自力で始める異世界建国記

モリタシ

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第一章 建国前夜編

37話 未開拓地帯

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カナと別れたあと、1人で街を少し歩いてみたが、やっぱりどう考えても発展している。
市場に売られている日用品ですら、アーナのものに比べると良質なものが多い。

そのまま日暮れまで街を歩いて回り、宿に戻った。

宿の一階には食堂があり、そこでグロウとカインが先に一杯始めている。

「遅かったなタケル!依頼達成の打ち上げだ、タケルも飲めよ!」

酒の入った木のグラスを持ち上げ、カインは俺に声をかけてきた。

「飲み物を同じものと、晩飯を頼む。」

はいよと俺の注文を受けて先に飲み物が運ばれてきた。
それを飲みながらグロウに尋ねる。

「ゲンマが同じ宿を取ってると聞いたが、まだ戻ってないのか?」

「俺たちが宿に戻ってからは見てないな。」

「あのイカれにかまってたら疲れるからやめとけよ」

カインがふざけた調子で言う。

「誰がイカれですって?」

「うおっ!ゲンマ!帰ってきたのか!」

「カインちゃんが私の悪口を言ってる気がして急いで帰ってきたわあ」

「だからそれが怖いんだよ、お前は…」

ゲンマも食事を注文して同じ卓についた。

「ゲンマ、聞きたいことがあるんだが。今日西の未開拓地帯に行ったよな?」

「タケルちゃん、まだ夜は長いわあ。あとで私のお部屋でゆっくり話しましょう。」

そう言ってゲンマは話を逸らす。
ゲンマの部屋でって、カインが言う通りいちいち怖いやつだな…。

そうしてしばらく酒と食事を楽しんだあと俺たちはそれぞれの部屋に戻り休むことになった。

コンコン

「タケルちゃん?鍵は空いてるわ、入ってちょうだい」

部屋に入るとゲンマが不気味な寝巻き姿でベッドに腰掛けている。

いや、だから怖いわ。

「昼間、西の未開拓地帯に何を確認しに行った?」

「ンフフ、タケルちゃん、あなたのその賢さ少し危ういわね。お察しの通り、未開拓地帯の奥にある亜人の集落を探しに行ったのよ。」

やっぱりか、これ次第でほぼ確定的になるが…

「人間の街と比べ物にならないくらい、生活水準が高かったんだろ?」

「やっぱり、タケルちゃんも気づいていたのね。」

「昼間ここの女将さんが言ってたんだよ、亜人が街を発展させたって。そして全亜人がいなくなるってことは街の人間の協力が絶対必要だ。ってことはライが言ってた通り亜人と人間が良好な関係で共存していた可能性が高い。」

「そうね、おそらく亜人はこの街の人間達一部ではなく、全面的な協力があって逃されているわね。」

「で、前から謎だったこの世界の王族達がなぜ亜人を排除しようとするのか。それは亜人の方が全体的に種族として優れてるから。」

「ええ、多分そう言うことだわ。人数で劣っているとはいえ、亜人が安定的に発展するようなことがあれば軍事力も当然上がるでしょうし、そうなったら数の優位性を人間は失ってしまって、亜人に侵略されることもあり得るわね。」

「だから亜人の発展を妨げるように亜人排除を徹底する…。なぜ自分たちの発展のためにも共栄しようと言う考えにならないんだろうか…。」

「それはあれね。古くから人間は人型種族の中でもエルフと並ぶ最上位種って言う考えがあるから、特に王族みたいなバカはプライドが許さないんでしょ。」

不思議な世界だ。
なんでこんな非合理的なことを選択するんだろうか。
自国民のためにも、亜人との共存の道を考えるべきなのに。
こんな無駄な考えのせいでこの世界の発展は恐ろしいくらい遅れてしまってるんだろう。

「まあ、これに気づいたところで私たちにできることなんて何もないわ。」

「そうだな…」

そう、俺たちがそれを知ったところでどうすることもできない。

俺はそのままゲンマの部屋を出て自室に戻り、もう休むことにした。
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