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第一章 少女たちの願い(後編)
みんなの暖かさ
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「夏音ちゃん! 結衣ちゃん!」
閉園ギリギリ――夜の闇と遊園地の明かりのコントラストがハッキリしてきた頃。
そんな中、美波は二つの影に駆け寄った。
そして、ガバッと力強く抱きつく。
「よかった……! すっごく心配したんだぞ……っ!」
「……ごめんなさいですにゃ……」
「ちょっと時間かかっちゃった……ごめんね」
涙を流しながら喜ぶ美波に、二つの陰――夏音と結衣は、申し訳なさそうに謝ることしかできなかった。
自分の不甲斐なさや、情けなさでいっぱいになっている。
だが、続いた一言で、夏音と結衣は力が抜けた。
「おかえり……二人とも」
美波は涙を流しながらも、遊園地の光に負けじと輝く笑顔を浮かべる。
ともすれば、月の美しさにも引けを取らないかもしれない。
凝り固まった心を解してくれるような言葉に、夏音と結衣も笑顔で応えた。
「ただいまですにゃ……美波おねーさん」
「待っててくれてありがとう……美波ちゃん」
二人がそう言うと、美波の後ろに控えていたみんなが悔しそうに言う。
「……なんで、美波だけ……感謝される、の……?」
「真菜の言う通りよ! あたしたちだってずっと待ってたのに……!」
「まさか私たちのこと忘れてたんですか? 二人とも酷いです……」
「二人がそないに酷い人たちだったやなんて……」
みんな、口々に言いたいことをぶちまける。
ぶちまけられた二人は、ひどく困惑した。
「え……えっ?? わ、忘れてないですにゃ! 信じてほしいですにゃ!」
「そ、そうだよ! みんな何が言いたいの!?」
夏音は弁明をし、結衣は疑問にあえいだ。
そうして子供たちだけで騒いでいると、
「夏音ちゃん見つかったのね。無事でよかったわ」
朗らかに笑う結衣のお母さんがそう言った。
夏音はとても申し訳なさそうな、照れくさそうな顔を浮かべる。
「……ごめんなさいですにゃ」
「いいのよ。人がたくさんいたんだもの。迷子になっても仕方ないわよ」
結衣のお母さんはしゃがんで、夏音と同じ目線になり、夏音を安心させるように言う。
夏音はまだ何か言いたげだったが、結衣のお母さんの優しさに丸め込まれた。
「ありがとうございますにゃ……」
夏音は笑顔を浮かべ、感謝を伝えた。
閉園ギリギリ――夜の闇と遊園地の明かりのコントラストがハッキリしてきた頃。
そんな中、美波は二つの影に駆け寄った。
そして、ガバッと力強く抱きつく。
「よかった……! すっごく心配したんだぞ……っ!」
「……ごめんなさいですにゃ……」
「ちょっと時間かかっちゃった……ごめんね」
涙を流しながら喜ぶ美波に、二つの陰――夏音と結衣は、申し訳なさそうに謝ることしかできなかった。
自分の不甲斐なさや、情けなさでいっぱいになっている。
だが、続いた一言で、夏音と結衣は力が抜けた。
「おかえり……二人とも」
美波は涙を流しながらも、遊園地の光に負けじと輝く笑顔を浮かべる。
ともすれば、月の美しさにも引けを取らないかもしれない。
凝り固まった心を解してくれるような言葉に、夏音と結衣も笑顔で応えた。
「ただいまですにゃ……美波おねーさん」
「待っててくれてありがとう……美波ちゃん」
二人がそう言うと、美波の後ろに控えていたみんなが悔しそうに言う。
「……なんで、美波だけ……感謝される、の……?」
「真菜の言う通りよ! あたしたちだってずっと待ってたのに……!」
「まさか私たちのこと忘れてたんですか? 二人とも酷いです……」
「二人がそないに酷い人たちだったやなんて……」
みんな、口々に言いたいことをぶちまける。
ぶちまけられた二人は、ひどく困惑した。
「え……えっ?? わ、忘れてないですにゃ! 信じてほしいですにゃ!」
「そ、そうだよ! みんな何が言いたいの!?」
夏音は弁明をし、結衣は疑問にあえいだ。
そうして子供たちだけで騒いでいると、
「夏音ちゃん見つかったのね。無事でよかったわ」
朗らかに笑う結衣のお母さんがそう言った。
夏音はとても申し訳なさそうな、照れくさそうな顔を浮かべる。
「……ごめんなさいですにゃ」
「いいのよ。人がたくさんいたんだもの。迷子になっても仕方ないわよ」
結衣のお母さんはしゃがんで、夏音と同じ目線になり、夏音を安心させるように言う。
夏音はまだ何か言いたげだったが、結衣のお母さんの優しさに丸め込まれた。
「ありがとうございますにゃ……」
夏音は笑顔を浮かべ、感謝を伝えた。
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