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第一章 少女たちの願い(後編)

本屋で出会ったのは……

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 遊園地へのお出かけが終わり、また普通の日常が戻ってきた。
 ……いや、まあ、ガーネットがいるから普通かと言われれば首を傾げてしまうが。

 さて、比較的普通の日常が戻ってきた結衣が何をしているのかと言うと。

「……こ、これは……!」

 驚愕していた。
 なんでこんなことが起きているのだろうと、嘆きそうになっている。
 結衣は絶望していると言っても過言ではない。
 わなわなと肩を震わせ、叫んだ。

「怖い本がなくなってるー!?」

 そう。少し前に真菜と行った新しい本屋に、また来ていたのだ。

 だが、結衣がほしいと思っていた本がどこの棚にも置かれていない。
 在庫がないのか、誰かにごっそり買われたか。
 それとも――

「……もう売ってないのかな……」

 元々置かれていた所には、別の本が置かれている。
 だから、ここにはもう売っていないと見るのが妥当だろう。

「はぁ……せっかくお小遣いもらってここまで来たのになぁ……」

 結衣はため息をつき、店を出ようとする。
 するとその時、文房具コーナーで見知った顔を見かけた。

「……え、せーちゃん!?」
「あれ、結衣!?」

 結衣が名前を叫ぶと、猫のような黄色の瞳を見開いて驚くせーちゃん。
 その両手には、一冊の本が握られている。
 結衣はそれにすばやく気づき、せーちゃんに近寄る。

「へー、せーちゃんも本に興味あるんだね! どんな本見てるの?」
「えっ……! いや……その……」

 せーちゃんは、バッと本を自分の背中に隠した。
 よほど見られたくないのか、はたまた反射的に隠したのか。

 おそらく前者だろう。
 ゆでダコのような、真っ赤な顔になっているから。

 そこで結衣は、ピーンと何かが閃いたような顔をした。

「……そっかー。私には見せたくないんだー。ふーん……」
「……え、あ、あの……結衣?」

 結衣の悲しげに聞こえる一言に、せーちゃんの顔が青ざめていくのが見て取れた。
 だが、結衣はなおも口撃を続ける。

「そんなに私のことが嫌いだったんだね……わかった……じゃあね……」
「ちょちょちょ……っ! 待ってよ! あたし別にそんなつもりじゃ……っ!」

 結衣の寂しげな様子に、いたたまれなくなったのか。せーちゃんは慌てふためいて結衣を引き止める。

 せーちゃんは、わりと本気で血の気が引いていたが。
 結衣の小馬鹿にする笑顔に気づき、せーちゃんはその笑顔で全てを察した。

 そしてまた、せーちゃんの顔がゆでダコになった。
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