9 / 44
9
しおりを挟む
お父様に天才だと言わせる優秀なお兄様の魔法訓練が始まり、もうある程度魔法を使いこなせる私もまた天才の名を欲しいままにした。
「ミリオネアは天才だ!」
お兄様が興奮気味にそう言ってくれるけど、本当はそうじゃないの、ごめんね。
でも、もっと魔法をきちんと使いこなしたかった。
討伐に行くならそれは絶対に必要な事で。
私は燃えに燃えていた。
「ミリオネア、やり過ぎは逆に良くないから程々にね」
「今日こそはドレスを決めるわよ、明日パーティーなんだから」
両親にそう釘を刺される程に毎日へとへとになるまで訓練に明け暮れていたのだ。
そのお陰で、お兄様からベタ褒め状態となった。
18歳の理解力というズルをしているけど。
「ミリオネアは殿下より強いかも知れない…」
お兄様の呟きはみんなに無視された。
魔力量が桁違いのジャスティンは幼い頃から魔法を習い、ありとあらゆる魔法を使いこなしている。
そんな人と比べるなんて烏滸がましいにも程がある。
口が裂けても言わないでほしい、そんなバカな事。
相変わらずお兄様の説明は意味不明で、記憶があるからこそ理解出来るが当時も今も変わらない。
教職者にはならない方がいい、絶対。
「明日はもうお披露目パーティーなのね。この一週間やたらと早かったわ…」
無駄に緊張するのは、聖女としてお披露目されるから?
それとも…。
「心臓が痛いな…」
きっと自分が思ってるほどみんなは私に興味はないし、大体が取り越し苦労で終わる。
今回もきっとそうだ。
そうであってほしい。
「前とは違うんだから、大丈夫」
始まりが違えば終わりも違う。
ズキズキと痛む胸を押さえながら、深呼吸を一つ。
「お嬢様、宝石商のアンジュ様がお見えです」
「あ、はーい」
私は応接室へと急いだ。
あのネックレスに石を入れた物を、今日は持って来てくれている。
結局石は、自分の瞳の赤紫色にしたのだ。
濃紺以外を探して色々と見たけど、どれにも手は伸びなかった。
やはり、と言うべきか…長年の習慣は消えないらしい。
「ミリオネア様、ネックレスが仕上がりました。ご確認下さい」
「はい!」
金色の指輪の先に赤紫色の石がキラリと光る。
やっぱり石があった方が可愛い。
私は手に取ったネックレスをじっと見て、思わず微笑んでしまった。
「いかがですか?」
「とても気に入りました!ありがとうございます」
「それは良かったです」
にこにこと人好きの笑顔を浮かべるこの人は、お母様のお気に入りのジュエリーデザイナーだ。
アンジュさんが描く女性ならではの柔らかい線のデザインが私も好きだ。
「お母様もそろそろ来ると思います」
「はい、ジェシカ様のご注文の品も本日お持ち致しております」
「ふふふ…お母様が朝からウキウキしていたのは、アンジュさんを待っていたのね」
「まぁ!光栄ですわ!」
きゃっきゃと話をしていると、お母様も来たので更に話は盛り上がる。
そんな時、アンジュさんがこのネックレスについて色々と教えてくれた。
「ミリオネア様のそのネックレスはとても珍しいものです。指輪に彫られている模様も複雑で、繊細です」
「まぁ…そうなの?」
「はい、どこの職人が掘ったのか調べてみてもわからなかったのですが…」
「ふぅん…貴重な物なのかもね…」
「はい、大切になさって下さいね」
「わかったわ」
私はネックレスをそっと手にした。
シャランと鳴る鎖の音を聞くと、心がすっとするような清らかな音だ。
でも、そんな貴重な物を貰っても良かったのだろうか。
「こんな貴重な物をアダム様はどうして私に…?」
思わずそう口にした。
初めて会った見ず知らずの令嬢に。
彼は何者なんだろう。
純粋に興味が湧いた。
「ミリオネア、それもう求婚なんじゃない?指輪だし」
「え!?は!?」
「そうですねぇ、家宝を渡して求婚なんてロマンティックですね!」
「いやいや、そんな事言ってなかったし!!軽い感じで渡されて…」
「断られたら恥ずかしいって思ったんじゃないの?」
「えー…?いや、それは…!」
私は2人から盛大に揶揄われている。
真っ赤になった私は、とうとう思考が停止した。
だから恋愛経験0なんだってば!!
恋バナなんてした事もないし!!
「あらあら、ミリオネアはリンゴになったのかしら?」
「何てお可愛らしい…」
大人女子タチ悪い!!!
私はそそくさと自室に逃げ帰って来た。
手にはアダム様から貰ったネックレスをしっかりと握って。
「うぅ…恥ずかしかった…」
アダム様の顔を思い出してまた赤面する。
もう!!
イケメンなのが悪いのよ!!
きゅ、求婚なんて!!
もし求婚状が来たら頭から煙が出るかも知れないわ!!
「…なんて…あるわけないか…」
来るならもう来てるし、宰相様からの返事もないもの。
誰だかわからないまま、妄想だけしても虚しいだけだわ。
あぁ…疲れた…。
「お嬢様、お茶を淹れましょうか?」
「あぁ、ダリ。お願いするわ」
「さっきから百面相してましたけど、どうしたんですか?」
「ネックレスの事で揶揄われて、色んな妄想をしてしまっただけよ。あぁ、恥ずかしかった…」
「あら、奥様に揶揄われてしまったんですね」
ダリがクスクスと笑う。
私はぷぅっと頬を膨らませて、「お母様ったら酷いわ」とダリに愚痴を言う。
ダリは、楽しそうにニコニコ笑って部屋を出て行った。
「ふぅ…」
アダム様の顔を思い出すと、何故かジャスティンの事も思い出す。
色合いも違うし、イケメンって以外の共通点はないはずなのに。
はにかんだような笑顔が重なって。
他人のそら似だろうか。
どちらにせよ、私がイケメン好きなのには変わりがない事に気付いた。
見るだけならカッコいい方がいいに決まってる。
「明日…緊張するなぁ…」
聖女、といえども特に何が変わった訳でもない。
ただ、聖魔法が使える…それだけだ。
魔獣討伐や、国の安寧を祈るほか特にする事はない。
あれから神殿にも行っていないし。
なんなら魔法の訓練以外はしていない。
「あぁ…眠くなって来た…」
精神的疲労を訴えた身体が休息を要求して来た。
私はそっと目を閉じる。
このまま眠れば絶対に気持ちいい。
そうして、ダリに起こされるまで私は惰眠を貪った。
お母様とドレスを選ぶ過程で着せ替え人形にされる、という苦行を挟みながらもう寝る時間がやって来てしまった。
「お嬢様、明日はお披露目パーティーなので早めに起こします」
「わかったわ、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
ダリに挨拶をしてゆっくりと目を閉じる。
パーティーは夕方から始まる。
私が10歳というのを考慮してくれているのだろう。
それでも朝から準備に追われる事になるのは仕方ない。
昼過ぎには王宮に出向いて段取りを聞いておかなければ、いきなり本番は流石に困る。
「陛下の段取りを聞いておかなきゃ、何をさせられるかわかったもんじゃないわ」
陛下は思い付きで無茶振りをしてくる天才だ。
誰も拒否出来ないから、その無茶振りが拒まれる事はないけれど、ある程度の段取りを聞いておけば予測は出来る。
今回ばかりは私も初めての事だから、念には念を入れておかないと…。
「聖女がどう作用するかは、箱を開けなきゃわからない…」
明日の事は、明日考えよう。
じたばたしても日は昇り、夜は明ける。
だったらちゃんと寝た方がいい。
私はそう覚悟を決め、眠りについた。
「お嬢様!起きて下さい、朝ですよ!」
ゆさゆさと身体を揺すられ、はっと目を覚ます。
ダリが笑いながら「おはようございます」と言う。
私も笑って「おはよう」と身体を伸ばした。
「よく眠れましたか?」
「ばっちり眠れたわ。まだ眠れそうよ」
「ふふ…いつもより早いですからね」
「でも、準備しなきゃね!」
「そうですね」
身支度をして、食堂に行くとお父様、お母様はいたけどお兄様がいなかった。
「おはようございます、お兄様は?」
「まだ寝てるらしいわ。でもそろそろ来るんじゃない?」
「お兄様は朝弱いものね」
クスクスとお母様と笑い合っている中、お父様の表情が硬い。
どうかしたのかとお母様に視線を送ると、呆れたように口を開いた。
「ミリオネアが殿下の婚約者候補に入れられるんじゃないかって心配なのよ」
「お父様ったら…まだわからないでしょう?」
私はお父様に視線を向けた。
お父様は、眉を下げて困り顔になる。
「なるよ、絶対。聖女だよ?可愛いミリオネアだよ?これでならなきゃ誰が候補になるんだ?あぁ嫌だ。ミリオネアに婚約者なんてまだ…いや、永遠に要らない…」
「え、永遠はちょっと…私だってお嫁に行きますよ…?」
「あー!止めて止めて!ミリオネアがお嫁に行くなんて考えたくない」
お父様は手で耳を塞いでしまった。
どれだけ、嫌なんだろうか。
私は吹き出しそうになるのを堪える。
「全く…諦めなさいな」
お母様の冷たい声が食堂に響き、私は笑いながら朝食を終えた。
「お嬢様、私は後で参りますので控え室でお待ちしています」
「待っててね」
陛下への謁見のために私達家族は早めに王宮に向かう。
お兄様はまだ半分寝ているが、そっとしておこう。
馬車が王宮に向かう道のりを懐かしく思う。
ずっと通った道。
愛する人に会いに行くための道だった。
私は速くなる心臓に手を当て、落ち着いて、と自分に言い聞かせた。
「ミリオネアは天才だ!」
お兄様が興奮気味にそう言ってくれるけど、本当はそうじゃないの、ごめんね。
でも、もっと魔法をきちんと使いこなしたかった。
討伐に行くならそれは絶対に必要な事で。
私は燃えに燃えていた。
「ミリオネア、やり過ぎは逆に良くないから程々にね」
「今日こそはドレスを決めるわよ、明日パーティーなんだから」
両親にそう釘を刺される程に毎日へとへとになるまで訓練に明け暮れていたのだ。
そのお陰で、お兄様からベタ褒め状態となった。
18歳の理解力というズルをしているけど。
「ミリオネアは殿下より強いかも知れない…」
お兄様の呟きはみんなに無視された。
魔力量が桁違いのジャスティンは幼い頃から魔法を習い、ありとあらゆる魔法を使いこなしている。
そんな人と比べるなんて烏滸がましいにも程がある。
口が裂けても言わないでほしい、そんなバカな事。
相変わらずお兄様の説明は意味不明で、記憶があるからこそ理解出来るが当時も今も変わらない。
教職者にはならない方がいい、絶対。
「明日はもうお披露目パーティーなのね。この一週間やたらと早かったわ…」
無駄に緊張するのは、聖女としてお披露目されるから?
それとも…。
「心臓が痛いな…」
きっと自分が思ってるほどみんなは私に興味はないし、大体が取り越し苦労で終わる。
今回もきっとそうだ。
そうであってほしい。
「前とは違うんだから、大丈夫」
始まりが違えば終わりも違う。
ズキズキと痛む胸を押さえながら、深呼吸を一つ。
「お嬢様、宝石商のアンジュ様がお見えです」
「あ、はーい」
私は応接室へと急いだ。
あのネックレスに石を入れた物を、今日は持って来てくれている。
結局石は、自分の瞳の赤紫色にしたのだ。
濃紺以外を探して色々と見たけど、どれにも手は伸びなかった。
やはり、と言うべきか…長年の習慣は消えないらしい。
「ミリオネア様、ネックレスが仕上がりました。ご確認下さい」
「はい!」
金色の指輪の先に赤紫色の石がキラリと光る。
やっぱり石があった方が可愛い。
私は手に取ったネックレスをじっと見て、思わず微笑んでしまった。
「いかがですか?」
「とても気に入りました!ありがとうございます」
「それは良かったです」
にこにこと人好きの笑顔を浮かべるこの人は、お母様のお気に入りのジュエリーデザイナーだ。
アンジュさんが描く女性ならではの柔らかい線のデザインが私も好きだ。
「お母様もそろそろ来ると思います」
「はい、ジェシカ様のご注文の品も本日お持ち致しております」
「ふふふ…お母様が朝からウキウキしていたのは、アンジュさんを待っていたのね」
「まぁ!光栄ですわ!」
きゃっきゃと話をしていると、お母様も来たので更に話は盛り上がる。
そんな時、アンジュさんがこのネックレスについて色々と教えてくれた。
「ミリオネア様のそのネックレスはとても珍しいものです。指輪に彫られている模様も複雑で、繊細です」
「まぁ…そうなの?」
「はい、どこの職人が掘ったのか調べてみてもわからなかったのですが…」
「ふぅん…貴重な物なのかもね…」
「はい、大切になさって下さいね」
「わかったわ」
私はネックレスをそっと手にした。
シャランと鳴る鎖の音を聞くと、心がすっとするような清らかな音だ。
でも、そんな貴重な物を貰っても良かったのだろうか。
「こんな貴重な物をアダム様はどうして私に…?」
思わずそう口にした。
初めて会った見ず知らずの令嬢に。
彼は何者なんだろう。
純粋に興味が湧いた。
「ミリオネア、それもう求婚なんじゃない?指輪だし」
「え!?は!?」
「そうですねぇ、家宝を渡して求婚なんてロマンティックですね!」
「いやいや、そんな事言ってなかったし!!軽い感じで渡されて…」
「断られたら恥ずかしいって思ったんじゃないの?」
「えー…?いや、それは…!」
私は2人から盛大に揶揄われている。
真っ赤になった私は、とうとう思考が停止した。
だから恋愛経験0なんだってば!!
恋バナなんてした事もないし!!
「あらあら、ミリオネアはリンゴになったのかしら?」
「何てお可愛らしい…」
大人女子タチ悪い!!!
私はそそくさと自室に逃げ帰って来た。
手にはアダム様から貰ったネックレスをしっかりと握って。
「うぅ…恥ずかしかった…」
アダム様の顔を思い出してまた赤面する。
もう!!
イケメンなのが悪いのよ!!
きゅ、求婚なんて!!
もし求婚状が来たら頭から煙が出るかも知れないわ!!
「…なんて…あるわけないか…」
来るならもう来てるし、宰相様からの返事もないもの。
誰だかわからないまま、妄想だけしても虚しいだけだわ。
あぁ…疲れた…。
「お嬢様、お茶を淹れましょうか?」
「あぁ、ダリ。お願いするわ」
「さっきから百面相してましたけど、どうしたんですか?」
「ネックレスの事で揶揄われて、色んな妄想をしてしまっただけよ。あぁ、恥ずかしかった…」
「あら、奥様に揶揄われてしまったんですね」
ダリがクスクスと笑う。
私はぷぅっと頬を膨らませて、「お母様ったら酷いわ」とダリに愚痴を言う。
ダリは、楽しそうにニコニコ笑って部屋を出て行った。
「ふぅ…」
アダム様の顔を思い出すと、何故かジャスティンの事も思い出す。
色合いも違うし、イケメンって以外の共通点はないはずなのに。
はにかんだような笑顔が重なって。
他人のそら似だろうか。
どちらにせよ、私がイケメン好きなのには変わりがない事に気付いた。
見るだけならカッコいい方がいいに決まってる。
「明日…緊張するなぁ…」
聖女、といえども特に何が変わった訳でもない。
ただ、聖魔法が使える…それだけだ。
魔獣討伐や、国の安寧を祈るほか特にする事はない。
あれから神殿にも行っていないし。
なんなら魔法の訓練以外はしていない。
「あぁ…眠くなって来た…」
精神的疲労を訴えた身体が休息を要求して来た。
私はそっと目を閉じる。
このまま眠れば絶対に気持ちいい。
そうして、ダリに起こされるまで私は惰眠を貪った。
お母様とドレスを選ぶ過程で着せ替え人形にされる、という苦行を挟みながらもう寝る時間がやって来てしまった。
「お嬢様、明日はお披露目パーティーなので早めに起こします」
「わかったわ、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
ダリに挨拶をしてゆっくりと目を閉じる。
パーティーは夕方から始まる。
私が10歳というのを考慮してくれているのだろう。
それでも朝から準備に追われる事になるのは仕方ない。
昼過ぎには王宮に出向いて段取りを聞いておかなければ、いきなり本番は流石に困る。
「陛下の段取りを聞いておかなきゃ、何をさせられるかわかったもんじゃないわ」
陛下は思い付きで無茶振りをしてくる天才だ。
誰も拒否出来ないから、その無茶振りが拒まれる事はないけれど、ある程度の段取りを聞いておけば予測は出来る。
今回ばかりは私も初めての事だから、念には念を入れておかないと…。
「聖女がどう作用するかは、箱を開けなきゃわからない…」
明日の事は、明日考えよう。
じたばたしても日は昇り、夜は明ける。
だったらちゃんと寝た方がいい。
私はそう覚悟を決め、眠りについた。
「お嬢様!起きて下さい、朝ですよ!」
ゆさゆさと身体を揺すられ、はっと目を覚ます。
ダリが笑いながら「おはようございます」と言う。
私も笑って「おはよう」と身体を伸ばした。
「よく眠れましたか?」
「ばっちり眠れたわ。まだ眠れそうよ」
「ふふ…いつもより早いですからね」
「でも、準備しなきゃね!」
「そうですね」
身支度をして、食堂に行くとお父様、お母様はいたけどお兄様がいなかった。
「おはようございます、お兄様は?」
「まだ寝てるらしいわ。でもそろそろ来るんじゃない?」
「お兄様は朝弱いものね」
クスクスとお母様と笑い合っている中、お父様の表情が硬い。
どうかしたのかとお母様に視線を送ると、呆れたように口を開いた。
「ミリオネアが殿下の婚約者候補に入れられるんじゃないかって心配なのよ」
「お父様ったら…まだわからないでしょう?」
私はお父様に視線を向けた。
お父様は、眉を下げて困り顔になる。
「なるよ、絶対。聖女だよ?可愛いミリオネアだよ?これでならなきゃ誰が候補になるんだ?あぁ嫌だ。ミリオネアに婚約者なんてまだ…いや、永遠に要らない…」
「え、永遠はちょっと…私だってお嫁に行きますよ…?」
「あー!止めて止めて!ミリオネアがお嫁に行くなんて考えたくない」
お父様は手で耳を塞いでしまった。
どれだけ、嫌なんだろうか。
私は吹き出しそうになるのを堪える。
「全く…諦めなさいな」
お母様の冷たい声が食堂に響き、私は笑いながら朝食を終えた。
「お嬢様、私は後で参りますので控え室でお待ちしています」
「待っててね」
陛下への謁見のために私達家族は早めに王宮に向かう。
お兄様はまだ半分寝ているが、そっとしておこう。
馬車が王宮に向かう道のりを懐かしく思う。
ずっと通った道。
愛する人に会いに行くための道だった。
私は速くなる心臓に手を当て、落ち着いて、と自分に言い聞かせた。
640
あなたにおすすめの小説
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
あなたの幸せを、心からお祈りしています【宮廷音楽家の娘の逆転劇】
たくわん
恋愛
「平民の娘ごときが、騎士の妻になれると思ったのか」
宮廷音楽家の娘リディアは、愛を誓い合った騎士エドゥアルトから、一方的に婚約破棄を告げられる。理由は「身分違い」。彼が選んだのは、爵位と持参金を持つ貴族令嬢だった。
傷ついた心を抱えながらも、リディアは決意する。
「音楽の道で、誰にも見下されない存在になってみせる」
革新的な合奏曲の創作、宮廷初の「音楽会」の開催、そして若き隣国王子との出会い——。
才能と努力だけを武器に、リディアは宮廷音楽界の頂点へと駆け上がっていく。
一方、妻の浪費と実家の圧力に苦しむエドゥアルトは、次第に転落の道を辿り始める。そして彼は気づくのだ。自分が何を失ったのかを。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる