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第二章 似すぎている敵
さきねがの力
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「おおおー! 映画館だ!」
「朝早いからか、人が少ねーな……」
「人が少ない方がいいわよ。その方が席取りやすいしね」
映画館は閑散としていて、利用者は両手で数えられるほど。
そのため、席を決める時も空いている席がたくさんあった。
「よかったわね~、席が取れて。……それにしても、二人ともよく朝早くに起きられたわね」
今の時刻は午前8時。だが、起きたのは午前6時半。
すごく早く起きたことがわかる。
移動時間や出かける準備を考慮すれば、このぐらいの時間でないと間に合わないのだが……
それにしても、早起きが得意な幼女である。
「――では、これより『咲き誇る願いを―R―』の上映を開始したいと思います。チケットをお持ちの方は――」
「あ、呼ばれたよ! 行こっ!」
結衣は興奮を抑えられず、楽しそうに駆け出す。
その様子を見て、少女とお母さんはお互いの顔を見合わせて笑った。
☆ ☆ ☆
『いえ、分かってはいるんです。でも、どうしても人前では緊張して表情が固くなってしまって……。話しかける勇気がない意気地なしなのも相まって、ずっと友達が居なかったんです』
主人公の友だちである“鏡座美咲”が、悲しそうに語り出す。
意外にも感情移入しやすい少女は、今にも泣きそうな顔になっている。
だが、そんなことなど知らない映画は、どんどん先の展開を見せていく。
『だから私、凄く嬉しかったんです。貴女が「友達になろう」って言ってくれて』
今度は一転、嬉しそうに頬を赤く染めて笑う美咲。
結衣と同じ白髪を、満足げに揺らしている。
「……やっぱり、友だちっていいな……」
と、少女はポツリとこぼした。
その声を聞き逃さなかった結衣は、美咲と同じように笑う。
「私の友だちと友だちになればいいんだよ。みんないい人だから! すぐ仲良くなれるよ!」
「……え」
「あー、それには名前が必要か……」
少女の困惑を置き去りに、結衣は少女の名前を必死で考える。
そして、ついに決まったのか、パァっと明るい表情になる。
「“魔央”はどう? 魔王っぽい印象あるし、ちょうどよさそう」
「安直だな!?」
だが、その少女のツッコミは聞こえていないのか。
結衣はなおも続ける。
「それに魔央の央は“おう”とも読めるし! ……どう、かな?」
嬉しそうに話していた結衣だったが、少女の気持ちを聞いていないことに気づき、慌てて不安そうに訊いた。
少女はとても困惑していたが、果たして少女の答えは――
「……そ、その……ありがと……」
――照れくさそうに、了承した。
「朝早いからか、人が少ねーな……」
「人が少ない方がいいわよ。その方が席取りやすいしね」
映画館は閑散としていて、利用者は両手で数えられるほど。
そのため、席を決める時も空いている席がたくさんあった。
「よかったわね~、席が取れて。……それにしても、二人ともよく朝早くに起きられたわね」
今の時刻は午前8時。だが、起きたのは午前6時半。
すごく早く起きたことがわかる。
移動時間や出かける準備を考慮すれば、このぐらいの時間でないと間に合わないのだが……
それにしても、早起きが得意な幼女である。
「――では、これより『咲き誇る願いを―R―』の上映を開始したいと思います。チケットをお持ちの方は――」
「あ、呼ばれたよ! 行こっ!」
結衣は興奮を抑えられず、楽しそうに駆け出す。
その様子を見て、少女とお母さんはお互いの顔を見合わせて笑った。
☆ ☆ ☆
『いえ、分かってはいるんです。でも、どうしても人前では緊張して表情が固くなってしまって……。話しかける勇気がない意気地なしなのも相まって、ずっと友達が居なかったんです』
主人公の友だちである“鏡座美咲”が、悲しそうに語り出す。
意外にも感情移入しやすい少女は、今にも泣きそうな顔になっている。
だが、そんなことなど知らない映画は、どんどん先の展開を見せていく。
『だから私、凄く嬉しかったんです。貴女が「友達になろう」って言ってくれて』
今度は一転、嬉しそうに頬を赤く染めて笑う美咲。
結衣と同じ白髪を、満足げに揺らしている。
「……やっぱり、友だちっていいな……」
と、少女はポツリとこぼした。
その声を聞き逃さなかった結衣は、美咲と同じように笑う。
「私の友だちと友だちになればいいんだよ。みんないい人だから! すぐ仲良くなれるよ!」
「……え」
「あー、それには名前が必要か……」
少女の困惑を置き去りに、結衣は少女の名前を必死で考える。
そして、ついに決まったのか、パァっと明るい表情になる。
「“魔央”はどう? 魔王っぽい印象あるし、ちょうどよさそう」
「安直だな!?」
だが、その少女のツッコミは聞こえていないのか。
結衣はなおも続ける。
「それに魔央の央は“おう”とも読めるし! ……どう、かな?」
嬉しそうに話していた結衣だったが、少女の気持ちを聞いていないことに気づき、慌てて不安そうに訊いた。
少女はとても困惑していたが、果たして少女の答えは――
「……そ、その……ありがと……」
――照れくさそうに、了承した。
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