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第一章 建国前夜編
38話 国境にて
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木々の葉が枯れ、吐く息が白くなる季節。
ゴルティアでのはじめての依頼から半年ほどが経っていた。
あの晩、ゲンマと話したことで、この世界の仕組みを知った俺は、傭兵としての仕事を続けていた。
依頼先で理不尽に排除されようとしている亜人がいた時には、ライと同じように助けになってやりたいと思ったからだ。
救える命は少なかったが、何もしないよりは全然マシだ。
「タケル、リナル帝国がまた越境だってよ。皇国側も今回はかなり兵力を動員するみたいだから、荒れるかもなー…。」
この半年間、傭兵の仕事をしながら耳にする噂は物騒なものばかりだった。
この世界に来た時に、争いが絶えない世界とは聞いていたけど、クルセイブ王国の周りで次から次へと国同士の戦いが起こっている。
クルセイブ王国自体は中立国らしく、基本的には不参戦。
ただ、東にはリナル帝国、西には城塞小国家連合、北にはグランバース皇国と三つの国に囲まれていることから緊張状態がずっと続いている。
「まあ、ここから北の戦場はかなり遠いい。南部の方にはそう影響しないだろう。」
野営の火で肉を焼きながらグロウが言う。
俺とカインとグロウの3人は、高ランクの護衛依頼を受け南部の西側、未開拓地帯の奥にある城塞小国家連合との国境付近へときていた。
未開拓地帯と言っても、城塞小国家連合からクルセイブ南部へと続く街道は整備されていて、その街道を馬車で数日かけてやってきた。
「それにしてもおかしいですね…、クルセイブに向かう商人どころか、旅人まで見ない。城塞小国家連合の中で何か起きてるんでしょうか。」
護衛対象のおっさんがぼやく。
確かにクルセイブ側から移動する人は見かけたが反対から来る人間は全く見なかった。
城塞小国家連合は一つの城塞都市を一国として、12の王国からなる連合国家だ。
それぞれの都市の大きさはバラバラだが、盟主である国の都市は人口20万人は下らない超大都市らしい。
人がいなかったのも不可解だが、このおっさんの護衛依頼の内容はもっと不可解だ。
依頼内容は国境までの往復の護衛。
なんでまた国境まで来て、何かするわけでもなくアーナの街に戻るんだか皆目検討もつかない。
本人に直接聞いてみたが笑って誤魔化される始末で、俺たちは正直相当怪しんでいる。
「何にしても明日はアーナに向けて出発するんだ、今日は早く休もうぜ。」
カインがあくびをしながらそう言い、草むらに寝転がった。
「帰りは少し急ぎたいんですが、可能ですか?」
「ああ、問題ない。馬車の乗り心地は少し悪いかもしれないがそれだけ我慢してくれ。」
「はい、それは全然我慢できます。わがまま言ってしまいすいません。」
おっさんとグロウがそんなやりとりをしてるのを横目に俺は見張りへと立つ。
「タケル、3時間後に交代する。それまでは頼んだ。」
グロウが俺に一声かけて、カインと同じように寝袋を広げて横になった。
静かだ。
街道沿いなのに俺たち以外ほとんど野営してるものもいないし、動物の鳴き声も聞こえない。
城塞小国家連合はいくつもの国の集合体なだけあって、小さな争いは年中無休でやっていて、その物資を捌く目的でこの辺りは商人で溢れているはずなんだけどな。
まあ、危険が少ないのは悪いことじゃないか。
そのあとグロウと見張りを交代し俺も眠りについた。
ゴルティアでのはじめての依頼から半年ほどが経っていた。
あの晩、ゲンマと話したことで、この世界の仕組みを知った俺は、傭兵としての仕事を続けていた。
依頼先で理不尽に排除されようとしている亜人がいた時には、ライと同じように助けになってやりたいと思ったからだ。
救える命は少なかったが、何もしないよりは全然マシだ。
「タケル、リナル帝国がまた越境だってよ。皇国側も今回はかなり兵力を動員するみたいだから、荒れるかもなー…。」
この半年間、傭兵の仕事をしながら耳にする噂は物騒なものばかりだった。
この世界に来た時に、争いが絶えない世界とは聞いていたけど、クルセイブ王国の周りで次から次へと国同士の戦いが起こっている。
クルセイブ王国自体は中立国らしく、基本的には不参戦。
ただ、東にはリナル帝国、西には城塞小国家連合、北にはグランバース皇国と三つの国に囲まれていることから緊張状態がずっと続いている。
「まあ、ここから北の戦場はかなり遠いい。南部の方にはそう影響しないだろう。」
野営の火で肉を焼きながらグロウが言う。
俺とカインとグロウの3人は、高ランクの護衛依頼を受け南部の西側、未開拓地帯の奥にある城塞小国家連合との国境付近へときていた。
未開拓地帯と言っても、城塞小国家連合からクルセイブ南部へと続く街道は整備されていて、その街道を馬車で数日かけてやってきた。
「それにしてもおかしいですね…、クルセイブに向かう商人どころか、旅人まで見ない。城塞小国家連合の中で何か起きてるんでしょうか。」
護衛対象のおっさんがぼやく。
確かにクルセイブ側から移動する人は見かけたが反対から来る人間は全く見なかった。
城塞小国家連合は一つの城塞都市を一国として、12の王国からなる連合国家だ。
それぞれの都市の大きさはバラバラだが、盟主である国の都市は人口20万人は下らない超大都市らしい。
人がいなかったのも不可解だが、このおっさんの護衛依頼の内容はもっと不可解だ。
依頼内容は国境までの往復の護衛。
なんでまた国境まで来て、何かするわけでもなくアーナの街に戻るんだか皆目検討もつかない。
本人に直接聞いてみたが笑って誤魔化される始末で、俺たちは正直相当怪しんでいる。
「何にしても明日はアーナに向けて出発するんだ、今日は早く休もうぜ。」
カインがあくびをしながらそう言い、草むらに寝転がった。
「帰りは少し急ぎたいんですが、可能ですか?」
「ああ、問題ない。馬車の乗り心地は少し悪いかもしれないがそれだけ我慢してくれ。」
「はい、それは全然我慢できます。わがまま言ってしまいすいません。」
おっさんとグロウがそんなやりとりをしてるのを横目に俺は見張りへと立つ。
「タケル、3時間後に交代する。それまでは頼んだ。」
グロウが俺に一声かけて、カインと同じように寝袋を広げて横になった。
静かだ。
街道沿いなのに俺たち以外ほとんど野営してるものもいないし、動物の鳴き声も聞こえない。
城塞小国家連合はいくつもの国の集合体なだけあって、小さな争いは年中無休でやっていて、その物資を捌く目的でこの辺りは商人で溢れているはずなんだけどな。
まあ、危険が少ないのは悪いことじゃないか。
そのあとグロウと見張りを交代し俺も眠りについた。
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