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お父様に天才だと言わせる優秀なお兄様の魔法訓練が始まり、もうある程度魔法を使いこなせる私もまた天才の名を欲しいままにした。
「ミリオネアは天才だ!」
お兄様が興奮気味にそう言ってくれるけど、本当はそうじゃないの、ごめんね。
でも、もっと魔法をきちんと使いこなしたかった。
討伐に行くならそれは絶対に必要な事で。
私は燃えに燃えていた。
「ミリオネア、やり過ぎは逆に良くないから程々にね」
「今日こそはドレスを決めるわよ、明日パーティーなんだから」
両親にそう釘を刺される程に毎日へとへとになるまで訓練に明け暮れていたのだ。
そのお陰で、お兄様からベタ褒め状態となった。
18歳の理解力というズルをしているけど。
「ミリオネアは殿下より強いかも知れない…」
お兄様の呟きはみんなに無視された。
魔力量が桁違いのジャスティンは幼い頃から魔法を習い、ありとあらゆる魔法を使いこなしている。
そんな人と比べるなんて烏滸がましいにも程がある。
口が裂けても言わないでほしい、そんなバカな事。
相変わらずお兄様の説明は意味不明で、記憶があるからこそ理解出来るが当時も今も変わらない。
教職者にはならない方がいい、絶対。
「明日はもうお披露目パーティーなのね。この一週間やたらと早かったわ…」
無駄に緊張するのは、聖女としてお披露目されるから?
それとも…。
「心臓が痛いな…」
きっと自分が思ってるほどみんなは私に興味はないし、大体が取り越し苦労で終わる。
今回もきっとそうだ。
そうであってほしい。
「前とは違うんだから、大丈夫」
始まりが違えば終わりも違う。
ズキズキと痛む胸を押さえながら、深呼吸を一つ。
「お嬢様、宝石商のアンジュ様がお見えです」
「あ、はーい」
私は応接室へと急いだ。
あのネックレスに石を入れた物を、今日は持って来てくれている。
結局石は、自分の瞳の赤紫色にしたのだ。
濃紺以外を探して色々と見たけど、どれにも手は伸びなかった。
やはり、と言うべきか…長年の習慣は消えないらしい。
「ミリオネア様、ネックレスが仕上がりました。ご確認下さい」
「はい!」
金色の指輪の先に赤紫色の石がキラリと光る。
やっぱり石があった方が可愛い。
私は手に取ったネックレスをじっと見て、思わず微笑んでしまった。
「いかがですか?」
「とても気に入りました!ありがとうございます」
「それは良かったです」
にこにこと人好きの笑顔を浮かべるこの人は、お母様のお気に入りのジュエリーデザイナーだ。
アンジュさんが描く女性ならではの柔らかい線のデザインが私も好きだ。
「お母様もそろそろ来ると思います」
「はい、ジェシカ様のご注文の品も本日お持ち致しております」
「ふふふ…お母様が朝からウキウキしていたのは、アンジュさんを待っていたのね」
「まぁ!光栄ですわ!」
きゃっきゃと話をしていると、お母様も来たので更に話は盛り上がる。
そんな時、アンジュさんがこのネックレスについて色々と教えてくれた。
「ミリオネア様のそのネックレスはとても珍しいものです。指輪に彫られている模様も複雑で、繊細です」
「まぁ…そうなの?」
「はい、どこの職人が掘ったのか調べてみてもわからなかったのですが…」
「ふぅん…貴重な物なのかもね…」
「はい、大切になさって下さいね」
「わかったわ」
私はネックレスをそっと手にした。
シャランと鳴る鎖の音を聞くと、心がすっとするような清らかな音だ。
でも、そんな貴重な物を貰っても良かったのだろうか。
「こんな貴重な物をアダム様はどうして私に…?」
思わずそう口にした。
初めて会った見ず知らずの令嬢に。
彼は何者なんだろう。
純粋に興味が湧いた。
「ミリオネア、それもう求婚なんじゃない?指輪だし」
「え!?は!?」
「そうですねぇ、家宝を渡して求婚なんてロマンティックですね!」
「いやいや、そんな事言ってなかったし!!軽い感じで渡されて…」
「断られたら恥ずかしいって思ったんじゃないの?」
「えー…?いや、それは…!」
私は2人から盛大に揶揄われている。
真っ赤になった私は、とうとう思考が停止した。
だから恋愛経験0なんだってば!!
恋バナなんてした事もないし!!
「あらあら、ミリオネアはリンゴになったのかしら?」
「何てお可愛らしい…」
大人女子タチ悪い!!!
私はそそくさと自室に逃げ帰って来た。
手にはアダム様から貰ったネックレスをしっかりと握って。
「うぅ…恥ずかしかった…」
アダム様の顔を思い出してまた赤面する。
もう!!
イケメンなのが悪いのよ!!
きゅ、求婚なんて!!
もし求婚状が来たら頭から煙が出るかも知れないわ!!
「…なんて…あるわけないか…」
来るならもう来てるし、宰相様からの返事もないもの。
誰だかわからないまま、妄想だけしても虚しいだけだわ。
あぁ…疲れた…。
「お嬢様、お茶を淹れましょうか?」
「あぁ、ダリ。お願いするわ」
「さっきから百面相してましたけど、どうしたんですか?」
「ネックレスの事で揶揄われて、色んな妄想をしてしまっただけよ。あぁ、恥ずかしかった…」
「あら、奥様に揶揄われてしまったんですね」
ダリがクスクスと笑う。
私はぷぅっと頬を膨らませて、「お母様ったら酷いわ」とダリに愚痴を言う。
ダリは、楽しそうにニコニコ笑って部屋を出て行った。
「ふぅ…」
アダム様の顔を思い出すと、何故かジャスティンの事も思い出す。
色合いも違うし、イケメンって以外の共通点はないはずなのに。
はにかんだような笑顔が重なって。
他人のそら似だろうか。
どちらにせよ、私がイケメン好きなのには変わりがない事に気付いた。
見るだけならカッコいい方がいいに決まってる。
「明日…緊張するなぁ…」
聖女、といえども特に何が変わった訳でもない。
ただ、聖魔法が使える…それだけだ。
魔獣討伐や、国の安寧を祈るほか特にする事はない。
あれから神殿にも行っていないし。
なんなら魔法の訓練以外はしていない。
「あぁ…眠くなって来た…」
精神的疲労を訴えた身体が休息を要求して来た。
私はそっと目を閉じる。
このまま眠れば絶対に気持ちいい。
そうして、ダリに起こされるまで私は惰眠を貪った。
お母様とドレスを選ぶ過程で着せ替え人形にされる、という苦行を挟みながらもう寝る時間がやって来てしまった。
「お嬢様、明日はお披露目パーティーなので早めに起こします」
「わかったわ、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
ダリに挨拶をしてゆっくりと目を閉じる。
パーティーは夕方から始まる。
私が10歳というのを考慮してくれているのだろう。
それでも朝から準備に追われる事になるのは仕方ない。
昼過ぎには王宮に出向いて段取りを聞いておかなければ、いきなり本番は流石に困る。
「陛下の段取りを聞いておかなきゃ、何をさせられるかわかったもんじゃないわ」
陛下は思い付きで無茶振りをしてくる天才だ。
誰も拒否出来ないから、その無茶振りが拒まれる事はないけれど、ある程度の段取りを聞いておけば予測は出来る。
今回ばかりは私も初めての事だから、念には念を入れておかないと…。
「聖女がどう作用するかは、箱を開けなきゃわからない…」
明日の事は、明日考えよう。
じたばたしても日は昇り、夜は明ける。
だったらちゃんと寝た方がいい。
私はそう覚悟を決め、眠りについた。
「お嬢様!起きて下さい、朝ですよ!」
ゆさゆさと身体を揺すられ、はっと目を覚ます。
ダリが笑いながら「おはようございます」と言う。
私も笑って「おはよう」と身体を伸ばした。
「よく眠れましたか?」
「ばっちり眠れたわ。まだ眠れそうよ」
「ふふ…いつもより早いですからね」
「でも、準備しなきゃね!」
「そうですね」
身支度をして、食堂に行くとお父様、お母様はいたけどお兄様がいなかった。
「おはようございます、お兄様は?」
「まだ寝てるらしいわ。でもそろそろ来るんじゃない?」
「お兄様は朝弱いものね」
クスクスとお母様と笑い合っている中、お父様の表情が硬い。
どうかしたのかとお母様に視線を送ると、呆れたように口を開いた。
「ミリオネアが殿下の婚約者候補に入れられるんじゃないかって心配なのよ」
「お父様ったら…まだわからないでしょう?」
私はお父様に視線を向けた。
お父様は、眉を下げて困り顔になる。
「なるよ、絶対。聖女だよ?可愛いミリオネアだよ?これでならなきゃ誰が候補になるんだ?あぁ嫌だ。ミリオネアに婚約者なんてまだ…いや、永遠に要らない…」
「え、永遠はちょっと…私だってお嫁に行きますよ…?」
「あー!止めて止めて!ミリオネアがお嫁に行くなんて考えたくない」
お父様は手で耳を塞いでしまった。
どれだけ、嫌なんだろうか。
私は吹き出しそうになるのを堪える。
「全く…諦めなさいな」
お母様の冷たい声が食堂に響き、私は笑いながら朝食を終えた。
「お嬢様、私は後で参りますので控え室でお待ちしています」
「待っててね」
陛下への謁見のために私達家族は早めに王宮に向かう。
お兄様はまだ半分寝ているが、そっとしておこう。
馬車が王宮に向かう道のりを懐かしく思う。
ずっと通った道。
愛する人に会いに行くための道だった。
私は速くなる心臓に手を当て、落ち着いて、と自分に言い聞かせた。
「ミリオネアは天才だ!」
お兄様が興奮気味にそう言ってくれるけど、本当はそうじゃないの、ごめんね。
でも、もっと魔法をきちんと使いこなしたかった。
討伐に行くならそれは絶対に必要な事で。
私は燃えに燃えていた。
「ミリオネア、やり過ぎは逆に良くないから程々にね」
「今日こそはドレスを決めるわよ、明日パーティーなんだから」
両親にそう釘を刺される程に毎日へとへとになるまで訓練に明け暮れていたのだ。
そのお陰で、お兄様からベタ褒め状態となった。
18歳の理解力というズルをしているけど。
「ミリオネアは殿下より強いかも知れない…」
お兄様の呟きはみんなに無視された。
魔力量が桁違いのジャスティンは幼い頃から魔法を習い、ありとあらゆる魔法を使いこなしている。
そんな人と比べるなんて烏滸がましいにも程がある。
口が裂けても言わないでほしい、そんなバカな事。
相変わらずお兄様の説明は意味不明で、記憶があるからこそ理解出来るが当時も今も変わらない。
教職者にはならない方がいい、絶対。
「明日はもうお披露目パーティーなのね。この一週間やたらと早かったわ…」
無駄に緊張するのは、聖女としてお披露目されるから?
それとも…。
「心臓が痛いな…」
きっと自分が思ってるほどみんなは私に興味はないし、大体が取り越し苦労で終わる。
今回もきっとそうだ。
そうであってほしい。
「前とは違うんだから、大丈夫」
始まりが違えば終わりも違う。
ズキズキと痛む胸を押さえながら、深呼吸を一つ。
「お嬢様、宝石商のアンジュ様がお見えです」
「あ、はーい」
私は応接室へと急いだ。
あのネックレスに石を入れた物を、今日は持って来てくれている。
結局石は、自分の瞳の赤紫色にしたのだ。
濃紺以外を探して色々と見たけど、どれにも手は伸びなかった。
やはり、と言うべきか…長年の習慣は消えないらしい。
「ミリオネア様、ネックレスが仕上がりました。ご確認下さい」
「はい!」
金色の指輪の先に赤紫色の石がキラリと光る。
やっぱり石があった方が可愛い。
私は手に取ったネックレスをじっと見て、思わず微笑んでしまった。
「いかがですか?」
「とても気に入りました!ありがとうございます」
「それは良かったです」
にこにこと人好きの笑顔を浮かべるこの人は、お母様のお気に入りのジュエリーデザイナーだ。
アンジュさんが描く女性ならではの柔らかい線のデザインが私も好きだ。
「お母様もそろそろ来ると思います」
「はい、ジェシカ様のご注文の品も本日お持ち致しております」
「ふふふ…お母様が朝からウキウキしていたのは、アンジュさんを待っていたのね」
「まぁ!光栄ですわ!」
きゃっきゃと話をしていると、お母様も来たので更に話は盛り上がる。
そんな時、アンジュさんがこのネックレスについて色々と教えてくれた。
「ミリオネア様のそのネックレスはとても珍しいものです。指輪に彫られている模様も複雑で、繊細です」
「まぁ…そうなの?」
「はい、どこの職人が掘ったのか調べてみてもわからなかったのですが…」
「ふぅん…貴重な物なのかもね…」
「はい、大切になさって下さいね」
「わかったわ」
私はネックレスをそっと手にした。
シャランと鳴る鎖の音を聞くと、心がすっとするような清らかな音だ。
でも、そんな貴重な物を貰っても良かったのだろうか。
「こんな貴重な物をアダム様はどうして私に…?」
思わずそう口にした。
初めて会った見ず知らずの令嬢に。
彼は何者なんだろう。
純粋に興味が湧いた。
「ミリオネア、それもう求婚なんじゃない?指輪だし」
「え!?は!?」
「そうですねぇ、家宝を渡して求婚なんてロマンティックですね!」
「いやいや、そんな事言ってなかったし!!軽い感じで渡されて…」
「断られたら恥ずかしいって思ったんじゃないの?」
「えー…?いや、それは…!」
私は2人から盛大に揶揄われている。
真っ赤になった私は、とうとう思考が停止した。
だから恋愛経験0なんだってば!!
恋バナなんてした事もないし!!
「あらあら、ミリオネアはリンゴになったのかしら?」
「何てお可愛らしい…」
大人女子タチ悪い!!!
私はそそくさと自室に逃げ帰って来た。
手にはアダム様から貰ったネックレスをしっかりと握って。
「うぅ…恥ずかしかった…」
アダム様の顔を思い出してまた赤面する。
もう!!
イケメンなのが悪いのよ!!
きゅ、求婚なんて!!
もし求婚状が来たら頭から煙が出るかも知れないわ!!
「…なんて…あるわけないか…」
来るならもう来てるし、宰相様からの返事もないもの。
誰だかわからないまま、妄想だけしても虚しいだけだわ。
あぁ…疲れた…。
「お嬢様、お茶を淹れましょうか?」
「あぁ、ダリ。お願いするわ」
「さっきから百面相してましたけど、どうしたんですか?」
「ネックレスの事で揶揄われて、色んな妄想をしてしまっただけよ。あぁ、恥ずかしかった…」
「あら、奥様に揶揄われてしまったんですね」
ダリがクスクスと笑う。
私はぷぅっと頬を膨らませて、「お母様ったら酷いわ」とダリに愚痴を言う。
ダリは、楽しそうにニコニコ笑って部屋を出て行った。
「ふぅ…」
アダム様の顔を思い出すと、何故かジャスティンの事も思い出す。
色合いも違うし、イケメンって以外の共通点はないはずなのに。
はにかんだような笑顔が重なって。
他人のそら似だろうか。
どちらにせよ、私がイケメン好きなのには変わりがない事に気付いた。
見るだけならカッコいい方がいいに決まってる。
「明日…緊張するなぁ…」
聖女、といえども特に何が変わった訳でもない。
ただ、聖魔法が使える…それだけだ。
魔獣討伐や、国の安寧を祈るほか特にする事はない。
あれから神殿にも行っていないし。
なんなら魔法の訓練以外はしていない。
「あぁ…眠くなって来た…」
精神的疲労を訴えた身体が休息を要求して来た。
私はそっと目を閉じる。
このまま眠れば絶対に気持ちいい。
そうして、ダリに起こされるまで私は惰眠を貪った。
お母様とドレスを選ぶ過程で着せ替え人形にされる、という苦行を挟みながらもう寝る時間がやって来てしまった。
「お嬢様、明日はお披露目パーティーなので早めに起こします」
「わかったわ、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
ダリに挨拶をしてゆっくりと目を閉じる。
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私が10歳というのを考慮してくれているのだろう。
それでも朝から準備に追われる事になるのは仕方ない。
昼過ぎには王宮に出向いて段取りを聞いておかなければ、いきなり本番は流石に困る。
「陛下の段取りを聞いておかなきゃ、何をさせられるかわかったもんじゃないわ」
陛下は思い付きで無茶振りをしてくる天才だ。
誰も拒否出来ないから、その無茶振りが拒まれる事はないけれど、ある程度の段取りを聞いておけば予測は出来る。
今回ばかりは私も初めての事だから、念には念を入れておかないと…。
「聖女がどう作用するかは、箱を開けなきゃわからない…」
明日の事は、明日考えよう。
じたばたしても日は昇り、夜は明ける。
だったらちゃんと寝た方がいい。
私はそう覚悟を決め、眠りについた。
「お嬢様!起きて下さい、朝ですよ!」
ゆさゆさと身体を揺すられ、はっと目を覚ます。
ダリが笑いながら「おはようございます」と言う。
私も笑って「おはよう」と身体を伸ばした。
「よく眠れましたか?」
「ばっちり眠れたわ。まだ眠れそうよ」
「ふふ…いつもより早いですからね」
「でも、準備しなきゃね!」
「そうですね」
身支度をして、食堂に行くとお父様、お母様はいたけどお兄様がいなかった。
「おはようございます、お兄様は?」
「まだ寝てるらしいわ。でもそろそろ来るんじゃない?」
「お兄様は朝弱いものね」
クスクスとお母様と笑い合っている中、お父様の表情が硬い。
どうかしたのかとお母様に視線を送ると、呆れたように口を開いた。
「ミリオネアが殿下の婚約者候補に入れられるんじゃないかって心配なのよ」
「お父様ったら…まだわからないでしょう?」
私はお父様に視線を向けた。
お父様は、眉を下げて困り顔になる。
「なるよ、絶対。聖女だよ?可愛いミリオネアだよ?これでならなきゃ誰が候補になるんだ?あぁ嫌だ。ミリオネアに婚約者なんてまだ…いや、永遠に要らない…」
「え、永遠はちょっと…私だってお嫁に行きますよ…?」
「あー!止めて止めて!ミリオネアがお嫁に行くなんて考えたくない」
お父様は手で耳を塞いでしまった。
どれだけ、嫌なんだろうか。
私は吹き出しそうになるのを堪える。
「全く…諦めなさいな」
お母様の冷たい声が食堂に響き、私は笑いながら朝食を終えた。
「お嬢様、私は後で参りますので控え室でお待ちしています」
「待っててね」
陛下への謁見のために私達家族は早めに王宮に向かう。
お兄様はまだ半分寝ているが、そっとしておこう。
馬車が王宮に向かう道のりを懐かしく思う。
ずっと通った道。
愛する人に会いに行くための道だった。
私は速くなる心臓に手を当て、落ち着いて、と自分に言い聞かせた。
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