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鸞翔鳳集
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突然の轟音に何事かと船内から外の様子を伺う一行。しかし、中からはその音の原因を突き止めることは出来ない。別々の窓から外を見ていたシンとミアが、互いの顔を合わせ何か見つけたかというアイコンタクトを取るが、互いに首を横に振る。
何か知っているのではと、二人は次のハオランの方を見るが、如何やら彼にも何が起こっているのか分からないようで、驚いた様子の彼は二人の視線を感じ、そちらを振り替えると甲板に出ようと指でジェスチャーをとり、シンとミアは彼の対案に乗って三人で船内から甲板へと出て行った。
「アンタの待ち人とやらではないのか?何だ、今の音は?」
「いえ・・・そんな筈は・・・。これは一体・・・」
彼の雰囲気からはあまり想像の出来ない焦りや困惑といった感情が、その表情から伝わってくる。このことに関しては、ハオランは嘘偽りなく今の心境を話しているのだろう。だが、それ故にシンとミアは不安になった。レース経験者でもあり、シン達よりも海に詳しい彼がこうまで動揺するということは、彼にとっても予想外の展開だったのか。
「波だ!広がる波の中心部に音の発生源がある筈だ」
着水の衝撃がそれほど凄かったのか、まだ現場から起こる波が残っているのを確認したシンが二人にそれを知らせると、三人は発生源に何があるか確かめに行くという総意で一致していた。ただ、何が待ち受けているか分からない以上、怪我人のツバキと船を置き去りには出来ない。ツクヨが戻ってくる可能性もある為、誰かはここに残らなくてはならない。
留守番を志願したのは、まだ体調が戻ったばかりのシンだった。自ら提案したことだが、ハオランをここに残して二人で様子を見に行くのも違うだろう。それに彼一人で見に行ってもらうにも戻ってくるかどうか分からない。信頼を置くことの出来る人物で、一度島に降りていたミアの方が自分より適任であろうと考えての事だった。
「行ってくる。ツバキと船を頼んだ、シン・・・」
「あぁ、こっちでも辺りの警戒をしておくよ」
ハオランとミアが、轟音の原因を突き止めに行くことで話がまとまると二人は船を降り、波を起こしたと思われる中心部へと向かっていった。
「船長!これは一体・・・!?急に船が別の場所に・・・」
船を操縦する男が、船長と呼ばれる者に無線を飛ばす。他の船員達は一斉に外の様子を見に甲板に出る者や、窓にかじりつく者、マストに上り周囲の確認をする者と手際よく分担し、速やかな安全確保を行う。
「あぁ?まだ連絡は来てねぇだろ。誰だ、勝手な真似をしやがったのは・・・」
重い腰を上げた貴族風の鋭い目つきをした男は、船内の一室から外の様子を伺う。無線機からは部下の船員達による報告が、忙しなく入ってくる。だが、その男は無線機を意に介することなく、自らの目をで辺りを確認する。すると、見覚えのあある景色だったのか、その男の目は微かに見開いたように見えた。
「ここは・・・補給するのに立ち寄った島じゃねか。何で戻って来てやがる?」
その男は動揺とまではいかないものの、自分の船に起きた出来事をまるで知っていたかのように落ち着きながら考察し始める。予期せぬ出来事であるのならば、もう少し態度に出る筈だが、その男にはそういったものは一切ない。
男の言う補給の為に訪れた島こそが今シン達がいる孤島であり、彼らが聞いた轟音とはこの男の船が突然海上に転移した事により生じた衝撃音だったのだ。
そこへ今度は海賊の者なら聞き馴染みのある、そしてシン達にとっては少し前まで散々聞いた命を脅かす、身体の芯に響くような重低音が辺りに響く。
「砲撃音を確認!前方に見える島の方向からです!」
男の無線機に船員からの報告が入る。音を聞けば分かるような当たり前のことを言うなといった様子で眉をひそめ、舌打ちをする男は大きな歩幅でやや早足になると甲板に出て、自ら砲弾を手に取り設置された大砲の中に入れてレバーを引く。
砲撃音と共に撃ち放たれた砲弾は、島の方角から飛んでくる砲弾へと向かって飛んで行き、異様なほど正確な射線で島の方から飛んでくる砲弾を相殺させてみせる。
再び島一帯に響き渡る爆撃音。様子を見に行っていたミアとハオランの上空で砲弾同士の激しい衝突が起きる。
「砲弾に砲弾を当てたのか?・・・後から聞こえた砲撃は、並の狙撃手の腕前ではない・・・。我々が向かおうとしている場所には、少なくとも優れた狙撃手がいるようですね」
「そんな奴が乗ってる船ってことは・・・」
「はい・・・、さぞ名の知れた者であることでしょうね。そしてそれは間違いなく私の待ち合わせている人物ではないですね・・・。私やあなた方の他にこの島には、二グループのチームが来ているようです」
何故、この誰かに漁られた後の何もない島に、これ程のチームが集まるのかは分からない。そして現状、この島にはハオランとシン達以外、相手の存在を知らない狙撃の名手を連れたチームと、その船目掛けて砲撃を放った謎のチームが集合している事になる。
何か知っているのではと、二人は次のハオランの方を見るが、如何やら彼にも何が起こっているのか分からないようで、驚いた様子の彼は二人の視線を感じ、そちらを振り替えると甲板に出ようと指でジェスチャーをとり、シンとミアは彼の対案に乗って三人で船内から甲板へと出て行った。
「アンタの待ち人とやらではないのか?何だ、今の音は?」
「いえ・・・そんな筈は・・・。これは一体・・・」
彼の雰囲気からはあまり想像の出来ない焦りや困惑といった感情が、その表情から伝わってくる。このことに関しては、ハオランは嘘偽りなく今の心境を話しているのだろう。だが、それ故にシンとミアは不安になった。レース経験者でもあり、シン達よりも海に詳しい彼がこうまで動揺するということは、彼にとっても予想外の展開だったのか。
「波だ!広がる波の中心部に音の発生源がある筈だ」
着水の衝撃がそれほど凄かったのか、まだ現場から起こる波が残っているのを確認したシンが二人にそれを知らせると、三人は発生源に何があるか確かめに行くという総意で一致していた。ただ、何が待ち受けているか分からない以上、怪我人のツバキと船を置き去りには出来ない。ツクヨが戻ってくる可能性もある為、誰かはここに残らなくてはならない。
留守番を志願したのは、まだ体調が戻ったばかりのシンだった。自ら提案したことだが、ハオランをここに残して二人で様子を見に行くのも違うだろう。それに彼一人で見に行ってもらうにも戻ってくるかどうか分からない。信頼を置くことの出来る人物で、一度島に降りていたミアの方が自分より適任であろうと考えての事だった。
「行ってくる。ツバキと船を頼んだ、シン・・・」
「あぁ、こっちでも辺りの警戒をしておくよ」
ハオランとミアが、轟音の原因を突き止めに行くことで話がまとまると二人は船を降り、波を起こしたと思われる中心部へと向かっていった。
「船長!これは一体・・・!?急に船が別の場所に・・・」
船を操縦する男が、船長と呼ばれる者に無線を飛ばす。他の船員達は一斉に外の様子を見に甲板に出る者や、窓にかじりつく者、マストに上り周囲の確認をする者と手際よく分担し、速やかな安全確保を行う。
「あぁ?まだ連絡は来てねぇだろ。誰だ、勝手な真似をしやがったのは・・・」
重い腰を上げた貴族風の鋭い目つきをした男は、船内の一室から外の様子を伺う。無線機からは部下の船員達による報告が、忙しなく入ってくる。だが、その男は無線機を意に介することなく、自らの目をで辺りを確認する。すると、見覚えのあある景色だったのか、その男の目は微かに見開いたように見えた。
「ここは・・・補給するのに立ち寄った島じゃねか。何で戻って来てやがる?」
その男は動揺とまではいかないものの、自分の船に起きた出来事をまるで知っていたかのように落ち着きながら考察し始める。予期せぬ出来事であるのならば、もう少し態度に出る筈だが、その男にはそういったものは一切ない。
男の言う補給の為に訪れた島こそが今シン達がいる孤島であり、彼らが聞いた轟音とはこの男の船が突然海上に転移した事により生じた衝撃音だったのだ。
そこへ今度は海賊の者なら聞き馴染みのある、そしてシン達にとっては少し前まで散々聞いた命を脅かす、身体の芯に響くような重低音が辺りに響く。
「砲撃音を確認!前方に見える島の方向からです!」
男の無線機に船員からの報告が入る。音を聞けば分かるような当たり前のことを言うなといった様子で眉をひそめ、舌打ちをする男は大きな歩幅でやや早足になると甲板に出て、自ら砲弾を手に取り設置された大砲の中に入れてレバーを引く。
砲撃音と共に撃ち放たれた砲弾は、島の方角から飛んでくる砲弾へと向かって飛んで行き、異様なほど正確な射線で島の方から飛んでくる砲弾を相殺させてみせる。
再び島一帯に響き渡る爆撃音。様子を見に行っていたミアとハオランの上空で砲弾同士の激しい衝突が起きる。
「砲弾に砲弾を当てたのか?・・・後から聞こえた砲撃は、並の狙撃手の腕前ではない・・・。我々が向かおうとしている場所には、少なくとも優れた狙撃手がいるようですね」
「そんな奴が乗ってる船ってことは・・・」
「はい・・・、さぞ名の知れた者であることでしょうね。そしてそれは間違いなく私の待ち合わせている人物ではないですね・・・。私やあなた方の他にこの島には、二グループのチームが来ているようです」
何故、この誰かに漁られた後の何もない島に、これ程のチームが集まるのかは分からない。そして現状、この島にはハオランとシン達以外、相手の存在を知らない狙撃の名手を連れたチームと、その船目掛けて砲撃を放った謎のチームが集合している事になる。
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