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王都での騒動
第251話 腕試し
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「ではその実力、ちょっと確かめさせて貰えないか?」
「えっ?」
「安心してくれ、何もこの場で戦ってくれなどとはいわん。流石に客人に手を出すような真似はしない……が!!」
アッシュは指を鳴らした瞬間、即座に使用人たちが動き出すと彼等は大理石製の机を運び込む。何をするつもりかとナイは不思議に思うと、アッシュは袖を捲って右腕を机の上に置く。
「ここで俺と腕相撲を行って欲しい。無論、遠慮はいらないぞ……本気で掛かってきてくれ!!」
「ええっ!?」
「こう見えても俺は腕力には自信があってな、ミノタウロスとガーゴイルを叩き斬ったというその力、俺にも味わわせてくれ!!」
唐突なアッシュの願いにナイは戸惑うが、執事と思われる老人がナイの元へ近づき、耳元に口を寄せる。
「申し訳ございませぬ、お客人……しかし、アッシュ様は一度言い出した事は何があろうと実行される御方です。ここで断られても何らかの理由を付け足して勝負させようとするでしょう」
「ええっ!?」
「申し訳ございませぬ、ですが勝負を終えたら我々の方でお客人のためにお礼を用意させていただきます。どうかアッシュ様の願いを聞き遂げてくれませぬか?」
執事の言葉にナイは困り果てるが、アッシュの方はやる気十分らしく、軽く腕を振り回す。その様子を見てナイはため息を吐き出し、食事を中断して机を挟んでアッシュと向かい合う。
こうして改めて向かい合うとアッシュとナイはかなりの身長差が存在した。しかし、実際の身長以上にナイはアッシュが大きく感じられ、彼の気迫に気圧される。しかも力比べとなるとナイとしても気が気ではない。
(剛力は……使わない方が良いのかな)
ナイは相手が人間となると剛力の技能を使用する事に躊躇い、下手をしたらアッシュの腕を壊しかねない。なので適当な力で相手をしようと考えていると、そんなナイに対してアッシュは忠告を行う。
「遠慮は無用だ、全力で来てくれ……なんなら魔操術を使用しても構わないぞ」
「えっ……!?」
「さあ、勝負だ!!」
アッシュの口からまさか「魔操術」の単語が出てくるとは思わず、どうしてアッシュが魔操術の事を知っているのかとナイは戸惑う。しかし、彼は既に勝負の準備を整えており、聞いても答えてくれそうにない。
(何で魔操術の事を……いや、今は勝負に集中しよう)
気にはなるがナイはアッシュと向かい合い、互いの掌を掴む。審判は先ほどの執事が行うらしく、彼は両者が準備出来た事をを確認すると合図を行う。
「よろしいですな?では……始めっ!!」
「うおおおおっ!!」
「うわっ!?」
開始早々にアッシュは力を込めるとナイの腕が一気に傾き、想像以上の腕力にナイは汗を流す。アッシュの力は先日にナイが取り押さえたレベル30の冒険者の男を遥かに上回り、素の状態のナイでは太刀打ちできない。
予想以上のアッシュの腕力にナイは押され、このままでは負けてしまうと考えたナイは躊躇せずに「剛力」を発動させた。腕力を上昇させたナイは逆に押し返す。
「このぉっ!!」
「おおっ!?」
「アッシュ様!?」
「馬鹿な、あのアッシュ様が押されているだと!?」
「信じられない!!」
ナイがアッシュを逆に追い込む姿に使用人たちは焦った声を上げ、一方でアッシュの方もナイの腕力を感じ取って笑みを浮かべる。
「やるな、想像以上だ!!」
「ど、どうも!!」
「ならばこちらも本気を出すか!!」
「えっ!?」
このままナイがアッシュを押し込むかと思われた時、アッシュは瞼を閉じると彼の雰囲気が変化する。
「うおおおおっ!!」
「なっ!?」
「押し返したぁっ!!」
「流石はアッシュ様!!」
あと少しでアッシュの腕が地面に付く瞬間、彼は気合の雄叫びを上げると腕に血管を浮き上がらせ、逆にナイを押し返す。剛力を発動させているにも関わらずにナイは押し返された事に戸惑う。
今までに人間相手にナイが力負けをした事はなく、それだけにアッシュの得体の知れぬ力に戸惑う。まるで巨人族を相手にしているような気分に陥り、このままでは負けてしまうと思われた時、ここである事に気付く。
(何だ、この感覚……!?)
ナイはアッシュの右腕に白い炎のような物が纏っている事に気付き、それを見たナイは直感で正体に気付く。それはアッシュの右腕に「聖属性の魔力」が宿っており、ナイが怪我を治療する際に魔操術を操る時も同様に身体から魔力を発する事があった。
アッシュは聖属性の魔力を利用して右腕の筋力を高めている事にナイは気づき、その原理は「剛力」と同じだった。ナイは魔操術を利用する時は肉体の再生機能を強化する事にしか使っていなかったが、上手く応用すれば筋力を強化する事も出来る事は知っていた。
「えっ?」
「安心してくれ、何もこの場で戦ってくれなどとはいわん。流石に客人に手を出すような真似はしない……が!!」
アッシュは指を鳴らした瞬間、即座に使用人たちが動き出すと彼等は大理石製の机を運び込む。何をするつもりかとナイは不思議に思うと、アッシュは袖を捲って右腕を机の上に置く。
「ここで俺と腕相撲を行って欲しい。無論、遠慮はいらないぞ……本気で掛かってきてくれ!!」
「ええっ!?」
「こう見えても俺は腕力には自信があってな、ミノタウロスとガーゴイルを叩き斬ったというその力、俺にも味わわせてくれ!!」
唐突なアッシュの願いにナイは戸惑うが、執事と思われる老人がナイの元へ近づき、耳元に口を寄せる。
「申し訳ございませぬ、お客人……しかし、アッシュ様は一度言い出した事は何があろうと実行される御方です。ここで断られても何らかの理由を付け足して勝負させようとするでしょう」
「ええっ!?」
「申し訳ございませぬ、ですが勝負を終えたら我々の方でお客人のためにお礼を用意させていただきます。どうかアッシュ様の願いを聞き遂げてくれませぬか?」
執事の言葉にナイは困り果てるが、アッシュの方はやる気十分らしく、軽く腕を振り回す。その様子を見てナイはため息を吐き出し、食事を中断して机を挟んでアッシュと向かい合う。
こうして改めて向かい合うとアッシュとナイはかなりの身長差が存在した。しかし、実際の身長以上にナイはアッシュが大きく感じられ、彼の気迫に気圧される。しかも力比べとなるとナイとしても気が気ではない。
(剛力は……使わない方が良いのかな)
ナイは相手が人間となると剛力の技能を使用する事に躊躇い、下手をしたらアッシュの腕を壊しかねない。なので適当な力で相手をしようと考えていると、そんなナイに対してアッシュは忠告を行う。
「遠慮は無用だ、全力で来てくれ……なんなら魔操術を使用しても構わないぞ」
「えっ……!?」
「さあ、勝負だ!!」
アッシュの口からまさか「魔操術」の単語が出てくるとは思わず、どうしてアッシュが魔操術の事を知っているのかとナイは戸惑う。しかし、彼は既に勝負の準備を整えており、聞いても答えてくれそうにない。
(何で魔操術の事を……いや、今は勝負に集中しよう)
気にはなるがナイはアッシュと向かい合い、互いの掌を掴む。審判は先ほどの執事が行うらしく、彼は両者が準備出来た事をを確認すると合図を行う。
「よろしいですな?では……始めっ!!」
「うおおおおっ!!」
「うわっ!?」
開始早々にアッシュは力を込めるとナイの腕が一気に傾き、想像以上の腕力にナイは汗を流す。アッシュの力は先日にナイが取り押さえたレベル30の冒険者の男を遥かに上回り、素の状態のナイでは太刀打ちできない。
予想以上のアッシュの腕力にナイは押され、このままでは負けてしまうと考えたナイは躊躇せずに「剛力」を発動させた。腕力を上昇させたナイは逆に押し返す。
「このぉっ!!」
「おおっ!?」
「アッシュ様!?」
「馬鹿な、あのアッシュ様が押されているだと!?」
「信じられない!!」
ナイがアッシュを逆に追い込む姿に使用人たちは焦った声を上げ、一方でアッシュの方もナイの腕力を感じ取って笑みを浮かべる。
「やるな、想像以上だ!!」
「ど、どうも!!」
「ならばこちらも本気を出すか!!」
「えっ!?」
このままナイがアッシュを押し込むかと思われた時、アッシュは瞼を閉じると彼の雰囲気が変化する。
「うおおおおっ!!」
「なっ!?」
「押し返したぁっ!!」
「流石はアッシュ様!!」
あと少しでアッシュの腕が地面に付く瞬間、彼は気合の雄叫びを上げると腕に血管を浮き上がらせ、逆にナイを押し返す。剛力を発動させているにも関わらずにナイは押し返された事に戸惑う。
今までに人間相手にナイが力負けをした事はなく、それだけにアッシュの得体の知れぬ力に戸惑う。まるで巨人族を相手にしているような気分に陥り、このままでは負けてしまうと思われた時、ここである事に気付く。
(何だ、この感覚……!?)
ナイはアッシュの右腕に白い炎のような物が纏っている事に気付き、それを見たナイは直感で正体に気付く。それはアッシュの右腕に「聖属性の魔力」が宿っており、ナイが怪我を治療する際に魔操術を操る時も同様に身体から魔力を発する事があった。
アッシュは聖属性の魔力を利用して右腕の筋力を高めている事にナイは気づき、その原理は「剛力」と同じだった。ナイは魔操術を利用する時は肉体の再生機能を強化する事にしか使っていなかったが、上手く応用すれば筋力を強化する事も出来る事は知っていた。
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