねぇかッ!!」
「ぅぉぉぉおおおおおッ!!」
ビリビリと空気を振動させるような雄叫びで、グレイス軍のボルテージはマックスに達する。その紅蓮の船体に相応しい燃え上がるような闘志に当てられ、ロッシュの船団は優勢である筈なのに息を呑んで尻込みをするのだった。
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