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「お疲れ様だったわねぇ、ミリオネア!!で?で?ジャスティンとは上手くいってるぅ??」
討伐後に神殿の祈祷室にやって来た私は、ノリノリの女神様のあまりの浮かれっぷりに吹き出して笑った。
魔獣討伐はあの二人が危ない、何かあったら…と心配していた程ではなく、むしろ気が抜ける程あっさり終わった。
キングスネークが気の毒になるほど私達の小隊五人は過剰戦力だったのだ。
むしろ、ジャスティン一人で充分だったかも知れない。
目的を達成する為の彼の戦略はお兄様が絶句する程に、緻密に計算されていて無駄が一つもなかった。
「あいつを敵に回すと逃げ道を全部塞がれた挙句に全部吸い取られて殺される」
やっぱり性格破綻してるわ、と呟いていた。
ジャスティンはありとあらゆる魔法を展開し、あっという間にキングスネークを魔法壁に追い込んだ後、魔力を纏わせた剣で一刀両断した。
お兄様も私も、ジャスティンの部隊から選抜されたレオンさんとバリーさんも唖然としていたら一瞬でキングスネークは燃やされて灰になった。
「ミリオネア、浄化してくれ」
「あ、はい。浄化!」
浄化が終わると、ジャスティンはお兄様にすぐ様帰る事を告げていた。
目の前に『婚約』という人参をぶら下げられた馬の如く、彼は淡々と迅速に討伐を終えた。
帰る時は異常に段取りのいい金獅子のお陰で、私達は早々に王都に帰って来たのだが。
「ジャスティンの行動力には惚れ惚れするわよねぇ…」
「確かに、早かったですよね、行動が。討伐も含めて」
「ニヤけながら戦略考えてるのとか、もう可愛すぎて悶えたわ」
「可愛いですか?私はちょっと引きましたけど…」
女神様は私達が揉めている所からジャスティンの告白までバッチリ鑑賞していたらしく、きゅんきゅんドキドキして時の神様と酒盛りをしたらしい。
「でも、時の神様って…お酒好きなんですね?」
「そうねぇ…ずーっと飲んでていっつも酔っ払ってるわね。ミリオネアとジャスティンが時戻りする時、実はちょっと不安だったのよ。ほら、彼はいつも泥酔してるから」
「泥酔…」
大丈夫なのか、時の神様…。
うっかり人の時をいじっちゃってない?
「まぁ、泥酔してるから時戻りも了承を得られたんだけどね…」
「まぁ…普通はダメですよね」
「ありえない事ね、普通なら」
私達がいかに希少案件なのかって事は怖くなるからそっとしとこう…。
「でもジャスティンが溌剌としていて良いわね。前はどこか仄暗い感じもあったけれど」
「そうですね。今の所はまだ大丈夫です」
「前とは状況も違うから、これからは何があるかはわからないけれどね」
「はい、出来るだけ健やかにいてもらいたいです」
「私もこれから忙しくなるから、あまり会いに来てあげられないけど…何かあったら祈りなさいね。行ける時は行くから」
「ありがとうございます。何かあるんですか?」
女神様も仕事は山ほどあるんだろうなと思いながら聞いてみる。
「神々の式典が目白押しでね…。私もこう見えて一応神だから」
「式典とかあるんですね…」
「ただみんなで寄って騒ぎたい神が多いのよ。ほら、みんな退屈してるじゃない?時間がありすぎて」
「なるほど…」
「あぁ…ヴェーレイとジャスティンが来てるわ。じゃあ、またね、ミリオネア」
「はい、ありがとうございます」
私が顔を上げるとガチャリと祈祷室のドアが開く。
ジャスティンとヴェーレイは、何か話し合いを…というより言い合いをしていた。
「陛下が許可を出されたとて、それは婚約であって結婚ではありません!学園を卒業してからにして下さい!」
「16と18とどう違うんだ?たかが二年だろう?法では16から婚姻可能だろう!」
「成人は来年でしょう!それから準備が始まるのです!」
「女神だって俺達が幸せそうなら満足だろう?愛の女神なんだから!!」
…うん、まぁ、満足そうではあるけど。
一応、世間体ってもんがあるでしょ…!
ヴェーレイ様にジャスティンが婚姻の儀をすぐに出来ないかを直談判してるという事が判明した。
「ジャスティン…、だめよ、ヴェーレイ様を困らせたら」
「ミリオネア!困らせてない、少し話をしていただけだ」
「ミリオネア様!非常に困っていますので少々キツめにお叱りください!!」
「大神官卑怯だぞ!」
わぁわぁと騒いでいる二人はまるで孫と祖父のようだ。
討伐の後、すぐ様陛下に私との婚約を申し出たジャスティンに、陛下はとても喜んだ。
「ジャスティンも好きな女性が出来たか…」
そう言って涙ぐんだ陛下は国王ではなく、一人の父親の顔で。
すぐに婚約誓約書が作成されて、お父様も呼ばれ、書類は完成したのだけれど。
お父様はあれから元気がない。
お母様は「放っておきなさい」と言っているが、心配だ。
お兄様は相変わらずだが、ジャスティンの事は認めたらしく何も言ってこない。
「ミリオネア様!殿下が横暴な事を言ってくるのです!どうにかしてくだされ!」
「あらあら。ジャスティン、ダメよ?ほら、ここに座って?」
怒り心頭のヴェーレイ様の血管が切れちゃうわ。
私はジャスティンに手招きをして彼を隣に座らせた。
「ジャスティン、結婚の儀は18歳になったらしましょう?学園もあるし」
「でも、すぐにでも夫婦になりたい。女神の承認を受けて、周りの男共がミリオネアに手を出せないようにしたい」
「今だって手は出せないでしょう?私達が婚約した事は公表されているし、明日には婚約披露パーティーじゃないの」
「…ミリオネアは俺と結婚したくないのか?」
しゅんとしてしまったジャスティンが可愛すぎて困る。
こんな可愛い顔は小さい頃から数えても数回しかなかったわよ…何なの!?策略なの!?
「したいけど、結婚の儀は18歳まで待ってね。それ以外はジャスティンがしたいようにしたら良いわ。私はジャスティンと居られれば幸せだから」
「…わかった…。結婚の儀以外は俺の好きに…ね」
…これは失敗したかしら…。
とんでもない事を言ってしまったんじゃないのかしら?
ジャスティンがニヤリと笑う顔が物凄く悪い顔なんだけれども。
大人しく引き下がるとか、これもう術中にハマってない?
「とにかく殿下、結婚の儀は18歳になってからですぞ!」
「わかった、大神官。待つよ」
「え?わ、わかってくれたなら良いです!」
突然聞き分けの良くなったジャスティンに驚きつつ、ヴェーレイ様は祈祷室を後にした。
ジャスティンとまさかの二人きり。
閉められたドアの向こうには護衛はいるが。
「ミリオネア、さっきの約束はもう撤回出来ないぞ」
「…何か企んでるの?」
「いや?もうすぐ俺の誕生日だから、ミリオネアから何を貰おうかなって」
「そうね。何か欲しい物ある?」
私は来月のジャスティンの誕生日プレゼントはすでに手配していたが、本人が欲しい物があるならそれにしようかと考えた。
「欲しい物は一つだけある」
「え?何?」
「ミリオネアだけ」
「バ、バカ!」
かぁっと顔に熱が籠った。
ジャスティンが言う私とはつまり。
肉体的に頂きたいという事で。
婚約を結んでからというもの、巧みに二人きりの空間を作り上げてはキスしたり、服の上から身体を撫でたりと彼の手は忙しない。
この様子では前も触りたくて仕方なかったんだろうな、と苦笑する。
「俺はミリオネアに関してだけバカでいい」
「開き直るんじゃないわよ、結婚するまではその…じ、純潔じゃないと…それに、まだ成人してないし…」
「だから一線は越えない。でもミリオネアに触れたいし、触れられたい」
「もう…いつからそんなエッチな人になったのよ…」
「ミリオネアとキスしてから。それまでは我慢出来てた」
口を尖らせるジャスティンを独り占め出来る事に嬉しくなって、絆されてしまいそうになるけどダメよ、ミリオネア!!
一回許すと毎日になるわよ!!
ダメダメ!!
「今でも割と触ってると思うけど…」
「足りない。本音はもう一緒に住みたい」
「ふふ…自ら苦行の旅に出たいのかしら…」
「起きたらミリオネアがいて、寝る前もミリオネアがいるなんて、楽園だろ?」
この人真面目な顔して何言ってるのかしら。
男性の身体のシステムはよくわからないけれど、手を出せない事に変わりはないのだから悶々として生活する事になると思うんだけど。
それで我慢の限界が来て、襲われるか…よそで発散しようとするかでしょ。
良い事なんて何もないわよ。
まぁ…ジャスティンの寝顔は可愛いと思うし、一緒にいれたら私も嬉しいけれど。
「誕生日プレゼントに、ミリオネアが王宮で暮らすのは?」
「ダメでしょ、お父様が許すはずないもの」
「…許せばいいのか?」
「そうね、お父様が許せばね。でも無理でしょ。今も落ち込んでるからね」
「…じゃあやっぱり触れる権利で」
「まだ言う!?絶対我慢出来なくなるからダメよ」
「ダメばっかり…」
むっとしたジャスティンは本格的に拗ねてしまった。
帰る時も手は繋いでいるが、むっつりと黙ったまま。
見た目にはクールでカッコいい王太子様に見えているが、内心ではどうやって自分の希望を叶えるかを考えているに違いない。
討伐の時を思い出して、今は私が狩られそうでヒヤヒヤする。
「じゃあね、ジャスティン」
「…ミリオネア、好きだ」
「私もよ」
ちゅ、と頬にキスされて馬車に乗り込む。
お兄様に転移魔法を教えてもらおう。
色々と便利だから。
「じゃあ、気を付けて。明日、楽しみだな」
「そうね、明日はみんなに見せつけてもいいわよ?」
「わかった」
手を離す時のジャスティンが寂しそうで、少し気にかかるが私はそのまま自宅へ帰った。
討伐後に神殿の祈祷室にやって来た私は、ノリノリの女神様のあまりの浮かれっぷりに吹き出して笑った。
魔獣討伐はあの二人が危ない、何かあったら…と心配していた程ではなく、むしろ気が抜ける程あっさり終わった。
キングスネークが気の毒になるほど私達の小隊五人は過剰戦力だったのだ。
むしろ、ジャスティン一人で充分だったかも知れない。
目的を達成する為の彼の戦略はお兄様が絶句する程に、緻密に計算されていて無駄が一つもなかった。
「あいつを敵に回すと逃げ道を全部塞がれた挙句に全部吸い取られて殺される」
やっぱり性格破綻してるわ、と呟いていた。
ジャスティンはありとあらゆる魔法を展開し、あっという間にキングスネークを魔法壁に追い込んだ後、魔力を纏わせた剣で一刀両断した。
お兄様も私も、ジャスティンの部隊から選抜されたレオンさんとバリーさんも唖然としていたら一瞬でキングスネークは燃やされて灰になった。
「ミリオネア、浄化してくれ」
「あ、はい。浄化!」
浄化が終わると、ジャスティンはお兄様にすぐ様帰る事を告げていた。
目の前に『婚約』という人参をぶら下げられた馬の如く、彼は淡々と迅速に討伐を終えた。
帰る時は異常に段取りのいい金獅子のお陰で、私達は早々に王都に帰って来たのだが。
「ジャスティンの行動力には惚れ惚れするわよねぇ…」
「確かに、早かったですよね、行動が。討伐も含めて」
「ニヤけながら戦略考えてるのとか、もう可愛すぎて悶えたわ」
「可愛いですか?私はちょっと引きましたけど…」
女神様は私達が揉めている所からジャスティンの告白までバッチリ鑑賞していたらしく、きゅんきゅんドキドキして時の神様と酒盛りをしたらしい。
「でも、時の神様って…お酒好きなんですね?」
「そうねぇ…ずーっと飲んでていっつも酔っ払ってるわね。ミリオネアとジャスティンが時戻りする時、実はちょっと不安だったのよ。ほら、彼はいつも泥酔してるから」
「泥酔…」
大丈夫なのか、時の神様…。
うっかり人の時をいじっちゃってない?
「まぁ、泥酔してるから時戻りも了承を得られたんだけどね…」
「まぁ…普通はダメですよね」
「ありえない事ね、普通なら」
私達がいかに希少案件なのかって事は怖くなるからそっとしとこう…。
「でもジャスティンが溌剌としていて良いわね。前はどこか仄暗い感じもあったけれど」
「そうですね。今の所はまだ大丈夫です」
「前とは状況も違うから、これからは何があるかはわからないけれどね」
「はい、出来るだけ健やかにいてもらいたいです」
「私もこれから忙しくなるから、あまり会いに来てあげられないけど…何かあったら祈りなさいね。行ける時は行くから」
「ありがとうございます。何かあるんですか?」
女神様も仕事は山ほどあるんだろうなと思いながら聞いてみる。
「神々の式典が目白押しでね…。私もこう見えて一応神だから」
「式典とかあるんですね…」
「ただみんなで寄って騒ぎたい神が多いのよ。ほら、みんな退屈してるじゃない?時間がありすぎて」
「なるほど…」
「あぁ…ヴェーレイとジャスティンが来てるわ。じゃあ、またね、ミリオネア」
「はい、ありがとうございます」
私が顔を上げるとガチャリと祈祷室のドアが開く。
ジャスティンとヴェーレイは、何か話し合いを…というより言い合いをしていた。
「陛下が許可を出されたとて、それは婚約であって結婚ではありません!学園を卒業してからにして下さい!」
「16と18とどう違うんだ?たかが二年だろう?法では16から婚姻可能だろう!」
「成人は来年でしょう!それから準備が始まるのです!」
「女神だって俺達が幸せそうなら満足だろう?愛の女神なんだから!!」
…うん、まぁ、満足そうではあるけど。
一応、世間体ってもんがあるでしょ…!
ヴェーレイ様にジャスティンが婚姻の儀をすぐに出来ないかを直談判してるという事が判明した。
「ジャスティン…、だめよ、ヴェーレイ様を困らせたら」
「ミリオネア!困らせてない、少し話をしていただけだ」
「ミリオネア様!非常に困っていますので少々キツめにお叱りください!!」
「大神官卑怯だぞ!」
わぁわぁと騒いでいる二人はまるで孫と祖父のようだ。
討伐の後、すぐ様陛下に私との婚約を申し出たジャスティンに、陛下はとても喜んだ。
「ジャスティンも好きな女性が出来たか…」
そう言って涙ぐんだ陛下は国王ではなく、一人の父親の顔で。
すぐに婚約誓約書が作成されて、お父様も呼ばれ、書類は完成したのだけれど。
お父様はあれから元気がない。
お母様は「放っておきなさい」と言っているが、心配だ。
お兄様は相変わらずだが、ジャスティンの事は認めたらしく何も言ってこない。
「ミリオネア様!殿下が横暴な事を言ってくるのです!どうにかしてくだされ!」
「あらあら。ジャスティン、ダメよ?ほら、ここに座って?」
怒り心頭のヴェーレイ様の血管が切れちゃうわ。
私はジャスティンに手招きをして彼を隣に座らせた。
「ジャスティン、結婚の儀は18歳になったらしましょう?学園もあるし」
「でも、すぐにでも夫婦になりたい。女神の承認を受けて、周りの男共がミリオネアに手を出せないようにしたい」
「今だって手は出せないでしょう?私達が婚約した事は公表されているし、明日には婚約披露パーティーじゃないの」
「…ミリオネアは俺と結婚したくないのか?」
しゅんとしてしまったジャスティンが可愛すぎて困る。
こんな可愛い顔は小さい頃から数えても数回しかなかったわよ…何なの!?策略なの!?
「したいけど、結婚の儀は18歳まで待ってね。それ以外はジャスティンがしたいようにしたら良いわ。私はジャスティンと居られれば幸せだから」
「…わかった…。結婚の儀以外は俺の好きに…ね」
…これは失敗したかしら…。
とんでもない事を言ってしまったんじゃないのかしら?
ジャスティンがニヤリと笑う顔が物凄く悪い顔なんだけれども。
大人しく引き下がるとか、これもう術中にハマってない?
「とにかく殿下、結婚の儀は18歳になってからですぞ!」
「わかった、大神官。待つよ」
「え?わ、わかってくれたなら良いです!」
突然聞き分けの良くなったジャスティンに驚きつつ、ヴェーレイ様は祈祷室を後にした。
ジャスティンとまさかの二人きり。
閉められたドアの向こうには護衛はいるが。
「ミリオネア、さっきの約束はもう撤回出来ないぞ」
「…何か企んでるの?」
「いや?もうすぐ俺の誕生日だから、ミリオネアから何を貰おうかなって」
「そうね。何か欲しい物ある?」
私は来月のジャスティンの誕生日プレゼントはすでに手配していたが、本人が欲しい物があるならそれにしようかと考えた。
「欲しい物は一つだけある」
「え?何?」
「ミリオネアだけ」
「バ、バカ!」
かぁっと顔に熱が籠った。
ジャスティンが言う私とはつまり。
肉体的に頂きたいという事で。
婚約を結んでからというもの、巧みに二人きりの空間を作り上げてはキスしたり、服の上から身体を撫でたりと彼の手は忙しない。
この様子では前も触りたくて仕方なかったんだろうな、と苦笑する。
「俺はミリオネアに関してだけバカでいい」
「開き直るんじゃないわよ、結婚するまではその…じ、純潔じゃないと…それに、まだ成人してないし…」
「だから一線は越えない。でもミリオネアに触れたいし、触れられたい」
「もう…いつからそんなエッチな人になったのよ…」
「ミリオネアとキスしてから。それまでは我慢出来てた」
口を尖らせるジャスティンを独り占め出来る事に嬉しくなって、絆されてしまいそうになるけどダメよ、ミリオネア!!
一回許すと毎日になるわよ!!
ダメダメ!!
「今でも割と触ってると思うけど…」
「足りない。本音はもう一緒に住みたい」
「ふふ…自ら苦行の旅に出たいのかしら…」
「起きたらミリオネアがいて、寝る前もミリオネアがいるなんて、楽園だろ?」
この人真面目な顔して何言ってるのかしら。
男性の身体のシステムはよくわからないけれど、手を出せない事に変わりはないのだから悶々として生活する事になると思うんだけど。
それで我慢の限界が来て、襲われるか…よそで発散しようとするかでしょ。
良い事なんて何もないわよ。
まぁ…ジャスティンの寝顔は可愛いと思うし、一緒にいれたら私も嬉しいけれど。
「誕生日プレゼントに、ミリオネアが王宮で暮らすのは?」
「ダメでしょ、お父様が許すはずないもの」
「…許せばいいのか?」
「そうね、お父様が許せばね。でも無理でしょ。今も落ち込んでるからね」
「…じゃあやっぱり触れる権利で」
「まだ言う!?絶対我慢出来なくなるからダメよ」
「ダメばっかり…」
むっとしたジャスティンは本格的に拗ねてしまった。
帰る時も手は繋いでいるが、むっつりと黙ったまま。
見た目にはクールでカッコいい王太子様に見えているが、内心ではどうやって自分の希望を叶えるかを考えているに違いない。
討伐の時を思い出して、今は私が狩られそうでヒヤヒヤする。
「じゃあね、ジャスティン」
「…ミリオネア、好きだ」
「私もよ」
ちゅ、と頬にキスされて馬車に乗り込む。
お兄様に転移魔法を教えてもらおう。
色々と便利だから。
「じゃあ、気を付けて。明日、楽しみだな」
「そうね、明日はみんなに見せつけてもいいわよ?」
「わかった」
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